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特別展「学習院コレクション 華族文化 美の玉手箱 芸術と伝統文化のパトロネージュ」

開催中〜2025/05/17

霞会館記念学習院ミュージアム

東京都・豊島区

カラーズ — 色の秘密にせまる 印象派から現代アートへ

開催中〜2025/05/18

ポーラ美術館

神奈川県・足柄下郡箱根町

企画展「ライトアップ木島櫻谷II― おうこくの線をさがしに 併設四季連作屏風」

開催中〜2025/05/18

泉屋博古館東京

東京都・港区

略画 — はずむ筆、おどる線—

開催中〜2025/05/18

北斎館

長野県・小布施町

戦後西ドイツのグラフィックデザイン モダニズム再発見

開催中〜2025/05/18

東京都庭園美術館

東京都・港区

三鷹天命反転中!!──荒川修作+マドリン・ギンズの死なないためのエクササイズ

開催中〜2025/05/18

三鷹市美術ギャラリー

東京都・三鷹市

開館30周年記念展 ブラチスラバからやってきた!世界の絵本パレード

開催中〜2025/05/18

千葉市美術館

千葉県・千葉市

生誕100年 中村正義展-その熱と渦-

開催中〜2025/05/18

平塚市美術館

神奈川県・平塚市

手塚治虫「火の鳥」展 -火の鳥は、エントロピー増大と抗う動的平衡(どうてきへいこう)=宇宙生命(コスモゾーン)の象徴-

開催中〜2025/05/25

東京シティビュー(六本木ヒルズ森タワー52階)

東京都・港区

没後80年 小原古邨 ―鳥たちの楽園

開催中〜2025/05/25

太田記念美術館

東京都・渋谷区

DESIGN MUSEUM JAPAN展 2025~集めてつなごう 日本のデザイン~

2025/05/15〜2025/05/25

国立新美術館

東京都・港区

アート・アーカイヴ資料展XXVII 「交信詩あるいは書簡と触発:瀧口修造と荒川修作/マドリン・ギンズ」

開催中〜2025/05/30

慶應義塾大学アート・センター(三田キャンパス 南別館 1階)

東京都・港区

開館50周年記念「1975 甦る 新橋 松岡美術館 ―大観・松園・東洋陶磁―」

開催中〜2025/06/01

松岡美術館

東京都・港区

ゾフィー・トイバー=アルプとジャン・アルプ

開催中〜2025/06/01

アーティゾン美術館

東京都・中央区

すべてを描く萬(よろず)絵師 暁斎 ―河鍋暁斎記念美術館所蔵

開催中〜2025/06/01

中之島 香雪美術館

大阪府・大阪市

イメージの魔術師 エロール・ル・カイン展

開催中〜2025/06/01

八王子市夢美術館

東京都・八王子市

皇室の美と山梨~皇居三の丸尚蔵館の名品~

開催中〜2025/06/01

山梨県立美術館

山梨県・甲府市

特別展 ノー・バウンダリーズ

開催中〜2025/06/01

国立国際美術館

大阪府・大阪市

横浜美術館リニューアルオープン記念展「おかえり、ヨコハマ」

開催中〜2025/06/02

横浜美術館

神奈川県・横浜市

ヨシタケシンスケ展かもしれない たっぷり増量タイプ

開催中〜2025/06/03

CREATIVE MUSEUM TOKYO(東京・京橋TODA BUILDING 6階)

