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企画展 よめないけど、いいね! ―根津美術館の書の名品―

開催中〜2022/08/21

根津美術館

東京都・港区

宮城県美術館所蔵 絵本原画の世界 2022 展

開催中〜2022/08/28

山梨県立美術館

山梨県・甲府市

ムーミンコミックス展

開催中〜2022/08/28

東京富士美術館

東京都・八王子市

うるわしき薔薇—ルドゥーテ『バラ図譜』を中心に

開催中〜2022/08/28

群馬県立近代美術館

群馬県・高崎市

目黒区美術館開館35周年記念展 美術館はおもちゃ箱・道具箱

開催中〜2022/08/28

目黒区美術館

東京都・目黒区

貞享本當麻曼荼羅修理完成記念 特別展 中将姫と當麻曼荼羅 ―祈りが紡ぐ物語―

開催中〜2022/08/28

奈良国立博物館

奈良県・奈良市

特別展「北斎 百鬼見参」

開催中〜2022/08/28

すみだ北斎美術館

東京都・墨田区

伝えたい情景〜木版画家・山岸主計と現代作家たち〜

開催中〜2022/08/28

藤沢市アートスペース

神奈川県・藤沢市

中将姫と當麻曼荼羅 ―祈りが紡ぐ物語―

開催中〜2022/08/28

奈良国立博物館

奈良県・奈良市

特別展 「きみとロボット ニンゲンッテ、ナンダ?」

開催中〜2022/08/31

日本科学未来館

東京都・江東区

KAGAYA 星空の世界展

開催中〜2022/08/31

そごう美術館

神奈川県・横浜市

雲をつかむ:原美術館/原六郎コレクション 第1期(春夏季)

開催中〜2022/09/04

原美術館ARC

群馬県・渋川市

こぐまちゃんとしろくまちゃん 絵本作家・わかやまけんの世界

開催中〜2022/09/04

世田谷美術館

東京都・世田谷区

没後25年記念特別企画 斎藤清版画展 飛翔するノスタルジア

開催中〜2022/09/04

高崎市タワー美術館

群馬県・高崎市

とある美術館の夏休み

開催中〜2022/09/04

千葉市美術館

千葉県・千葉市

沖縄復帰50年記念 特別展 琉球

開催中〜2022/09/04

九州国立博物館

福岡県・太宰府市

所蔵作品展 こどもとおとなの自由研究 工芸の〇△□✕展

開催中〜2022/09/04

国立工芸館

石川県・金沢市

市制90周年記念 工藤麻紀子展

開催中〜2022/09/11

平塚市美術館

神奈川県・平塚市

特別展 河内長野の霊地 観心寺と金剛寺─真言密教と南朝の遺産─

開催中〜2022/09/11

京都国立博物館

京都府・京都市

夏休みチャレンジ アートのたねをみつけよう!

