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“オモシロイフク”大図鑑

開催中〜2024/06/22

文化学園服飾博物館

東京都・渋谷区

「どうぶつ百景 江戸東京博物館コレクションより」展

開催中〜2024/06/23

東京ステーションギャラリー

東京都・千代田区

令和6年度初夏展「殿さまのスケッチブック」

開催中〜2024/06/23

永青文庫

東京都・文京区

シンフォニー・オブ・アート — イメージと素材の饗宴

開催中〜2024/06/23

群馬県立館林美術館

群馬県・館林市

驚異の細密表現展 ―江戸・明治の工芸から現代アートまで―

開催中〜2024/06/23

横須賀美術館

神奈川県・横須賀市

没後70年 戦争を越えて―写真家ロバート・キャパ、愛と共感の眼差し―

開催中〜2024/06/23

東京富士美術館

東京都・八王子市

カール・アンドレ 彫刻と詩、その間

開催中〜2024/06/30

DIC川村記念美術館

千葉県・佐倉市

特別企画展「熊谷守一美術館39周年展 守一、旅を描く。」

開催中〜2024/06/30

豊島区立 熊谷守一美術館

東京都・豊島区

創刊50周年記念 花とゆめ展

開催中〜2024/06/30

東京シティビュー(六本木ヒルズ森タワー52 階)

東京都・港区

KAGAYA 星空の世界 天空の贈り物

開催中〜2024/07/01

そごう美術館

神奈川県・横浜市

三島喜美代―未来への記憶

開催中〜2024/07/07

練馬区立美術館

東京都・練馬区

石岡瑛子 I デザイン

開催中〜2024/07/07

茨城県近代美術館

茨城県・水戸市

Beautiful Japan 吉田初三郎の世界

開催中〜2024/07/07

府中市美術館

東京都・府中市

ふたり 矢部太郎展

開催中〜2024/07/07

PLAY! MUSEUM

東京都・立川市

MOTコレクション 歩く、赴く、移動する 1923→2020/Eye to Eye-見ること

開催中〜2024/07/07

東京都現代美術館

東京都・江東区

ホー・ツーニェン エージェントのA 

開催中〜2024/07/07

東京都現代美術館

東京都・江東区

Tokyo Contemporary Art Award 2022-2024 受賞記念展

開催中〜2024/07/07

東京都現代美術館

東京都・江東区

【特別展】犬派?猫派? ―俵屋宗達、竹内栖鳳、藤田嗣治から山口晃まで―

開催中〜2024/07/07

山種美術館

東京都・渋谷区

TOPコレクション 時間旅行 ― 千二百箇月の過去とかんずる方角から

開催中〜2024/07/07

東京都写真美術館

東京都・目黒区

企画展 歌と物語の絵 ―雅やかなやまと絵の世界

開催中〜2024/07/21

泉屋博古館東京

東京都・港区

藤田嗣治 エコール・ド・パリの時代 1918~1928年

開催中〜2024/07/23

軽井沢安東美術館

長野県・軽井沢町

「石川九楊大全」

開催中〜2024/07/28

上野の森美術館

東京都・台東区

国芳の団扇絵 ―猫と歌舞伎とチャキチャキ娘

開催中〜2024/07/28

太田記念美術館

東京都・渋谷区

企画展「未来のかけら 科学とデザインの実験室」

開催中〜2024/08/12

21_21 DESIGN SIGHT ギャラリー1&2

東京都・港区

生誕140年 YUMEJI展 大正浪漫と新しい世界

開催中〜2024/08/25

東京都庭園美術館

東京都・港区

特別展「北斎 グレートウェーブ・インパクト —神奈川沖浪 裏の誕生と軌跡—」

開催中〜2024/08/25

すみだ北斎美術館

東京都・墨田区

TRIO パリ・東京・大阪 モダンアート・コレクション

開催中〜2024/08/25

東京国立近代美術館

東京都・千代田区

内藤コレクション 写本 — いとも優雅なる中世の小宇宙

開催中〜2024/08/25

国立西洋美術館

東京都・台東区

企画展「旅するピーナッツ。」

開催中〜2024/09/01

スヌーピーミュージアム

東京都・町田市

シアスター・ゲイツ展:アフロ民藝

開催中〜2024/09/01

森美術館

東京都・港区

AOMORI GOKAN アートフェス 2024 「つらなりのはらっぱ」

開催中〜2024/09/01

アートフェス(芸術祭)( 青森県立美術館、青森公立大学 国際芸術センター青森、弘前れんが倉庫美術館、八戸市美術館、十和田市現代美術館)

青森県

伊藤潤二展 誘惑

開催中〜2024/09/01

世田谷文学館

東京都・世田谷区

音を観る ―変化観音と観音変化身―

開催中〜2024/09/01

半蔵門ミュージアム

東京都・千代田区

アートキャンプ白州 2024 Camp and Art in Each Heart!

