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森美術館開館20周年記念展 ワールド・クラスルーム:現代アートの国語・算数・理科・社会

開催中〜2023/09/24

森美術館

東京都・港区

開館60周年記念 走泥社再考 前衛陶芸が生まれた時代

開催中〜2023/09/24

京都国立近代美術館

京都府・京都市

水のいろ、水のかたち展

開催中〜2023/09/24

国立工芸館

石川県・金沢市

芸術家たちの南仏

開催中〜2023/09/24

宇都宮美術館

栃木県・宇都宮市

夏季展「細川護立の愛した画家たち ―ポール・セザンヌ 梅原龍三郎 安井曾太郎―」

開催中〜2023/09/24

永青文庫

東京都・文京区

【特別展】日本画に挑んだ精鋭たち ―菱田春草、上村松園、川端龍子から松尾敏男へ―

開催中〜2023/09/24

山種美術館

東京都・渋谷区

あの世の探検―地獄の十王勢ぞろい―

開催中〜2023/09/24

静嘉堂@丸の内(静嘉堂文庫美術館)

東京都・千代田区

野又 穫 Continuum 想像の語彙

開催中〜2023/09/24

東京オペラシティ アートギャラリー

東京都・新宿区

エルマーのぼうけん展

開催中〜2023/10/01

PLAY! MUSEUM

東京都・立川市

テート美術館展 光 ― ターナー、印象派から現代へ

開催中〜2023/10/02

国立新美術館

東京都・港区

モネ、ルノワール 印象派の光

開催中〜2023/10/09

松岡美術館

東京都・港区

名作展 画家と生活—川端龍子の晩年の作品から

開催中〜2023/10/09

大田区立龍子記念館

東京都・大田区

うえののそこから「はじまり、はじまり」荒木珠奈 展

開催中〜2023/10/09

東京都美術館

東京都・台東区

中之条ビエンナーレ2023

開催中〜2023/10/09

芸術祭(群馬県中之条町)

群馬県・中之条町

特別展「海ー生命のみなもとー」

開催中〜2023/10/09

国立科学博物館

東京都・台東区

企画展 楽しい隠遁生活 文人たちのマインドフルネス

開催中〜2023/10/15

泉屋博古館東京

東京都

企画展 甲冑・刀・刀装具 光村コレクション・ダイジェスト

開催中〜2023/10/15

根津美術館

東京都・港区

北島敬三「UNTITLED RECORDS : REVISITED + PORTRAITS」展

開催中〜2023/10/22

BankART Station

神奈川県・横浜市

北陸工芸の祭典 GO FOR KOGEI 2023「物質的想像力と物語の縁起― マテリアル、データ、ファンタジー」

開催中〜2023/10/29

芸術祭(富山県富山市富岩運河沿い)

富山県・富山市

瞳の奥にあるもの -表情でみる人物画展-

開催中〜2023/11/05

ホキ美術館

千葉県・千葉市

堅山南風《大震災実写図巻》と近代の画家 大観・玉堂・青邨・蓬春

開催中〜2023/11/05

半蔵門ミュージアム

東京都・千代田区

ジョセフ・アルバースの授業 色と素材の実験室

開催中〜2023/11/05

DIC川村記念美術館

千葉県・佐倉市

MOTコレクション 被膜虚実/特集展示 横尾忠則―水のように/生誕100年 サム・フランシス

開催中〜2023/11/05

東京都現代美術館

東京都・江東区

宇川直宏展 FINAL MEDIA THERA PIST @DOMMUNE

開催中〜2023/11/05

練馬区立美術館

東京都・練馬区

九谷焼の芸術祭 KUTANism 2023

2023/10/06〜2023/11/05

芸術祭(石川県小松市・能美市各所)

