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日本のまんなかでアートをさけんでみる

開催中〜2024/09/08

原美術館ARC

群馬県・渋川市

企画展「未来のかけら 科学とデザインの実験室」

開催中〜2024/09/08

21_21 DESIGN SIGHT ギャラリー1&2

東京都・港区

須田国太郎の芸術――三つのまなざし

開催中〜2024/09/08

世田谷美術館

東京都・世田谷区

聖書の世界〜伝承と考古学〜/古代オリエントをたのしむ!子どもミュージアム

開催中〜2024/09/08

古代オリエント博物館

東京都・豊島区

慰問 銃後からのおくりもの

開催中〜2024/09/08

昭和館

東京都・千代田区

Wang Yancheng’s World -Contemporary Art

開催中〜2024/09/09

東京国立博物館

東京都・台東区

織田コレクション 北欧モダンデザインの名匠 ポール・ケアホルム展 時代を超えたミニマリズム

開催中〜2024/09/16

パナソニック汐留美術館

東京都・港区

トーキョーアーツアンドスペース レジデンス2024 成果発表展 『微粒子の呼吸』第2期

開催中〜2024/09/22

トーキョーアーツアンドスペース本郷

東京都・文京区

フィロス・コレクション ロートレック展 時をつかむ線

開催中〜2024/09/23

SOMPO美術館

東京都・新宿区

空想旅行案内人 ジャン=ミッシェル・フォロン

開催中〜2024/09/23

東京ステーションギャラリー

東京都・千代田区

吉田克朗展 ものに、風景に、世界に触れる

開催中〜2024/09/23

埼玉県立近代美術館

埼玉県・さいたま市

島袋道浩 : 音楽が聞こえてきた

開催中〜2024/09/23

BankART Station

神奈川県・横浜市

「人間×自然×技術=未来展(ひと かける しぜん かける ぎじゅつ は みらい てん) – Well-being for human & nature – 」

開催中〜2024/09/23

SusHi Tech Square内1F Space

東京都・千代田区

つくる展 TASKOファクトリーのひらめきをかたちに

開催中〜2024/09/23

茨城県近代美術館

茨城県・水戸市

和のあかり×百段階段2024 ~妖美なおとぎはなし~

開催中〜2024/09/23

ホテル雅叙園東京 東京都指定有形文化財「百段階段」

東京都・目黒区

平田晃久―人間の波打ちぎわ

開催中〜2024/09/23

練馬区立美術館

東京都・練馬区

【特別展】没後25年記念 東山魁夷と日本の夏

開催中〜2024/09/23

山種美術館

東京都・渋谷区

令和6年度夏季展「Come on! 九曜紋―見つけて楽しむ細川家の家紋―」

開催中〜2024/09/23

永青文庫

東京都・文京区

内藤礼 生まれておいで 生きておいで

開催中〜2024/09/23

東京国立博物館

東京都・台東区

夏の特集展示2024「戦争の時代 日本における藤田嗣治 日常から戦時下へ」

開催中〜2024/09/24

軽井沢安東美術館

長野県・軽井沢町

印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵

開催中〜2024/09/29

東京富士美術館

東京都・八王子市

昭和モダーン モザイクのいろどり 板谷梅樹の世界

開催中〜2024/09/29

泉屋博古館東京

東京都・港区

梅津庸一 クリスタルパレス

開催中〜2024/10/06

国立国際美術館

大阪府・大阪市

大地に耳をすます 気配と手ざわり

開催中〜2024/10/09

東京都美術館

東京都・台東区

レガシー ―美を受け継ぐ モディリアーニ、シャガール、ピカソ、フジタ

開催中〜2024/10/13

松岡美術館

東京都・港区

