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日中平和友好条約45周年記念「世界遺産 大シルクロード展」

開催中〜2023/12/10

東京富士美術館

東京都・八王子市

さいたま国際芸術祭2023

開催中〜2023/12/10

芸術祭(さいたま市・旧市民会館おおみや(メイン会場)ほか)

埼玉県・さいたま市

永遠の都ローマ展

開催中〜2023/12/10

東京都美術館

東京都・台東区

装飾の庭 朝香宮邸のアール・デコと庭園芸術

開催中〜2023/12/10

東京都庭園美術館

東京都・港区

イヴ・サンローラン展 時を超えるスタイル

開催中〜2023/12/11

国立新美術館

東京都・港区

コスチュームジュエリー美の変革者たち シャネル、スキャパレッリ、ディオール 小瀧千佐子コレクションより

開催中〜2023/12/17

パナソニック汐留美術館

東京都・港区

布の芸術祭『FUJI TEXTILE WEEK 2023(フジテキスタイルウィーク)』

開催中〜2023/12/17

芸術祭(山梨県富士吉田市)

山梨県・富士吉田市

開館1周年記念特別展 二つの頂 —宋磁と清朝官窯—

開催中〜2023/12/17

静嘉堂@丸の内(静嘉堂文庫美術館)

東京都・千代田区

山梨国際芸術祭 八ヶ岳アート・エコロジー 2023

開催中〜2023/12/20

芸術祭(清春芸術村を中心とする山梨県北杜市の各所)

山梨県・北杜市

落合陽一展「ヌルの共鳴:計算機自然における空性の相互接続」

開催中〜2023/12/20

清春芸術村 安藤忠雄 光の美術館

山梨県・北杜市

国吉康雄展 ~安眠を妨げる夢~ 福武コレクション・岡山県立美術館のコレクションを中心に

開催中〜2023/12/24

茨城県近代美術館

茨城県・水戸市

ヨシタケシンスケ展かもしれない

開催中〜2023/12/24

宇都宮美術館

栃木県・宇都宮市

皇居三の丸尚蔵館 開館記念展「皇室のみやび-受け継ぐ美-」第 1 期:「三の丸尚蔵館の国宝」

開催中〜2023/12/24

皇居三の丸尚蔵館

東京都・千代田区

「となりの国の絵本 躍動する韓国イラストレーションの世界」展

開催中〜2023/12/24

横須賀美術館

神奈川県・横須賀市

石川真生 ─私に何ができるか─

開催中〜2023/12/24

東京オペラシティ アートギャラリー

東京都・新宿区

大巻伸嗣 Interface of Being 真空のゆらぎ

開催中〜2023/12/25

国立新美術館

東京都・港区

「今こそ、ルーシー!」LUCY IS HERE

開催中〜2024/01/08

スヌーピーミュージアム

東京都・町田市

「青空は、太陽の反対側にある:原美術館/原六郎コレクション」第2期(秋冬季)

開催中〜2024/01/08

原美術館ARC

群馬県・渋川市

上野アーティストプロジェクト2023「いのちをうつす ―菌類、植物、動物、人間」

開催中〜2024/01/08

東京都美術館

東京都・台東区

「鹿児島睦 まいにち」展

開催中〜2024/01/08

PLAY! MUSEUM

東京都・立川市

111年目の中原淳一展

開催中〜2024/01/10

そごう美術館

神奈川県・横浜市

ICCアニュアル 2023 ものごとのかたち

開催中〜2024/01/14

NTTインターコミュニケーション・センター [ICC]

東京都・新宿区

企画展「ある従軍カメラマンの追憶 義烈空挺隊員と家族の片影」

開催中〜2024/01/14

平和祈念展示資料館

東京都・新宿区

佐野史郎写真展 瞬間と一日

開催中〜2024/01/14

彫刻の森美術館

神奈川県・足柄下郡箱根町

ゴッホと静物画―伝統と革新へ

開催中〜2024/01/21

SOMPO美術館

東京都・新宿区

アーツ・アンド・クラフツとデザイン ウィリアム・モリスからフランク・ロイド・ライトまで

開催中〜2024/01/21

山梨県立美術館

山梨県・甲府市

見るまえに跳べ 日本の新進作家 vol. 20

開催中〜2024/01/21

東京都写真美術館

東京都・目黒区

国宝 雪松図と能面×能の意匠特集展示 新寄贈能面

2023/12/08〜2024/01/27

三井記念美術館

東京都・中央区

倉俣史朗のデザイン―記憶のなかの小宇宙

開催中〜2024/01/28

世田谷美術館

東京都・世田谷区

高橋龍太郎コレクション連携企画 「川端龍子プラスワン 濱田樹里・谷保玲奈――色彩は踊り、共鳴する」(後期:谷保玲奈)