東京都・中央区

「総合開館30周年記念 鷹野隆大 カスババ ―この日常を生きのびるために―」展

開催中〜2025/06/08

東京都写真美術館

東京都・目黒区

マシン・ラブ:ビデオゲーム、AI と現代アート

開催中〜2025/06/08

森美術館

東京都・港区

西洋絵画、どこから見るか?―ルネサンスから印象派まで サンディエゴ美術館 vs 国立西洋美術館

開催中〜2025/06/08

国立西洋美術館

東京都・台東区

企画展示「20世紀イタリアの巨匠 マリノ・マリーニ 新収蔵の版画作品を中心に」

開催中〜2025/06/08

群馬県立近代美術館

群馬県・高崎市

遥かなるイタリア 川村清雄と寺崎武男

開催中〜2025/06/08

目黒区美術館

東京都・目黒区

特別展「古代DNA―日本人のきた道―」

開催中〜2025/06/15

国立科学博物館

東京都・台東区

タピオ・ヴィルカラ 世界の果て

開催中〜2025/06/15

東京ステーションギャラリー

東京都・千代田区

特別展「超 国宝―祈りのかがやき―」

開催中〜2025/06/15

奈良国立博物館

奈良県・奈良市

特別展「日本、美のるつぼ―異文化交流の軌跡―」

開催中〜2025/06/15

京都国立博物館

京都府・京都市

国宝の名刀と甲冑・武者絵 特集展示 三井家の五月人形

開催中〜2025/06/15

三井記念美術館

東京都・中央区

ラーメンどんぶり展 「器」からはじめるラーメン×デザイン考

開催中〜2025/06/15

21_21 DESIGN SIGHT

東京都・港区

特別展「蔦屋重三郎 コンテンツビジネスの風雲児」

開催中〜2025/06/15

東京国立博物館

東京都・台東区

開館記念展III(急) 花ひらく茶と庭園文化―即翁と、二万坪松平不昧 夢の茶苑

開催中〜2025/06/15

荏原 畠山美術館

東京都・港区

春の特別展「食の器と道具」

開催中〜2025/06/20

国際基督教大学博物館湯浅八郎記念館(ICU湯浅八郎記念館)