GO FOR KOGEI 2024「くらしと工芸、アートにおける哲学的なもの」

2024/09/14〜2024/10/20

富山県富山市/岩瀬エリア、石川県金沢市/東山エリア

富山県・富山市、石川県・金沢市

令和6年度第2期所蔵品展 「特集 新恵美佐子 祈りの花」

開催中〜2024/10/20

横須賀美術館

神奈川県・横須賀市

令和6年度第2期所蔵品展  特集:生誕100年 芥川紗織

開催中〜2024/10/20

横須賀美術館

神奈川県・横須賀市

黄土水とその時代―台湾初の洋風彫刻家と20世紀初頭の東京美術学校

開催中〜2024/10/20

東京藝術大学大学美術館

東京都・台東区

いわいとしお×東京都写真美術館 光と動きの100かいだてのいえ

開催中〜2024/11/03

東京都写真美術館

東京都・目黒区

彫刻の森美術館 開館55周年記念 舟越桂 森へ行く日

開催中〜2024/11/04

彫刻の森美術館

神奈川県・足柄下郡箱根町

北アルプス国際芸術祭 2024

2024/09/13〜2024/11/04

芸術祭(長野県大町市)

長野県・大町市

特別展「眼福―大名家旧蔵、静嘉堂茶道具の粋」

2024/09/10〜2024/11/04

静嘉堂@丸の内(静嘉堂文庫美術館)

東京都・千代田区

瑛九 ―まなざしのその先に―

2024/09/14〜2024/11/04

横須賀美術館

神奈川県・横須賀市

山梨モダン 1912~1945 大正・昭和前期に華ひらいた山梨美術

2024/09/14〜2024/11/04

山梨県立美術館

山梨県・甲府市

日本中の子どもたちを笑顔にした 絵本作家 かがくいひろしの世界展

2024/09/14〜2024/11/04

八王子市夢美術館

東京都・八王子市

MOTコレクション 竹林之七妍/特集展示 野村和弘/Eye to Eye-見ること

開催中〜2024/11/10

東京都現代美術館

東京都・江東区

ICC アニュアル 2024 とても近い遠さ

開催中〜2024/11/10

NTTインターコミュニケーション・センター [ICC]

東京都・新宿区

没後300年記念 英一蝶 ―風流才子、浮き世を写す―

2024/09/18〜2024/11/10

サントリー美術館

東京都・港区

日本現代美術私観:高橋龍太郎コレクション

開催中〜2024/11/10

東京都現代美術館

東京都・江東区

開発好明 ART IS LIVE ―ひとり民主主義へようこそ

開催中〜2024/11/10

東京都現代美術館

東京都・江東区

TOKAS Project Vol. 7『鳥がさえずり、山は動く』

2024/10/05〜2024/11/10

トーキョーアーツアンドスペース本郷

東京都・文京区

北斎の植物図鑑

開催中〜2024/11/10

北斎館

長野県・小布施町

大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2024

開催中〜2024/11/10

芸術祭(越後妻有地域)

新潟県・十日町市、津南町

企画展「作家の視線― 過去と現在、そして…」

開催中〜2024/11/11

ホキ美術館

千葉県・千葉市

田名網敬一 記憶の冒険

開催中〜2024/11/11

国立新美術館

東京都・港区

第76回 正倉院展

2024/10/26〜2024/11/11

奈良国立博物館

奈良県・奈良市

特別展 文明の十字路  バーミヤン大仏の太陽神と弥勒信仰 ―ガンダーラから日本へ―

2024/09/14〜2024/11/12

三井記念美術館

東京都・中央区

生誕130年記念 北川民次展―メキシコから日本へ

2024/09/21〜2024/11/17

世田谷美術館

東京都・世田谷区

森の芸術祭 晴れの国・岡山

2024/09/28〜2024/11/24

芸術祭(岡山県北部12市町村、津山市、新見市、真庭市、鏡野町、奈義町など))

