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須藤玲子:NUNOの布づくり

開催中〜2024/05/06

水戸芸術館現代美術ギャラリー、広場

茨城県・水戸市

春の江戸絵画まつり ほとけの国の美術

開催中〜2024/05/06

府中市美術館

東京都・府中市

【特別展】花・flower・華 2024 ―奥村土牛の桜・福田平八郎の牡丹・梅原龍三郎のばら―

開催中〜2024/05/06

山種美術館

東京都・渋谷区

古代メキシコ -マヤ、アステカ、テオティワカン

開催中〜2024/05/06

国立国際美術館

大阪府・大阪市

小金沢健人×佐野繁次郎ドローイング/シネマ

開催中〜2024/05/06

神奈川県立近代美術館 鎌倉別館

神奈川県・鎌倉市

第5回「私の代表作」展

開催中〜2024/05/12

ホキ美術館

千葉県・千葉市

ライトアップ木島櫻谷 ― 四季連作大屏風と沁みる『生写し』

開催中〜2024/05/12

泉屋博古館東京

東京都・港区

イヴ・ネッツハマー ささめく葉は空気の言問い

開催中〜2024/05/12

宇都宮美術館

栃木県・宇都宮市

皇室のみやび―受け継ぐ美― 第3期「近世の御所を飾った品々」

開催中〜2024/05/12

皇居三の丸尚蔵館

東京都・千代田区

開館40周年記念 旧朝香宮邸を読み解く A to Z

開催中〜2024/05/12

東京都庭園美術館

東京都・港区

ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか? ——国立西洋美術館65年目の自問|現代美術家たちへの問いかけ

開催中〜2024/05/12

国立西洋美術館

東京都・台東区

国宝・燕子花図屏風 デザインの日本美術

開催中〜2024/05/12

根津美術館

東京都・港区

春陽会誕生100年 それぞれの闘い 岸田劉生、中川一政から岡鹿之助へ

開催中〜2024/05/12

長野県立美術館

長野県・長野市

モダン・タイムス・イン・パリ 1925 ― 機械時代のアートとデザイン

開催中〜2024/05/19

ポーラ美術館

神奈川県・足柄下郡箱根町

版画の青春 小野忠重と版画運動 ―激動の1930-40年代を版画に刻んだ若者たち―

開催中〜2024/05/19

町田市立国際版画美術館

東京都・町田市

HELLO! コレクション ZOZO×千葉県立美術館

開催中〜2024/05/19

千葉県立美術館

千葉県・千葉市

子の日図屏風と宮廷文化

開催中〜2024/05/19

遠山記念館

埼玉県・比企郡川島町

企画展《歌舞音曲鑑 北斎と楽しむ江戸の芸能》

開催中〜2024/05/26

すみだ北斎美術館

東京都・墨田区

百年後芸術祭 -内房総アートフェス-

開催中〜2024/05/26

芸術祭(市原市・木更津市・君津市・袖ケ浦市・富津市の内房総5市)

千葉県・市原市、木更津市、君津市、袖ケ浦市、富津市の内房総5市

特別展 雪舟伝説―「画聖(カリスマ)」の誕生―

開催中〜2024/05/26

京都国立博物館

京都府・京都市

月岡芳年 月百姿

開催中〜2024/05/26

太田記念美術館

東京都・渋谷区

金屏風の祭典 ——黄金の世界へようこそ

開催中〜2024/06/02

岡田美術館

神奈川県・箱根町

日本の山海

開催中〜2024/06/02

松岡美術館

東京都・港区

卒寿記念 人間国宝 鈴木藏の志野展

開催中〜2024/06/02

国立工芸館

石川県・金沢市

川瀬巴水 旅と郷愁の風景

開催中〜2024/06/02

八王子市夢美術館

東京都・八王子市

1950〜60年代の日本画―造形への挑戦

開催中〜2024/06/02

平塚市美術館

神奈川県・平塚市

遠距離現在 Universal / Remote

開催中〜2024/06/03

国立新美術館

東京都・港区

第8回横浜トリエンナーレ「野草:いま、ここで生きてる」

開催中〜2024/06/09

芸術祭(横浜美術館、旧第一銀行横浜支店、BankART KAIKO、クイーンズスクエア横浜、元町・中華街駅連絡通路)

