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シン・ジャパニーズ・ペインティング 革新の日本画―横山大観、 杉山寧から現代の作家まで

開催中〜2023/12/03

ポーラ美術館

神奈川県・足柄下郡箱根町

生誕120年 棟方志功展 メイキング・オブ・ムナカタ

開催中〜2023/12/03

東京国立近代美術館

東京都・千代田区

特別展「岡本玉水 人形芸術にかけた生涯—御所人形から玉水人形へ」

開催中〜2023/12/03

さいたま市岩槻人形博物館

埼玉県・さいたま市

特別展「やまと絵 -受け継がれる王朝の美-」

開催中〜2023/12/03

東京国立博物館

東京都・台東区

特別展「岡本玉水 人形芸術にかけた生涯—御所人形から玉水人形へ」

開催中〜2023/12/03

さいたま市岩槻人形博物館

埼玉県・さいたま市

高橋龍太郎コレクション連携企画 「川端龍子プラスワン 濱田樹里・谷保玲奈――色彩は踊り、共鳴する」(前期:濱田樹里)

開催中〜2023/12/03

大田区立龍子記念館

東京都・大田区

日中平和友好条約45周年記念「世界遺産 大シルクロード展」

開催中〜2023/12/10

東京富士美術館

東京都・八王子市

さいたま国際芸術祭2023

開催中〜2023/12/10

芸術祭(さいたま市・旧市民会館おおみや(メイン会場)ほか)

埼玉県・さいたま市

永遠の都ローマ展

開催中〜2023/12/10

東京都美術館

東京都・台東区

装飾の庭 朝香宮邸のアール・デコと庭園芸術

開催中〜2023/12/10

東京都庭園美術館

東京都・港区

イヴ・サンローラン展 時を超えるスタイル

開催中〜2023/12/11

国立新美術館

東京都・港区

コスチュームジュエリー美の変革者たち シャネル、スキャパレッリ、ディオール 小瀧千佐子コレクションより

開催中〜2023/12/17

パナソニック汐留美術館

東京都・港区

布の芸術祭『FUJI TEXTILE WEEK 2023(フジテキスタイルウィーク)』

開催中〜2023/12/17

芸術祭(山梨県富士吉田市)

山梨県・富士吉田市

特別企画展 日本画の棲み家

開催中〜2023/12/17

泉屋博古館東京

東京都・港区

開館1周年記念特別展 二つの頂 —宋磁と清朝官窯—

開催中〜2023/12/17

静嘉堂@丸の内(静嘉堂文庫美術館)

東京都・千代田区

山梨国際芸術祭 八ヶ岳アート・エコロジー 2023

開催中〜2023/12/20

芸術祭(清春芸術村を中心とする山梨県北杜市の各所)

山梨県・北杜市

落合陽一展「ヌルの共鳴:計算機自然における空性の相互接続」

開催中〜2023/12/20

清春芸術村 安藤忠雄 光の美術館

山梨県・北杜市

国吉康雄展 ~安眠を妨げる夢~ 福武コレクション・岡山県立美術館のコレクションを中心に

開催中〜2023/12/24

茨城県近代美術館

茨城県・水戸市

ヨシタケシンスケ展かもしれない

開催中〜2023/12/24

宇都宮美術館

栃木県・宇都宮市

皇居三の丸尚蔵館 開館記念展「皇室のみやび-受け継ぐ美-」第 1 期:「三の丸尚蔵館の国宝」

開催中〜2023/12/24

皇居三の丸尚蔵館

東京都・千代田区

「となりの国の絵本 躍動する韓国イラストレーションの世界」展

開催中〜2023/12/24

横須賀美術館

神奈川県・横須賀市

石川真生 ─私に何ができるか─

開催中〜2023/12/24

東京オペラシティ アートギャラリー

東京都・新宿区

大巻伸嗣 Interface of Being 真空のゆらぎ

開催中〜2023/12/25

国立新美術館

東京都・港区

「今こそ、ルーシー!」LUCY IS HERE

開催中〜2024/01/08

スヌーピーミュージアム

東京都・町田市

「青空は、太陽の反対側にある:原美術館/原六郎コレクション」第2期(秋冬季)

