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寺山修司展(コレクション展)

開催中〜2025/03/30

世田谷文学館

東京都・世田谷区

平山郁夫《想一想》と昭和期の日本画家たち

開催中〜2025/03/30

半蔵門ミュージアム

東京都・千代田区

MOTコレクション 竹林之七妍/小さな光/開館30周年記念プレ企画 イケムラレイコ マーク・マンダース  Rising Light/Frozen Moment

開催中〜2025/03/30

東京都現代美術館

東京都・江東区

VOCA展2025 現代美術の展望-新しい平面の作家たち

開催中〜2025/03/30

上野の森美術館

東京都・台東区

特別展 魂を込めた 円空仏 —飛騨・千光寺を中心にして—

開催中〜2025/03/30

三井記念美術館

東京都・中央区

片桐石州 -江戸の武家の茶-

開催中〜2025/03/30

根津美術館

東京都・港区

体感型デジタルアートミュージアム「動き出す浮世絵展 TOKYO」

開催中〜2025/03/31

寺田倉庫G1ビル

東京都・品川区

DIC川村記念美術館 1990–2025 作品、建築、自然

開催中〜2025/03/31

DIC川村記念美術館

千葉県・佐倉市

ブルックリン博物館所蔵 特別展 古代エジプト

開催中〜2025/04/06

森アーツセンターギャラリー

東京都・港区

インフルエンサー 北斎

開催中〜2025/04/06

北斎館

長野県・小布施町

キース・ヘリング展 アートをストリートへ

開催中〜2025/04/06

茨城県近代美術館

茨城県・水戸市

緑の惑星 セタビの森の植物たち

開催中〜2025/04/13

世田谷美術館

東京都・世田谷区

没後120年 エミール・ガレ:憧憬のパリ

開催中〜2025/04/13

サントリー美術館

東京都・港区

【特別展】桜 さくら SAKURA 2025 ―美術館でお花見!

開催中〜2025/05/11

山種美術館

東京都・渋谷区

松山智一展 FIRST LAST

開催中〜2025/05/11

麻布台ヒルズ ギャラリー(麻布台ヒルズ ガーデンプラザA MB階)

東京都・港区

「この、原美術館ARCという時間芸術」第1期

開催中〜2025/05/11

原美術館ARC

群馬県・渋川市

春の江戸絵画まつり 司馬江漢と亜欧堂田善 かっこいい油絵

開催中〜2025/05/11

府中市美術館

東京都・府中市

特別展「学習院コレクション 華族文化 美の玉手箱 芸術と伝統文化のパトロネージュ」

開催中〜2025/05/17

霞会館記念学習院ミュージアム

東京都・豊島区

カラーズ — 色の秘密にせまる 印象派から現代アートへ

開催中〜2025/05/18

ポーラ美術館

神奈川県・足柄下郡箱根町

企画展「ライトアップ木島櫻谷II― おうこくの線をさがしに 併設四季連作屏風」

2025/04/05〜2025/05/18

泉屋博古館東京

東京都・港区

略画 — はずむ筆、おどる線—

2025/04/12〜2025/05/18

北斎館

長野県・小布施町

戦後西ドイツのグラフィックデザイン モダニズム再発見

開催中〜2025/05/18

東京都写真美術館

東京都・目黒区

手塚治虫「火の鳥」展 -火の鳥は、エントロピー増大と抗う動的平衡(どうてきへいこう)=宇宙生命(コスモゾーン)の象徴-

開催中〜2025/05/25

東京シティビュー(六本木ヒルズ森タワー52階)

東京都・港区

北斎×プロデューサーズ 蔦屋重三郎から現代まで

開催中〜2025/05/25

すみだ北斎美術館

東京都・墨田区

アート・アーカイヴ資料展XXVII 「交信詩あるいは書簡と触発:瀧口修造と荒川修作/マドリン・ギンズ」

開催中〜2025/05/30

慶應義塾大学アート・センター(三田キャンパス 南別館 1階)