2024/07/06〜2024/09/01

山梨県立美術館

山梨県・甲府市

エドワード・ゴーリーを巡る旅

2024/07/06〜2024/09/01

横須賀美術館

神奈川県・横須賀市

カルダー:そよぐ、感じる、日本

開催中〜2024/09/06

麻布台ヒルズ ギャラリー

東京都・港区

日本のまんなかでアートをさけんでみる

開催中〜2024/09/08

原美術館ARC

群馬県・渋川市

特別展「神護寺―空海と真言密教のはじまり」

2024/07/17〜2024/09/08

東京国立博物館

東京都・台東区

開館20周年記念 山梨放送開局70周年 平山郁夫 -仏教伝来と旅の軌跡

開催中〜2024/09/09

平山郁夫シルクロード美術館

山梨県・北杜市

フィロス・コレクション ロートレック展 時をつかむ線

2024/06/22〜2024/09/23

SOMPO美術館

東京都・新宿区

空想旅行案内人 ジャン=ミッシェル・フォロン

2024/07/13〜2024/09/23

東京ステーションギャラリー

東京都・千代田区

吉田克朗展 ものに、風景に、世界に触れる

2024/07/13〜2024/09/23

埼玉県立近代美術館

埼玉県・さいたま市

印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵

2024/07/06〜2024/09/29

東京富士美術館

東京都・八王子市

梅津庸一 クリスタルパレス

開催中〜2024/10/06

国立国際美術館

大阪府・大阪市

大地に耳をすます 気配と手ざわり

2024/07/20〜2024/10/09

東京都美術館

東京都・台東区

レガシー ―美を受け継ぐ モディリアーニ、シャガール、ピカソ、フジタ

開催中〜2024/10/13

松岡美術館

東京都・港区

企画展「作家の視線― 過去と現在、そして…」

開催中〜2024/11/11

ホキ美術館

千葉県・千葉市

「のぞけプサイ亀を翼ある密軌を」(1962年)〈手前〉。「プサイの祭壇」(1961年)〈奥〉

Exhibitions

生誕100年 松澤宥

「オブジェを消せ」以前の初期絵画や立体、プサイの部屋の再現も

 日本におけるコンセプチュアルアート(概念芸術)の先駆者である松澤宥(ゆたか)(1922年~2006年)の生誕100年を記念した大回顧展が長野県立美術館で開かれている。
 松澤は1922年2月2日午前2時に生まれ、生後22日間眼を開かなかった。これが「2」を数霊的なオブセッションとする活動につながり、「眼に見えるものより見えないものを希求する生涯を決定づけた」(※1)という。同館は、毎週水曜が休館日なので通常ならば2月2日は休みとなるが、2が5つ含まれる2022年2月2日の松澤の誕生日に合わせてスタートするために、あえて開館したことなどからも、同展への期待が高まる。

昨年4月にリニューアルオープンした長野県立美術館のエントランスに掲げられた松澤宥の「消滅の幟」(複製)
昨年4月にリニューアルオープンした長野県立美術館のエントランスに掲げられた松澤宥の「消滅の幟」(複製)

 展示は全5章で構成。第1章は、長野県の下諏訪町の旧家に生まれ、長野県立諏訪中学(現・諏訪清陵高校)を卒業した松澤が、早稲田大学理工学部建築学科に進学した当時の設計課題の図面から始まる。同大卒業式後の謝恩会で「私は鉄とコンクリートの固さを信じない。魂の建築、無形の建築、見えない建築をしたい」と語った言葉を裏付けるかのように、卒業後は東京の建築事務所での2年間の勤務を経て、故郷の下諏訪に戻り、諏訪実業高校定時制の数学教師を務めながら、19歳頃に始めた詩作から絵画へと表現を模索し、変化させていく過程が紹介されている。日本語で書かれた詩は日本人にしかわからないので、言葉の壁を越えて内容を伝えたいという考えから、特定の言葉を使わず記号や点や線で詩を作った「シンボルポエム」や、美術文化協会展に出品した絵画の写真、同時期に描かれた絵画、アメリカのウィスコンシン州立大学とのフルブライト交換教授(研究テーマは「美の客観的科学的測定法について」)として2年間渡米した際のスケッチや資料なども展示している。