岡山県・北部12市町村

大正・昭和のモダニスト 蕗谷虹児展

2024/10/05〜2024/11/24

平塚市美術館

神奈川県・平塚市

小川晴暘と飛鳥園 一〇〇年の旅

2024/09/11〜2024/11/24

半蔵門ミュージアム

東京都・千代田区

北斎が紡ぐ平安のみやびー江戸に息づく王朝文学

2024/09/18〜2024/11/24

すみだ北斎美術館

東京都・墨田区

フィリップ・パレーノ:この場所、あの空

開催中〜2024/12/01

ポーラ美術館

神奈川県・足柄下郡箱根町

心象工芸展

開催中〜2024/12/01

国立工芸館

石川県・金沢市

田中一村展 奄美の光 魂の絵画

2024/09/19〜2024/12/01

東京都美術館

東京都・台東区

アルフォンス・ミュシャ ふたつの世界

2024/09/21〜2024/12/01

府中市美術館

東京都・府中市

挂甲の武人 国宝指定50周年記念 特別展『はにわ』

2024/10/16〜2024/12/08

東京国立博物館

東京都・台東区

没後50年記念 福田平八郎×琳派

2024/09/29〜2024/12/08

山種美術館

東京都・渋谷区

ベル・エポック―美しき時代 パリに集った芸術家たち ワイズマン&マイケル コレクションを中心に

2024/10/05〜2024/12/15

パナソニック汐留美術館

東京都・港区

コスチュームジュエリー ―美の変革者たち― シャネル、ディオール、スキャパレッリ 小瀧千佐子コレクションより

開催中〜2024/12/15

宇都宮美術館

栃木県・宇都宮市

特別展 オタケ・インパクト ―越堂・竹坡・国観、尾竹三兄弟の日本画アナキズム―

2024/10/19〜2024/12/15

泉屋博古館東京

東京都・港区

荒川ナッシュ医 ペインティングス・アー・ポップスターズ

2024/10/30〜2024/12/16

国立新美術館

東京都・港区

リキッドスケープ 東南アジアの今を見る

2024/09/21〜2024/12/24

アーツ前橋

群馬県・前橋市

追悼 野見山暁治 野っ原との契約

2024/10/06〜2024/12/25

練馬区立美術館

東京都・練馬区

「テレンス・コンラン モダン・ブリテンをデザインする」展

2024/10/12〜2025/01/05

東京ステーションギャラリー

東京都・千代田区

さくらももこ展

2024/10/05〜2025/01/05

森アーツセンターギャラリー

東京都・港区

心のまんなかでアートをあじわってみる

2024/09/14〜2025/01/13

原美術館ARC

群馬県・渋川市

アレック・ソス 部屋についての部屋

2024/10/10〜2025/01/19

東京都写真美術館

東京都・目黒区

再開館記念 「不在」ートゥールーズ=ロートレックとソフィ・カル

2024/11/23〜2025/01/26

三菱一号館美術館

東京都・千代田区

ポケモン×工芸展-美とわざの大発見-

2024/11/01〜2025/02/02

麻布台ヒルズ ギャラリー

東京都・港区

中国陶磁展 うわぐすりの1500年

2024/10/29〜2025/02/09

松岡美術館

東京都・港区

ジャム・セッション 石橋財団コレクション×毛利悠子—ピュシスについて

2024/11/02〜2025/02/09

アーティゾン美術館

東京都・中央区

おしゃべり美術館 ひらビあーつま~れ10年記念展

2024/09/21〜2025/02/16

平塚市美術館

神奈川県・平塚市

開館2周年記念特別企画「藤田嗣治の愛しきものたち」

2024/09/27〜2025/02/18

軽井沢安東美術館

長野県・軽井沢町

寺山修司展

2024/10/05〜2025/03/30

世田谷文学館

東京都・世田谷区

鋳放しの鋳造ガラス 2018-2020年 Courtesy of the artist and Hauser & Wirth © Roni Horn Photo: Koroda Takeru

Exhibitions

ロニ・ホーン:水の中にあなたを見るとき、あなたの中に水を感じる?

