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憧憬の地 ブルターニュ  ―モネ、ゴーガン、黒田清輝らが見た異郷

開催中〜2023/06/11

国立西洋美術館

東京都・台東区

ブルターニュの光と風 ー画家たちを魅了したフランス<辺境の地>

開催中〜2023/06/11

SOMPO美術館

東京都・新宿区

細川護熙 美の世界

開催中〜2023/06/11

平塚市美術館

神奈川県・平塚市

山梨県立美術館コレクションREMIX

開催中〜2023/06/11

山梨県立美術館

山梨県・甲府市

大阪の日本画

開催中〜2023/06/11

東京ステーションギャラリー

東京都・千代田区

アール・ヌーヴォーのガラス – ガレとドームの自然賛歌 –

開催中〜2023/06/11

九州国立博物館

福岡県・太宰府市

ポケモン×工芸展―美とわざの大発見―

開催中〜2023/06/11

国立工芸館

石川県・金沢市

ルーヴル美術館展 愛を描く

開催中〜2023/06/12

国立新美術館

東京都・港区

さばかれえぬ私へ Tokyo Contemporary Art Award 2021-2023 受賞記念展

開催中〜2023/06/18

東京都現代美術館

東京都・江東区

麻生三郎展 三軒茶屋の頃、そしてベン・シャーン

開催中〜2023/06/18

世田谷美術館

東京都・世田谷区

MOTコレクション 被膜虚実/Breathing めぐる呼吸

開催中〜2023/06/18

東京都現代美術館

東京都・江東区

今井俊介 スカートと風景

開催中〜2023/06/18

東京オペラシティアートギャラリー

東京都・新宿区

奇想の絵師 歌川国芳

開催中〜2023/06/18

うらわ美術館

埼玉県・さいたま市

ベルギーと日本-光をえがき、命をかたどる

開催中〜2023/06/18

目黒区美術館

東京都・目黒区

川島理一郎展 ―― 描くことは即ち見ること

開催中〜2023/06/18

栃木県立美術館

栃木県・宇都宮市

とびたつとき 池田満寿夫とデモクラートの作家

開催中〜2023/06/18

宇都宮美術館

栃木県・宇都宮市

ジョルジュ・ルオー ー かたち、色、ハーモニー ー(開館20周年記念展)