東京都・港区

開館50周年記念「1975 甦る 新橋 松岡美術館 ―大観・松園・東洋陶磁―」

開催中〜2025/06/01

松岡美術館

東京都・港区

ゾフィー・トイバー=アルプとジャン・アルプ

開催中〜2025/06/01

アーティゾン美術館

東京都・中央区

すべてを描く萬(よろず)絵師 暁斎 ―河鍋暁斎記念美術館所蔵

2025/04/26〜2025/06/01

中之島 香雪美術館

大阪府・大阪市

横浜美術館リニューアルオープン記念展「おかえり、ヨコハマ」

開催中〜2025/06/02

横浜美術館

神奈川県・横浜市

ヨシタケシンスケ展かもしれない たっぷり増量タイプ

開催中〜2025/06/03

CREATIVE MUSEUM TOKYO(東京・京橋TODA BUILDING 6階)

東京都・中央区

「総合開館30周年記念 鷹野隆大 カスババ ―この日常を生きのびるために―」展

開催中〜2025/06/08

東京都写真美術館

東京都・目黒区

マシン・ラブ:ビデオゲーム、AI と現代アート

開催中〜2025/06/08

森美術館

東京都・港区

西洋絵画、どこから見るか?―ルネサンスから印象派まで サンディエゴ美術館 vs 国立西洋美術館

開催中〜2025/06/08

国立西洋美術館

東京都・台東区

特別展「古代DNA―日本人のきた道―」

開催中〜2025/06/15

国立科学博物館

東京都・台東区

タピオ・ヴィルカラ 世界の果て

2025/04/05〜2025/06/15

東京ステーションギャラリー

東京都・千代田区

特別展「超 国宝―祈りのかがやき―」

2025/04/19〜2025/06/15

奈良国立博物館

奈良県・奈良市

特別展「日本、美のるつぼ―異文化交流の軌跡―」

2025/04/19〜2025/06/15

京都国立博物館

京都府・京都市

国宝の名刀と甲冑・武者絵 特集展示 三井家の五月人形

2025/04/12〜2025/06/15

三井記念美術館

東京都・中央区

ラーメンどんぶり展 「器」からはじめるラーメン×デザイン考

開催中〜2025/06/15

21_21 DESIGN SIGHT

東京都・港区

花と暮らす展

開催中〜2025/06/22

国立工芸館

石川県・金沢市

横尾忠則 連画の河

2025/04/26〜2025/06/22

世田谷美術館

東京都・世田谷区

総合開館30周年記念 TOPコレクション 不易流行

2025/04/05〜2025/06/22

東京都写真美術館

東京都・目黒区

初夏展「くまもとの絶景―知られざる日本最長画巻『領内名勝図巻』―」

2025/04/26〜2025/06/22

永青文庫

東京都・文京区

藤田嗣治 ―7つの情熱

2025/04/12〜2025/06/22

SOMPO美術館

東京都・新宿区

特別企画展「めぐる いのち 熊谷守一美術館40周年展」

2025/04/15〜2025/06/29

豊島区立 熊谷守一美術館

東京都・豊島区

ゴジラ生誕70周年記念 ゴジラ・THE・アート展

2025/04/26〜2025/06/29

森アーツセンターギャラリー

東京都・港区

アーツ・アンド・クラフツとデザイン ウィリアム・モリスからフランク・ロイド・ライトまで

2025/04/19〜2025/06/29

茨城県近代美術館

茨城県・水戸市

まど・みちおのうちゅう―うちゅうの あんなに とおい あそこに さわる―

2025/04/27〜2025/06/29

宇都宮美術館

栃木県・宇都宮市

リビング・モダニティ 住まいの実験 1920s-1970s

開催中〜2025/06/30

国立新美術館

東京都・港区

「この、原美術館ARCという時間芸術」第2期

2025/05/16〜2025/07/06

原美術館ARC

群馬県・渋川市

どうぶつ展 わたしたちはだれ? どこへむかうの?

