詳細はミュージアムのオフィシャルサイトなどでご確認ください。

  • タイトル
  • 会期
  • ミュージアム
  • 所在地

企画展 歌と物語の絵 ―雅やかなやまと絵の世界

開催中〜2024/07/21

泉屋博古館東京

東京都・港区

藤田嗣治 エコール・ド・パリの時代 1918~1928年

開催中〜2024/07/23

軽井沢安東美術館

長野県・軽井沢町

「石川九楊大全」

開催中〜2024/07/28

上野の森美術館

東京都・台東区

カルティエと日本 半世紀のあゆみ 『結 MUSUBI』

開催中〜2024/07/28

東京国立博物館

東京都・台東区

トーキョーアーツアンドスペースレジデンス2024 成果発表展「微粒子の呼吸」第1期

開催中〜2024/08/04

トーキョーアーツアンドスペース本郷

東京都・文京区

おとなとこどもの自由研究 工芸の光と影展

開催中〜2024/08/18

国立工芸館

石川県・金沢市

新紙幣発行記念 北斎進化論

開催中〜2024/08/18

北斎館

長野県・小布施町

大川美術館コレクションによる20世紀アートセレクション ―ピカソ、ベン・シャーンからポップ・アートまで

開催中〜2024/08/18

宇都宮美術館

栃木県・宇都宮市

生誕140年 YUMEJI展 大正浪漫と新しい世界

開催中〜2024/08/25

東京都庭園美術館

東京都・港区

特別展「北斎 グレートウェーブ・インパクト —神奈川沖浪 裏の誕生と軌跡—」

開催中〜2024/08/25

すみだ北斎美術館

東京都・墨田区

TRIO パリ・東京・大阪 モダンアート・コレクション

開催中〜2024/08/25

東京国立近代美術館

東京都・千代田区

内藤コレクション 写本 — いとも優雅なる中世の小宇宙

開催中〜2024/08/25

国立西洋美術館

東京都・台東区

超・日本刀入門 revive―鎌倉時代 の名刀に学ぶ

開催中〜2024/08/25

静嘉堂@丸の内(静嘉堂文庫美術館)

東京都・千代田区

「-没後100年-富岡鉄斎 鉄斎と文人書画の優品」(仮称)

2024/07/20〜2024/08/25

山梨県立美術館

山梨県・甲府市

企画展「旅するピーナッツ。」

開催中〜2024/09/01

スヌーピーミュージアム

東京都・町田市

シアスター・ゲイツ展:アフロ民藝

開催中〜2024/09/01

森美術館

東京都・港区

AOMORI GOKAN アートフェス 2024 「つらなりのはらっぱ」

開催中〜2024/09/01

アートフェス(芸術祭)( 青森県立美術館、青森公立大学 国際芸術センター青森、弘前れんが倉庫美術館、八戸市美術館、十和田市現代美術館)