開催中〜2023/06/25

パナソニック汐留美術館

東京都・港区

21_21 DESIGN SIGHT 企画展「The Original」

開催中〜2023/06/25

21_21 DESIGN SIGHT ギャラリー1&2

東京都・港区

猪熊弦一郎展『いのくまさん』

開催中〜2023/06/25

茨城県近代美術館

茨城県・水戸市

末盛千枝子と舟越家の人々—絵本が生まれるとき—

開催中〜2023/06/25

市原湖畔美術館

千葉県・市原市

夢と自然の探求者たち―19世紀幻想版画、シュルレアリスム、現代日本の作家まで

開催中〜2023/06/25

群馬県立館林美術館

群馬県・館林市

磯崎新—水戸芸術館を創る

開催中〜2023/06/25

水戸芸術館 現代美術ギャラリー第9室およびエントランス2階回廊

茨城県・水戸市

豊島区立 熊谷守一美術館 特別企画展 熊谷守一美術館38周年展

開催中〜2023/07/02

豊島区立 熊谷守一美術館

東京都・豊島区

名作展「1963→2023 龍子記念館開館60年の歩み」

開催中〜2023/07/02

大田区立龍子記念館

東京都・大田区

企画展  救いのみほとけ  お地蔵さまの美術

開催中〜2023/07/02

根津美術館

東京都・港区

開館60周年記念 Re: スタートライン 1963-1970/2023 現代美術の動向展シリーズにみる美術館とアーティストの共感関係

開催中〜2023/07/02

京都国立近代美術館

京都府・京都市

特集展示「修験と密教の美術 祖師とみほとけ」

開催中〜2023/07/09

半蔵門ミュージアム

東京都・千代田区

霊気を彫り出す彫刻家 大森暁生展

開催中〜2023/07/09

そごう美術館

神奈川県・横浜市

発掘・植竹邦良 ニッポンの戦後を映す夢想空間

開催中〜2023/07/09

府中市美術館

東京都・府中市

【特別展】小林古径 生誕140年記念 小林古径と速水御舟 ―画壇を揺るがした二人の天才―

開催中〜2023/07/17

山種美術館

東京都・渋谷区

初夏展「細川家の茶道具 ―千利休と細川三斎―」

開催中〜2023/07/17

永青文庫

東京都・文京区

恐竜図鑑 ― 失われた世界の想像/創造

開催中〜2023/07/22

上野の森美術館

東京都・台東区

特別展 木島櫻谷 ―山水夢中

開催中〜2023/07/23

泉屋博古館東京

東京都・港区

蔡國強 宇宙遊 ―<原初火球>から始まる

2023/06/29〜2023/08/21

国立新美術館

東京都・港区

練馬区立美術館コレクション+ 植物と歩く

2023/07/02〜2023/08/25

練馬区立美術館

東京都・練馬区

企画展「北斎 大いなる山岳」

2023/06/20〜2023/08/27

すみだ北斎美術館

東京都・墨田区

オーストラリアの大地と空とそこに生きる私たち ディーン・ボーエン展

2023/07/08〜2023/08/27

群馬県立近代美術館

群馬県・高崎市

マルク・シャガール 版にしるした光の詩(うた) 神奈川県立近代美術館コレクションから

2023/07/01〜2023/08/27

世田谷美術館

東京都・世田谷区

ディズニー・アニメーション・イマーシブ・エクスペリエンス

開催中〜2023/08/31

森アーツセンターギャラリー(六本木ヒルズ森タワー52F)

東京都・港区

ピーター・シスの闇と夢

2023/06/30〜2023/08/31

八王子市夢美術館

東京都・八王子市

特別展「三井高利と越後屋―三井家創業期の事業と文化―」

2023/06/28〜2023/08/31

三井記念美術館

東京都・中央区

石黒亜矢子展 ばけものぞろぞろ ばけねこぞろぞろ

開催中〜2023/09/03

世田谷文学館

東京都・世田谷区

特別展「NEO 月でくらす展 〜宇宙開発は、月面移住の新時代へ!〜」

開催中〜2023/09/03

日本科学未来館

東京都・江東区

さとびとみやび

2023/06/24〜2023/09/03

平塚市美術館

神奈川県・平塚市

特別展「古代メキシコ -マヤ、アステカ、テオティワカン」

2023/06/16〜2023/09/03

東京国立博物館

東京都・台東区

浄瑠璃寺九体阿弥陀修理完成記念 特別展 聖地 南山城 ―奈良と京都を結ぶ祈りの至宝―

2023/07/08〜2023/09/03

奈良国立博物館

奈良県・奈良市

憧れの東洋陶磁 ― 大阪市立東洋陶磁美術館の至宝

2023/07/11〜2023/09/03

九州国立博物館

福岡県・太宰府市

スペインのイメージ:版画を通じて写し伝わるすがた

2023/07/04〜2023/09/03

国立西洋美術館

東京都・台東区

今日の彫刻 ― 富井大裕展

2023/07/08〜2023/09/03

栃木県立美術館

栃木県・宇都宮市

土とともに 美術にみる〈農〉の世界 ―ミレー、ゴッホ、浅井忠から現代のアーティストまで―

2023/07/08〜2023/09/03

茨城県近代美術館

茨城県・水戸市

生誕100年 山下清展ー百年目の大回想

2023/06/24〜2023/09/10

SOMPO美術館

東京都・新宿区

三沢厚彦 ANIMALS/Multi-dimensions

2023/06/10〜2023/09/10

千葉市美術館

千葉県・千葉市

ホーム・スイート・ホーム

2023/06/24〜2023/09/10

国立国際美術館

大阪府・大阪市

企画展「藤田嗣治 猫と少女の部屋」

開催中〜2023/09/12

軽井沢安東美術館

長野県・軽井沢町

森美術館開館20周年記念展 ワールド・クラスルーム:現代アートの国語・算数・理科・社会

開催中〜2023/09/24

森美術館

東京都・港区

開館60周年記念 走泥社再考 前衛陶芸が生まれた時代

2023/07/19〜2023/09/24

京都国立近代美術館

京都府・京都市

水のいろ、水のかたち展

2023/07/07〜2023/09/24

国立工芸館

石川県・金沢市

芸術家たちの南仏

2023/07/02〜2023/09/24

宇都宮美術館

栃木県・宇都宮市

夏季展「細川護立の愛した画家たち ―ポール・セザンヌ 梅原龍三郎 安井曾太郎―」

2023/07/29〜2023/09/24

永青文庫

東京都・文京区

テート美術館展 光 ― ターナー、印象派から現代へ

2023/07/12〜2023/10/02

国立新美術館

東京都・港区

モネ、ルノワール 印象派の光

2023/06/20〜2023/10/09

松岡美術館

東京都・港区

瞳の奥にあるもの -表情でみる人物画展-

開催中〜2023/11/05

ホキ美術館

千葉県・千葉市

堅山南風《大震災実写図巻》と近代の画家 大観・玉堂・青邨・蓬春

2023/07/19〜2023/11/05

半蔵門ミュージアム

東京都・千代田区

美しき時代(ベル・エポック)と異彩のジュエリー

開催中〜2023/11/26

箱根ラリック美術館

神奈川県・箱根町

シン・ジャパニーズ・ペインティング 革新の日本画―横山大観、 杉山寧から現代の作家まで

2023/07/15〜2023/12/03

ポーラ美術館

神奈川県・足柄下郡箱根町

Exhibitions

GOING DOWN THE RABBIT HOLE
髙田安規子・政子

  • MA2Gallery (東京都・渋谷区)