2023/12/09〜2024/01/28

大田区立龍子記念館

東京都・大田区

江口寿史展 ノット・コンプリーテッド

開催中〜2024/02/04

世田谷文学館

東京都・世田谷区

【特別展】癒やしの日本美術 ―ほのぼの若冲・なごみの土牛―

開催中〜2024/02/04

山種美術館

東京都・渋谷区

キース・ヘリング展 アートをストリートへ

2023/12/09〜2024/02/05

森アーツセンターギャラリー(六本木ヒルズ森タワー52階)

東京都・港区

アメイジング・チャイナ 深淵なる中国美術の世界

開催中〜2024/02/11

松岡美術館

東京都・港区

みちのく いとしい仏たち

開催中〜2024/02/12

東京ステーションギャラリー

東京都・千代田区

魔除け -見えない敵を服でブロック!-

2023/12/09〜2024/02/14

文化学園服飾博物館

東京都・渋谷区

1周年記念特別企画「ようこそ藤田嗣治のお家へ」

開催中〜2024/02/20

軽井沢安東美術館

長野県・軽井沢町

生誕120年 古賀忠雄展 塑造(像)の楽しみ

開催中〜2024/02/25

練馬区立美術館

東京都・練馬区

白井美穂 森の空き地

2023/12/16〜2024/02/25

府中市美術館

東京都・府中市

特別展「北斎サムライ画伝」

2023/12/14〜2024/02/25

すみだ北斎美術館

東京都・墨田区

印刷/版画/グラフィックデザインの断層 1957-1979

2023/12/19〜2024/03/03

国立工芸館

石川県・金沢市

MOTアニュアル2023 シナジー、創造と生成のあいだ

開催中〜2024/03/03

東京都現代美術館

東京都・江東区

皇居三の丸尚蔵館 開館記念展「皇室のみやび-受け継ぐ美-」第 2 期:「近代皇室を彩る技と美」

2024/01/04〜2024/03/03

皇居三の丸尚蔵館

東京都・千代田区

坂本龍一トリビュート展 音楽/アート/メディア

2023/12/16〜2024/03/10

NTTインターコミュニケーション・センター [ICC] ギャラリーA

東京都・新宿区

豊嶋康子 発生法──天地左右の裏表

2023/12/09〜2024/03/10

東京都現代美術館

東京都・江東区

21_21 DESIGN SIGHT 企画展「もじ イメージ Graphic 展」

開催中〜2024/03/10

21_21 DESIGN SIGHTギャラリー1&2

東京都・港区

MOTコレクション 歩く、赴く、移動する 1923→2020/特集展示 横尾忠則―水のように/生誕100年 サム・フランシス

開催中〜2024/03/10

東京都現代美術館

東京都・江東区

特別展「本阿弥光悦の大宇宙」

2024/01/16〜2024/03/10

東京国立博物館

東京都・台東区

和田誠 映画の仕事

2023/12/12〜2024/03/24

国立映画アーカイブ

東京都・中央区

森美術館開館20周年記念展 私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために

開催中〜2024/03/31

森美術館

東京都・港区

tupera tupera + 遠藤幹子 しつもんパーク in 彫刻の森美術館

開催中〜2024/03/31

彫刻の森美術館

神奈川県・足柄下郡箱根町

岡田健太郎―重なる景体

2023/12/05〜2024/04/07

平塚市美術館

神奈川県・平塚市

魔女まじょ展

開催中〜2024/04/08

魔法の文学館(江戸川区角野栄子児童文学館)2階ギャラリー

東京都・江戸川区

初公開の仏教美術 ―如意輪観音菩薩像・二童子像をむかえて―

開催中〜2024/04/14

半蔵門ミュージアム

東京都・千代田区

第5回「私の代表作」展

開催中〜2024/05/12

ホキ美術館

千葉県・千葉市

金屏風の祭典 ——黄金の世界へようこそ

2023/12/17〜2024/06/02

岡田美術館

神奈川県・箱根町

Exhibitions

Museum Scketches

芸術広場
この夏、東京で見られる古筆を訪ねて

 古筆とは平安時代から鎌倉時代の名筆で、その多くは『古今和歌集』や『和漢朗詠集』などの和歌を書いた巻物や冊子のこと。桃山時代頃から古筆愛好の気運が高まり、多くの古筆が切断分割され、分割された古筆の断簡は古筆切とよばれている。装飾性の高い料紙に書かれたその流麗な筆跡からは当時の美意識がうかがえ、今もなお人々の眼を楽しませてくれる。パソコンやスマホの普及でデジタルの文字が氾濫している今、古筆に静かに向き合うと心が落ち着き、しばしの間、暑さを忘れられそうだ。現在、東京都内で古筆を展示している5つの展覧会を訪ねてみた。