青森県

伊藤潤二展 誘惑

開催中〜2024/09/01

世田谷文学館

東京都・世田谷区

音を観る ―変化観音と観音変化身―

開催中〜2024/09/01

半蔵門ミュージアム

東京都・千代田区

エドワード・ゴーリーを巡る旅

開催中〜2024/09/01

横須賀美術館

神奈川県・横須賀市

美術の遊びとこころⅧ 五感であじわう日本の美術

開催中〜2024/09/01

三井記念美術館

東京都・中央区

ルーヴル美術館の銅版画展

開催中〜2024/09/01

八王子市夢美術館

東京都・八王子市

ザ・キャビンカンパニー 大絵本美術展〈童堂賛歌〉

開催中〜2024/09/01

平塚市美術館

神奈川県・平塚市

「ヨシタケシンスケ展かもしれない」

2024/07/23〜2024/09/02

そごう美術館

神奈川県・横浜市

カルダー:そよぐ、感じる、日本

開催中〜2024/09/06

麻布台ヒルズ ギャラリー

東京都・港区

市制施行70周年記念 自然、生命、平和 私たちは見つめられている 吉田遠志展

2024/07/20〜2024/09/06

府中市美術館

東京都・府中市

日本のまんなかでアートをさけんでみる

開催中〜2024/09/08

原美術館ARC

群馬県・渋川市

企画展「未来のかけら 科学とデザインの実験室」

開催中〜2024/09/08

21_21 DESIGN SIGHT ギャラリー1&2

東京都・港区

特別展「神護寺―空海と真言密教のはじまり」

2024/07/17〜2024/09/08

東京国立博物館

東京都・台東区

須田国太郎の芸術――三つのまなざし

2024/07/13〜2024/09/08

世田谷美術館

東京都・世田谷区

聖書の世界〜伝承と考古学〜/古代オリエントをたのしむ!子どもミュージアム

2024/07/13〜2024/09/08

古代オリエント博物館

東京都・豊島区

慰問 銃後からのおくりもの

2024/07/20〜2024/09/08

昭和館

東京都・千代田区

開館20周年記念 山梨放送開局70周年 平山郁夫 -仏教伝来と旅の軌跡

開催中〜2024/09/09

平山郁夫シルクロード美術館

山梨県・北杜市

織田コレクション 北欧モダンデザインの名匠 ポール・ケアホルム展 時代を超えたミニマリズム

開催中〜2024/09/16

パナソニック汐留美術館

東京都・港区

トーキョーアーツアンドスペース レジデンス2024 成果発表展 『微粒子の呼吸』第2期

2024/08/17〜2024/09/22

トーキョーアーツアンドスペース本郷

東京都・文京区

フィロス・コレクション ロートレック展 時をつかむ線

開催中〜2024/09/23

SOMPO美術館

東京都・新宿区

空想旅行案内人 ジャン=ミッシェル・フォロン

2024/07/13〜2024/09/23

東京ステーションギャラリー

東京都・千代田区

吉田克朗展 ものに、風景に、世界に触れる

2024/07/13〜2024/09/23

埼玉県立近代美術館

埼玉県・さいたま市

島袋道浩 : 音楽が聞こえてきた

開催中〜2024/09/23

BankART Station

神奈川県・横浜市

「人間×自然×技術=未来展(ひと かける しぜん かける ぎじゅつ は みらい てん) – Well-being for human & nature – 」

開催中〜2024/09/23

SusHi Tech Square内1F Space

東京都・千代田区

つくる展 TASKOファクトリーのひらめきをかたちに

2024/07/20〜2024/09/23

茨城県近代美術館

茨城県・水戸市

和のあかり×百段階段2024 ~妖美なおとぎはなし~

開催中〜2024/09/23

ホテル雅叙園東京 東京都指定有形文化財「百段階段」