神奈川県・横浜市

記憶:リメンブランス-現代写真・映像の表現から

開催中〜2024/06/09

東京都写真美術館

東京都・目黒区

BankART Life7「UrbanNesting:再び都市に棲む」

開催中〜2024/06/09

BankART Station

神奈川県・横浜市

企画展「北斎と感情」

開催中〜2024/06/09

北斎館

長野県・小布施町

名作展「大画面の奔流―川端龍子の『会場芸術』再考」

開催中〜2024/06/09

大田区立龍子記念館

東京都・大田区

特別展「法然と極楽浄土」

開催中〜2024/06/09

東京国立博物館

東京都・台東区

平野杏子展 – 生きるために描きつづけて

開催中〜2024/06/09

平塚市美術館

神奈川県・平塚市

空海 KŪKAI ―密教のルーツとマンダラ世界

開催中〜2024/06/09

奈良国立博物館

奈良県・奈良市

青山悟 刺繍少年フォーエバー

開催中〜2024/06/09

目黒区美術館

東京都・目黒区

没後120年 エミール・ガレ展 奇想のガラス作家

開催中〜2024/06/09

渋谷区立松濤美術館

東京都・渋谷区

特別展「大哺乳類展3−わけてつなげて大行進」

開催中〜2024/06/16

国立科学博物館

東京都・台東区

茶の湯の美学 ―利休・織部・遠州の茶道具―

開催中〜2024/06/16

三井記念美術館

東京都・中央区

ベル・エポックー美しき時代 パリに集った芸術家たち ワイズマン&マイケル コレクションを中心に

開催中〜2024/06/16

山梨県立美術館

山梨県・甲府市

サントリー美術館コレクション展 名品ときたま迷品

開催中〜2024/06/16

サントリー美術館

東京都・港区

昭和モダン×百段階段 ~東京モダンガールライフ~

開催中〜2024/06/16

ホテル雅叙園東京 東京都指定有形文化財 「百段階段」

東京都・目黒区

宇野亞喜良展 AQUIRAX UNO

開催中〜2024/06/16

東京オペラシティアートギャラリー

東京都・新宿区

板倉鼎・須美子展

開催中〜2024/06/16

千葉市美術館

千葉県・千葉市

高橋由一から黒田清輝へ ―明治洋画壇の世代交代劇―

開催中〜2024/06/16

栃木県立美術館

栃木県・宇都宮市

ここに いても いい リトゥンアフターワーズ 山縣良和と綴るファッション表現のかすかな糸口

開催中〜2024/06/16

アーツ前橋

群馬県・前橋市

“オモシロイフク”大図鑑

開催中〜2024/06/22

文化学園服飾博物館

東京都・渋谷区

「どうぶつ百景 江戸東京博物館コレクションより」展

開催中〜2024/06/23

東京ステーションギャラリー

東京都・千代田区

令和6年度初夏展「殿さまのスケッチブック」

開催中〜2024/06/23

永青文庫

東京都・文京区

シンフォニー・オブ・アート — イメージと素材の饗宴

開催中〜2024/06/23

群馬県立館林美術館

群馬県・館林市

驚異の細密表現展 ―江戸・明治の工芸から現代アートまで―

開催中〜2024/06/23

横須賀美術館

神奈川県・横須賀市

没後70年 戦争を越えて―写真家ロバート・キャパ、愛と共感の眼差し―

開催中〜2024/06/23

東京富士美術館

東京都・八王子市

カール・アンドレ 彫刻と詩、その間

開催中〜2024/06/30

DIC川村記念美術館

千葉県・佐倉市

特別企画展「熊谷守一美術館39周年展 守一、旅を描く。」

開催中〜2024/06/30

豊島区立 熊谷守一美術館

東京都・豊島区

民藝 MINGEI—美は暮らしのなかにある

開催中〜2024/06/30

世田谷美術館

東京都・世田谷区

創刊50周年記念 花とゆめ展

2024/05/24〜2024/06/30

東京シティビュー(六本木ヒルズ森タワー52 階)