開催中〜2024/01/08

原美術館ARC

群馬県・渋川市

上野アーティストプロジェクト2023「いのちをうつす ―菌類、植物、動物、人間」

開催中〜2024/01/08

東京都美術館

東京都・台東区

「鹿児島睦 まいにち」展

開催中〜2024/01/08

PLAY! MUSEUM

東京都・立川市

111年目の中原淳一展

開催中〜2024/01/10

そごう美術館

神奈川県・横浜市

ICCアニュアル 2023 ものごとのかたち

開催中〜2024/01/14

NTTインターコミュニケーション・センター [ICC]

東京都・新宿区

企画展「ある従軍カメラマンの追憶 義烈空挺隊員と家族の片影」

開催中〜2024/01/14

平和祈念展示資料館

東京都・新宿区

佐野史郎写真展 瞬間と一日

開催中〜2024/01/14

彫刻の森美術館

神奈川県・足柄下郡箱根町

ゴッホと静物画―伝統と革新へ

開催中〜2024/01/21

SOMPO美術館

東京都・新宿区

アーツ・アンド・クラフツとデザイン ウィリアム・モリスからフランク・ロイド・ライトまで

開催中〜2024/01/21

山梨県立美術館

山梨県・甲府市

見るまえに跳べ 日本の新進作家 vol. 20

開催中〜2024/01/21

東京都写真美術館

東京都・目黒区

国宝 雪松図と能面×能の意匠特集展示 新寄贈能面

2023/12/08〜2024/01/27

三井記念美術館

東京都・中央区

倉俣史朗のデザイン―記憶のなかの小宇宙

開催中〜2024/01/28

世田谷美術館

東京都・世田谷区

高橋龍太郎コレクション連携企画 「川端龍子プラスワン 濱田樹里・谷保玲奈――色彩は踊り、共鳴する」(後期:谷保玲奈)

2023/12/09〜2024/01/28

大田区立龍子記念館

東京都・大田区

江口寿史展 ノット・コンプリーテッド

開催中〜2024/02/04

世田谷文学館

東京都・世田谷区

【特別展】癒やしの日本美術 ―ほのぼの若冲・なごみの土牛―

2023/12/02〜2024/02/04

山種美術館

東京都・渋谷区

キース・ヘリング展 アートをストリートへ

2023/12/09〜2024/02/05

森アーツセンターギャラリー(六本木ヒルズ森タワー52階)