東京都・目黒区

平田晃久―人間の波打ちぎわ

2024/07/28〜2024/09/23

練馬区立美術館

東京都・練馬区

【特別展】没後25年記念 東山魁夷と日本の夏

2024/07/20〜2024/09/23

山種美術館

東京都・渋谷区

令和6年度夏季展「Come on! 九曜紋―見つけて楽しむ細川家の家紋―」

2024/07/27〜2024/09/23

永青文庫

東京都・文京区

夏の特集展示2024「戦争の時代 日本における藤田嗣治 日常から戦時下へ」

2024/07/25〜2024/09/24

軽井沢安東美術館

長野県・軽井沢町

印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵

開催中〜2024/09/29

東京富士美術館

東京都・八王子市

昭和モダーン モザイクのいろどり 板谷梅樹の世界

2024/08/31〜2024/09/29

泉屋博古館東京

東京都・港区

梅津庸一 クリスタルパレス

開催中〜2024/10/06

国立国際美術館

大阪府・大阪市

大地に耳をすます 気配と手ざわり

2024/07/20〜2024/10/09

東京都美術館

東京都・台東区

レガシー ―美を受け継ぐ モディリアーニ、シャガール、ピカソ、フジタ

開催中〜2024/10/13

松岡美術館

東京都・港区

GO FOR KOGEI 2024「くらしと工芸、アートにおける哲学的なもの」

2024/09/14〜2024/10/20

富山県富山市/岩瀬エリア、石川県金沢市/東山エリア

富山県・富山市、石川県・金沢市

令和6年度第2期所蔵品展 「特集 新恵美佐子 祈りの花」

2024/07/13〜2024/10/20

横須賀美術館

神奈川県・横須賀市

令和6年度第2期所蔵品展  特集:生誕100年 芥川紗織

2024/07/13〜2024/10/20

横須賀美術館

神奈川県・横須賀市

彫刻の森美術館 開館55周年記念 舟越桂 森へ行く日

2024/07/26〜2024/11/04

彫刻の森美術館

神奈川県・足柄下郡箱根町

北アルプス国際芸術祭 2024

2024/09/13〜2024/11/04

芸術祭(長野県大町市)

長野県・大町市

特別展「眼福―大名家旧蔵、静嘉堂茶道具の粋」

2024/09/10〜2024/11/04

静嘉堂@丸の内(静嘉堂文庫美術館)

東京都・千代田区

瑛九 ―まなざしのその先に―

2024/09/14〜2024/11/04

横須賀美術館

神奈川県・横須賀市

MOTコレクション 竹林之七妍/特集展示 野村和弘/Eye to Eye-見ること

2024/08/03〜2024/11/10

東京都現代美術館

東京都・江東区

ICC アニュアル 2024 とても近い遠さ

開催中〜2024/11/10

NTTインターコミュニケーション・センター [ICC]

東京都・新宿区

没後300年記念 英一蝶 ―風流才子、浮き世を写す―

2024/09/18〜2024/11/10

サントリー美術館

東京都・港区

日本現代美術私観:高橋龍太郎コレクション

2024/08/03〜2024/11/10

東京都現代美術館

東京都・江東区

企画展「作家の視線― 過去と現在、そして…」

開催中〜2024/11/11

ホキ美術館

千葉県・千葉市

田名網敬一 記憶の冒険

2024/08/07〜2024/11/11

国立新美術館

東京都・港区

特別展 文明の十字路  バーミヤン大仏の太陽神と弥勒信仰 ―ガンダーラから日本へ―

2024/09/14〜2024/11/12

三井記念美術館

東京都・中央区

森の芸術祭 晴れの国・岡山

2024/09/28〜2024/11/24

芸術祭(岡山県北部12市町村、津山市、新見市、真庭市、鏡野町、奈義町など))