「よめないけど、いいね!-根津美術館の書の名品-」根津美術館

 地下鉄表参道駅から徒歩10分ほどの根津美術館で8月21日まで開催の「よめないけど、いいね!-根津美術館の書の名品-」は、同館所蔵の書跡にキャッチフレーズをつけて見どころを親しみやすく紹介し、何が書いてあるかはさておき、「いいね!」と実感してもらおうという展覧会。古筆は9点出品され、主に、筆の流れや料紙の美しさを糸口にその魅力を伝えている。
 〝よめないけど、スピード感が気持ちいい〟とキャッチフレーズが付けられたのは「石山切(貫之集下断簡)」。当時20代半ばだったと推定される藤原定信の奔放な筆運びが魅力だ。金銀の絵の具で下絵が描かれた料紙も美しい。

藤原定信「石山切(貫之集下断簡)」一幅 平安時代 12世紀 根津美術館蔵
藤原定信「石山切(貫之集下断簡)」一幅 平安時代 12世紀 根津美術館蔵

 〝ダイヤモンドダストのような雲母砂子(きらすなご)〟に着目しているのは藤原佐理、藤原行成とともに三跡の一人である小野道風が伝称筆者の「小島切(斎宮女御集断簡)」。光の加減によって見え隠れする雲母砂子を撒いた料紙と筆先の弾力が効いた流れるような書との取り合わせが絶妙だ。展示では、同館が刀の刃紋を見せるために開発したライトを用いて雲母砂子を見せる工夫が凝らされ、文字と紙の調和を楽しむことができる。かつては冊子本の状態だったこの書について、担当の松原茂副館長は「ページをめくるたびに、光によって、雲母砂子がより良く見えたり見えなかったりするのを楽しんだのではないか」と話している。

伝 小野道風「小島切(斎宮女御集断簡)」一幅 平安時代 11世紀 根津美術館蔵
伝 小野道風「小島切(斎宮女御集断簡)」一幅 平安時代 11世紀 根津美術館蔵

 〝雲母摺りの文様はまるで綾織物みたい〟とのキャッチフレーズは、同じライトで、料紙の文様を浮かび上がらせている「尾形切(業平集断簡)」に付けられた。中国製をまねて日本で作られた和製唐紙に、『和漢朗詠集』の撰者でもある藤原公任が書いたとされる穏やかな書が雅な雰囲気を醸し出している。尾形切とは尾形光琳の家に伝来したことにちなんでいる。
 ほかに伝 源順「難波切(万葉集 巻第十四断簡)」、伝 藤原行成「伊予切(和漢朗詠集 巻上断簡)」、伝 藤原公任「太田切(和漢朗詠集 巻下断簡)」、伝 紀貫之「名家家集切(是則集断簡)」、藤原基俊「山名切(新撰朗詠集 巻下断簡)」、憲清「春日懐紙」を出品。

伝 藤原公任「尾形切(業平集断簡)」一幅 平安時代 12世紀 根津美術館蔵
伝 藤原公任「尾形切(業平集断簡)」一幅 平安時代 12世紀 根津美術館蔵

特別展「日本美術をひも解く―皇室、美の玉手箱」 東京藝術大学大学美術館

 上野公園にある東京藝術大学大学美術館で9月25日まで開催の特別展「日本美術をひも解く―皇室、美の玉手箱」は、宮内庁三の丸尚蔵館が収蔵する皇室に伝わる美術品に東京藝術大学のコレクションを加えた82件から日本美術の流れをたどる展覧会。そのうち、「文字からはじまる日本の美」に着目した章に古筆が展示されている。
 中でも「日本第一の御手」と言われた三跡の一人、藤原佐理の手紙「恩命帖(おんめいじょう)」は墨継ぎの美しさや文字の大小、太さなどに絶妙な変化を持たせた勢いのある流麗な草書が目を引く。内容は、佐理が宮廷行事に関する不備を上官に謝罪している始末書とのこと。9月4日まで展示されている。