東京都・三鷹市

花と暮らす展

開催中〜2025/06/22

国立工芸館

石川県・金沢市

横尾忠則 連画の河

開催中〜2025/06/22

世田谷美術館

東京都・世田谷区

総合開館30周年記念 TOPコレクション 不易流行

開催中〜2025/06/22

東京都写真美術館

東京都・目黒区

初夏展「くまもとの絶景―知られざる日本最長画巻『領内名勝図巻』―」

開催中〜2025/06/22

永青文庫

東京都・文京区

藤田嗣治 ―7つの情熱

開催中〜2025/06/22

SOMPO美術館

東京都・新宿区

名作展「川端龍子の描き出した世界 生誕140年を迎えて」

開催中〜2025/06/22

大田区立龍子記念館

東京都・大田区

篠原一男 空間に永遠を刻む——生誕百年 100の問い

開催中〜2025/06/22

TOTOギャラリー・間

東京都・港区

黒の奇跡・曜変天目の秘密

開催中〜2025/06/22

静嘉堂文庫美術館@丸の内

東京都・千代田区

箱根-横須賀連携企画第3弾 アートでつなぐ山と海 箱根・芦ノ湖 成川美術館コレクション展 海辺のミュージアムで楽しむ日本画のきらめき

開催中〜2025/06/22

横須賀美術館

神奈川県・横須賀市

石田尚志 絵と窓の間

開催中〜2025/06/22

アーツ前橋 ギャラリー

群馬県・前橋市

特別企画展「めぐる いのち 熊谷守一美術館40周年展」

開催中〜2025/06/29

豊島区立 熊谷守一美術館

東京都・豊島区

ゴジラ生誕70周年記念 ゴジラ・THE・アート展

開催中〜2025/06/29

森アーツセンターギャラリー

東京都・港区

アーツ・アンド・クラフツとデザイン ウィリアム・モリスからフランク・ロイド・ライトまで

開催中〜2025/06/29

茨城県近代美術館

茨城県・水戸市

まど・みちおのうちゅう―うちゅうの あんなに とおい あそこに さわる―

開催中〜2025/06/29

宇都宮美術館

栃木県・宇都宮市

MOT Plus サウンドウォーク・コレクティヴ & パティ・スミス|コレスポンデンス

開催中〜2025/06/29

東京都現代美術館

東京都・江東区

MOT Plus ハン・ネフケンス財団との共同プロジェクト シャハナ・ラジャニ

開催中〜2025/06/29

東京都現代美術館

東京都・江東区

日本画コレクション再発見と 片岡球子「蔦屋重三郎の浮世絵師たち」

開催中〜2025/06/29

神奈川県立近代美術館 葉山

神奈川県・葉山町

民藝 MINGEI–美は暮らしのなかにある

開催中〜2025/06/29

千葉県立美術館

千葉県・千葉市

鹿島茂コレクション フランスのモダングラフィック展 —20世紀初頭の風刺画からアール・デコ挿絵本、1930年代グラフィック雑誌まで

開催中〜2025/06/29

群馬県立館林美術館

群馬県・館林市

GLAM―黒柳徹子、時代を超えるスタイル―

2025/05/15〜2025/06/29

そごう美術館

神奈川県・横浜市

リビング・モダニティ 住まいの実験 1920s-1970s

開催中〜2025/06/30

国立新美術館

東京都・港区

「この、原美術館ARCという時間芸術」第2期

2025/05/16〜2025/07/06

原美術館ARC

群馬県・渋川市

どうぶつ展 わたしたちはだれ? どこへむかうの?

開催中〜2025/07/06

PLAY! MUSEUM

東京都・立川市

橋口五葉のデザイン世界

2025/05/25〜2025/07/13

府中市美術館

東京都・府中市

岡崎乾二郎 而今而後 ジコンジゴ Time Unfolding Here

開催中〜2025/07/21

東京都現代美術館

東京都・江東区

開館30周年記念 MOTコレクション 9つのプロフィール 1935→2025

開催中〜2025/07/21

東京都現代美術館

東京都・江東区

江戸の名プロデューサー 蔦屋重三郎と浮世絵のキセキ

2025/05/30〜2025/07/21

千葉市美術館

千葉県・千葉市

開館30周年記念 日本美術とあゆむ―若冲・蕭白から新版画まで

2025/05/30〜2025/07/21

千葉市美術館

千葉県・千葉市

企画展「死と再生の物語(ナラティヴ)―中国古代の神話とデザイン―」

2025/06/07〜2025/07/27

泉屋博古館東京

東京都・港区

【特別展】生誕150年記念 上村松園と麗しき女性たち

2025/05/17〜2025/07/27

山種美術館

東京都・渋谷区

士郎正宗の世界展~『攻殻機動隊』と創造の軌跡~

開催中〜2025/08/17

世田谷文学館

東京都・世田谷区

移転開館5周年記念 重要無形文化財指定50周年記念 喜如嘉の芭蕉布展

2025/07/11〜2025/08/24

国立工芸館

石川県・金沢市

ほとけに随侍するもの

開催中〜2025/08/31

半蔵門ミュージアム

東京都・千代田区

藤田嗣治 絵画と写真

2025/07/05〜2025/08/31

東京ステーションギャラリー

東京都・千代田区

ACN ラムセス大王展 ファラオたちの黄金

開催中〜2025/09/07

ラムセス・ミュージアム at CREVIA BASE Tokyo

東京都・江東区

オランジュリー美術館 オルセー美術館 コレクションより ルノワール×セザンヌ—モダンを拓いた2人の巨匠

2025/05/29〜2025/09/07

三菱一号館美術館

東京都・千代田区

「銀河鉄道999」50周年プロジェクト 松本零士展 創作の旅路

2025/06/20〜2025/09/07

東京シティビュー(六本木ヒルズ森タワー52階)