石川県・小松市、能美市

土方久功と柚木沙弥郎――熱き体験と創作の愉しみ

開催中〜2023/11/05

世田谷美術館

東京都・世田谷区

テルマエ展 お風呂でつながる古代ローマと日本

開催中〜2023/11/05

山梨県立美術館

山梨県・甲府市

特別展「めぐりあう大津絵―笠間日動美術館・小絲源太郎コレクションと 神戸女子大学古典芸能研究センター・志水文庫の大津絵」

開催中〜2023/11/05

八王子市夢美術館

東京都・八王子市

アーツ・アンド・クラフツとデザイン ウィリアム・モリスからフランク・ロイド・ライトまで

開催中〜2023/11/05

そごう美術館

神奈川県・横浜市

東京の地場に発する国際芸術祭 東京ビエンナーレ2023

開催中〜2023/11/05

芸術祭(東京都心北東エリア〔千代田区、中央区、文京区、台東区の4区にまたがるエリア〕 、歴史的建築物、公共空間、学校、店舗屋上、遊休化した建物等)

東京都・千代田区、中央区、文京区、台東区

春陽会誕生100年 それぞれの闘い 岸田劉生、中川一政から岡鹿之助へ

開催中〜2023/11/12

東京ステーションギャラリー

東京都・千代田区

MIND TRAIL 奥大和 心のなかの美術館

開催中〜2023/11/12

芸術祭(奈良県 吉野町、下北山村、ほか予定)

奈良県・吉野町、下北山村、ほか予定

奥能登国際芸術祭2023

開催中〜2023/11/12

芸術祭(石川県珠洲市)

石川県・珠洲市

TOKAS Project Vol. 6 『凪ぎ、揺らぎ、』

2023/10/07〜2023/11/12

トーキョーアーツアンドスペース本郷

東京都・文京区

松本秋則+松本倫子「惑星トラリス」展

開催中〜2023/11/12

BankART KAIKO

神奈川県・横浜市

浄瑠璃寺九体阿弥陀修理完成記念 特別展「京都・南山城の仏像」

開催中〜2023/11/12

東京国立博物館

東京都・台東区

第75回 正倉院展

2023/10/28〜2023/11/13

奈良国立博物館

奈良県・奈良市

北斗の拳40周年大原画展 ~愛をとりもどせ!!~

2023/10/07〜2023/11/19

森アーツセンターギャラリー(六本木ヒルズ森タワー52F)

東京都・港区

ジャム・セッション 石橋財団コレクション×山口晃 ここへきて やむに止まれぬ サンサシオン

開催中〜2023/11/19

アーティゾン美術館

東京都・中央区

創造の現場― 映画と写真による芸術家の記録

開催中〜2023/11/19

アーティゾン美術館

東京都・中央区

秋の特別展「おまもりとハンコとコイン -古代オリエントの偉大なる小さきものたち-」

開催中〜2023/11/19

古代オリエント博物館

東京都・豊島区

六甲ミーツ・アート芸術散歩 2023 beyond

開催中〜2023/11/23

芸術祭(神戸・六甲山上)

兵庫県・神戸市

美しき時代(ベル・エポック)と異彩のジュエリー

開催中〜2023/11/26

箱根ラリック美術館

神奈川県・箱根町

企画展「北斎のまく笑いの種」

開催中〜2023/11/26

すみだ北斎美術館

東京都・墨田区

横山美術館名品展 明治・大正の輸出陶磁器 技巧から意匠へ

2023/10/07〜2023/11/26

平塚市美術館

神奈川県・平塚市

皇居三の丸尚蔵館収蔵品展 皇室と石川 —麗しき美の煌めき—

2023/10/14〜2023/11/26

国立工芸館(石川県立美術館との共催)