2025/04/16〜2025/07/06

PLAY! MUSEUM

東京都・立川市

岡崎乾二郎 而今而後 ジコンジゴ Time Unfolding Here

2025/04/29〜2025/07/21

東京都現代美術館

東京都・江東区

士郎正宗の世界展~『攻殻機動隊』と創造の軌跡~

2025/04/12〜2025/08/17

世田谷文学館

東京都・世田谷区

ほとけに随侍するもの

2025/04/23〜2025/08/31

半蔵門ミュージアム

東京都・千代田区

ACN ラムセス大王展 ファラオたちの黄金

開催中〜2025/09/07

ラムセス・ミュージアム at CREVIA BASE Tokyo

東京都・江東区

藤田嗣治 猫のいる風景

開催中〜2025/09/28

軽井沢安東美術館

長野県・軽井沢町

Exhibitions

特別展「桃山―天下人の100年」

華麗で豪壮。桃山美術の傑作がそろう。東京国立博物館 平成館にて11月29日まで。

 ■桃山美術とは何か。100年の視野でさぐる。
 作品の放つ絶大なエネルギーに圧倒され続けた。特別展「桃山―天下人の100年」でのことだ。戦国大名が天下統一に向けて戦い、織田信長(1534~82年)や豊臣秀吉(1537~98年)が天下人となった時代の桃山美術の展覧会である。

 時代区分は研究者により違いが生じることもある。本展での年代を確認しておこう。まず政治史での安土桃山時代は、1573年の室町幕府の滅亡、つまり将軍足利義昭が織田信長に降伏した年から、1603年の徳川家康(1542~1616年)による江戸幕府開府までの30年間を指す。なお安土とは信長の居城・安土城の地名であり、桃山とは秀吉晩年の居城・伏見城が廃城後、跡地の木幡山に桃の木が植えられ、江戸時代になって呼ばれた地名だ。そして安土桃山時代に大きく華開いた文化を桃山文化、その美術を桃山美術と称する。それにしても桃山とは言い得て妙である。桃の花が山一面爛漫と咲き誇るイメージがぴったりではないか。

 さて、桃山美術は安土桃山時代に華開いた。しかしその兆しは早くから現われ、大きく発展し、やがて文化の底に沈んでいく。本展では、桃山美術の最盛期の30年間を中心に据えながら、室町時代末の天文年間から江戸時代初期の寛永年間まで、つまり1543~1639年の約100年に視野を拡大する。そのなかで桃山美術の変容する姿を眺め、「桃山美術とは何か」をさぐっていく。中世から近世に至る美意識の変化を追うことになる。全会期で国宝・重要文化財を含む約230件が出品。多数の展示替えがある。

 ■展覧会構成/代表作を隣同士に並べて比較する
 本展は、以下の七つ章で構成されている。
 第一章 桃山の精髄―天下人の造形/第二章 変革期の100年-室町から江戸へ/第三章 桃山前夜―戦国の美/第四章 茶の湯の大成―利休から織部へ/第五章 桃山の成熟-豪壮から瀟洒へ/第六章 武将の装い-刀剣と甲冑/第七章 泰平の世へ―再編される権力の美

 展覧会場では、桃山美術の代表的作品を隣同士に並べて比較するという稀有な展示方法もとられ、うれしい驚きがある。絵画、工芸、茶陶、着物、刀剣や甲冑など多岐にわたるが、絵画のうち大画面の屛風と障壁画を、後期会期の展示を中心に紹介したい。