開催中〜2022/09/11

府中市美術館

東京都・府中市

ライアン・ガンダー われらの時代のサイン

開催中〜2022/09/19

東京オペラシティ アートギャラリー

東京都・新宿区

リニューアルオープン2 茶の湯の陶磁器 〜“景色”を愛でる〜

開催中〜2022/09/19

三井記念美術館

東京都・中央区

どっちがどっち? いわいとしお×岩井俊雄 ―『100かいだてのいえ』とメディアアートの世界― 

開催中〜2022/09/19

茨城県近代美術館

茨城県・水戸市

日中国交正常化 50 周年記念 特別デジタル展「故宮の世界」

開催中〜2022/09/19

東京国立博物館

東京都・台東区

キース・ヴァン・ドンゲン展―フォーヴィスムからレザネフォール

開催中〜2022/09/25

パナソニック汐留美術館

東京都・港区

【特別展】水のかたち ―《源平合戦図》から千住博の「滝」まで―

開催中〜2022/09/25

山種美術館

東京都・渋谷区

こどもと楽しむ永青文庫

開催中〜2022/09/25

永青文庫

東京都・文京区

開館25周年記念展 Ⅱ 並河靖之の雅な技 世界を魅了した明治の京都七宝

開催中〜2022/09/25

茨城県天心記念五浦美術館

茨城県・北茨城市

ガブリエル・シャネル展― Manifeste de mode

開催中〜2022/09/25

三菱一号館美術館

東京都・千代田区

東北へのまなざし 1930-1945

開催中〜2022/09/25

東京ステーションギャラリー

東京都・千代田区

ルートヴィヒ美術館展 20世紀美術の軌跡―市民が創った珠玉のコレクション

開催中〜2022/09/26

国立新美術館

東京都・港区

ボストン美術館展 芸術×力

開催中〜2022/10/02

東京都美術館

東京都・台東区

「クマのプーさん」展

開催中〜2022/10/02

PLAY! MUSEUM

東京・立川市 

ちひろ・花に映るもの

開催中〜2022/10/02

ちひろ美術館・東京

東京都・練馬区

ちひろ美術館コレクション 江戸からいまへ 日本の絵本展

開催中〜2022/10/02

ちひろ美術館・東京

東京都・練馬区

フィン・ユールとデンマークの椅子

開催中〜2022/10/09

東京都美術館

東京都・台東区

特別展アリス —へんてこりん、へんてこりんな世界ー

開催中〜2022/10/10

森アーツセンターギャラリー( 六本木ヒルズ森タワー 52F)

東京都・港区

名作展「涼風を語る 龍子の描いた風景画を中心に」

開催中〜2022/10/10

大田区立龍子記念館

東京都・大田区

特別展「化石ハンター展 〜ゴビ砂漠の恐竜とヒマラヤの超大型獣〜」

開催中〜2022/10/10

国立科学博物館

東京都・台東区

アールヌーヴォーからアールデコに咲いたデザイン  オールドノリタケ×若林コレクション

2022/09/10〜2022/10/16

そごう美術館

神奈川県・横浜市

企画展  蔵出し蒔絵コレクション

2022/09/10〜2022/10/16

根津美術館

東京都・港区

MOTアニュアル2022 私の正しさは誰かの悲しみあるいは憎しみ

開催中〜2022/10/16

東京都現代美術館

東京都・江東区

MOTコレクション コレクションを巻き戻す 2nd

開催中〜2022/10/16

東京都現代美術館

東京都・江東区

泉屋博古館東京リニューアルオープン記念展Ⅲ 古美術逍遙 ―東洋へのまなざし

2022/09/10〜2022/10/23

泉屋博古館東京

東京都・港区

新版画 進化系UKIYO-Eの美

2022/09/14〜2022/11/03

千葉市美術館

千葉県・千葉市

地球がまわる音を聴く:パンデミック以降のウェルビーイング

開催中〜2022/11/06

森美術館

東京都・港区

特集展示「初公開の収蔵品から」

開催中〜2022/11/06

半蔵門ミュージアム

東京都・千代田区

国立新美術館開館15周年記念 李禹煥

開催中〜2022/11/07

国立新美術館

東京都・港区

大蒔絵展 —漆と金の千年物語

2022/10/01〜2022/11/13

三井記念美術館

東京都・中央区

理想の書物 —英国19世紀挿絵本からプライヴェート・プレスの世界へ—

2022/09/17〜2022/11/13

群馬県立近代美術館

群馬県・高崎市

美をつくし―大阪市立美術館コレクション

2022/09/14〜2022/11/13

サントリー美術館

東京都・港区

誕生50周年記念 ベルサイユのばら展ーベルばらは永遠にー

2022/09/17〜2022/11/20

東京シティビュー(六本木ヒルズ森タワー52階)