東京都・港区

特集展よみがえる絵画・展示室内開催イベント「びじゅつかんであそぼ@てんじしつ」

2025/06/21〜2025/09/07

平塚市美術館

神奈川県・平塚市

高畑勲展 ̶日本のアニメーションを作った男。

2025/06/27〜2025/09/15

麻布台ヒルズ ギャラリー

東京都・港区

小湊鉄道開業 100 周年記念展「古往今来・発車オーライ!」

開催中〜2025/09/15

市原湖畔美術館

千葉県市原市

原良介 サギ子とフナ子 光のそばで

2025/06/14〜2025/09/15

平塚市美術館

神奈川県・平塚市

藤田嗣治 猫のいる風景

開催中〜2025/09/28

軽井沢安東美術館

長野県・軽井沢町

知られざる秀逸コレクション 東京・足立区立郷土博物館所蔵浮世絵名品展

2025/05/24〜2025/10/05

北斎館

長野県・小布施町

開館50周年記念 おいでよ!松岡動物園

2025/06/17〜2025/10/13

松岡美術館

東京都・港区

Sereneの写実 森本草介・島村信之2人展

2025/05/28〜2025/11/10

ホキ美術館

千葉県・千葉市

企画展「ゴッホ・インパクト—生成する情熱」

2025/05/31〜2025/11/30

ポーラ美術館

神奈川県・足柄下郡箱根町

ライアン・ガンダー:ユー・コンプリート・ミー

2025/05/31〜2025/11/30

ポーラ美術館

神奈川県・足柄下郡箱根町

Exhibitions

生誕130年 エコール・ド・パリの貴公子 パスキン展

夢のなかの情景なのだろうか。
パスキンの虹色に輝く、憂いの世界。

   ■パスキンとは誰か
   お洒落な若者である。左手を顎に当て、大きな目をやや上目使いに挑むようにこちらを見るジュール・パスキン(1885~1930)。彼のこの大きな顔写真が、会場入り口で我々を出迎えてくれる。パリにやってきた翌年の1906年、21歳の姿だ。古来、芸術家を表するポーズという。ブルガリアの裕福なユダヤ人の家庭に生まれたパスキンは、少女や頽廃的な裸婦を描いた独特の作品で成功を収め、時代の寵児となった。1920年代のエコール・ド・パリの画家のなかでも最も活躍した画家の一人であり、一歳年下の藤田嗣治(レオナール・フジタ)(1886~1968)や、ポーランド出身のキスリング(1891~1953)の親友だった。
   その人生は謎をはらむ。彼はパスキンと名のり、作品に小文字でpascinと署名したが、本名はジュリウス・モディカイ・ピンカス。父に本名を使うことを禁止され、Pincasの綴り字を入れ替えて創った名前がパスキンだ。17歳の年に実家を出た後、1913年の母の葬式以外は家族の元に帰らなかった。そして45歳の絶頂期、ジョルジュ・プティ画廊での大規模な個展が開催される前日に、彼はアトリエで自ら命を絶ってしまった。
   パスキンは、まだよく知られている画家とはいえないだろう。生誕130年を記念して日本国内を巡回し、現在、東京のパナソニック 汐留ミュージアムにて開催中の「パスキン展」は、彼が生み出した芸術の全体像を丁寧に紹介する内容だ。本展は、監修と作品選定などにつき、パリにあるパスキン作品を普及させるための活動を行うコミテ・パスキンの全面的な協力を得たもので、ポンピドゥー・センター、パリ市立近代美術館、グルノーブル美術館やヨーロッパの個人コレクションなどから、代表作の油彩画、素描、パステル画、版画、また挿絵本や書簡など120点余りを出品。このような画家がいたのだ。必見である。
   ■展覧会の構成
   時系列で画業の変遷をたどっていく。四つの部から成り、中心となる大きな第4部は、さらに3つに分類される。第1部ミュンヘンからパリへ(1903~1905)。第2部パリ、モンパルナスとモンマルトル(1905~1914)。第3部アメリカ(1914/15~1920)。第4部狂騒の時代(1920~1930)(スタイルの獲得、素描、版画など、真珠母色の絵画)。