岡山県・北部12市町村

大正・昭和のモダニスト 蕗谷虹児展

2024/10/05〜2024/11/24

平塚市美術館

神奈川県・平塚市

フィリップ・パレーノ:この場所、あの空

開催中〜2024/12/01

ポーラ美術館

神奈川県・足柄下郡箱根町

心象工芸展

2024/09/06〜2024/12/01

国立工芸館

石川県・金沢市

田中一村展 奄美の光 魂の絵画

2024/09/19〜2024/12/01

東京都美術館

東京都・台東区

挂甲の武人 国宝指定50周年記念 特別展『はにわ』

2024/10/16〜2024/12/08

東京国立博物館

東京都・台東区

ベル・エポック―美しき時代 パリに集った芸術家たち ワイズマン&マイケル コレクションを中心に

2024/10/05〜2024/12/15

パナソニック汐留美術館

東京都・港区

コスチュームジュエリー ―美の変革者たち― シャネル、ディオール、スキャパレッリ 小瀧千佐子コレクションより

2024/09/08〜2024/12/15

宇都宮美術館

栃木県・宇都宮市

特別展 オタケ・インパクト ―越堂・竹坡・国観、尾竹三兄弟の日本画アナキズム―

2024/10/19〜2024/12/15

泉屋博古館東京

東京都・港区

おしゃべり美術館 ひらビあーつま~れ10年記念展

2024/09/21〜2025/02/16

平塚市美術館

神奈川県・平塚市

Exhibitions

日伊国交樹立150周年記念特別展 
アカデミア美術館所蔵 
ヴェネツィア・ルネサンスの巨匠たち

もう一つのルネサンス。ヴェネツィア絵画の色彩の魔法。
ティツィアーノ作《受胎告知》の前に立って感受する。

  イタリア北東に位置するヴェネツィアは、アドリア海上に人工的に建設された、運河が網の目のようにめぐる世界でも類例のない不思議な都市である。運河沿いに華麗な大理石の建築が並び、青空からの陽光が海面や運河に反射する。ヴェネツィアは伝承では5世紀に建国。中世後半からルネサンス期にかけて、東西貿易の拠点としてヨーロッパで最も豊かな都市の一つとなった。ドージェ(元首)のもとに共和政を行い、晴朗至高の共和国と称えられてきた。交易や人々の交流によって地中海、東方、フランス・ドイツ・フランドルなど多くの文化の影響を受け、独自の建築・芸術を生んだ。15~16世紀にはルネサンス発祥の地フィレンツェと並ぶ高度な絵画様式であるヴェネツィア派を確立した。
  ヴェネツィア・ルネサンスは、1440年頃にフィレンツェに数十年遅れて起こったのだが、フィレンツェやローマのルネサンスに比べると、日本ではそれほど知られていないかもしれない。しかし美術史上、重要であり、後世の画家に与えた影響力の点でも特筆される。このヴェネツィア・ルネサンス絵画を日本で初めて本格的に紹介する展覧会「ヴェネツィア・ルネサンスの巨匠たち」が、日伊国交樹立150周年を記念して実現した。東京の国立新美術館と大阪の国立国際美術館の2会場を巡回。ヴェネツィアにあるアカデミア美術館の所蔵品を中心とする57作品により、15世紀後半から17世紀初頭(1630年のペストの大流行で終焉)にかけての約150年間の流れを一望する。なお、そのうち約25作品が優れた修復を経ての公開だとのことだ。東京会場である国立新美術館を廻ってみた。