「シンボルポエム No.1」(1954年)〈右〉、「シンボルポエムNo.2」(1954年)〈左〉
「シンボルポエム No.1」(1954年)〈右〉、「シンボルポエムNo.2」(1954年)〈左〉

 第2章は1964年6月1日に夢で「オブジェを消せ」という啓示を受けてから言葉や行為による発表へと向かう過程が紹介されている。啓示以降はあまり見られなくなった初期絵画や立体作品が一堂に会する稀少な機会となっている。
 松澤は、米国留学後に下諏訪に戻り、数学教師を続けながら読売アンデパンダン展を中心に出品。1959年に描かれた「プサイの鳥」シリーズからは6点が展示されている。自らの思索を色で表現した。土俗的で素朴な形はパステルやかまどの炭、蝋などを用いて描かれていて、松澤が絵画材料の研究にも力を入れていたことがうかがえる。

「プサイの鳥」シリーズなど、絵画作品を多数展示。
「プサイの鳥」シリーズなど、絵画作品を多数展示。

 立体作品の発表も精力的に行われ、扉のある木箱に絵や印刷物の切り抜きを配した「プサイのオルガン」や格子のある木箱に詩や絵画や立体物を飾った「のぞけプサイ亀を翼ある密軌を」のほか、マンダラの図像学的構成を取り入れた「プサイの祭壇」などが出品されている。
 「プサイの祭壇」は1961年に東京国立近代美術館で開催された「現代美術の実験展」の出品作。壁に掛けられている9枚組の作品「プサイの意味-ハイゼンベルグの宇宙方程式によせて」が60年の第12回読売アンデパンダン展に出品され、翌年の第13回展に手前に配された「プサイ函YM」「プサイ函SM」「プサイの意味」と「プサイ函」と題されたチラシが出品されていて、それらをまとめて作品としている。

「のぞけプサイ亀を翼ある密軌を」(1962年)〈手前〉。「プサイの祭壇」(1961年)〈奥〉
「のぞけプサイ亀を翼ある密軌を」(1962年)〈手前〉。「プサイの祭壇」(1961年)〈奥〉

 こうした一連のオブジェの展示の後に、「プサイの死体遺体」が掲げられている。6月1日の啓示後、最初に発表された絵画や立体を廃した初めての文字作品で、松澤が生みだしたばかりの「非感覚絵画」とは何かを曼荼羅構造の9つの正方形の中に説明したチラシ。64年6月20日から7月3日まで東京都美術館で急きょ開催された「アンデパンダン‘64展」で1万枚配られたという。60年頃から頻繁に使われるようになった「プサイ(ψ)」は、ギリシャ文字の最後、オメガ(Ω)の一つ手前の文字で「心」を表す。現在が終末のひとつ手前であることも含めて用いている。

「プサイの死体遺体」(1964年)。本展の入口に置いてある作品リストの表紙として再現されている
「プサイの死体遺体」(1964年)。本展の入口に置いてある作品リストの表紙として再現されている

 第3章では、オブジェを廃した松澤が、1969年に長野県信濃美術館(現・長野県立美術館)で開催された「美術という幻想の終焉」展をきっかけに行動を共にした「ニルヴァーナ・グループ」などとの集団による表現活動の記録を写真や資料で紹介。サンパウロ・ビエンナーレで発表した「九想の室」の再現もある。ハガキの表に書かれたメッセージを読みとって、裏面の白色部分に観念の絵を描くハガキ絵画も展示している。

サンパウロ・ビエンナーレを再現した「九想の室」。床に白紙と「この白き紙を水と観ぜよ」などと書かれた紙が9組置かれ、壁にはニルヴァーナ・グループの活動写真が飾られている
サンパウロ・ビエンナーレを再現した「九想の室」。床に白紙と「この白き紙を水と観ぜよ」などと書かれた紙が9組置かれ、壁にはニルヴァーナ・グループの活動写真が飾られている

