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「石川九楊大全」

開催中〜2024/07/28

上野の森美術館

東京都・台東区

カルティエと日本 半世紀のあゆみ 『結 MUSUBI』

開催中〜2024/07/28

東京国立博物館

東京都・台東区

トーキョーアーツアンドスペースレジデンス2024 成果発表展「微粒子の呼吸」第1期

開催中〜2024/08/04

トーキョーアーツアンドスペース本郷

東京都・文京区

おとなとこどもの自由研究 工芸の光と影展

開催中〜2024/08/18

国立工芸館

石川県・金沢市

新紙幣発行記念 北斎進化論

開催中〜2024/08/18

北斎館

長野県・小布施町

大川美術館コレクションによる20世紀アートセレクション ―ピカソ、ベン・シャーンからポップ・アートまで

開催中〜2024/08/18

宇都宮美術館

栃木県・宇都宮市

生誕140年 YUMEJI展 大正浪漫と新しい世界

開催中〜2024/08/25

東京都庭園美術館

東京都・港区

特別展「北斎 グレートウェーブ・インパクト —神奈川沖浪 裏の誕生と軌跡—」

開催中〜2024/08/25

すみだ北斎美術館

東京都・墨田区

TRIO パリ・東京・大阪 モダンアート・コレクション

開催中〜2024/08/25

東京国立近代美術館

東京都・千代田区

内藤コレクション 写本 — いとも優雅なる中世の小宇宙

開催中〜2024/08/25

国立西洋美術館

東京都・台東区

超・日本刀入門 revive―鎌倉時代 の名刀に学ぶ

開催中〜2024/08/25

静嘉堂@丸の内(静嘉堂文庫美術館)

東京都・千代田区

「-没後100年-富岡鉄斎 鉄斎と文人書画の優品」(仮称)

開催中〜2024/08/25

山梨県立美術館

山梨県・甲府市

企画展「旅するピーナッツ。」

開催中〜2024/09/01

スヌーピーミュージアム

東京都・町田市

シアスター・ゲイツ展:アフロ民藝

開催中〜2024/09/01

森美術館

東京都・港区

AOMORI GOKAN アートフェス 2024 「つらなりのはらっぱ」

開催中〜2024/09/01

アートフェス(芸術祭)( 青森県立美術館、青森公立大学 国際芸術センター青森、弘前れんが倉庫美術館、八戸市美術館、十和田市現代美術館)