東京都・港区

KAGAYA 星空の世界 天空の贈り物

開催中〜2024/07/01

そごう美術館

神奈川県・横浜市

三島喜美代―未来への記憶

2024/05/19〜2024/07/07

練馬区立美術館

東京都・練馬区

石岡瑛子 I デザイン

開催中〜2024/07/07

茨城県近代美術館

茨城県・水戸市

Beautiful Japan 吉田初三郎の世界

2024/05/18〜2024/07/07

府中市美術館

東京都・府中市

ふたり 矢部太郎展

開催中〜2024/07/07

PLAY! MUSEUM

東京都・立川市

MOTコレクション 歩く、赴く、移動する 1923→2020/Eye to Eye-見ること

開催中〜2024/07/07

東京都現代美術館

東京都・江東区

ホー・ツーニェン エージェントのA 

開催中〜2024/07/07

東京都現代美術館

東京都・江東区

Tokyo Contemporary Art Award 2022-2024 受賞記念展

開催中〜2024/07/07

東京都現代美術館

東京都・江東区

【特別展】犬派?猫派? ―俵屋宗達、竹内栖鳳、藤田嗣治から山口晃まで―

2024/05/12〜2024/07/07

山種美術館

東京都・渋谷区

TOPコレクション 時間旅行 ― 千二百箇月の過去とかんずる方角から

開催中〜2024/07/07

東京都写真美術館

東京都・目黒区

企画展 歌と物語の絵 ―雅やかなやまと絵の世界

2024/06/01〜2024/07/21

泉屋博古館東京

東京都・港区

藤田嗣治 エコール・ド・パリの時代 1918~1928年

開催中〜2024/07/23

軽井沢安東美術館

長野県・軽井沢町

「石川九楊大全」

2024/06/08〜2024/07/28

上野の森美術館

東京都・台東区

国芳の団扇絵 ―猫と歌舞伎とチャキチャキ娘

2024/06/01〜2024/07/28

太田記念美術館

東京都・渋谷区

企画展「未来のかけら 科学とデザインの実験室」

開催中〜2024/08/12

21_21 DESIGN SIGHT ギャラリー1&2

東京都・港区

生誕140年 YUMEJI展 大正浪漫と新しい世界

2024/06/01〜2024/08/25

東京都庭園美術館

東京都・港区

特別展「北斎 グレートウェーブ・インパクト —神奈川沖浪 裏の誕生と軌跡—」

2024/06/18〜2024/08/25

すみだ北斎美術館

東京都・墨田区

TRIO パリ・東京・大阪 モダンアート・コレクション

2024/05/21〜2024/08/25

東京国立近代美術館

東京都・千代田区

内藤コレクション 写本 — いとも優雅なる中世の小宇宙

2024/06/11〜2024/08/25

国立西洋美術館

東京都・台東区

企画展「旅するピーナッツ。」

開催中〜2024/09/01

スヌーピーミュージアム

東京都・町田市

シアスター・ゲイツ展:アフロ民藝

開催中〜2024/09/01

森美術館

東京都・港区

AOMORI GOKAN アートフェス 2024 「つらなりのはらっぱ」

開催中〜2024/09/01

アートフェス(芸術祭)( 青森県立美術館、青森公立大学 国際芸術センター青森、弘前れんが倉庫美術館、八戸市美術館、十和田市現代美術館)

青森県

伊藤潤二展 誘惑

開催中〜2024/09/01

世田谷文学館

東京都・世田谷区

音を観る ―変化観音と観音変化身―

開催中〜2024/09/01

半蔵門ミュージアム

東京都・千代田区

アートキャンプ白州 2024 Camp and Art in Each Heart!