石川県・金沢市

開館20周年 & 富士山世界遺産登録10周年記念 後期「フジヤマミュージアム名品展」

開催中〜2023/11/26

フジヤマミュージアム

山梨県・富士吉田市

特別展「日本画聖地巡礼 ー東山魁夷の京都、奥村土牛の鳴門ー」

2023/09/30〜2023/11/26

山種美術館

東京都・渋谷区

特別展「超絶技巧、未来へ! 明治工芸とそのDNA」

開催中〜2023/11/26

三井記念美術館

東京都・中央区

関東大震災100年企画展 「震災からのあゆみ —未来へつなげる科学技術—」

開催中〜2023/11/26

国立科学博物館

東京都・台東区

シン・ジャパニーズ・ペインティング 革新の日本画―横山大観、 杉山寧から現代の作家まで

開催中〜2023/12/03

ポーラ美術館

神奈川県・足柄下郡箱根町

生誕120年 棟方志功展 メイキング・オブ・ムナカタ

2023/10/06〜2023/12/03

東京国立近代美術館

東京都・千代田区

「横尾忠則 寒山百得」展

開催中〜2023/12/03

東京国立博物館

東京都・台東区

特別展「岡本玉水 人形芸術にかけた生涯—御所人形から玉水人形へ」

2023/10/07〜2023/12/03

さいたま市岩槻人形博物館

埼玉県・さいたま市

特別展「北宋書画精華」

2023/11/03〜2023/12/03

根津美術館

東京都・港区

特別展「やまと絵 -受け継がれる王朝の美-」

2023/10/11〜2023/12/03

東京国立博物館

東京都・台東区

特別展「岡本玉水 人形芸術にかけた生涯—御所人形から玉水人形へ」

2023/10/07〜2023/12/03

さいたま市岩槻人形博物館

埼玉県・さいたま市

日中平和友好条約45周年記念「世界遺産 大シルクロード展」

開催中〜2023/12/10

東京富士美術館

東京都・八王子市

さいたま国際芸術祭2023

2023/10/07〜2023/12/10

芸術祭(さいたま市・旧市民会館おおみや(メイン会場)ほか)

埼玉県・さいたま市

永遠の都ローマ展

開催中〜2023/12/10

東京都美術館

東京都・台東区

イヴ・サンローラン展 時を超えるスタイル

開催中〜2023/12/11

国立新美術館

東京都・港区

コスチュームジュエリー美の変革者たち シャネル、スキャパレッリ、ディオール 小瀧千佐子コレクションより

2023/10/07〜2023/12/17

パナソニック汐留美術館

東京都・港区

布の芸術祭『FUJI TEXTILE WEEK 2023(フジテキスタイルウィーク)』

2023/11/23〜2023/12/17

芸術祭(山梨県富士吉田市)

山梨県・富士吉田市

特別企画展 日本画の棲み家

2023/11/02〜2023/12/17

泉屋博古館東京

東京都・港区

開館1周年記念特別展 二つの頂 —宋磁と清朝官窯—

2023/10/07〜2023/12/17

静嘉堂@丸の内(静嘉堂文庫美術館)

東京都・千代田区

国吉康雄展 ~安眠を妨げる夢~ 福武コレクション・岡山県立美術館のコレクションを中心に

2023/10/24〜2023/12/24

茨城県近代美術館

茨城県・水戸市

「今こそ、ルーシー!」LUCY IS HERE

開催中〜2024/01/08

スヌーピーミュージアム

東京都・町田市

「青空は、太陽の反対側にある:原美術館/原六郎コレクション」第2期(秋冬季)

開催中〜2024/01/08

原美術館ARC

群馬県・渋川市

上野アーティストプロジェクト2023「いのちをうつす ―菌類、植物、動物、人間」

2023/11/16〜2024/01/08

東京都美術館

東京都・台東区

「鹿児島睦 まいにち」展

2023/10/07〜2024/01/08

PLAY! MUSEUM

東京都・立川市

111年目の中原淳一展

2023/11/18〜2024/01/10

そごう美術館

神奈川県・横浜市

ICCアニュアル 2023 ものごとのかたち

開催中〜2024/01/14

NTTインターコミュニケーション・センター [ICC]