東京都・港区

江森天寿と石川梅子 夭折の画家と県内初の女流画家

2022/10/08〜2022/11/27

遠山記念館

埼玉県・川島町

開館25周年記念展 Ⅲ 再興院展の立役者 齋藤隆三

2022/10/08〜2022/11/27

茨城県天心記念五浦美術館

茨城県・北茨城市

企画展「市制90周年記念 私たちの絵 時代の自画像展」

2022/10/01〜2022/11/27

平塚市美術館

神奈川県・平塚市

旅と想像/創造 いつかあなたの旅になる

2022/09/23〜2022/11/27

東京都庭園美術館

東京都・港区

特別展  将軍家の襖絵

2022/11/03〜2022/12/04

根津美術館

東京都・港区

特別展 京(みやこ)に生きる文化 茶の湯

2022/10/08〜2022/12/04

京都国立博物館

京都府・京都市

ポンペイ

2022/10/12〜2022/12/04

九州国立博物館

福岡県・太宰府市

【特別展】没後80年記念 竹内栖鳳

2022/10/06〜2022/12/04

山種美術館

東京都・渋谷区

アーツ・アンド・クラフツとデザイン ウィリアム・モリスからフランク・ロイド・ライトまで

2022/09/23〜2022/12/04

府中市美術館

東京都・府中市

ジャンルレス工芸展

2022/09/16〜2022/12/04

国立工芸館

石川県・金沢市

辻 永 ふたつの顔を持つ画家 油彩と植物画

2022/10/25〜2022/12/11

茨城県近代美術館

茨城県・水戸市

永青文庫漆芸コレクション かがやきの名品

2022/10/08〜2022/12/11

永青文庫

東京都・文京区

加耶―古代東アジアを生きた、ある王国の歴史―

2022/10/04〜2022/12/11

国立歴史民俗博物館

千葉県・佐倉市

花鳥風月 名画で見る日本の四季 琳派・浮世絵から御舟・一村まで

開催中〜2022/12/18

岡田美術館

神奈川・箱根町

生誕150年記念 板谷波山の陶芸

2022/11/03〜2022/12/18

泉屋博古館東京

東京都・港区

川内倫子展(タイトル未定)

2022/10/08〜2022/12/18

東京オペラシティ アートギャラリー

東京都・新宿区

つながる琳派スピリット 神坂雪佳展

2022/10/29〜2022/12/18

パナソニック汐留美術館

東京都・港区

静嘉堂創設130周年・新美術館開館記念 響きあう名宝 ―曜変・琳派のかがやき―

2022/10/01〜2022/12/18

静嘉堂文庫美術館

東京都・千代田区

かこさとしの世界 だるまちゃんもからすのパンやさんも大集合!

2022/10/08〜2022/12/25

群馬県立館林美術館

群馬県・館林市

展覧会 岡本太郎 Okamoto Taro: A Retrospective

2022/10/18〜2022/12/28

東京都美術館

東京都・台東区

特別展 すべて未知の世界へ―GUTAI 分化と統合

2022/10/22〜2023/01/09

国立国際美術館

大阪府・大阪市

雲をつかむ:原美術館/原六郎コレクション 第2期(秋冬季)

2022/09/10〜2023/01/09

原美術館ARC

群馬県・渋川市

鉄道と美術の150年

2022/10/08〜2023/01/09

東京ステーションギャラリー

東京都・千代田区

ポーラ開館20周年記念展 ピカソ 青の時代を超えて

2022/09/17〜2023/01/15

ポーラ美術館

神奈川県・足柄下郡箱根町

おいしいボタニカル・アート ー食を彩る植物のものがたり

2022/11/05〜2023/01/15

SOMPO美術館

東京都・新宿区

ビーズ ―つなぐ かざる みせる  国立民族学博物館コレクション

2022/11/15〜2023/01/15

渋谷区立松濤美術館

東京都・渋谷区

マン・レイのオブジェ 日々是好物|いとしきものたち

2022/10/08〜2023/01/15

DIC川村記念美術館

千葉県・佐倉市

ピカソとその時代 ベルリン国立ベルクグリューン美術館展

2022/10/08〜2023/01/22

国立西洋美術館

東京都・台東区

ルートヴィヒ美術館展 20世紀美術の軌跡―市民が創った珠玉のコレクション

2022/10/14〜2023/01/22

京都国立近代美術館

京都府・京都市

春日大社 若宮国宝展 ―祈りの王朝文化―

2022/12/10〜2023/01/22

奈良国立博物館

奈良県・奈良市

クリストとジャンヌ=クロード “包まれた凱旋門”