2024/07/06〜2024/09/01

山梨県立美術館

山梨県・甲府市

エドワード・ゴーリーを巡る旅

2024/07/06〜2024/09/01

横須賀美術館

神奈川県・横須賀市

カルダー:そよぐ、感じる、日本

2024/05/30〜2024/09/06

麻布台ヒルズ ギャラリー

東京都・港区

日本のまんなかでアートをさけんでみる

開催中〜2024/09/08

原美術館ARC

群馬県・渋川市

特別展「神護寺―空海と真言密教のはじまり」

2024/07/17〜2024/09/08

東京国立博物館

東京都・台東区

開館20周年記念 山梨放送開局70周年 平山郁夫 -仏教伝来と旅の軌跡

開催中〜2024/09/09

平山郁夫シルクロード美術館

山梨県・北杜市

フィロス・コレクション ロートレック展 時をつかむ線

2024/06/22〜2024/09/23

SOMPO美術館

東京都・新宿区

空想旅行案内人 ジャン=ミッシェル・フォロン

2024/07/13〜2024/09/23

東京ステーションギャラリー

東京都・千代田区

吉田克朗展 ものに、風景に、世界に触れる

2024/07/13〜2024/09/23

埼玉県立近代美術館

埼玉県・さいたま市

印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵

2024/07/06〜2024/09/29

東京富士美術館

東京都・八王子市

梅津庸一 クリスタルパレス

2024/06/04〜2024/10/06

国立国際美術館

大阪府・大阪市

大地に耳をすます 気配と手ざわり

2024/07/20〜2024/10/09

東京都美術館

東京都・台東区

レガシー ―美を受け継ぐ モディリアーニ、シャガール、ピカソ、フジタ

2024/06/18〜2024/10/13

松岡美術館

東京都・港区

企画展「作家の視線― 過去と現在、そして…」

2024/05/23〜2024/11/11

ホキ美術館

千葉県・千葉市

《サグラダ・ファミリア聖堂、身廊部模型》 2001~02年 制作:サグラダ・ファミリア聖堂模型室 西武文理大学

Exhibitions

ガウディとサグラダ・ファミリア展

ガウディ建築の集大成である大聖堂

 スペインのバルセロナで活躍したアントニ・ガウディ(1852~1926)の建築は独特の魅力を放つ。曲面、無骨さ、うごめく何か。トウモロコシのような形の塔が並ぶサグラダ・ファミリア聖堂(聖家族の意)は、ヨーロッパの他の教会と随分違う。本展は、ガウディが生涯43年間携わり、現在も建設が続くこの聖堂を中心に紹介する。学術監修は鳥居徳敏 神奈川大学名誉教授。ガウディの創造の源泉を①歴史、②自然、③幾何学から検証し、サグラダ・ファミリア聖堂建設の軌跡を辿り、ガウディが建築に込めたものを考察する。東京国立近代美術館を皮切りに3館を巡回。(※この記事の取材先は東京国立近代美術館です)

東京国立近代美術館の入り口。左端の青色の作品は、イサム・ノグチ《門》1969年
東京国立近代美術館の入り口。左端の青色の作品は、イサム・ノグチ《門》1969年

 会場で筆者は驚きと発見の連続だった。サグラダ・ファミリア聖堂は、キリスト教の信仰を建築と芸術で表現する教会である。と同時に、ガウディの建築と人生の集大成なのだ。幼い頃から親しんだ自然からの数多の発見、学生時代からの勉学、様々な建築設計での独創的方法などをここに総合させた。また自分が完成を見られない大仕事を後継者に引き継ぐ手掛かりを残した。

若き日のガウディ

 本展冒頭でガウディの猛烈な勉強ぶりが紹介されている。1852年、カタルーニャ地方のレウス市の銅板機具職人の父のもとに生まれた彼は、16歳でバルセロナに移り住み、21歳でバルセロナ建築学校に入学。学校の図書館にこもって建築書や写真集を読み眺め入った。特に熱中したのが、フランスでゴシック聖堂の修復を多数手掛けたウジェーヌ・エマニュエル・ヴィオレ=ル=デュクが著した『フランス中世建築事典(全10巻)』と『建築講話(全20講話)』だった。これらで特にゴシック建築を深く研究した。スペインのアルハンブラ宮殿などイスラム建築を紹介する書物にも親しんだ。
 