  ■巨匠ティツィアーノ晩年の代表作《受胎告知》

  大変な大きさである。縦は4mを超えているようだ。何か重大なことが起こっていることを直感させる。神秘性とドラマ性があり、観る者の感情に直接的に訴えかけ、同時に敬虔な気持ちにさせる。なぜなのだろう。
  これは、16世紀に活躍したヴェネツィア派最大の巨匠ティツィアーノ・ヴェチェッリオ(1488/90~1576)が70代に描いた、晩年の代表作《受胎告知》(1563~65年頃、油彩/カンヴァス、ヴェネツィア、サン・サルヴァドール聖堂)である。ヴェネツィアのサン・サルヴァドール聖堂に架かる大祭壇画だ。
  本作の前に立ち、仰ぐようにして近くから眺めてみた。自分の目に近い画面下半分では、まず左の白い光を浴びた大天使ガブリエルに目が行く。大天使は少し前にこの場所に忽然と現れたようだ。両手を身体の前に交差させ、右足を前にして羽根を広げたまま真っ直ぐ前を見ている。視線の先には赤い衣装と青のマントを身にまとった美しい顔立ちの聖母マリアがいる。その顔と身体半分に光が注ぐ。マリアは読んでいた祈りの書を閉じて左手でもったまま、右手は頭のヴェールに触れて少し持ち上げ、大天使の方を驚いたように振り向いている。右の足先が見える。
  後ろに下がって、今度は作品全体を眺めてみる。画面上から中央に向かって天を割くように、白い鳩がまばゆい光を浴びながら大変なスピードで舞い降りる。神々しさと激しさが重なる。周りにはたくさんの可愛い天使たちが様々なポーズで飛翔する。右上のマリアの頭上にいる小さな天使は、両手が大天使と同じポーズで呼応が見られ、そして足を伸ばしたまま空中に浮かんでいる様子があどけなくて印象深い。背景には全体に厚い雲が漂う。聖母と大天使の間の暗闇にヴェネツィアの景色が垣間みえる。筆触は粗く勢いがある。一方、聖母の手前に置かれた処女性を象徴する透明なガラス瓶は写実的な描法だ。
  本作は、天から神の光が聖母に射し込み、神の子が聖母に宿った受肉の瞬間を表すという。聖母マリアの元を訪れた大天使ガブリエルが聖母に受胎告知を告げ、聖母と胎内に宿ったイエスを崇敬している。ティツィアーノは、その色彩の錬金術と卓越の動勢により観者に物語を感知させ、祈りの場としての芸術を創出した。彼が晩年に到達した境地である。
  ●ティツィアーノ ティツィアーノはジョヴァンニ・ベリーニ(1424/28?~1516)の工房で習練を積んだのち、早逝した先輩画家ジョルジョーネ(1476/78頃~1510)と共にヴェネツィア派の黄金時代を築いた。彼はベリーニの明るい色彩表現を学び、また素描を重視するフィレンツェ・ルネサンスのレオナルド・ダ・ヴィンチ(1452~1517)やミケランジェロ・ブオナローティ(1475~1564)からの刺激を受けながら、特に、優れた牧歌的風景や官能的な裸婦像に革新を行った先輩画家ジョルジョーネから多くを吸収した。
  初期には精緻な古典様式の絵画を制作し、1518年に《聖母被昇天》(サンタ・マリア・グロリオーザ・デイ・フラーリ聖堂主祭壇画)にて名声を得、躍動感のある構図と耀く色彩による様式を確立。宗教画、神話画、肖像画をともに得意とし、ヴェネツィア共和国の公認画家となった。またフェラーラ、マントヴァ、ウルビーノの宮廷やハプスブルク家をパトロンとし、ローマ教皇庁からも招聘され、国際的な活動を行った。晩年には、粗い筆触と、燃えるような色彩の絵画を生み出した。ティツィアーノの絵画の特徴は、彩色を素描のように機能させ、明暗と色彩を調和させたこととされる。後のピーテル・パウル・ルーベンス(1577~1640)、ディエーゴ・ベラスケス(1599~1660)やオーギュスト・ルノワール(1841~1919)らに影響を与えた。
  ■ヴェネツィア派の師ジョヴァンニ・ベリーニの《聖母子(赤い智天使の聖母》 
  ジョヴァンニ・ベリーニによる《聖母子(赤い智天使の聖母)》(1485~90年、油彩・板、ヴェネツィア、アカデミア美術館)は、静謐な優美さの中に深い親子の情愛が滲み出る作品だ。青空が映える上空に白雲に乗る鮮やかな赤色の6人の智天使と、くっきり描かれた丘と川の自然風景を背景として、聖母が膝に抱えた幼子イエスを見つめる。手すりに聖母のマントの一部が架かり、観る者と画面の橋渡しをするようだ。ベリーニは1470年頃から活動。大きな画家工房を運営し、後進を指導しつつ、ヴェネツィア派の様式を確立した15世紀の巨匠である。彫刻的な人体表現と明るい色彩による光の表現を特徴とし、宗教画と肖像画に秀でた。16世紀のヴェネツィア派を牽引するジョルジョーネやティツィアーノの師でもあった。