開催中〜2023/02/12

21_21 DESIGN SIGHT

東京都・港区

交歓するモダン 機能と装飾のポリフォニー

2022/12/17〜2023/03/05

東京都庭園美術館

東京都・港区

六本木クロッシング2022展(仮題)

2022/12/01〜2023/03/26

森美術館

東京都・港区

特別展「動画クリエイター展」

2022/10/08〜2023/04/02

日本科学未来館

東京都・江東区

Exhibitions

岡上淑子 沈黙の奇蹟

彗星のごときフォトコラージュのきらめき。
岡上淑子の東京の公立美術館では初の個展が東京都庭園美術館で4月7日まで開催中。

 岡上淑子(おかのうえとしこ:1928年~)。
1950年から56年までのごく限られた期間に、写真媒体を活用したフォトコラージュで、驚くべき才能を開花させた彼女の名は、知る人ぞ知る存在だ。2000年に代表作を一堂に集め、第一生命ギャラリーで開催された個展は、今となっては幻の展覧会とされている。その後それらの作品は国内外の美術館にコレクションされ、その創作は近年再注目されつつあり、国際的な評価を得て、現代のフォトコラージュ作家に多大な影響を与えているという。

 この岡上淑子の本格的な個展『岡上淑子 沈黙の奇蹟』が東京都庭園美術館で開催されている。東京の公立美術館では初めての本展は、国内所蔵の作品に加え、海外で最も多くのコレクションを有するヒューストン美術館の12点のコラージュも収蔵後初めて里帰りする、ファンにはもちろん、よく知らない人にもその魅力を十分に堪能できる充実の内容だ。
 
 ■展覧会構成
 展覧会は、本館と新館で大きく二部に分けられ、第1部を六章、第2部を三幕とした計九章から構成される。
第1部:マチネ Ⅰ 岡上淑子とモードの世界/Ⅱ 初期のコラージュ作品/Ⅲ 瀧口修造とマックス・エルンスト/Ⅳ 型紙からフォトコラージュへ/Ⅴ コラージュ以降 Ⅵ その他関連資料
第2部:ソワレ 第1幕 懺悔室の展望/第2幕 放浪するミューズたち/第3幕 私達は自由よ

 岡上のコラージュ作品の展示だけではなく、その制作の背景となる時代や環境、そしてフォトコラージュ作家として花開く大きなきっかけとなった瀧口修造との関わりやシュルレアリスム作品との出会いなどがうかがえる関連資料を「マチネ」で見せ、コラージュ作品が一堂する「ソワレ」において、より多角的、立体的にアプローチできる造りだ。
 シュルレアリスムとの関係で語られることの多い彼女のコラージュだが、いかに岡上の創造が、それとは別に紡ぎ出され、そして彼らの作品に触れることで、さらにその輝きを増していったのかを感じることができる。

 ■夢と憧れと:モードにたどる源泉
 1928年に高知県に生まれた岡上は、3歳のころに家族とともに東京に転居する。41年にミッション・スクールである東洋永和女学校(現・東洋英和女学院)に入学するが、時代は戦時下、彼女はもっとも多感な青春時代をモンペ姿で学徒動員という戦争の翳りの中で過ごす。戦後、やはりミッション系であった恵泉女学園高等部に入学し、民主化が進む時代にあって、それまで見ることのなかった外国の映画や雑誌を目にし、在学中に長沢節のデザイン画に触れて、ファッション画やファッション・デザインへの憧れていったという。
 22歳の時に、「自由で独創的な学校」を教育理念に、当時の文化人を多く教師陣に採用して、その先進性で注目を集めていた文化学院に入学、喪われた10代を取り返すかのように青春を謳歌した。時代のモードに鋭敏で、洋裁を学んでいた彼女がフォトコラージュを制作し始めたのはこの頃である。授業で出された「ちぎり絵」の課題がきっかけだった。
 代表的なコラージュ作品と初期作品に、同時代に制作されたドレスも展示された空間で、こうした時代背景を感じる。