 ■狩野永徳の《唐獅子図屛風》と国宝《檜図屛風》
 桃山美術の代表的画人である狩野永徳(1543~90年)が描いた金碧画《唐獅子図屛風》(六曲一隻、紙本金地着色、安土桃山時代 16世紀、東京・宮内庁三の丸尚蔵館)(★11月3日~29日展示)の迫力は、破格である。まず大きいのだ。縦2m20cmを超える画面の大きさ。その巨大画面に体長2mほどの極大の二頭の唐獅子が、輝く金地を背景に勢いよく歩みを進める。背景には奥行きがない。ギョロリとした眼差し。エネルギーみなぎる重量のある体躯。動勢のすさまじさ。間近で接すると、表現しがたいほどの威圧感が襲う。永徳は唐獅子の体躯は太く大胆な筆で、たてがみや尾は円環状に細かく、また背景の崖や樹枝は粗い速筆で、巧みに描き分けている。本作は桃山絵画の頂点の一つであろう。主題も表現も戦国大名や天下人が望むものだったろう。毛利家に伝来したこの作品は、豊臣秀吉が備中高松の毛利攻めでの講和記念として贈った陣屋屛風との伝承があるが、資料は残っていない。秀吉の城郭御殿の障壁画という推測もなされている。
 
 狩野永徳が晩年に制作した国宝《檜図屛風》(四曲一双、紙本金地着色、安土桃山時代 天正18(1590)年、東京国立博物館)(★展示期間終了)も、一本の檜の巨樹という単独モチーフを力強く金地の大画面に描写する。生命力があふれ、枝ぶりはのたうち回る大蛇のようだ。本作は秀吉が創設した八条宮家の、障壁画を屛風に改装したものと考えられている。永徳は《檜図屛風》を制作した年に48歳で世を去った。

 狩野永徳は、室町幕府の御用絵師となった狩野派の四代目として狩野派を率い、戦乱の世も織田信長や豊臣秀吉に重用された。時代精神を汲み取った大画様式を確立し、信長が築いた安土城をはじめ、戦国大名や天下人の城郭御殿などの美術を多数手がけた。

 ■狩野元信、狩野永徳、狩野探幽の「水墨花鳥画」を比較する
 桃山絵画には金地に濃彩を施した金碧画と、室町時代以来の水墨画の二つの領域がある。11月3日からの会期後期で、室町時代から江戸初期までの水墨花鳥図の代表的な三作(※以下の三作)が並んで展示され、壮観だ。絵画表現の変容の様子がはっきり見てとれる。

 狩野元信が室町時代に描いた《四季花鳥図屛風》(六曲一双、紙本墨画淡彩、室町時代 16世紀)(★11月3日~29日展示)は、屛風両端に樹木を配し、中心に水辺を置くV字形の構図。奥行きのある背景。そこに鶴や雁たちが呼応しあう。幽玄で優雅である。狩野元信(1477~1559年)は、室町時代を代表する画人だ。室町幕府の御用絵師となった父・狩野正信(1434~1530年)の跡を継ぐ狩野派の二代目として、その後の狩野派の発展のための基礎を築いた。中国の画人の様式から「画法」を創り出し、狩野派を中国画に基礎を置く漢画に加えてやまと絵分野にも進出させ、また大仕事を引き受けられる集団作画体制を作り上げた。

 狩野永徳は狩野元信の孫にあたる。永徳の筆になる国宝《花鳥図襖》(四面、紙本墨画、室町時代 16世紀、京都・聚光院)(★11月3日~29日展示)は室町時代の制作だが、桃山美術を先駆けたものだ。元信の花鳥画の形式を踏まえつつ、大きく変容させている。モチーフに近接し拡大して描写する。大地をわしづかみするような根元から、力強く伸びる梅の巨木を中央に配し、梅の枝は画面を突き抜けるように縦横に広がる。力動感がほとばしる。鳥たちの存在感も強い。奥行きが浅い。画面全体に光があふれる。本作は聚光院の室中襖だ。聚光院は京都を実効支配した三好長慶の菩提寺・大徳寺の塔頭である