  ■ヤコポ・ティントレットの《動物の創造》

  ヤコポ・ティントレット(本名ヤコポ・ロブスティ)(1519~94)の《動物の創造》(1550~53年、油彩/カンヴァス、ヴェネツィア、アカデミア美術館)は「創世記」の神の世界の創造の場面だが、楽しくて思わず見入ってしまった。画面中央で空中に金色の光を浴びた神が、衣を翻し左に向かって飛翔する。周りには沢山の生き物たちが、多くは左に向かって進む横向きの姿で描かれる。右側は鹿や一角獣や兎などの陸の生き物がおり、左側には水鳥や奇妙な魚など水の生き物が力強く飛翔し、泳ぐ。その表情や動きに独特の愛敬がある。本作はサン・マルコ聖堂のモザイクやラファエッロ・サンツィオ(1483~1520)の作品から影響が指摘される。隣に置かれた《アベルを殺害するカイン》(1550~53年、油彩/カンヴァス、ヴェネツィア、アカデミア美術館)とともに連作の作品である。ティントレットは初めはティツィアーノの門に入るが、ローマ滞在を機にミケランジェロの人体を研究。その後、極端な遠近法や短縮法、明暗法を使用した劇的構図の大作を多作し、肖像画も得意とした。エル・グレコ(1541~1614)に多大な影響を与えたことでも知られる。
  ■パオロ・ヴェロネーゼの《レパントの海戦の寓意》
  パオロ・ヴェロネーゼ(本名パオロ・カリアーリ)(1528~88)の≪レパントの海戦の寓意≫(1572~73年頃、油彩・カンヴァス、ヴェネツィア、アカデミア美術館)は迫力と敬虔さがあわさり、華麗な印象をもたらす。上方の雲の上に優美な聖母マリアを取り囲む人々を、下方には海上にひしめく数多の軍艦が激しく闘う様子を描く。1571年10月7日のレパント海戦である。雲間から清らかな光が軍艦に注がれる。本作は、ヴェネツィアを含むキリスト教諸国連合軍がオスマン帝国軍に勝利したこの闘いが、聖母のご加護によるものであることを示している。ヴェロネーゼはティツィアーノの影響を色濃く受けながらも、華麗な色彩と、調和のとれた明朗な古典主義的の様式を創り出し、富裕な貴族層に好評を得た。ヤコポ・ティントレットと同時代に活躍した。
  先に挙げた作品以外にも、会場には多くの画家の名作が並ぶ。ジョヴァンニ・ジローラモ・サヴォルド(1480頃~1548以降)の《受胎告知》(1538年頃、油彩・カンヴァス、ヴェネツィア、アカデミア美術館)は窓に見える鮮やかな青色の空と機知に富む構図、そして聖母と大天使ガブリエルの穏やかな心の交流の様子が心に残る。内面までも描き切った多くの肖像画群も一つの章を設けて展示されている。会場でお好きな作品を見つけていただければ、と思う。

【参考文献】
1)セルジュ・マリネッリ[イタリア側監修]・越川倫明[日本側監修]監修、国立新美術館・TBSテレビ 編集:『日伊国交樹立150周年記念特別展 ヴェネツィア・ルネサンスの巨匠たち』(展覧会図録)、TBSテレビ 発行、2016年

執筆:細川 いづみ (HOSOKAWA Fonte Idumi) 
(2016年9月)


※会場内の風景画像は主催者側の許可を得て撮影したものです。

20161002_001
写真1 東京展会場風景。
ティツィアーノ・ヴェチェッリオ《受胎告知》、
1563~65年頃、ヴェネツィア、サン・サルヴァドール聖堂。(撮影:I.HOSOKAWA)
20161002_002
写真2 東京展会場風景。
左から、ボニファーチョ・ヴェロネーゼ《父なる神のサン・マルコ広場への顕現》(「受胎告知」三連画より)、
1543~53年、ヴェネツィア、アカデミア美術館。
ジョヴァンニ・ジローラモ・サヴォルド《受胎告知》、1538年頃、ヴェネツィア、アカデミア美術館。
(撮影:I.HOSOKAWA)
20161002_004
写真3 東京展会場風景。
左から、ヤコポ・ティントレット《アベルを殺害するカイン》、1550~53年、
ヴェネツィア、アカデミア美術館。
ヤコポ・ティントレット《動物の創造》、1550~53年、ヴェネツィア、アカデミア美術館。
(撮影:I.HOSOKAWA)
20161002_003
写真4 東京展会場風景。
左から、パオロ・ヴェロネーゼ≪レパントの海戦の寓意≫、
1572~73年頃、ヴェネツィア、アカデミア美術館。
パオロ・ヴェロネーゼ《悔悛する聖ヒエロニムス》、1580年頃、
ヴェネツィア、アカデミア美術館(サンタンドレア・デッラ・ジラーダ聖堂より寄託)
(撮影:I.HOSOKAWA)

【展覧会欧文表記】 
Venetian Renaissance Paintings
From the Gallerie dell’Accadmia, Venice
【会期・会場】
東京展
 2016年7月13日~10月10日 国立新美術館
[電話]03-5777-8600(ハローダイヤル)
大阪展
2016年10 月22 日~2017年1月15日 国立国際美術館
[電話]06-6447-4680(代表)
【展覧会HP】http://www.tbs.co.jp/venice2016/


※本文・図版とも無断引用・無断転載を禁じます。

2016年10月3日