青森県

伊藤潤二展 誘惑

開催中〜2024/09/01

世田谷文学館

東京都・世田谷区

音を観る ―変化観音と観音変化身―

開催中〜2024/09/01

半蔵門ミュージアム

東京都・千代田区

エドワード・ゴーリーを巡る旅

開催中〜2024/09/01

横須賀美術館

神奈川県・横須賀市

ルーヴル美術館の銅版画展

開催中〜2024/09/01

八王子市夢美術館

東京都・八王子市

ザ・キャビンカンパニー 大絵本美術展〈童堂賛歌〉

開催中〜2024/09/01

平塚市美術館

神奈川県・平塚市

「ヨシタケシンスケ展かもしれない」

開催中〜2024/09/02

そごう美術館

神奈川県・横浜市

カルダー:そよぐ、感じる、日本

開催中〜2024/09/06

麻布台ヒルズ ギャラリー

東京都・港区

市制施行70周年記念 自然、生命、平和 私たちは見つめられている 吉田遠志展

開催中〜2024/09/06

府中市美術館

東京都・府中市

日本のまんなかでアートをさけんでみる

開催中〜2024/09/08

原美術館ARC

群馬県・渋川市

企画展「未来のかけら 科学とデザインの実験室」

開催中〜2024/09/08

21_21 DESIGN SIGHT ギャラリー1&2

東京都・港区

特別展「神護寺―空海と真言密教のはじまり」

開催中〜2024/09/08

東京国立博物館

東京都・台東区

須田国太郎の芸術――三つのまなざし

開催中〜2024/09/08

世田谷美術館

東京都・世田谷区

聖書の世界〜伝承と考古学〜/古代オリエントをたのしむ!子どもミュージアム

開催中〜2024/09/08

古代オリエント博物館

東京都・豊島区

慰問 銃後からのおくりもの

開催中〜2024/09/08

昭和館

東京都・千代田区

開館20周年記念 山梨放送開局70周年 平山郁夫 -仏教伝来と旅の軌跡

開催中〜2024/09/09

平山郁夫シルクロード美術館

山梨県・北杜市

織田コレクション 北欧モダンデザインの名匠 ポール・ケアホルム展 時代を超えたミニマリズム

開催中〜2024/09/16

パナソニック汐留美術館

東京都・港区

トーキョーアーツアンドスペース レジデンス2024 成果発表展 『微粒子の呼吸』第2期

2024/08/17〜2024/09/22

トーキョーアーツアンドスペース本郷

東京都・文京区

フィロス・コレクション ロートレック展 時をつかむ線

開催中〜2024/09/23

SOMPO美術館

東京都・新宿区

空想旅行案内人 ジャン=ミッシェル・フォロン

開催中〜2024/09/23

東京ステーションギャラリー

東京都・千代田区

吉田克朗展 ものに、風景に、世界に触れる

開催中〜2024/09/23

埼玉県立近代美術館

埼玉県・さいたま市

島袋道浩 : 音楽が聞こえてきた

開催中〜2024/09/23

BankART Station

神奈川県・横浜市

「人間×自然×技術=未来展(ひと かける しぜん かける ぎじゅつ は みらい てん) – Well-being for human & nature – 」

開催中〜2024/09/23

SusHi Tech Square内1F Space

東京都・千代田区

つくる展 TASKOファクトリーのひらめきをかたちに

開催中〜2024/09/23

茨城県近代美術館

茨城県・水戸市

和のあかり×百段階段2024 ~妖美なおとぎはなし~

開催中〜2024/09/23

ホテル雅叙園東京 東京都指定有形文化財「百段階段」

東京都・目黒区

平田晃久―人間の波打ちぎわ

2024/07/28〜2024/09/23

練馬区立美術館

東京都・練馬区

【特別展】没後25年記念 東山魁夷と日本の夏

開催中〜2024/09/23

山種美術館

東京都・渋谷区

令和6年度夏季展「Come on! 九曜紋―見つけて楽しむ細川家の家紋―」

開催中〜2024/09/23

永青文庫

東京都・文京区

夏の特集展示2024「戦争の時代 日本における藤田嗣治 日常から戦時下へ」

開催中〜2024/09/24

軽井沢安東美術館

長野県・軽井沢町

印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵

開催中〜2024/09/29

東京富士美術館

東京都・八王子市

昭和モダーン モザイクのいろどり 板谷梅樹の世界

2024/08/31〜2024/09/29

泉屋博古館東京

東京都・港区

梅津庸一 クリスタルパレス

開催中〜2024/10/06

国立国際美術館

大阪府・大阪市

大地に耳をすます 気配と手ざわり

開催中〜2024/10/09

東京都美術館

東京都・台東区

レガシー ―美を受け継ぐ モディリアーニ、シャガール、ピカソ、フジタ

開催中〜2024/10/13

松岡美術館

東京都・港区

GO FOR KOGEI 2024「くらしと工芸、アートにおける哲学的なもの」

2024/09/14〜2024/10/20

富山県富山市/岩瀬エリア、石川県金沢市/東山エリア

富山県・富山市、石川県・金沢市

令和6年度第2期所蔵品展 「特集 新恵美佐子 祈りの花」

開催中〜2024/10/20

横須賀美術館

神奈川県・横須賀市

令和6年度第2期所蔵品展  特集:生誕100年 芥川紗織

開催中〜2024/10/20

横須賀美術館

神奈川県・横須賀市

彫刻の森美術館 開館55周年記念 舟越桂 森へ行く日

開催中〜2024/11/04

彫刻の森美術館

神奈川県・足柄下郡箱根町

北アルプス国際芸術祭 2024

2024/09/13〜2024/11/04

芸術祭(長野県大町市)

長野県・大町市

特別展「眼福―大名家旧蔵、静嘉堂茶道具の粋」

2024/09/10〜2024/11/04

静嘉堂@丸の内(静嘉堂文庫美術館)

東京都・千代田区

瑛九 ―まなざしのその先に―

2024/09/14〜2024/11/04

横須賀美術館

神奈川県・横須賀市

MOTコレクション 竹林之七妍/特集展示 野村和弘/Eye to Eye-見ること

2024/08/03〜2024/11/10

東京都現代美術館

東京都・江東区

ICC アニュアル 2024 とても近い遠さ

開催中〜2024/11/10

NTTインターコミュニケーション・センター [ICC]