 京で活躍した狩野派の中枢は、江戸幕府の御用絵師として、江戸に本拠を移し、その地位を長く保った。永徳の孫である狩野探幽(1602~74年)は江戸時代初期に新しい探幽様式を確立し、江戸での狩野派集団である江戸狩野を率いた。探幽が描いた重要文化財《雪中梅竹遊禽図襖》(四面、紙本墨画、江戸時代 寛永11(1634)年、愛知・名古屋城総合事務所)(★11月3日~29日展示)はその代表作である。雪の積もった梅の巨木を中央に配し、尾長鳥が舞う。モチーフの近接拡大は祖父譲りだが、画風の違いは衝撃的である。探幽は淡泊瀟洒な画風を創出した。大きな余白に詩情と余韻を漂わせる。本作は名古屋城本丸御殿上洛殿の障壁画。名古屋城は徳川三代将軍家光(1604~51年)の上洛時の宿舎として建設された。

 ■長谷川等伯の国宝《楓図壁貼付》と国宝《松林図屛風》
 狩野永徳とともに桃山美術を代表する画人が長谷川等伯(1539~1610年)である。11月3日からの会期後期では、会場で永徳の描いた《唐獅子図屛風》と、等伯の金碧画と水墨画の代表作が並べて展示され、その対比が興味深い。

 長谷川等伯が描いた国宝《楓図壁貼付》(四面、紙本金地着色、安土桃山時代 文禄元(1592)年頃、京都・智積院)は金碧障壁画だ。中央に楓の大樹を配し、画面を突き破るような形を成し、永徳が確立した大画様式をとるが、しかし永徳の《唐獅子図屛風》とは絵の質が異なる。威圧感がない。金地も永徳の跳ね返すような硬質的なものではない。永徳が華麗で豪壮で動的とすると、等伯の本作は華麗さに和らぎが重なる。また紅葉する楓の葉は文様のように平板に描かれているのに、自然に見える。この作品は豊臣秀吉が早世した息子・鶴松の菩提寺として創建した祥雲寺客殿の障壁画として描かれた。極楽浄土の世界なのだろうか。

 長谷川等伯による国宝《松林図屛風》(六曲一双、紙本墨画、安土桃山時代 16世紀、東京国立博物館)(★10月20日~11月29日展示)は、日本の水墨画の最高傑作とされる。墨で松林だけを描くが、画面には湿潤な空気も奥行きも出現する。眺めているうちに絵に吸い込まれるような気分になる。等伯が中国南宋末元初の画家・牧谿(もっけい)(13世紀)の作品に学び、やまと絵の伝統を融合させて到達した作品とされる。寺院の障壁画の下絵だとの説が有力だが、謎を多く秘めているそうだ。

 長谷川等伯は能登七尾の出身。地元で仏画などを制作した後、上洛。牧谿らの水墨画を摂取し、永徳の新様式も習得し、独自の画風を確立。豊臣秀吉や茶人・千利休(1522~91年)に重用された。

 ■「洛中洛外図屛風」の変遷 
 会期の全期を通して、いくつもの「洛中洛外図屛風」が出品され、その変遷が辿れる。洛中とは、平安京が中国の洛陽にならって造られた京の市中を、洛外とは京の郊外を指す。「洛中洛外図屛風」は、金雲のあいまに京のみやこの名所や行事を民衆の姿とともに描いた都市景観図であり、人々の生活が活写するという点で風俗画でもある。