東京都・港区

アメイジング・チャイナ 深淵なる中国美術の世界

開催中〜2024/02/11

松岡美術館

東京都・港区

みちのく いとしい仏たち

2023/12/02〜2024/02/12

東京ステーションギャラリー

東京都・千代田区

魔除け -見えない敵を服でブロック!-

2023/12/09〜2024/02/14

文化学園服飾博物館

東京都・渋谷区

1周年記念特別企画「ようこそ藤田嗣治のお家へ」

開催中〜2024/02/20

軽井沢安東美術館

長野県・軽井沢町

生誕120年 古賀忠雄展 塑造(像)の楽しみ

開催中〜2024/02/25

練馬区立美術館

東京都・練馬区

白井美穂 森の空き地

2023/12/16〜2024/02/25

府中市美術館

東京都・府中市

特別展「北斎サムライ画伝」

2023/12/14〜2024/02/25

すみだ北斎美術館

東京都・墨田区

印刷/版画/グラフィックデザインの断層 1957-1979

2023/12/19〜2024/03/03

国立工芸館

石川県・金沢市

MOTアニュアル2023 シナジー、創造と生成のあいだ

2023/12/02〜2024/03/03

東京都現代美術館

東京都・江東区

皇居三の丸尚蔵館 開館記念展「皇室のみやび-受け継ぐ美-」第 2 期:「近代皇室を彩る技と美」

2024/01/04〜2024/03/03

皇居三の丸尚蔵館

東京都・千代田区

坂本龍一トリビュート展 音楽/アート/メディア

2023/12/16〜2024/03/10

NTTインターコミュニケーション・センター [ICC] ギャラリーA

東京都・新宿区

豊嶋康子 発生法──天地左右の裏表

2023/12/09〜2024/03/10

東京都現代美術館

東京都・江東区

21_21 DESIGN SIGHT 企画展「もじ イメージ Graphic 展」

開催中〜2024/03/10

21_21 DESIGN SIGHTギャラリー1&2

東京都・港区

MOTコレクション 歩く、赴く、移動する 1923→2020/特集展示 横尾忠則―水のように/生誕100年 サム・フランシス

2023/12/02〜2024/03/10

東京都現代美術館

東京都・江東区

特別展「本阿弥光悦の大宇宙」

2024/01/16〜2024/03/10

東京国立博物館

東京都・台東区

和田誠 映画の仕事

2023/12/12〜2024/03/24

国立映画アーカイブ

東京都・中央区

森美術館開館20周年記念展 私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために

開催中〜2024/03/31

森美術館

東京都・港区

tupera tupera + 遠藤幹子 しつもんパーク in 彫刻の森美術館

開催中〜2024/03/31

彫刻の森美術館

神奈川県・足柄下郡箱根町

岡田健太郎―重なる景体

2023/12/05〜2024/04/07

平塚市美術館

神奈川県・平塚市

魔女まじょ展

開催中〜2024/04/08

魔法の文学館(江戸川区角野栄子児童文学館)2階ギャラリー

東京都・江戸川区

初公開の仏教美術 ―如意輪観音菩薩像・二童子像をむかえて―

開催中〜2024/04/14

半蔵門ミュージアム

東京都・千代田区

第5回「私の代表作」展

開催中〜2024/05/12

ホキ美術館

千葉県・千葉市

金屏風の祭典 ——黄金の世界へようこそ

2023/12/17〜2024/06/02

岡田美術館

神奈川県・箱根町

Exhibitions

特別展「台北 國立故宮博物院―神品至宝―」

門外不出の中国皇帝コレクション
東京と九州で驚きの展覧会

   2012年1月、中国美術の最高傑作である張択端 筆≪清明上河図巻≫(北宋、12世紀。 北京故宮博物院蔵)をはじめとする中国の至宝が日本で公開され、その幸福な世界は我々を圧倒した。東京国立博物館にての「特別展 北京故宮博物院200選」でのことだった。
   さて、2014年夏と秋は、もう一つの故宮の、さらに驚くべき展覧会が、東京国立博物館と九州国立博物館の二会場にて観られる。長年待ち望まれていた台北 國立故宮博物院の展覧会だ。アジアで初めてのもの。東京会場で約180件、九州会場で約110件、二会場で合計約230点の文物が出品される。
(【注意】期間限定公開の作品があります。会場によって出品が一部異なります。)
■台北 國立故宮博物院とは/数奇な運命をたどって台湾へ
   大英博物館、ルーヴル美術館、メトロポリタン美術館とともに世界四大美術館の一つともいわれる台北 國立故宮博物院だが、他の3館と異なるのはコレクションが中国の文物に限ること。歴代皇帝が威信をかけて蒐集した中国文明の粋を約69万点所蔵する。