 若い頃からデザインセンスも抜群だ。建築家資格取得後すぐの1878年、パリ万博に革手袋店ショーケースを出品。メタルフレームの総ガラス張りのもの。このモダンなデザインに稀有な才能を見出したのが、のちにパトロンとなる資産家アウゼビ・グエルだった。
 
 ガウディのサイン(A.Gaudiの署名)も面白い。コローニア・グエル教会堂計画案のスケッチ(あとに掲載)などでも見られるが、大きく傾斜したAに曲線のGがかぶり、audiが飛翔するよう。お洒落で、なんだかガウディ建築を思わせる。

破砕タイル/逆さ吊り実験/パラボラ形(放物線)の塔

 ガウディは独創的方法で建築の仕事を進めた。鉄柵装飾に棕櫚の葉をそのまま施した。タイルによる多彩色装飾は、イスラム建築やカタルーニャ地方の伝統に学んだ成果だ。彼はさらに破砕タイルで曲面を覆うという新手法を見出し、グエル公園、そしてサグラダ・ファミリア聖堂の鐘塔頂華(先端の装飾)の傑作を生みだした。

東京国立近代美術館の会場風景(以下同様)。左から、アントニ・ガウディ《カサ・ビセンス 鉄柵の棕櫚の模型》1886年頃。アントニ・ガウディ《カサ・ビセンス、正面のセラミック・タイル》1883年。共にサグラダ・ファミリア聖堂
東京国立近代美術館の会場風景(以下同様)。左から、アントニ・ガウディ《カサ・ビセンス 鉄柵の棕櫚の模型》1886年頃。アントニ・ガウディ《カサ・ビセンス、正面のセラミック・タイル》1883年。共にサグラダ・ファミリア聖堂
アントニ・ガウディ《グエル公園、破砕タイル被覆ピース》1904年頃 制作:ジャウマ・ブジョールの息子 ガウディ記念講座、ETSAB(バルセロナ・デザイン美術館寄託)
アントニ・ガウディ《グエル公園、破砕タイル被覆ピース》1904年頃 制作:ジャウマ・ブジョールの息子 ガウディ記念講座、ETSAB(バルセロナ・デザイン美術館寄託)

 逆さ吊り実験は、自然の法則に基づいた紐の垂れ下がる形状を模型で追求し、反転させる。驚異的な発想だ。コローニア・グエル教会堂(1898~上部は未完)の設計にて10年かけて行い、実験成果はサグラダ・ファミリア聖堂にも応用した。

アントニ・ガウディ《コローニア・グエル教会堂計画案のスケッチ(リトグラフ)》1979年(オリジナル:1908年) ガウディ記念講座、ETSAB。うごめく生命を感じさせる。下方にガウディのサインが見える
アントニ・ガウディ《コローニア・グエル教会堂計画案のスケッチ(リトグラフ)》1979年(オリジナル:1908年) ガウディ記念講座、ETSAB。うごめく生命を感じさせる。下方にガウディのサインが見える
《コローニア・グエル教会堂、逆さ吊り実験》(手前は、部分/後ろは、1:50)1984~85年 西武文理大学
《コローニア・グエル教会堂、逆さ吊り実験》(手前は、部分/後ろは、1:50)1984~85年 西武文理大学

 パラボラ(放物線)形の塔を含めサグラダ・ファミリア聖堂へつながる未完の計画案も紹介されている。モロッコのタンジール計画案、また300mもの高さのニューヨーク大ホテル計画案だ。

《ニューヨーク大ホテル計画案模型(ジュアン・マタマラのドローイングに基づく)》1985年 制作:群馬県左官組合 伊豆の長八美術館
《ニューヨーク大ホテル計画案模型(ジュアン・マタマラのドローイングに基づく)》1985年 制作:群馬県左官組合 伊豆の長八美術館