 岡上のコラージュに多用される、布をふんだんに使用した優雅なドレスや華やかな装飾品の切り抜きからは、パリのオートクチュールにはじまる50年代の華やかなモードやそれらをまとった銀幕のスターたちへの憧憬が強く感じられる。
 みごとなのは、その憧れが、少女の甘い感傷になっていないことだ。
 かぎりなく華やかな女性たちは首や腕を切断され、あり得ない場やモノと組み合わされることで、却ってその妖艶さを増しつつも、たおやかに、上品に、観る者をふんわりと突き放す強さをまとう。ときに皮肉に、ときにコミカルに、ときに不穏に、それらはジェンダーや戦争、社会を批判し、同時に造形の楽しみを失っていない。
 展示作品:岡上淑子《幻想》1954頃、《沈黙の奇蹟》1952、《戯れ》1952、《轍》1951など

 ■とらわれない制作:瀧口修造とマックス・エルンストとの出会い
 恵泉女学園の学友を通じて知り合った武満徹(1930-1996)をきっかけに、日本のシュルレアリスムの主導的立場にあった瀧口修造(1903-1979)と出会った岡上は、彼の「続けてごらんなさい」という言葉に励まされて、制作したコラージュ作品を携えて彼のもとを訪ねるようになる。そこでマックス・エルンストのコラージュ作品を観る機会を得た岡上は衝撃を受け、大きく飛躍を遂げる。それまでの単色の羅紗紙に貼り合わせていたシンプルなものから、背景にも写真を用いた複雑でイメージにあふれた映像的な世界が広がっていく。
 しかし、当時瀧口が関わっていた実験工房や他のアーティストたちの活動に、岡上は参加していない。彼女自身、自らをアーティストとは思っておらず、あらゆる芸術団体からも距離を置き、芸術家としての野心や自尊心もなく、淡々と自身のイマジネーションを形にすることを楽しんでいたようだ。瀧口によって企画されたタケミヤ画廊での最初の個展で、「岡上さんは画家ではありません。若いお嬢さんです。(…)」と案内状に記しているように、彼も岡上を「芸術家」とは別の存在として見ていたらしい。
 瀧口から岡上に送られた書簡や彼女の作品が飾られた彼の書斎風景の写真、岡上の作品を洗練させるきっかけとなったエルンストの代表作『百頭女』などの資料から、作品を昇華していった岡上の特異な位置づけを見ていく。

 ある意味で無欲の、天真爛漫ともいえる岡上の自由な感覚が生み出すコラージュ作品は、その無垢なスタンスが驚嘆のインパクトを持っていると同時に、その無垢ゆえに輝いているのを感じられる。のびのびとした何ものにもとらわれないその自由さこそがその作品を限りなく魅惑的にしている。“アーティスト”としてエルンストに学んでいたら、生まれなかったかもしれないとさえ。
 展示作品:マックス・エルンスト『百頭女』(原書)1929、『慈善週間または七大元素』(原書)1934、羽永光利《書斎の瀧口修造》1970など

 ■コラージュに込めたもの:ソワレ3幕
 とはいいながら、岡上がその創作に込めたものは、彼女が過ごした時代に密接に関わっている。
 思春期を戦時下に過ごし、戦後焼け野原の「荒野」から出発した学生時代、山の手の大空襲や、友人を案じて訪ね廻った焦土の視覚体験は、ひとつの原風景となって彼女の作品に繰り返し現れる。
 戦後復興期には、高度経済成長の中で機械のように生産に奔走する男たちの姿を冷静に見つめながら、彼らをコケティッシュに誘い、軽やかにふるまう女たちの華やかさが対比的に表れている。
 そして「もはや戦後ではない」と謳われた1956年、岡上のコラージュ制作の最後の年となる頃には、摩天楼となった都市をおおらかに、多様な変容をしながら羽ばたく、エネルギッシュな女たちの無限の可能性が謳われる。
 岡上のコラージュ作品の精華を、そこに現れる女たちのイメージから「ミューズ」をキーワードに、時代背景とともに3幕の舞台に見立てて堪能する空間。