 モノのスケールに着目した作品を発表し続けている双子の姉妹、髙田安規子と政子が『不思議の国のアリス』と『鏡の国のアリス』をテーマに、ギャラリーの空間をアリスの世界に見立てたインスタレーションを展開している。
 髙田姉妹は、トランプに刺繍をして絨毯に見立てたり、ゴム製の吸盤に切り込み模様を入れてカットグラスのようにしたり、アクセサリーを調度品に見立てたドールハウスのような部屋を作るなど、日常にあるありふれたものに超絶ともいえる技で手を加えてスケールを変容させることで、人々の価値や尺度を揺るがす作品を制作してきた。
 『不思議の国のアリス』と『鏡の国のアリス』は、アリスが身体の大きさを変化させたり、時間の流れが逆行したりする場面があるなど、髙田姉妹が以前から興味を持っていたテーマ。今回は、細長い4階建てのMA2ギャラリーの「それぞれの特徴を持つ地層のような4つの階層と、中央が不確かで螺旋状に捻じれた建築の造りを、『不思議の国のアリス』と『鏡の国のアリス』の時空が歪むような表現を重ね合わせ、展示を構成」した。
 入り口のドアを開けると高さが1.8㎝から125㎝までの75脚の椅子が、背もたれの高さ順にグラデーションになるように並べられた作品に迎えられる。タイトルは不釣り合いを意味する「OUT OF SCALE」。アリスが身体の大きさの変化で自己を喪失したり、周囲に適応したりする中でやがて自分を取り戻すストーリーをふまえ、「どのような状況下で何が基準となり何を選択するかはそれぞれ異なるという多様性について表現した」。

「OUT OF SCALE」
「OUT OF SCALE」

 椅子の隣には糸巻きが置かれ、その糸は壁をつたって4階まで続いている。「展示の始まりの1階から終わりの4階までをつなげて、建築の空間全体を一連の物語のように構成した」という。
 「うさぎの穴に落ちる」というタイトルの同展では、時空が反転するように階段をのぼることで穴に落ちていくような感覚を味わう趣向なのか、糸の先にはどんな世界が待ち受けているのかを期待させる。

糸巻きの糸は4階まで続いている
糸巻きの糸は4階まで続いている

 2階に上ると、右側には、『不思議の国のアリス』で、アリスがウサギを追いかけて落下した穴の底のホールにあるカーテンがかかった小さなドアや、花壇と泉のある庭園、庭師がペンキで赤く塗り替える白いバラ、女王や庭師を表すトランプ、ティーパーティの時刻である6時を示す時計などをモチーフにした作品が、左側には『不思議の国のアリス』でアリスが穴に落ちて行く途中で見たのではないかと思われるような本棚や本、お茶会で使われるティーカップ、『鏡の国のアリス』でストーリーの基盤にもなっているチェス盤などが組み込まれて積み上げられた作品がある。このインスタレーション「CURIOUSER AND CURIOUSER!」は「アリスの物語における時空の歪み」を表しているという。
 右側の作品は、物語の中で横暴な振る舞いをするクイーンの愚かな行為や視野の狭さ、実際はトランプカード大にしか満たない存在についてを「トランプのカードや小さな植木のスケール感で露呈させている」。

「CURIOUSER AND CURIOUSER!」。左側の箱では刺繍でバラを赤くしている
「CURIOUSER AND CURIOUSER!」。左側の箱では刺繍でバラを赤くしている

 左側の作品は、「チェス盤が重力に逆らうかのように様々な方向を向いていたり」、「積み上がる棚の中の家具類が回転しながら上へと向かって、スケールが徐々に小さくなっていったり」するように構成されている。また、延々と繰り返されるティーパーティの場面をティーカップを積み重ねることで表して時間の積層を見せるなど、「モノのスケールや時間と空間の法則から逸脱するような表現」が随所に組み込まれている。アリスが穴を落ちて行く感覚や身体が伸縮する感覚、鏡の世界に迷い込んだ感覚が体感できる。