藤原佐理「恩命帖」一巻 平安時代 天元5年(982)宮内庁三の丸尚蔵館蔵 ※9月4日まで展示
藤原佐理「恩命帖」一巻 平安時代 天元5年(982)宮内庁三の丸尚蔵館蔵 ※9月4日まで展示

 古筆の中でも屈指の名品と言われている「粘葉本(でっちょうぼん)和漢朗詠集」(通期展示、場面替えあり)にも注目したい。稀少な冊子本で完本として近衛家に伝来した。筆者は藤原行成と伝えられ、『和漢朗詠集』を上下2帖に書写している。この筆者は『古今和歌集』を書写した現存最古の写本の断簡で、仮名の最高峰に位置づけられる「高野切」の第三種の筆者と同一人物であることがわかっている。墨継ぎと連綿、張りのある洗練された筆致による優美な仮名と柔和な漢字との取り合わせが美しく、色とりどりの唐紙に雲母で摺り出された文様が文字と融合している。平仮名の完成形が認められる書としても重要だ。

伝 藤原行成「粘葉本和漢朗詠集」二帖 平安時代 11世紀 宮内庁三の丸尚蔵館蔵 ※通期展示、場面替えあり
伝 藤原行成「粘葉本和漢朗詠集」二帖 平安時代 11世紀 宮内庁三の丸尚蔵館蔵 ※通期展示、場面替えあり

 ほかに、雲母や金銀の箔、金銀泥で模様を施したさまざまな料紙に、墨の潤渇や強弱の変化が際立つ行書や草書体で書かれた漢詩と万葉仮名を用いた和歌とを対比、調和させている藤原公任が伝称筆者の「巻子本和漢朗詠集」(通期展示、巻替えあり)、同じく藤原公任が書いたと伝えられる書で、『古今和歌集』を華麗な料紙に散らし書きした「大色紙」(9月4日まで展示)など。これらの古筆は、いずれも宮内庁三の丸尚蔵館の収蔵品。

伝 藤原公任「巻子本和漢朗詠集」二巻 平安時代 12世紀 宮内庁三の丸尚蔵館蔵  ※通期展示、上巻9月4日まで、下巻9月6日から展示
伝 藤原公任「巻子本和漢朗詠集」二巻 平安時代 12世紀 宮内庁三の丸尚蔵館蔵  ※通期展示、上巻9月4日まで、下巻9月6日から展示

「ボストン美術館展 芸術×力」 東京都美術館

 東京藝術大学大学美術館と同じ上野公園にある東京都美術館で10月2日まで開催中の「ボストン美術館展 芸術×力(げいじゅつとちから)」にも古筆が出品されている。同展は、ボストン美術館のコレクションから古今東西の権力者が自らの力を誇示したり、維持したりするために芸術の力を利用してきた点に着目し、王族の肖像画や宝石、権力をめぐる戦いを描いた日本の絵巻など約60点を展示している。その中で、芸術のパトロンとしての権力者に着目するコーナに古筆「三十六人家集 伊勢集(石山切)」がある。平安時代の白河法皇ゆかりの書で、筆者は確定できないが能書として知られた人物によるものといわれている。和紙を少しずつずらして雲母白から茶への色のグラデーションをつける重ね継ぎをし、雁や紅葉を銀泥で描き、金銀の揉み箔を散らした料紙も美しい。

「三十六人家集 伊勢集(石山切)」一幅 平安時代 天永 3 年(1112)頃 ボストン美術館蔵
「三十六人家集 伊勢集(石山切)」一幅 平安時代 天永 3 年(1112)頃 ボストン美術館蔵

「茶の湯の陶磁器 “景色”を愛でる」 三井記念美術館

 地下鉄三越前駅からすぐの三井記念美術館で9月19日まで開催中の「茶の湯の陶磁器 “景色”を愛でる」展には、藤原行成が書いたとされる「雲紙和漢朗詠集切『雲』」と藤原公任筆と伝わる「下絵和漢朗詠集切『山家』」が出品されている。同展は、三井グループで知られる三井家が収集した茶道具の中から陶磁器を中心に展示し、器の中に自然を見出し、景色を愛でようという企画。二つの古筆は、茶壷や茶入れとともに茶掛けの書として紹介されている。いずれも花、月、雪などの自然の風物が銘や題につけられている共通点がある。
 「雲紙和漢朗詠集切『雲』」は、箱に表千家五代随流斎(1650~91年)が「利休所持」と記していることから、千利休ゆかりの品として伝えられている。『和漢朗詠集』下巻「雲」の断簡で、行草を織り交ぜた優雅な筆跡による漢詩と和歌が、雲形を透き込んだ「雲紙」と呼ばれる料紙に書かれている。