   ■絶頂期の作品群(狂騒の時代。真珠母色の絵画へ)
   気がついたら、展覧会場内を何度も往復していた。パスキンは時々に様々な挑戦を行い、画風を変化させるが、全てを集約させていくようにもみえる。特筆すべきは、中心となる第4部「狂騒の時代(レ・ザネ・フォル)」。彼の絶頂期となる。滞米中のパスキンは第一次大戦後の1920年にパリに戻った。世界中から集まった人々で華やぐ1920年代のパリで、パスキンは水彩画のような軽くて淡い色彩の不思議な油彩画を創出した。これは、実際に目にしないとわからないテイストである。《少女-幼い踊り子》(1924年、パリ市立近代美術館蔵)は茫漠とした茶系の背景にピンクのバレエ衣装の少女が立つ。幼いながら毅然とした美しさ。《二人の座る少女》(1925年、パリ市立近代美術館蔵)も蜃気楼のような背景に、二人の少女が別方向を向いて腰かける。黒色の輪郭線が人物を巧みに形づくる。
   第4部の最後のパート➂「真珠母色の絵画」となると、画面は白さと明るさを増し、虹色の光沢を放つようになる。1927年から没する1930年までに制作された3年間の最高傑作群だ。パスキンが到達した豊かな世界が横溢する。どのようにこの油彩画を描いたのだろう。稀にみる薄塗りとにじみにより色彩が溶け合い、真珠貝の殻の内側のように輝く。震えるような細い描線が人物をとらえる。色と形が融解し、夢のなかの情景のようだ。
   なかでも《テーブルのリュシーの肖像》(1928年、個人蔵)が印象深い。パスキンの恋人リュシー・クローグが、花籠や花瓶の置かれたテーブルに両肘を付いて憂いの表情で考え込む。清潔な美しさと深い叙情性。パスキンとリュシーは互いに家庭をもちながら、交際を続けていく。《ジメットとミレイユ》(1927年、パリ市立近代美術館蔵)はアトリエにいる二人のモデルを描く。人物の切り取り方も面白い。両脇に塗り残しがあるようにも見えるが完成作だ。パスキンはポール・セザンヌ(1839~1906)から多く影響を受けたといわれるが、本作にそれがみえる。ある時点で筆を止め、絶妙な空間を構成した。また、《ミレイユ》(1930年、ポンピドゥー・センター蔵)は、定着が弱く輸送困難である貴重なパステル作品。アトリエに座るモデルが居眠りする微笑ましい情景だ。窓からこぼれる太陽の暖かさと画家の心が伝わってきて、忘れがたい。パスキンが亡くなる年に制作された。
   ■パスキンの道のり(ミュンヘン、パリ、アメリカ、そしてパリ)
   パスキンの絵画から、優れた色彩感覚とともに稀なる素描の才能がみえる。彼はまず素描家として若くして成功した画家だった。1885年、ブルガリアの裕福な穀物商の家に生まれたパスキンは、7年後に家族でブカレストに移る。ウィーンやミュンヘンで美術を学び、ミュンヘンではドイツの大型の風刺雑誌『ジンプリツィシムス』と専属契約を結んだ。鋭く巧みな描線による辛辣な素描が評価され、高給を得た。ドイツ表現主義とも出合う。
   そして1905年クリスマス・イヴ、20歳のパスキンは油彩画家を目指してパリにやってきた。すでに素描家として知られ、経済的に恵まれていたパスキンは、芸術家仲間に歓迎され、モンパルナスとモンマルトルに住む。パリでは同年秋にアンリ・マティス(1869~1954)らの色彩豊かなフォーヴィスムが起こり、その後パブロ・ピカソ(1881~1973)らのキュビスムが登場。パスキンは渦巻く美術動向に刺激を受けながら油彩画制作に励んだ。画学生だった後の妻を描いた《エルミーヌ・ダヴィッドの肖像》(1908年、グルノーブル美術館蔵)やモンパルナスのカフェ・ドームに集まる常連の友人を描く《ウィリアム・ハワードの肖像》(1909年、個人蔵)には、フォーヴィスムの影響が見受けられる。これらは1920年代になって発表。一方、素描画は、軽妙な主題と柔らかい描線へと変化をみせる。