東京都・新宿区

企画展「ある従軍カメラマンの追憶 義烈空挺隊員と家族の片影」

2023/10/03〜2024/01/14

平和祈念展示資料館

東京都・新宿区

ゴッホと静物画―伝統と革新へ

2023/10/17〜2024/01/21

SOMPO美術館

東京都・新宿区

モネ 連作の情景

2023/10/20〜2024/01/28

上野の森美術館

東京都・台東区

倉俣史朗のデザイン―記憶のなかの小宇宙

2023/11/18〜2024/01/28

世田谷美術館

東京都・世田谷区

江口寿史展 ノット・コンプリーテッド

2023/09/30〜2024/02/04

世田谷文学館

東京都・世田谷区

アメイジング・チャイナ 深淵なる中国美術の世界

2023/10/24〜2024/02/11

松岡美術館

東京都・港区

みちのく いとしい仏たち

2023/12/02〜2024/02/12

東京ステーションギャラリー

東京都・千代田区

1周年記念特別企画「ようこそ藤田嗣治のお家へ」

開催中〜2024/02/20

軽井沢安東美術館

長野県・軽井沢町

生誕120年 古賀忠雄展 塑造(像)の楽しみ

2023/11/17〜2024/02/25

練馬区立美術館

東京都・練馬区

森美術館開館20周年記念展 私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために

2023/10/18〜2024/03/31

森美術館

東京都・港区

tupera tupera + 遠藤幹子 しつもんパーク in 彫刻の森美術館

開催中〜2024/03/31

彫刻の森美術館

神奈川県・足柄下郡箱根町

岡田健太郎―重なる景体

2023/12/05〜2024/04/07

平塚市美術館

神奈川県・平塚市

Exhibitions

特別展「桃山―天下人の100年」

華麗で豪壮。桃山美術の傑作がそろう。東京国立博物館 平成館にて11月29日まで。

 ■桃山美術とは何か。100年の視野でさぐる。
 作品の放つ絶大なエネルギーに圧倒され続けた。特別展「桃山―天下人の100年」でのことだ。戦国大名が天下統一に向けて戦い、織田信長(1534~82年)や豊臣秀吉(1537~98年)が天下人となった時代の桃山美術の展覧会である。

 時代区分は研究者により違いが生じることもある。本展での年代を確認しておこう。まず政治史での安土桃山時代は、1573年の室町幕府の滅亡、つまり将軍足利義昭が織田信長に降伏した年から、1603年の徳川家康(1542~1616年)による江戸幕府開府までの30年間を指す。なお安土とは信長の居城・安土城の地名であり、桃山とは秀吉晩年の居城・伏見城が廃城後、跡地の木幡山に桃の木が植えられ、江戸時代になって呼ばれた地名だ。そして安土桃山時代に大きく華開いた文化を桃山文化、その美術を桃山美術と称する。それにしても桃山とは言い得て妙である。桃の花が山一面爛漫と咲き誇るイメージがぴったりではないか。

 さて、桃山美術は安土桃山時代に華開いた。しかしその兆しは早くから現われ、大きく発展し、やがて文化の底に沈んでいく。本展では、桃山美術の最盛期の30年間を中心に据えながら、室町時代末の天文年間から江戸時代初期の寛永年間まで、つまり1543~1639年の約100年に視野を拡大する。そのなかで桃山美術の変容する姿を眺め、「桃山美術とは何か」をさぐっていく。中世から近世に至る美意識の変化を追うことになる。全会期で国宝・重要文化財を含む約230件が出品。多数の展示替えがある。

 ■展覧会構成/代表作を隣同士に並べて比較する
 本展は、以下の七つ章で構成されている。
 第一章 桃山の精髄―天下人の造形/第二章 変革期の100年-室町から江戸へ/第三章 桃山前夜―戦国の美/第四章 茶の湯の大成―利休から織部へ/第五章 桃山の成熟-豪壮から瀟洒へ/第六章 武将の装い-刀剣と甲冑/第七章 泰平の世へ―再編される権力の美

 展覧会場では、桃山美術の代表的作品を隣同士に並べて比較するという稀有な展示方法もとられ、うれしい驚きがある。絵画、工芸、茶陶、着物、刀剣や甲冑など多岐にわたるが、絵画のうち大画面の屛風と障壁画を、後期会期の展示を中心に紹介したい。