伝 藤原行成「雲紙和漢朗詠集切『雲』」 一幅 平安~鎌倉時代 12~13世紀 三井記念美術館蔵
伝 藤原行成「雲紙和漢朗詠集切『雲』」 一幅 平安~鎌倉時代 12~13世紀 三井記念美術館蔵

 「下絵和漢朗詠集切『山家』」は、金銀泥の下絵や切箔で彩られた料紙に優美な文字が調和している。『枕草子』で知られる白居易の漢詩の一節「遺愛寺の鐘は枕を欹てて聴く。香鑪峯の雪は簾を撥げて看る」が書かれている点でも貴重な断簡。

伝 藤原公任「下絵和漢朗詠集切『山家』」一幅 平安時代 12世紀 三井記念美術館蔵
伝 藤原公任「下絵和漢朗詠集切『山家』」一幅 平安時代 12世紀 三井記念美術館蔵

「歌枕 あなたの知らない心の風景」 サントリー美術館

 地下鉄六本木駅直結の東京ミッドタウンにあるサントリー美術館で8月28日まで開催中の「歌枕 あなたの知らない心の風景」は、和歌に詠み継がれてきた名所を示す歌枕の世界を、絵画や工芸品などでたどり、日本人の心の風景を呼び覚まそうという展覧会。全5章の展示構成のうち第2章「歌枕の成立」で古筆を紹介している。歌枕が平安時代を通して、和歌によって特定のイメージが結びつけられた地名として発達してきたことから「歌枕の歴史を、その時代に記された古筆で概観しよう」(同展担当・柴橋大典学芸員)との主旨だ。
 『古今和歌集』の凡河内躬恒(おおしこうちのみつね)の和歌が含まれる「関戸本古今和歌集切『よしのがは』」には、吉野の地名から「よし」や「はやく」などの言葉を導いて移ろいやすい恋を詠んだ和歌が書かれている。さまざまな染紙を色変わりで用いた料紙と藤原行成が書いたと伝わる変化に富んだ連綿の仮名が調和している。
 ほかに藤原教長「今城切(古今和歌集第八)」(慶應義塾〈センチュリー赤尾コレクション〉)、伝 源実朝「中院切」(五島美術館)など8月半ば以降は9点が出品されている。

伝 藤原行成 「関戸本古今集切『よしのがは』」 一幅 平安時代 11世紀 公益財団法人阪急文化財団 逸翁美術館蔵 ※全期間展示
伝 藤原行成 「関戸本古今集切『よしのがは』」 一幅 平安時代 11世紀 公益財団法人阪急文化財団 逸翁美術館蔵 ※全期間展示

 さまざまな切り口の展覧会で出会えた古筆の数々。手書きの文字の美しさを再認識したり、書き手への思いを馳せたり、夏のひと時を静かに、豊かに過ごすことができた。
    
執筆・写真撮影:西澤美子
    
参考資料:『根津美術館 新蔵品選 書跡』(根津美術館 2022年)、
『日本美術をひも解く―皇室、美の玉手箱』展図録(読売新聞社 2022年)、
『ボストン美術館展 芸術×力』図録(日本テレビ放送網 2022年)、
『歌枕 あなたの知らない心の風景』展図録(サントリー美術館 2022年)、
『東京国立美術館セレクション 高野切と仮名の美』(東京国立博物館 2018年)

●「よめないけど、いいね!-根津美術館の書の名品-」
根津美術館(東京都・港区) 2022年7月16日~8月21日
https://www.nezu-muse.or.jp/
 
●特別展「日本美術をひも解く―皇室、美の玉手箱」 
東京藝術大学大学美術館 (東京都・台東区)2022年8月6日~9月25日
https://tsumugu.yomiuri.co.jp/tamatebako2022/
  
●「ボストン美術館展 芸術×力」
東京都美術館 (東京都・台東区) 2022年7月23日~10月2日
https://www.ntv.co.jp/boston2022/
  
●「茶の湯の陶磁器 “景色”を愛でる」
三井記念美術館(東京都・中央区) 2022年7月9日~9月19日
https://www.mitsui-museum.jp/
  
●「歌枕 あなたの知らない心の風景」
サントリー美術館(東京都・港区) 2022年6月29日~8月28日
https://www.suntory.co.jp/sma/