   台北 國立故宮博物院は台北郊外に1965年に建設されたが、その経緯は激動の歴史に翻弄されたものだった。収蔵文物は戦禍を逃れて中国国内を移動する長い旅を経て、海を渡って台湾にやってきた。現在、故宮博物院の名称をもつ博物館が北京と台北とに二つ存在するが、もとは一つの博物館だった。最初の故宮博物院は、清朝最後の皇帝宣統帝(溥儀)(在位1908~12)が去った後の北京の紫禁城に1925年に誕生。しかし1933年、日中関係の悪化で華北情勢の緊迫のなか、その文物 約2万箱を北京から疎開させて一旦、上海を経て南京に移す。さらに1937年には日中戦争全面化により、四川省など西方の内地に移送。終戦後の1947年に南京に戻るが、国民党と共産党の内戦(国共内戦)が勃発。文物の一部を1949年までに台湾に移し、そして1965年に台北 國立故宮博物院が開館した。なお、北京の故宮博物院は、共産党の1949年の中華人民共和国成立宣言の際、同国に引き継がれた。
■≪翠玉白菜≫と≪肉形石≫/初めての国外展示
   本展では、台北 國立故宮博物院で最も人気のある門外不出の≪翠玉白菜(すいぎょくはくさい)≫と≪肉形石(にくがたいし)≫が出品される。玉(ぎょく)の工芸品である玉器の至宝だ。出品不可能と思われたが、展覧会関係者が何度も交渉を重ね、2週間限定での日本公開が実現した。
   ≪翠玉白菜≫(清時代・18~19世紀)の高さは20cm足らず。硬玉である翡翠を彫刻したものだ。輝く緑と白の2色の翡翠の塊。内側には夾雑物を含みやや黄ばんだ色合いをもつ。この天然の色と材質が十二分に活かされている。そのアイデアと見事な出来栄えに感服させられた。たっぷりと重量感のある白菜は正面性が重視されている。上部にはキリギリスとイナゴがいる。中国では白菜は清らかさを、キリギリスとイナゴは多産を意味し、全体で吉祥を象徴するようだ。本品は、清朝11代皇帝の光緒帝(在位1875~1908)の側室の瑾妃(きんぴ)の嫁入り道具といわれる。なお、光緒帝は西太后(1835~1908)の甥である。
   一方の≪肉形石≫(清時代・18~19世紀)は東坡肉(トンポーロウ)、つまり豚の角煮を模したもの。石材が思いもかけない身近な、しかも軟らかな料理に変身。染色が可能な瑪瑙の表面を細かく彫り、着色も加えた。発想が楽しい。面白いことにトンポーロウを発明したのは、北宋の大文人である蘇軾(そしょく)(蘇東坡)(1036~1101)である。彼は三国志の登場人物の人生と自然の悠久を詠った「赤壁賦(せきへきのふ)」の作者としても有名だ。蘇軾の手になる中国書道史上の傑作≪行書黄州寒食詩巻≫(北宋時代・11~12世紀)も本展に出品(【注意】東京会場のみ。8/5~9/15)されている。
   ところで、「玉」とは何か。それは、「石の美なるもの」の総称で、中国では太古の昔から、その光沢と質感の神秘性と精神性を珍重してきた。玉器は青銅器と並んで中国文明を代表する工芸品。玉は、従来は潤いのある光沢をもつ軟玉を指したが、18世紀の清の乾隆帝の時代以降は華やかに輝く翡翠などの硬玉が人気を博していった。
(【注意】≪翠玉白菜≫と≪肉形石≫は期間限定展示。詳細は文末をご覧ください。)
■中国皇帝のコレクション:圧倒的な質の高さ/楽しい文物も多い
   本展の特徴は第一に、圧倒的な質の高さだ。神品至宝が勢ぞろいする。台北 國立故宮博物院の収蔵品は、北宋、南宋、元、明、清に至る中国歴代の皇帝コレクションを経たもので、約9割は清朝の旧蔵品だ。その内容は、古代から清朝までの青銅器、玉器、書画、陶磁、金工、漆工、染織、文房具、古典籍など広い分野にわたる。皇帝たちは高い美意識をもち、自身の権力の正統性を証明するために中国文化の最高傑作を蒐集し、芸術・学術を奨励した。
   徽宗と乾隆帝 なかでも故宮のコレクションに深く関わるのが、北宋第8代皇帝の徽宗(きそう)(在位1100~25)と、清朝第6代皇帝の乾隆帝(けんりゅうてい)(在位1735~96)だ。徽宗皇帝は自ら書画の名品を残すとともに、宮廷内に工房を造営して指導し、優れた蒐集を行った。この時代には汝窯(じょよう)で焼かれた青磁器が登場し、文人の書風や山水画が完成。また、徽宗コレクションに憧れた乾隆帝は、現在の故宮コレクションの大部分を精力的に蒐集した。彼は名君として第4代康熙帝、第5代雍正帝と並び称された。乾隆帝の時代に清朝は最大の版図を広げ、最盛をきわめ、また、学者を動員して欽定書や蒐集した書画の書籍の編纂作業なども行い、学術・文化も隆盛した。
   皇帝のコレクションには、その嗜好も強く反映されている。本展では、高貴で典雅な香り漂う文物や、堂々とした威容の名品が立ち並ぶが、一方で人間味あふれるもの楽しいもの、皆が笑顔になるような愛らしい作品も多く観られる。白菜や豚の角煮の玉器のような身近な主題の文物は先述したとおりだが、ツートンカラーの玉を彫った愛敬ある≪人と熊≫(清時代・18~19世紀)も登場する。また、覗き窓を見ると金魚が回転する≪藍地描金粉彩游魚文回転瓶≫(景徳鎮窯、清時代・乾隆年間(1736-1795))や皇帝の玩具箱(おもちゃばこ)と呼ばれる≪紫檀多宝格≫(清時代・乾隆年間(1736-1795))などもあり、バラエティに富む作品群で、肩肘張らずに楽しめる。
■明快な構成で中国美術をたどる
   本展の第二の特徴は、明快な構成によって、会場を廻るうちに自然に中国美術の流れをたどることができ、そして各時代の皇帝たちの美意識がつかめることだ。
   本展の構成は次の10つの章から成る。大きくとらえると、四つに分類される。
1 中国皇帝コレクションの淵源―礼のはじまり
7 帝王と祭祀―古代の玉器と青銅器