 ■狩野永徳の《唐獅子図屛風》と国宝《檜図屛風》
 桃山美術の代表的画人である狩野永徳(1543~90年)が描いた金碧画《唐獅子図屛風》(六曲一隻、紙本金地着色、安土桃山時代 16世紀、東京・宮内庁三の丸尚蔵館)(★11月3日~29日展示)の迫力は、破格である。まず大きいのだ。縦2m20cmを超える画面の大きさ。その巨大画面に体長2mほどの極大の二頭の唐獅子が、輝く金地を背景に勢いよく歩みを進める。背景には奥行きがない。ギョロリとした眼差し。エネルギーみなぎる重量のある体躯。動勢のすさまじさ。間近で接すると、表現しがたいほどの威圧感が襲う。永徳は唐獅子の体躯は太く大胆な筆で、たてがみや尾は円環状に細かく、また背景の崖や樹枝は粗い速筆で、巧みに描き分けている。本作は桃山絵画の頂点の一つであろう。主題も表現も戦国大名や天下人が望むものだったろう。毛利家に伝来したこの作品は、豊臣秀吉が備中高松の毛利攻めでの講和記念として贈った陣屋屛風との伝承があるが、資料は残っていない。秀吉の城郭御殿の障壁画という推測もなされている。
 
 狩野永徳が晩年に制作した国宝《檜図屛風》(四曲一双、紙本金地着色、安土桃山時代 天正18(1590)年、東京国立博物館)(★展示期間終了)も、一本の檜の巨樹という単独モチーフを力強く金地の大画面に描写する。生命力があふれ、枝ぶりはのたうち回る大蛇のようだ。本作は秀吉が創設した八条宮家の、障壁画を屛風に改装したものと考えられている。永徳は《檜図屛風》を制作した年に48歳で世を去った。

 狩野永徳は、室町幕府の御用絵師となった狩野派の四代目として狩野派を率い、戦乱の世も織田信長や豊臣秀吉に重用された。時代精神を汲み取った大画様式を確立し、信長が築いた安土城をはじめ、戦国大名や天下人の城郭御殿などの美術を多数手がけた。

 ■狩野元信、狩野永徳、狩野探幽の「水墨花鳥画」を比較する
 桃山絵画には金地に濃彩を施した金碧画と、室町時代以来の水墨画の二つの領域がある。11月3日からの会期後期で、室町時代から江戸初期までの水墨花鳥図の代表的な三作(※以下の三作)が並んで展示され、壮観だ。絵画表現の変容の様子がはっきり見てとれる。

 狩野元信が室町時代に描いた《四季花鳥図屛風》(六曲一双、紙本墨画淡彩、室町時代 16世紀)(★11月3日~29日展示)は、屛風両端に樹木を配し、中心に水辺を置くV字形の構図。奥行きのある背景。そこに鶴や雁たちが呼応しあう。幽玄で優雅である。狩野元信(1477~1559年)は、室町時代を代表する画人だ。室町幕府の御用絵師となった父・狩野正信(1434~1530年)の跡を継ぐ狩野派の二代目として、その後の狩野派の発展のための基礎を築いた。中国の画人の様式から「画法」を創り出し、狩野派を中国画に基礎を置く漢画に加えてやまと絵分野にも進出させ、また大仕事を引き受けられる集団作画体制を作り上げた。

 狩野永徳は狩野元信の孫にあたる。永徳の筆になる国宝《花鳥図襖》(四面、紙本墨画、室町時代 16世紀、京都・聚光院)(★11月3日~29日展示)は室町時代の制作だが、桃山美術を先駆けたものだ。元信の花鳥画の形式を踏まえつつ、大きく変容させている。モチーフに近接し拡大して描写する。大地をわしづかみするような根元から、力強く伸びる梅の巨木を中央に配し、梅の枝は画面を突き抜けるように縦横に広がる。力動感がほとばしる。鳥たちの存在感も強い。奥行きが浅い。画面全体に光があふれる。本作は聚光院の室中襖だ。聚光院は京都を実効支配した三好長慶の菩提寺・大徳寺の塔頭である