東京都・新宿区

没後300年記念 英一蝶 ―風流才子、浮き世を写す―

2024/09/18〜2024/11/10

サントリー美術館

東京都・港区

日本現代美術私観:高橋龍太郎コレクション

2024/08/03〜2024/11/10

東京都現代美術館

東京都・江東区

企画展「作家の視線― 過去と現在、そして…」

開催中〜2024/11/11

ホキ美術館

千葉県・千葉市

田名網敬一 記憶の冒険

2024/08/07〜2024/11/11

国立新美術館

東京都・港区

特別展 文明の十字路  バーミヤン大仏の太陽神と弥勒信仰 ―ガンダーラから日本へ―

2024/09/14〜2024/11/12

三井記念美術館

東京都・中央区

森の芸術祭 晴れの国・岡山

2024/09/28〜2024/11/24

芸術祭(岡山県北部12市町村、津山市、新見市、真庭市、鏡野町、奈義町など))

岡山県・北部12市町村

大正・昭和のモダニスト 蕗谷虹児展

2024/10/05〜2024/11/24

平塚市美術館

神奈川県・平塚市

フィリップ・パレーノ:この場所、あの空

開催中〜2024/12/01

ポーラ美術館

神奈川県・足柄下郡箱根町

心象工芸展

2024/09/06〜2024/12/01

国立工芸館

石川県・金沢市

田中一村展 奄美の光 魂の絵画

2024/09/19〜2024/12/01

東京都美術館

東京都・台東区

挂甲の武人 国宝指定50周年記念 特別展『はにわ』

2024/10/16〜2024/12/08

東京国立博物館

東京都・台東区

ベル・エポック―美しき時代 パリに集った芸術家たち ワイズマン&マイケル コレクションを中心に

2024/10/05〜2024/12/15

パナソニック汐留美術館

東京都・港区

コスチュームジュエリー ―美の変革者たち― シャネル、ディオール、スキャパレッリ 小瀧千佐子コレクションより

2024/09/08〜2024/12/15

宇都宮美術館

栃木県・宇都宮市

特別展 オタケ・インパクト ―越堂・竹坡・国観、尾竹三兄弟の日本画アナキズム―

2024/10/19〜2024/12/15

泉屋博古館東京

東京都・港区

おしゃべり美術館 ひらビあーつま~れ10年記念展

2024/09/21〜2025/02/16

平塚市美術館

神奈川県・平塚市

Exhibitions

寛永の雅 江戸の宮廷文化と遠州・仁清・探幽

江戸時代初期に開花した「寛永文化」。その雅(みやび)に触れる。
サントリー美術館にて4月8日まで。

 ■モダンな水玉穴の鉢
 展覧会の最初に展示されている真っ白な鉢に、意表を突かれた。モダンなのだ。口径20cm弱の鉢の口縁はゆるい八角形をなし、側面にはボコボコと水玉のような穴が空く。斬新で洗練された造形と色合い。器は厚みがあり堂々としている。これは野々村仁清(ののむらにんせい)(生没年不詳)の手になる《白釉円孔透鉢》(江戸時代 17世紀、MIHO MUSEUM)である。華麗な色絵陶器を大成した仁清に、このような作品があったのだ。本作の先の仄暗い会場空間には、茶道具や金地屛風などが見えている。

 本展覧会は、江戸時代初期の寛永年間(1624~44年)を中心に京都に花開いた「寛永文化」の世界を140点強の作品(※会期中に展示替えあり)で紹介するものだ。寛永文化については一般に馴染みが薄く、これまで展覧会で取り上げられてこなかった。「寛永文化」とは、①黄金と侘びや歪みを特徴とした「桃山文化」と、後に続く絢爛で活気に溢れた「元禄文化」の間に位置し、②江戸幕府の安泰を背景として公家・武家・町衆らに共有された新しい美意識のもとに生み出されたもの、である。

 ■展覧会構成/寛永文化に寄与した人々
 展覧会は、以下のように六つの章から構成されている。
 第一章 新時代への胎動―寛永のサロン/第二章 古典復興―後水尾院と宮廷文化/第三章 新たなる美意識Ⅰ 小堀遠州/第四章 新たなる美意識Ⅱ 金森宗和と仁清/第五章 新たなる美意識Ⅲ 狩野探幽