サグラダ・ファミリア聖堂の歩み

 正式名称サグラダ・ファミリア贖罪聖堂は、格差が拡大する状況下でバルセロナの書店経営者が提案し、貧しい人々からなる信心会の献金によって出発した。ガウディはグエルら富裕層の邸宅等を設計する傍ら、31歳の1883年に同聖堂2代目建築家として着任した。初代建築家ビリャール・イ・ロサーノはネオ・ゴシック案で1882年に着手。翌年引き継いで主任建築家となったガウディは、革新的な構想で進行し、1906年に計画案の全貌を初公表。構想は大きく変貌を遂げた。彼は石膏模型によってさらに案を練り、最終案模型を残した。
 
 ガウディは、クリプタ(地下聖堂)と付属仮設学校(曲線造形屋根が特徴)に加え、長年を要した「降誕の正面」をほぼ完成させて1926年に73歳で他界した。「降誕の正面」とは、4つの鐘塔が並び、鍾乳石洞窟のような壁面にキリストの喜びの物語を数多の動植物と共に彫刻で表現した東側の正面だ。その後スペイン内戦で資料は焼失し、最終石膏模型は破壊されたが、後継者が模型を補修し、ガウディの意図に沿って建設を継続。そして着工から140年経った今、完成の時期が視野に入ってきた。

左から、アントニ・ガウディ《サグラダ・ファミリア聖堂、側廊高窓模型》スケール:1:25 1883~1912年頃。アントニ・ガウディ《サグラダ・ファミリア聖堂、側廊高窓外観頂部オリジナル模型》 スケール:1:10 1918~22年。共にサグラダ・ファミリア聖堂
左から、アントニ・ガウディ《サグラダ・ファミリア聖堂、側廊高窓模型》スケール:1:25 1883~1912年頃。アントニ・ガウディ《サグラダ・ファミリア聖堂、側廊高窓外観頂部オリジナル模型》 スケール:1:10 1918~22年。共にサグラダ・ファミリア聖堂

サグラダ・ファミリア聖堂の全体構造

 壮大なサグラダ・ファミリア聖堂だが、全体構造はどのようなものなのだろう。
 完成すると塔が18本立つ。内部は、内陣(北)に向かう身廊は5廊式、直交する翼廊は3廊式のラテン十字形のバシリカ平面。全長95m。主身廊の天井高45m。正面は3つで、大正面が「栄光の正面」(南)、そして翼廊先端の「降誕の正面」(東)と「受難の正面」(西)である。聖堂断面は重力と横力を合わせた力の向きに沿った曲線で構成され、ゴシック建築に見られる控え壁や飛び梁をなくした。
 
 天に向かう18本の塔のなかでいちばん高くそびえるのは、身廊と翼廊の交差部に立つイエスの塔だ。約170mの高さ。近くにマリアの塔(完成)が立ち、福音書作家を示す4塔が囲む。そして12使徒の塔として、3つの正面にそれぞれ4つの鐘塔が並ぶ。
 
 内部は樹木式構造となっている。二重らせん状に回転する柱が枝を広げるようにして立ち並ぶ。天井は多数の採光丸穴が開く。これらもガウディの独創である。

《サグラダ・ファミリア聖堂、全体模型》スケール:1:200 制作:サグラダ・ファミリア聖堂模型室 サグラダ・ファミリア聖堂
《サグラダ・ファミリア聖堂、全体模型》スケール:1:200 制作:サグラダ・ファミリア聖堂模型室 サグラダ・ファミリア聖堂
《サグラダ・ファミリア聖堂、身廊部模型》 2001~02年 制作:サグラダ・ファミリア聖堂模型室 西武文理大学
《サグラダ・ファミリア聖堂、身廊部模型》 2001~02年 制作:サグラダ・ファミリア聖堂模型室 西武文理大学