 京で活躍した狩野派の中枢は、江戸幕府の御用絵師として、江戸に本拠を移し、その地位を長く保った。永徳の孫である狩野探幽(1602~74年)は江戸時代初期に新しい探幽様式を確立し、江戸での狩野派集団である江戸狩野を率いた。探幽が描いた重要文化財《雪中梅竹遊禽図襖》(四面、紙本墨画、江戸時代 寛永11(1634)年、愛知・名古屋城総合事務所)(★11月3日~29日展示)はその代表作である。雪の積もった梅の巨木を中央に配し、尾長鳥が舞う。モチーフの近接拡大は祖父譲りだが、画風の違いは衝撃的である。探幽は淡泊瀟洒な画風を創出した。大きな余白に詩情と余韻を漂わせる。本作は名古屋城本丸御殿上洛殿の障壁画。名古屋城は徳川三代将軍家光(1604~51年)の上洛時の宿舎として建設された。

 ■長谷川等伯の国宝《楓図壁貼付》と国宝《松林図屛風》
 狩野永徳とともに桃山美術を代表する画人が長谷川等伯(1539~1610年)である。11月3日からの会期後期では、会場で永徳の描いた《唐獅子図屛風》と、等伯の金碧画と水墨画の代表作が並べて展示され、その対比が興味深い。

 長谷川等伯が描いた国宝《楓図壁貼付》(四面、紙本金地着色、安土桃山時代 文禄元(1592)年頃、京都・智積院)は金碧障壁画だ。中央に楓の大樹を配し、画面を突き破るような形を成し、永徳が確立した大画様式をとるが、しかし永徳の《唐獅子図屛風》とは絵の質が異なる。威圧感がない。金地も永徳の跳ね返すような硬質的なものではない。永徳が華麗で豪壮で動的とすると、等伯の本作は華麗さに和らぎが重なる。また紅葉する楓の葉は文様のように平板に描かれているのに、自然に見える。この作品は豊臣秀吉が早世した息子・鶴松の菩提寺として創建した祥雲寺客殿の障壁画として描かれた。極楽浄土の世界なのだろうか。

 長谷川等伯による国宝《松林図屛風》(六曲一双、紙本墨画、安土桃山時代 16世紀、東京国立博物館)(★10月20日~11月29日展示)は、日本の水墨画の最高傑作とされる。墨で松林だけを描くが、画面には湿潤な空気も奥行きも出現する。眺めているうちに絵に吸い込まれるような気分になる。等伯が中国南宋末元初の画家・牧谿(もっけい)(13世紀)の作品に学び、やまと絵の伝統を融合させて到達した作品とされる。寺院の障壁画の下絵だとの説が有力だが、謎を多く秘めているそうだ。

 長谷川等伯は能登七尾の出身。地元で仏画などを制作した後、上洛。牧谿らの水墨画を摂取し、永徳の新様式も習得し、独自の画風を確立。豊臣秀吉や茶人・千利休(1522~91年)に重用された。

 ■「洛中洛外図屛風」の変遷 
 会期の全期を通して、いくつもの「洛中洛外図屛風」が出品され、その変遷が辿れる。洛中とは、平安京が中国の洛陽にならって造られた京の市中を、洛外とは京の郊外を指す。「洛中洛外図屛風」は、金雲のあいまに京のみやこの名所や行事を民衆の姿とともに描いた都市景観図であり、人々の生活が活写するという点で風俗画でもある。