 本展では寛永文化に寄与した重要人物として、①その源泉となる宮廷文化を広めた後水尾院(ごみずのおいん)、そして、②茶人であり作庭家でもある小堀遠州(こぼりえんしゅう)、③陶工の野々村仁清、および彼を指導した茶人の金森宗和(かなもりそうわ)、④江戸幕府御用絵師の狩野探幽を取り上げ、寛永文化の動向を展観する。なお、寛永文化の時期は後水尾院崩御の1680年の頃までととらえる。

 ■後水尾院/古典復興、宮廷文化の広がり
 ●気楽坊という指人形 なんとも温かでおかしみのある表情の指人形が出品されていた。後水尾院の遺愛という。赤茶色のたっぷりとした衣服をまとい、にっこり笑う坊主頭。高さ25cm弱の《指人形 気楽坊 附 写人形》(江戸時代 17世紀、陽明文庫)(※3/19までの展示)だ。これは後水尾院が近臣に文書を渡す際に女官に操らせたものという。「気楽坊」との名は院が詠んだ和歌から取られている。その詠歌は朝廷と幕府間の緊張関係に苦慮しつつも、気楽に生きよ、との達観を示しているものといわれる。

 ●宮廷文化を象徴する和歌 後水尾院(1596~1680年)は、江戸幕府が樹立した1615(元和1)年を挟む、1611~29年に後水尾天皇として在位し、退位後50年超にわたり院政を執った。二代将軍徳川秀忠の娘である東福門院和子(1607~78年)を中宮としたが、これは江戸幕府による朝廷との融和政策だ。院は宮中で『源氏物語』『伊勢物語』などを研究し、長く絶えていた宮廷の儀を復するため『後水尾院当時年中行事』を著わすなど、積極的に古典文学や宮廷文化の復興に貢献した。また、とりわけ和歌や書に長じ、会場でも院の見事な直筆による和歌や書を見ることができる。後水尾院は茶道や華道にも通じ、茶会やいけばな会を開催した。これらのサロンで公武や町衆の交流が行われるようになる。幕府は、1615年に禁中并公家中諸法度を公布し、和歌が宮廷を象徴する芸能として位置づけたのだが、院はそのことを率先して行動に移したといえるだろう。

 ●天皇と公家の詞による《源氏物語絵巻》 源氏物語の54場面が詞と絵と交互に展開する《源氏物語絵巻》(霊元天皇ほか詞、住吉具慶画、5巻のうち第2巻・第3巻、江戸時代 17世紀、MIHO MUSEUM)(※第2巻は3/12までの展示。第3巻は3/14~4/8展示)は、後水尾院の院政時代に描かれている。住吉派の住吉具慶(1631~1705年)による源氏絵の中での最高傑作とされる。詞書は、在位中の霊元天皇(在位1663~87年)・皇族・公家54人による驚くべきもの。淡彩で余白を活かして描写された典雅な物語世界は、風が吹き抜けるような清らかさと、親しみやすさをもつ。住吉具慶の父の如慶(1599~1670年)は住吉派の創始者で、後水尾院の意を受けた後西院による命を受けて、住吉大社絵所預となった。

 ●修学院離宮と修学院焼 公家の冠を逆さにしたような形の《冠形大耳付水指》(修学院焼、江戸時代 17世紀、滴翠美術館)は、質素ながら優美な趣がある。修学院焼とは、修学院離宮に築かれた窯で焼かれた焼き物。修学院離宮は、後水尾院が晩年に洛外の比叡山の麓に造営した破格の広さの別荘であり、寛永文化の到達点といわれる。会場の壁面には参考図版として、岡田美術館所蔵「修学院図屛風」(江戸時代 17世紀)の複写が紹介されていて、森や池や農耕地や、点在する建物など当時の情景を目にすることができる。

 ■小堀遠州/遠州好み、きれい寂び
 茶人であった小堀遠州(1579~1647年)が生涯で最も愛し、1637(寛永14)年以降の晩年に70回近く集中して使用した名品の茶入が出品されている。《瀬戸肩衝茶入 銘 飛鳥川》(江戸時代 17世紀、湯木美術館)である。肩、胴、腰へ連なるなだらかな曲線と、褐色と黒色の色彩が、落ち着きと明快な印象をもたらす。遠州は若い時この茶入を知ったのだが、新しいので好まなかった。しかし晩年になって伏見で見直し、その素晴らしさに驚き入り、所有した。銘は「古今和歌集」の和歌からとられている。