彫刻

 ガウディは彫刻についても深く研究した。会場では「降誕の正面」を飾るための人体彫刻塑像断片(内戦で破壊されたため、トルソーのようだ)や植物や小動物や虫の彫刻が展示されている。また40年以上サグラダ・ファミリア聖堂で彫刻を制作する外尾悦郎氏による「歌う天使たち」の石膏像も出展。訴えるものが強い。

2点とも、アントニ・ガウディ《サグラダ・ファミリア聖堂、降臨の正面:女性の塑像断片》1898~1900年 サグラダ・ファミリア聖堂
2点とも、アントニ・ガウディ《サグラダ・ファミリア聖堂、降臨の正面:女性の塑像断片》1898~1900年 サグラダ・ファミリア聖堂
外尾悦郎《サグラダ・ファミリア聖堂、降臨の正面:歌う天使たち》(部分) サグラダ・ファミリア聖堂、降臨の正面に1990~2000年に設置 作家蔵
外尾悦郎《サグラダ・ファミリア聖堂、降臨の正面:歌う天使たち》(部分) サグラダ・ファミリア聖堂、降臨の正面に1990~2000年に設置 作家蔵

「生命ある造形的ヴィジョン」(ガウディの言葉)

 ガウディは重要な言葉も残した。「常に開かれて、務めて読むのに適切な偉大な書物は、自然のそれである」「生命ある造形的ヴィジョン―この生命の感覚、これを私たちは作品に与えねばならない。この観点から私たちの在り方を反省しなければならないのである」「さまざまな事柄を洞察するために、それらを辛抱強く追求しなければならない。忍耐はすべてを達成する」(※参考文献2より)など。深く強く心に響く。入江正之先生への映像インタビューや会場の最後で一部が紹介されている。
 
 ガウディの魅力は尽きない。本展学術監修者の鳥居先生は、「(観るかたがた)それぞれのとらえ方があればいい」と語っておられる。
 
【参考文献】
1)鳥居徳敏 学術監修、東京国立近代美術館・佐川美術館・名古屋市美術館・NHK・NHKプロモーション・東京新聞・中日新聞社・D_CODE 編集:『ガウディとサグラダ・ファミリア展』公式図録、鳥居徳敏・山村健・鈴木勝雄・ジョルディ・ファウリ・佐々木睦朗・馬場まどか・久保田舞美 執筆、外尾悦郎 インタビュー、NHK・NHKプロモーション・東京新聞・中日新聞社 発行、2023年
2)入江正之 編訳:『ガウディの言葉』彰国社、1991年
3)外尾悦郎:『ガウディの伝言』光文社新書、光文社、2006年
4)酒井健:『ゴシックとは何か 大聖堂の精神史』ちくま学芸文庫、筑摩書房、2006年
5)磯崎新:「ガウディ建築の発想と構造」(中山公男・磯崎新・粟津潔 責任編集:『ガウディ全作品 1芸術と建築/2解説と資料』六耀社、1981年)
6)ファン・バセゴーダ・ノネール、フランソワ・ルネ・ロラン:『ガウディの作品 芸術と建築』六耀社、1985年
 
執筆・撮影:細川いづみ(HOSOKAWA Fonte Idumi) 
(2023年8月)
※会場内の風景画像は主催者側の許可を得て撮影したものです。
※本文・図版とも無断引用・無断転載を禁じます。

ガウディとサグラダ・ファミリア展
Gaudí and the Sagrada Família
 
【会期・会場】
[東京会場]
2023年6月13日(火)~9月10日(日)  東京国立近代美術館(東京都・千代田区)
※日時予約推奨
 
[滋賀会場]
2023年9月30日(土)~12月3日(日)  佐川美術館(滋賀県・守山市)
※日時予約制
 
[愛知会場]
2023年12月19日(火)~2024年3月10日(日)  名古屋市美術館(愛知県・名古屋市)
 
※詳細は展覧会公式サイトでご確認ください。
展覧会公式サイト https://gaudi2023-24.jp/