 室町時代に描かれたものは、内裏と将軍邸を対峙させ、中央に町の様子を描写する。狩野永徳が23歳の年に描いた国宝《洛中洛外図屛風(上杉家本)》(六曲一双、紙本金地着色、室町時代 永禄8(1565)年、山形・米沢市上杉博物館)(★展示期間終了)は、室町時代の特徴を踏襲しながらも、2500人近くの人々を実に表情豊かに生き生きと描いた点が特徴だ。子供や犬たちも楽しそうだ。永徳の愛情のこもった眼差しが感じられる。本作は織田信長が入手し、上杉謙信に贈ったと伝わる。また、江戸時代に入って制作された「洛中洛外図屛風」は、徳川幕府の京での拠点である二条城が大きく描かれるように変化する。一方、岩佐又兵衛(1578~1650年)が筆を振るった国宝《洛中洛外図屛風(舟木家本)》(六曲一双、紙本金地着色、江戸時代 17世紀、東京国立博物館)(★10月27日~11月29日展示)では、歌舞伎や遊里に遊ぶ庶民の描写に又兵衛の目的があることがわかる。

 ■海北友松、狩野山楽、狩野山雪の作品
 狩野永徳が活躍した後、海北友松(かいほうゆうしょう)(1596~1615年)は、重要文化財《琴棋書画図屛風》(六曲一双、紙本着色、安土桃山~江戸時代 17世紀、東京国立博物館)(★11月3日~29日展示)などにおおらかで自在な筆致を見せる。永徳の弟子で、京に残った狩野派を率いた狩野山楽(1559~1635年)による京都・大覚寺の重要文化財《紅梅図襖》《牡丹図襖》(ともに、八面、紙本金地着色。江戸時代 17世紀、京都・大覚寺)はあでやかだ。山楽は二条城二の丸御殿障壁画で壮大な画風を見せる。また、山楽の弟子の狩野山雪(1590~1651年)の描いた重要文化財《籬(まがき)に草花図襖》 (四面、紙本金地着色、江戸時代 寛永8(1631)年、京都・天球院)は幾何学的でありながら繊細。その新奇性に魅了され、しばし見入った。

 本展は、いくつもの展覧会が重層するような豪華な展覧会である。多様な作品がどのように生み出されたのか。想像しながら楽しみたい。


【参考文献】
1)東京国立博物館・読売新聞社 編集:『特別展 桃山展―天下人の100年』(展覧会図録)、
読売新聞社 発行、2020年。

執筆:細川いづみ (HOSOKAWA Fonte Idumi) 
(2020年11月)


※会場内の風景画像は主催者側の許可を得て撮影したものです。


写真1 狩野永徳筆《唐獅子図屛風》、
六曲一隻、紙本金地着色、安土桃山時代 16世紀、東京・宮内庁三の丸尚蔵館。
(★11月3日~29日展示)

写真2 狩野永徳筆 国宝《檜図屛風》、
四曲一双、紙本金地着色、安土桃山時代 天正18(1590)年、東京国立博物館。
(★展示期間終了)

写真3 長谷川等伯筆 国宝《楓図壁貼付》、
四面、紙本金地着色、安土桃山時代 文禄元(1592)年頃、京都・智積院。
(★通期展示)

写真4 会場風景。狩野山楽筆 重要文化財《牡丹図襖》、
八面、紙本金地着色。江戸時代 17世紀、京都・大覚寺)
(★通期展示)
(撮影:I.HOSOKAWA)

写真5 会場風景。狩野山雪筆 重要文化財《籬に草花図襖》、
四面、紙本金地着色、江戸時代 寛永8(1631)年、京都・天球院。
(★通期展示)
(撮影:I.HOSOKAWA)
 

【展覧会名】
特別展「桃山―天下人の100年」

Momoyama: Artistic Visions in a Turbulent Century
【会期・会場】
2020年10月6日(火)~11月29日(日)  東京国立博物館 平成館
★注意:本展は事前予約制です。オンラインでの日時指定券の予約が必要です。
チケットは売り切れる可能性があるため、詳細は展覧会公式サイトをご確認ください。
【展覧会公式サイト】
https://tsumugu.yomiuri.co.jp/momoyama2020/
<電話> 03-5777-8600(ハローダイヤル)

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