 遠州はそれまで好まれた唐物や古い茶道具だけでなく、和物も新しいものも積極的に評価し選定した。また茶道具に歌銘を付けたり、床に和歌に関連するものを掛けるなど、茶の世界に典雅な宮廷文化を導入した。それは千利休(1522~91年)の侘びとも、師である古田織部(1543~1615年)の歪みとも異なる茶であった。遠州が目指したのは武士たちの教養としての大名茶である。会場には、歌銘を付けた茶入、唐物の茶碗や水差、朝鮮やオランダの茶碗など、数々の「遠州好み」の茶道具が出展されている。

 遠州は江戸幕府に仕える武将であり、数多くの普請奉行、伏見奉行などに就き、建築や作庭も行った。代表的なものに仙洞御所の造営や、大徳寺塔頭孤篷庵や南禅寺金地院などがある。茶室では書院化をはかり、また多窓や砂ずり天井によって明るさを取り入れたことも特徴だ。遠州が新しい美意識によって創出した世界は、のちに「きれい寂び」と呼ばれた。これは、明るく優美で洗練されている、ということを意味するのだろうか。

 ■野々村仁清と金森宗和/宗和好み
 冒頭に紹介した白い水玉穴の鉢を制作した野々村仁清は、小堀遠州が亡くなった1647年頃、京都の御室仁和寺門前に御室焼を始めた。開窯初期の作品には、仁清を指導した茶人の金森宗和(1584~1656年)の好みが色濃いといわれている。宗和は、公家衆の茶の師匠であり、御室焼を茶会で広めた。また宗和は遠州と同時期に活躍し、交流をもった。

 仁清が手掛けた《銹絵富士山文茶碗》(江戸時代 17世紀、出光美術館)は、外隈(物の外側をぼかすことで物を描く方法)で富士山を描いた白釉茶碗。シンプルで味わい深い。富士山の描法や充分な余白などに当時人気のあった狩野探幽の影響も考えられている。また、仁清の《褐釉四方茶入》(江戸時代 17世紀、サントリー美術館)は、角丸の方形や褐色の色合い、釉薬と地の部分が創り出す模様も面白く、小さいながら強い存在感だ。一方、艶やかな白色の丸い仁清作《白釉耳付水差》(江戸時代 17世紀、出光美術館)(※3/12までの展示)は優美で瀟洒だ。少ない色数と斬新な造形が宗和好みとされる。仁清は宗和の没後、色彩豊かな色絵陶器へ作風を大きく変化させる。会場ではその多様性を目にできる。

 ■狩野探幽/淡泊で瀟洒な画風 
 昨年秋に「天下を治めた絵師 狩野元信」展がサントリー美術館で開催され、狩野派の基礎を築いた元信(1477?~1559年)の卓抜なアイデアと画技に圧倒された。この元信の孫が豪壮な作風の狩野永徳(1543~90年)であり、さらにその孫が狩野探幽(1602~74年)だ。両者は幼い時から天賦の才を発揮した。狩野探幽は孝信(1571~1618年)の長男として京都に生れた。徳川家康と秀忠に絵の実力を認められ、江戸へ出て幕府御用絵師となった。

 六曲一双の《桐鳳凰図屛風》(江戸時代 17世紀、サントリー美術館)は、探幽の数少ない金地濃彩屛風だ。右隻は、桐の大樹を右隅に配し、大きく曲線を描いて流れる川の前に雌雄の鳳凰が見つめ合い、その間に幼鳥がいる。左隻では、左隅に桐の樹木が一部見え、空を舞う鳳凰と岩上にとまる鳳凰が川を挟んで見つめ合う。その眼差しは妖艶でもある。この吉兆尽くしの屛風は、金色、緑、白の色の対比が鮮やかだ。上述した狩野元信展には、元信筆「四季花鳥図屛風」(六曲一双、室町時代 1550年、白鶴美術館)(※出展なし)の複製が、参考として展示されていた。それと比べると、同じ金地濃彩屛風だが、探幽の本作では画面に描かれるモティーフがはるかに少なく整理されていて、余白が大きい。また、桃山時代の屛風のように樹木を画面の中心に置くことを、探幽はここでは避けている。