 豊かな自然に囲まれた箱根のポーラ美術館で、ニューヨーク在住の美術家ロニ・ホーンの、日本の美術館では初の大規模な個展が開催されている。この館ならではの見どころのひとつは、広い窓のある展示室や屋外の森に設置されたガラス彫刻シリーズ。開幕した秋から冬、そして春へ——。季節ごとにうつろう景色を映しつつ、自然光の射し込む空間で多彩な表情を見せるインスタレーションが印象的だ。

問いかけてくる作品たち

 光が降り注ぐ吹き抜け空間のエスカレーターを降りると、展示室入口の手前に、何かを問いたげにも見える青年の顔と氷河の写真プレートが立てられている。
実はこれも作品の一部。謎めいたタイトル《水による疑い(どうやって)》の「どうやって(How)」という疑問詞が予感させるように、会場内の作品は見る者に様々な問いかけを促してくる。

《水による疑い(どうやって)》(部分)2003-2004年 12点のピグメント・プリント(6組)、メッキされたアルミニウムの支柱、アクリルのグレージング Courtesy of the artist and Hauser & Wirth © Roni Horn Photo: Koroda Takeru
《水による疑い(どうやって)》(部分)2003-2004年 12点のピグメント・プリント(6組)、メッキされたアルミニウムの支柱、アクリルのグレージング Courtesy of the artist and Hauser & Wirth © Roni Horn Photo: Koroda Takeru

例えば剥製のフクロウを写した2点の対作品は、同じフクロウの写真なのか。両者はどこか違うのか。なぜ対なのか。

《死せるフクロウ》1997年 2点のアイリス・プリント Courtesy of the artist and Hauser & Wirth © Roni Horn
《死せるフクロウ》1997年 2点のアイリス・プリント Courtesy of the artist and Hauser & Wirth © Roni Horn

 展示室に点在する淡い色の8つの円筒形の立体は、透明な水をたたえた器が水鏡になっているようにも見える。だが、これは、ガラスがゆっくりと冷え固まることで透明性を宿した重量のある彫刻で、それが周囲を映し出すと同時に、光を反射したり、暗がりに沈んだり、角度によって刻々と見え方を変えていく。観る者は、1点1点を巡礼するようにまわって歩くことになるのだが、すべてが《無題》のこの作品のタイトルには、括弧書きで文章が付されている。たとえば、「必要なニュースはすべて天気予報から手に入れる。」とか、「事故の最中にしか、速度は生じない。」とか、さらに長い引用文もある。こうした言葉は、作品とどう結びついているのだろうか。

鋳放しの鋳造ガラス 2018-2020年 Courtesy of the artist and Hauser & Wirth © Roni Horn Photo: Koroda Takeru
《無題(「必要なニュースはすべて天気予報から手に入れる。」)》 鋳放しの鋳造ガラス 2018-2020年 Courtesy of the artist and Hauser & Wirth © Roni Horn Photo: Koroda Takeru
《無題(「…どの家でも、土間の上、敷物の上、板寝床の上で、村人たちは動かず、黙って横になっていた。その顔は汗だらけ。村全体がさながら深海の底の潜水艦であった—確かに存在はしているのに、声も、動きもなく、生きているしるしがない。」)》 2018-2020年 鋳放しの鋳造ガラス Courtesy of the artist and Hauser & Wirth  © Roni Horn Photo: Koroda Takeru
《無題(「…どの家でも、土間の上、敷物の上、板寝床の上で、村人たちは動かず、黙って横になっていた。その顔は汗だらけ。村全体がさながら深海の底の潜水艦であった—確かに存在はしているのに、声も、動きもなく、生きているしるしがない。」)》 2018-2020年 鋳放しの鋳造ガラス Courtesy of the artist and Hauser & Wirth  © Roni Horn Photo: Koroda Takeru