「CURIOUSER AND CURIOUSER!」。チェス盤が横や下向きに置かれ、机や本も高い位置のものほど小さくなっている
「CURIOUSER AND CURIOUSER!」。チェス盤が横や下向きに置かれ、机や本も高い位置のものほど小さくなっている

 3階に上ると大きな窓があり、屋外の空間が広がって見える。その窓と連なるように鏡が約70枚壁に掛けられている。『鏡の国のアリス』で、アリスが鏡の中へ入ることで物語が展開していくことから、「鏡の枠の中にも別世界とのつながりを感じられるように窓の近くに設置した」という。タイトルは「RELATION OF THE PARTS TO THE WHOLE」。大小さまざまな鏡の前に立つと、顔や体や背景が分断されて映り込む。「見慣れたはずの自己の姿や日常風景が部分として映し出されると、全体像があやふやになり、これまでの認識とは異なって見えてくる。この体験は鏡の国でのアリスの反応と類似しているのかもしれない」と考えた。
 3階にはほかに、アリスの身体が伸縮するきっかけを作る、きのこやケーキや扇子を題材にした平面作品も展示されている。

「設置してみると、壁面に角度がついていて、予想以上に鏡への映り込みが複雑になった」という「RELATION OF THE PARTS TO THE WHOLE」
「設置してみると、壁面に角度がついていて、予想以上に鏡への映り込みが複雑になった」という「RELATION OF THE PARTS TO THE WHOLE」

 4階には壁面にギャラリーの書棚があることから、それに合わせるようにキャビネットの中や周辺に本を積み重ねた作品「STRATA/地層」が展示されている。アリスが穴に落ち、地層を通り抜けて異世界へと辿り着くのをふまえ「時間を示す作品」として制作した。
 地層は、「過去の生物や土地の状況を後世に伝える歴史書」だととらえた。キャビネットの棚は4つに仕切られていて、下段から古い順に原生代、古生代、中生代、新生代の4つの地質時代で区分され、それぞれの時代の地層を模して化石や鉱石がはめ込まれた本が積み重ねられ、時間の積層を表している。アンモナイトや恐竜の歯など、それぞれの時代の化石が棚に並んでいるほかに、新生代の中で人間が存在した時代の地質には、消滅するには時間がかかるプラスチックや放射能汚染物、石炭の灰などが組み込まれることから、石炭が棚の周囲に置かれている。
 ルイス・キャロルにより『不思議の国のアリス』や『鏡の国のアリス』が執筆された1860年から70年頃はイギリスが産業革命に成功して繁栄を極めていた。二つの作品には当時の社会に対する風刺や批判が込められているともいわれている。その時代から破壊されてきた環境や、人間の進化などにも思いを巡らせて、今回の展覧会を「ルイス・キャロルの残したメッセージを紐解き、作品へと転化させる試みである」と位置付けている。

ギャラリーの書棚のあるスペースに展示された「STRATA/地層」
ギャラリーの書棚のあるスペースに展示された「STRATA/地層」

 4階の吹き抜けには、一階からつながる糸巻の糸で編んだハンモックが掛けられている。「アリスが物語の最後で夢から覚めることとかけ合わせ、展示の最後に眠りを想起させる作品を配置した」。上に載っている豆本は、不要になった本を解体し、挿絵を集めて、花や貝、建築など、1冊ずつテーマを持った本に再構成して作り直しているという。
 ウサギの穴を通り抜け、夢から覚めた時、身近なところから世界を見つめ直すきっかけが得られたような思いがする展覧会だ。

「A LITTLE BREAK」。ハンモックには豆本が乗っている
「A LITTLE BREAK」。ハンモックには豆本が乗っている

 髙田安規子と政子は1978年東京都生まれ。妹の安規子は2001年多摩美術大学美術学部彫刻学科卒業、姉の政子は同年東京造形大学美術学部比較造形学科卒業。2人共に2005年ロンドン大学スレード校美術学部修士課程修了。主なグループ展に「日常のあわい」(金沢21世紀美術館、2021年)、「センス・オブ・スケール」(横須賀美術館、2019年)、「装飾は流転する」(東京都庭園美術館、2017年)、「さいたまトリエンナーレ2016」など。
 
(文中敬称略)
 
執筆・写真撮影:西澤美子

参考資料:『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』ルイス・キャロル作、脇明子訳(岩波書店 1998年)

【会期・会場】
2022年5月21日(土)~6月25日(土) MA2Gallery(東京都・渋谷区)
※日・月・祝日休廊(火曜はメール事前アポイントメント制)
ギャラリーHP:http://www.ma2gallery.com/