   本展の初めを飾るのは、味わい深い書体の銘文をもつことで有名な青銅器の≪散氏盤(さんしばん)≫(西周時代・前9~前8世紀)だ。ここでは、皇帝コレクションの端緒となった古代中国の文物を紹介する。古代では統治者が行った神への祭祀に青銅器や玉器などが使われたのだが、のちの皇帝たちにとって、それらを所有することが自らの権力の正統性を表すこととされた。第7章は、20世紀に考古学が盛んになって1930年代に出土し、故宮博物院に収蔵された古代の文物が展示される。
2 徽宗コレクション―東洋のルネサンス
3 北宋士大夫の書―形を超えた魅力
4 南宋宮廷文化のかがやき―永遠の古典
5 元代文人の書画―理想の文人

   これらの章では、徽宗皇帝の優れたコレクションおよび宋、元時代の書画を中心に紹介する。士大夫の精神が重視される時代の文物だ。士大夫(したいふ)とは、科挙に受かるために勉強する者や科挙に合格した知識官僚であるが、宋の時代に入ると彼らが学問や芸術を担うようになる。徽宗皇帝コレクションでは、例えば、時代の至高の青磁とされる≪青磁輪花碗≫(汝窯、北宋時代・11~12世紀)が出品される。宮廷のためにつくられたとされる数少ない汝窯の器である。軽やかで深遠な趣だ。雨あがりの雲間から覗く空の色、といわれるその淡い空色のなんという美しさ。また、金の時代の書画《赤壁図巻》(武玄直 筆、金時代・12世紀)(【注意】東京会場のみ。8/5 ~9/15)は、先述の蘇軾が著した「赤壁賦」を絵画化したもの。広大な風景と小船に乗る蘇軾らを、その心情までも描き切ったといわれる山水画だ。
6 中国工芸の精華―天と人との競合
   ここでは、宋、元、明、清の時代の漆工、刺繍などの工芸品を紹介。皇帝(天)と民(人)が互いに競い合って中国工芸の輝かしい成果を生んだ。時代ごとの特徴も観られる。たとえば明の時代になると商品経済が発展し、鄭和(1371~1434)の大航海による中東文化の流入、官営の工房が造られるなど、芸術も新たな展開をみせる。≪青花龍文大瓶≫(景徳鎮窯、明時代・15世紀)はたっぷりした胴をもつ天球瓶。美しい白い地に、イスラムからもたらされた青い顔料によって龍が大きく躍動的に描かれ、時代の息吹が感じられる。超絶技巧の作品も数多い。彫彩漆≪双龍彫彩漆長方盆≫(明時代・万暦17年(1589))(【注意】東京会場のみ展示)にも驚嘆させられる。
8 清朝皇帝の素顔―知られざる日常
9 乾隆帝コレクション―中国伝統文化の再編
10 清朝宮廷工房の名品―多文化の交流