 室町時代に描かれたものは、内裏と将軍邸を対峙させ、中央に町の様子を描写する。狩野永徳が23歳の年に描いた国宝《洛中洛外図屛風(上杉家本)》(六曲一双、紙本金地着色、室町時代 永禄8(1565)年、山形・米沢市上杉博物館)(★展示期間終了)は、室町時代の特徴を踏襲しながらも、2500人近くの人々を実に表情豊かに生き生きと描いた点が特徴だ。子供や犬たちも楽しそうだ。永徳の愛情のこもった眼差しが感じられる。本作は織田信長が入手し、上杉謙信に贈ったと伝わる。また、江戸時代に入って制作された「洛中洛外図屛風」は、徳川幕府の京での拠点である二条城が大きく描かれるように変化する。一方、岩佐又兵衛(1578~1650年)が筆を振るった国宝《洛中洛外図屛風(舟木家本)》(六曲一双、紙本金地着色、江戸時代 17世紀、東京国立博物館)(★10月27日~11月29日展示)では、歌舞伎や遊里に遊ぶ庶民の描写に又兵衛の目的があることがわかる。

 ■海北友松、狩野山楽、狩野山雪の作品
 狩野永徳が活躍した後、海北友松(かいほうゆうしょう)(1596~1615年)は、重要文化財《琴棋書画図屛風》(六曲一双、紙本着色、安土桃山~江戸時代 17世紀、東京国立博物館)(★11月3日~29日展示)などにおおらかで自在な筆致を見せる。永徳の弟子で、京に残った狩野派を率いた狩野山楽(1559~1635年)による京都・大覚寺の重要文化財《紅梅図襖》《牡丹図襖》(ともに、八面、紙本金地着色。江戸時代 17世紀、京都・大覚寺)はあでやかだ。山楽は二条城二の丸御殿障壁画で壮大な画風を見せる。また、山楽の弟子の狩野山雪(1590~1651年)の描いた重要文化財《籬(まがき)に草花図襖》 (四面、紙本金地着色、江戸時代 寛永8(1631)年、京都・天球院)は幾何学的でありながら繊細。その新奇性に魅了され、しばし見入った。

 本展は、いくつもの展覧会が重層するような豪華な展覧会である。多様な作品がどのように生み出されたのか。想像しながら楽しみたい。


【参考文献】
1)東京国立博物館・読売新聞社 編集:『特別展 桃山展―天下人の100年』(展覧会図録)、
読売新聞社 発行、2020年。

執筆:細川いづみ (HOSOKAWA Fonte Idumi) 
(2020年11月)


※会場内の風景画像は主催者側の許可を得て撮影したものです。


写真1 狩野永徳筆《唐獅子図屛風》、
六曲一隻、紙本金地着色、安土桃山時代 16世紀、東京・宮内庁三の丸尚蔵館。
(★11月3日~29日展示)

写真2 狩野永徳筆 国宝《檜図屛風》、
四曲一双、紙本金地着色、安土桃山時代 天正18(1590)年、東京国立博物館。
(★展示期間終了)

写真3 長谷川等伯筆 国宝《楓図壁貼付》、
四面、紙本金地着色、安土桃山時代 文禄元(1592)年頃、京都・智積院。
(★通期展示)

写真4 会場風景。狩野山楽筆 重要文化財《牡丹図襖》、
八面、紙本金地着色。江戸時代 17世紀、京都・大覚寺)
(★通期展示)
(撮影:I.HOSOKAWA)

写真5 会場風景。狩野山雪筆 重要文化財《籬に草花図襖》、
四面、紙本金地着色、江戸時代 寛永8(1631)年、京都・天球院。
(★通期展示)
(撮影:I.HOSOKAWA)
 

【展覧会名】
特別展「桃山―天下人の100年」

Momoyama: Artistic Visions in a Turbulent Century
【会期・会場】
2020年10月6日(火)~11月29日(日)  東京国立博物館 平成館
★注意:本展は事前予約制です。オンラインでの日時指定券の予約が必要です。
チケットは売り切れる可能性があるため、詳細は展覧会公式サイトをご確認ください。
【展覧会公式サイト】
https://tsumugu.yomiuri.co.jp/momoyama2020/
<電話> 03-5777-8600(ハローダイヤル)

※本文・図版とも無断引用・無断転載を禁じます。