 「懺悔室の展望」では、荒野のイメージには、《高波》や《浸水》といった水をテーマにしたカタストロフの作品も含まれ、そのまなざしが戦争から天災まで広くとらえているのがわかる。そこに表される生と死、恐怖や非難は、どこかコミカルな軽やかさを持っているのがみごとだ。
 「翻弄するミューズたち」では、女たちの肢体は、切断され、多様なものと組み合わされて、街頭や海上、空中で、その魅力を誇示する。一方、男性は彼女らに圧倒されるように、ある者はかしずき、ある者は届かないところからそのまなざしを向ける。自らの意思で自由に羽ばたこうとする
女と、操られるかのようにうつろにたたずむ男の対比が鮮やかに浮かび上がる。
 「私達は自由よ」では、女たちは風景の中で巨大化し、ますます自由に、大胆に、多様なメタモルフォースをとげながら、その存在を謳歌する。奥行きを獲得した画面の中で、遠近感を無化しつつもその空間におさまっている構成は圧倒的だ。
 展示作品:岡上淑子《懺悔室の展望》1952、《廃墟の旋律》1951頃、《会議》1955、《イヴ》1955、《口づけ》1955頃、《変心》1953頃など

 ■燦然と輝くフォトコラージュ:コラージュ制作から離れて
 1950年代半ばには、コラージュ制作に限界を感じ始めていた岡上は、瀧口の勧めもあり、カメラで実際の対象を撮るストレート・フォトを手がけたりもしていたが、57年、結婚を機に、コラージュの制作から遠ざかっていく。やがて故郷である高知に転居、東京から離れたこともあり、もともと自身もアーティストとしてふるまっていなかった岡上の存在はアート界から急速に消えていく。  
瀧口からの提案で、岡上も待ち望んでいた、彼の詩に彼女のコラージュを挿絵とする詩画集の計画も、実現に至らなかった。
 しかし、故郷で子育ての合間に日本画やスケッチなどを手がけていたらしく、制作行為は途絶えることはなかったようだ。
 コラージュの延長としてとらえられる静物写真や、身近な人間を写したストレート・フォト、植物の精緻なスケッチや日本画で、コラージュを離れた岡上のその後を観ていく。

 彼女の写真は、真摯な眼とコラージュ作品に観られる独自の感性が見え、続けていたら・・・と思わせる。日本画やスケッチは、丁寧な筆遣いと温かいまなざしが、その人となりを伝える。
 とはいえ、わずか7年ほどに制作されたフォトコラージュの鋭さときらめきが群を抜いているのは否めない。
 展示作品:岡上淑子《りんごと釘》1955、《祖母像》1955、《バラ》1971‐75頃など

 まさに彗星のように現れて消えた岡上のフォトコラージュ。
 その作品の美しさとインパクトは、時代性を反映しながら、静かに、そして独特の強さをもって、この現代により多様で複雑な読みを誘いながら私たちを魅了する。

 残るところあと1週間ほど。
 最後の週末は20時までの夜間開館も実施されている。桜散る庭園とともに華やかなフォトコラージュの魅惑に溺れてみては?


本館〈第1部 マチネ〉展示風景から


《夜間訪問》©Okanoue Toshiko, 東京国立近代美術館蔵
Visit in Night ©Okanoue Toshiko, Collection of the National Musuem of Modern Art, Tokyo


《沈黙の奇蹟》©Okanoue Toshiko, 東京都写真美術館蔵
The Miracle of Silence ©Okanoue Toshiko, Collection of Tokyo Photographic Art Museum


新館〈第2部 ソワレ〉展示風景から


《会議》©Okanoue Toshiko, ヒューストン美術館蔵
Meeting ©Okanoue Toshiko, Collection of the Musuem of Fine Arts, Houston


【参考文献】

神保 京子 監修・執筆:『岡上淑子 フォトコラージュ 沈黙の奇蹟』(展覧会図録)、青幻舎発行、2019年。

執筆:坂本 裕子 
(2019年3月)

※会場風景撮影:Sakamoto 撮影は主催者側の許可を得ています。

【展覧会名】
岡上淑子 沈黙の奇蹟

【会期・会場】
2019年1月26日 ~4月7日  東京都庭園美術館
電話:03-5777-8600(ハローダイヤル)
美術館HP www.teien-art-museum.jp

※本文・図版とも無断引用・無断転載を禁じます。