   これらの章では、清時代の書画や玉器、陶磁、書籍、および乾隆帝コレクションなどを紹介。例えば、乾隆帝が編纂を命じた≪四庫全書≫(清時代・18世紀)は中国で刊行された書籍すべてを集めた画期的な一大叢書だ。また、≪「古稀天子之宝」「八徴耄念之宝」玉璽≫(清時代・乾隆45年・55年(1780・1790))は、乾隆帝が70歳および80歳の時につくり、実際に使用した玉印である。乾隆帝コレクションのうち、古代の文物も観られる。新石器時代(山東龍山文化)の≪鷹文玉圭(ようもんぎょくけい)≫(前2500~前1900)という、鷹や渦巻く神の文様を彫った尺状の玉器だが、乾隆帝はそれに天地逆に詩を刻んだ。彼の古代への憧れと継承の意志を示すものとされる。満州族によって設立された清王朝では、乾隆帝ら皇帝たちは漢民族の伝統文化を熱心に学び、その再構築を推し進めていった。
■日本文化の淵源を覗く
   特別展「台北 國立故宮博物院―神品至宝―」は、日本に居ながらにして、悠久の歴史のなかで生み出された中国美術の最高峰を堪能することができる。そして、それは中国に憧れ、多くを学んで取り入れてきた日本文化の淵源を覗くことである。
   めくるめく魅力に満ちた本展を充分に楽しんでください。お見逃しのないように。

【参考文献】
1)東京国立博物館・九州国立博物館・NHK・NHKプロモーション・読売新聞社・産経新聞社・フジテレビジョン・朝日新聞社・毎日新聞社 編集『特別展 台北 國立故宮博物院 神品至宝』図録、NHK・NHKプロモーション・読売新聞社・産経新聞社・フジテレビジョン・朝日新聞社・毎日新聞社 発行、2014年
2)板倉聖哲・伊藤郁太郎『台北 國立故宮博物院を極める』、新潮社、2009年
3)野嶋剛『ふたつの故宮博物院』、新潮社、2011年

執筆:HOSOKAWA Fonte Idumi 
(2014年6月)

2014_06_23_001
≪翠玉白菜≫
清時代・18~19世紀。
(展示期間:6月24日(火)~7月7日(月)/東京のみ)。
台北 國立故宮博物院蔵
2014_06_23_002
≪青磁輪花碗≫
汝窯 北宋時代・11~12世紀。
台北 國立故宮博物院蔵
2014_06_23_003
≪紫檀多宝格≫
清時代・乾隆年間(1736-1795)。
台北 國立故宮博物院蔵

【会期・会場】
[東京会場] 

2014年6月24日~9月15日 東京国立博物館 平成館特別展示室
本館特別5室(「翠玉白菜」展示期間のみ)
「翠玉白菜」の展示期間6月24日(火)~7月7日(月)は無休、毎日20:00まで特別開館。
土・日・祝日は18:00まで
休館日:7/14,7/22,7/28,8/4,9/1,9/8
電話:03-5777-8600(ハローダイヤル)
[九州会場] 
2014年10月7日~11月30日 九州国立博物館
「肉形石」の展示期間10月7日(火)~10月20日(火)は無休。
休館日:10/27,11/4,11/10,11/17
電話:050-5542-8600(ハローダイヤル:8~22時)
【展覧会特設サイト】http://www.taipei2014.jp

※本文・図版とも無断引用を禁じます。

2014年6月24日