 一方、探幽が寛永年間に描いた六曲一双の《竹林七賢・香山九老図屛風》(江戸時代 17世紀、静岡県立美術館)(※3/14~4/8展示)は、水墨淡彩屏風だ。本作はよく絵画化される理想の隠者を主題とするが、人物を中心に描くのではなく、人物を取巻く情景描写を行い、画面の半分を占める余白が絶妙な空気感を出している。近づいて見ると、流れる川に小さな魚が泳ぎ、童子たちが喜ぶ姿なども見られ、実に微笑ましい。

 探幽は、1634(寛永11)年に名古屋城上洛殿障壁画(重要文化財《名古屋城上洛殿上段之間襖絵 帝鑑図「高士渡橋」》(名古屋城総合事務所)は、3/12までの展示)を描いた頃から、それまでの描法を一変させた。筆致数を減らし余白を大きくとった淡彩で瀟洒な画風である。この探幽の新様式は狩野派に長く継承され、幕府御用絵師としての狩野派の地位を不動のものとした。探幽の画力は後水尾院にも賞賛された。また探幽は遠州の茶会に出席し、1641(寛永18)年の遠州による禁裏造営時に障壁画を描くなど仕事を共にしていて、親交があった。

 ■「きれい」という世界に浸る
 筆者は本展で、気持ちよいパンチをくらったような気分になった。それは、「寛永文化」という視点である。今まで遠州を考える場合は利休や織部との違いを意識しながら、仁清は陶芸の世界のなかで、また探幽については狩野派の流れのなかで、というように別々に見ていた人々が、寛永文化のもつ共通の美意識でつながっていたということだ。本展は縦の流れや限定領域で見ていたものを、横断的な観点で見せてくれた。寛永文化とは、宮廷文化をベースとする「きれい」という言葉に代表される美意識であると、本展は提示する。作品全体が発するものに耳をすませるように、この雅なる世界に浸ってみたい。

 「寛永文化」という概念は、林屋辰三郎先生によって1953年に提言され、その後、熊倉功夫先生による研究が行われた。本展はそれ以後の研究動向も踏まえたものだ。展覧会図録には、熊倉功夫先生(MIHO MUSEUM館長)、および柴崎大典氏(サントリー美術館学芸員)による貴重な論考が掲載されている。展覧会と併せて、こちらもお読みいただきたく思う。


【参考文献】
1) サントリー美術館 編集:『寛永の雅 江戸の宮廷文化と遠州・仁清・探幽』(展覧会図録)、サントリー美術館、2018年。
2) 小堀宗実・熊倉功夫・磯崎新・龍居竹ノ介ほか:『小堀遠州 綺麗さびの極み』、新潮社、2006年。
3) 門脇むつみ:『巨匠 狩野探幽の誕生』、朝日新聞出版、2014年。

執筆:細川 いづみ (HOSOKAWA Fonte Idumi) 
(2018年3月)


※会場内の風景画像は主催者側の許可を得て撮影したものです。



写真1 会場入り口。
手前は、野々村仁清、《白釉円孔透鉢》、江戸時代 17世紀、MIHO MUSEUM。
奥に一部見えるのは、狩野探幽、《桐鳳凰図屛風》、六曲一双、江戸時代 17世紀、サントリー美術館。
(※両作品とも全期間展示)
(撮影:I.HOSOKAWA)



写真2 会場風景。
手前は、霊元天皇ほか詞、住吉具慶画、《源氏物語絵巻》、
5巻のうちの第2巻・第3巻、江戸時代 17世紀、MIHO MUSEUM。
(※本作品は全期間展示。ただし、この第2巻は3/12までの展示、第3巻は3/14~4/8展示)。
(撮影:I.HOSOKAWA)



写真3 会場風景。
右から、野々村仁清、《鉄釉四方茶入》、江戸時代 17世紀、一般財団法人 高津古文化会館。
野々村仁清、《褐釉四方茶入》、江戸時代 17世紀、サントリー美術館。
(※両作品とも全期間展示)
(撮影:I.HOSOKAWA)

【展覧会名】
寛永の雅 江戸の宮廷文化と遠州・仁清・探幽
【会期・会場】
2018年2月14日~4月8日 サントリー美術館
電話:03-3479-8600 
[展覧会詳細] http://suntory.jp/SMA/

※本文・図版とも無断引用・無断転載を禁じます。