   1914年に始まった第一次大戦を避け、パスキンはアメリカに渡りニューヨークに居を構えた。翌年エルミーヌも合流し、1918年に結婚。1920年にはアメリカ国籍を取得した。パスキンは、渡米前年の1913年に開催されたニューヨークでの国際現代美術展「アーモリー・ショウ」に出品し、米国でも注目されていた。滞米中にはキュビスムの作品なども描き、また寒い冬には南部やキューバに旅行し、より自由な画風を創り出した。《キューバでの集い》(1915/1917年、個人蔵)は、暖かな雰囲気でテーブルを囲み談笑する人々を描く。遠景にも人々が小さく見え、中景には上空に浮かぶ天使のような姿がある。多人数の人々を描いた珍しい油彩画で、鮮やかな色彩が軽快に混ざり合い、新しい境地が感じられる。
   1920年、パリに戻ったパスキンは、次々と傑作を生み出していく。先述した油彩画のほかにも、版画、挿絵本など含め、その後に制作した数多くの魅力的な作品が、会場で堪能できる。《祝宴》(1926年、個人蔵、パリ)は卓抜な筆さばきにみとれてしまった。挿絵本の一部を水彩画で描いた《シンデレラ》(1930年、個人蔵、パリ)は動的な画面。飛び出さんばかりである。また、日本で初公開の大作《ダンス》(アクティス・ギャラリー蔵、ロンドン)はアーチ状の形態の異色作。デフォルメされた踊る人々には底抜けの生命力がある。パーティ会場の壁画装飾のために描かれたという。
   ■エコール・ド・パリとは何か
   パスキンは、エコール・ド・パリの寵児と呼ばれることが多い。「エコール・ド・パリ」とは、パリ派を意味する言葉で、広義と狭義があるが、やや曖昧な概念だ。パスキンらを指す場合は、19世紀前半に外国からパリに集まって活躍した画家のグループをいう。
   村上哲氏が執筆された本展図録の論考「パスキンとエコール・ド・パリをめぐって」によると、従来、(パスキンの友人でもあった)批評家アンドレ・ワルローが1925年にこの用語を初めて使ったと紹介されてきたが、1923年に美術批評家のロジェ・アラールが批判的な観点で用いたのが端緒であり、背景には保守的なアカデミズム陣営に、ユダヤ系を中心とする異邦人芸術家の前衛活動に対しての嫌悪感があった、とのことである。
   エコール・ド・パリの画家たちは、フォーヴィスムやキュビスムとは異なり、美術理論や作品に共通性をもつことはない。代表的な画家は、以下である。構成的な造形と叙情性をもつ人物像を描いたアメデオ・モディリアーニ(イタリア出身、1884~1920)、パスキン(ブルガリア出身、アメリカに帰化)、乳白色の肌と線描で知られる藤田嗣治(日本出身、フランスに帰化)。また、色彩にあふれた幻想的な絵画を残したマルク・シャガール(白ロシア、現ベラルーシ出身、1887~1985)。そして、明るい色彩が特徴のキスリング(ポーランド出身、フランスに帰化)、激しいタッチと捻じ曲がる形態を表現したハイム・スーティン(リトアニア出身、1894~1943)ら、である。例外はあるが、ほぼ共通するのは、①異邦人、②ユダヤ系、➂1880~90年代生まれ、という点だ。各々が個性的な芸術を構築した。故郷の民族性も取り入れ、孤独感や哀愁が漂うものも多い。ただパスキンの場合は故郷につながる要素はみられないようだ。互いに影響を受けながら、親しく交友する仲間だった。
   パスキンの、はかなくも強烈な絵画世界。本展にて是非お楽しみください。

【参考文献】
1) ローズマリー・ナポリターノ、ソフィー・クレップス、村上哲ほか 執筆:『パスキン展』(展覧会カタログ)、ホワイトインターナショナル 編集・発行、2014年。


執筆:HOSOKAWA Fonte Idumi 

(2015年2月)


【展覧会英語名】Exposition Pascin au Japon
【会期・会場】
2015年1月17日~3月29日 パナソニック 汐留ミュージアム
<電話> 03-5777-8600ハローダイヤル> 
<詳細>http://panasonic.co.jp/es/museum/

※本文・図版とも無断引用を禁じます。

2015年2月24日