 第4章は、松澤が一貫して主張した「消滅」というテーマのもと、「人類よ消滅しよう行こう行こう(ギャティギャティ) 反文明委員会」と墨書きされた「消滅の幟」を用いたパフォーマンス映像や資料を中心に、言語や行為による発表を紹介している。88年の量子芸術宣言、最後のシリーズ「80年問題」までの流れをたどる。
 第5章は、松澤の自邸にあったアトリエで、美術評論家の瀧口修造が命名した「プサイの部屋」の一部が再現されている。筆者は、20年以上前に諏訪で松澤に取材し、プサイの部屋に案内してもらったことがある。2階の書庫の隅の小さな穴から梯子を下りるとたどり着く静まりかえった座敷で、蔵から持ち込んだという古い木箱や記号のようなものが描かれた絵画、新聞の切り抜きなどがあった。その際に感じた気配まで再現されているような印象を受けた。VRによる空間再現や写真展示などもある。
 松澤作品の多くは個人の手元にある。今回は2016年から同館を中心に行った調査に基づく展覧会であり、これまでの成果を時系列に並べて紹介し、さらなる研究を進めるきっかけとするのが目的。同展担当の木内真由美主査学芸員は、「これまでほとんど紹介されてこなかった初期作品を含めて、生涯を通した作品を一望することで、松澤の追求した芸術を再認識、再評価する機会となってほしい」と期待している。

「プサイの部屋」(再現)
「プサイの部屋」(再現)

長野・下諏訪で、松澤宥 生誕100年祭を開催

 生涯にわたり下諏訪を拠点にローカルかつグローバルに活動した松澤から学ぼうと、下諏訪町を中心とした10カ所で作品、資料展示が行われている。
 メーン会場の諏訪湖博物館・赤彦記念館では、諏訪湖に面したガラス張りのエントランスに、松澤の「消滅の幟」(複製)と、松澤の母校諏訪清陵高校(旧制諏訪中学)の美術部の幟が湖に見せるように掲げられている。同校では部活独自の幟を立てる伝統があり、松澤が幟を作品に用いるルーツを考えさせる。展示室内には松澤の学生時代からの絵画で自宅に保管されていた未発表作を含む21点を展観。過去最大規模の出品点数となっている。ほかに松澤が諏訪のバウハウスを目指して開校した東京・神田の美学校の諏訪分校関連資料などを加え、下諏訪ならではの切り口で、その活動をたどる。

諏訪湖博物館・赤彦記念館のエントランスから諏訪湖に向かって掲げられた松澤の「消滅の幟」と諏訪清陵高校美術部の幟
諏訪湖博物館・赤彦記念館のエントランスから諏訪湖に向かって掲げられた松澤の「消滅の幟」と諏訪清陵高校美術部の幟
旧制諏訪中学から早稲田大学時代に描かれたと推定される絵画
旧制諏訪中学から早稲田大学時代に描かれたと推定される絵画

 まちなか展覧会としては、1952年に描かれた自画像や54年のシンボルポエムを展示するEric‘s Kitchen、松澤の欧州訪問時の写真が壁を埋め尽くすCafé Tac、詩人や音楽家、地元の作家らと結成した「RATIの会」の資料やハガキ絵画、松澤関連書籍を紹介するマスヤゲストハウス、未発表作を含む絵画の小品をロビーに展示する旅館のぎん月などが参加。完全予約制だが、芸術家青木英侃(ひでなお)のアトリエも興味深い。かつては英侃の父親で松澤の諏訪中学時代からの親友であり、教員時代の同僚でもあった青木靖恭が使用していたプサイの部屋をほうふつとさせる空間に、松澤と靖恭との共作や資料が多数残されている。

松澤の等身大パネルと壁に貼られた欧州訪問時の写真(Café Tac)
松澤の等身大パネルと壁に貼られた欧州訪問時の写真(Café Tac)

(文中敬称略)

執筆・撮影:西澤美子

※1 「新美術新聞」1999年2月1日号(美術年鑑社)より

【会期・会場】
2022年2月2日(水)~3月21日(月・祝) 長野県立美術館(長野県・長野市)
美術館HP:https://nagano.art.museum/

※松澤宥 生誕100年祭 
2022年1月29日(土)~3月21日(月・祝) 諏訪湖博物館・赤彦記念館ほか
生誕100年記念サイト:https://matsuzawayutaka.jp/