 作者のロニ・ホーンは、19歳の年に北方の島国アイスランドを訪れて深く魅了されて以来、人里離れた辺境の風景や孤独を求めて繰り返し旅してきたことで知られる。インタビューで自ら「私は概念的なものを重視する人間」と語るように、写真や彫刻、ドローイングや本などの多様なメディアを用いて、コンセプチュアルな作品を制作。言葉を取り入れた作品も多い。
概念的な作品に対して鑑賞者から問いが発せられることに対して、ホーン自身は「これは私たちが疑念から決して逃れることはできないことを物語っています。……私はこのわからないことによる悪循環に魅力を感じました。これにより鑑賞者は経験に対して能動的に関わり続けることになるのです」と語っている。

右)アメリカの詩人エミリ・ディキンスンの言葉を題材としたインスタレーション《エミリのブーケ》(部分)2006-2007年 アルミニウム、成型した白いプラスチック6点組 Courtesy of the artist and Hauser & Wirth  © Roni Horn 左)《ゴールド・フィールド》 1980/1994年 焼鈍した純度99.99%の金箔 Courtesy of the artist and Hauser & Wirth  © Roni Horn Photo: Koroda Takeru
右)アメリカの詩人エミリ・ディキンスンの言葉を題材としたインスタレーション《エミリのブーケ》(部分)2006-2007年 アルミニウム、成型した白いプラスチック6点組 Courtesy of the artist and Hauser & Wirth  © Roni Horn  左)《ゴールド・フィールド》 1980/1994年 焼鈍した純度99.99%の金箔 Courtesy of the artist and Hauser & Wirth  © Roni Horn Photo: Koroda Takeru
《または 7》 2013/2015年 粉末顔料、黒鉛、木炭、色鉛筆、ワニス/紙 グレンストーン美術館(ポトマック、アメリカ) © Roni Horn Photo: Koroda Takeru 一度切り刻んだドローイングを再び組み立てて、ひとつの作品とする複雑な手法がとられている。
《または 7》 2013/2015年 粉末顔料、黒鉛、木炭、色鉛筆、ワニス/紙 グレンストーン美術館(ポトマック、アメリカ) © Roni Horn Photo: Koroda Takeru 一度切り刻んだドローイングを再び組み立てて、ひとつの作品とする複雑な手法がとられている。

 観る者が「わからない」なりに作品と関わるとすれば、人によって感じ方も大きく異なるだろうが、個人的には、《あなたは天気 パート2》と《静かな水(テムズ川、例として)》に心惹かれた。
《あなたは天気 パート2》は、アイスランドの温泉で、一人の女性の表情を6週にわたって記録した写真作品だ。100点ものポートレートが一室に並ぶ。「曇った顔」や「気が晴れる」など、人間のあり方や経験を気象に見立てることを指摘した解説が、タイトルの意味にヒントをくれる。感情がどれも曖昧に見える表情を選んだのだろうか。だが、見比べていくと、ひとつとして同じ表情はない。その絶え間ない変化に感じ入ると同時に、普遍性も感じられる不思議な作品だ。

《あなたは天気 パート2》(部分) 2010-2011年 64点のCプリント、36点の白黒印刷、PVCボードにマウント Courtesy of the artist and Hauser & Wirth  © Roni Horn  Photo: Koroda Takeru
《あなたは天気 パート2》(部分) 2010-2011年 64点のCプリント、36点の白黒印刷、PVCボードにマウント Courtesy of the artist and Hauser & Wirth  © Roni Horn  Photo: Koroda Takeru

 《静かな水(テムズ川、例として)》もまた写真の連作だが、こちらは藍や緑や泥色といった様々な色で波立つ水面に小さな数字が散りばめられ、画面下にホーンが考察した言葉や引用が脚注としてびっしりと記されている。注は英語だが、後のパフォーマンス映像《水と言う》から、脚注の言葉がいくらかうかがい知れる。「テムズ川は都市を流れる川の中で最も自殺率が高い」といった自殺や死、そして川や水に関わる長尺のモノローグは、立ち去りがたい魅力があった。ちなみに展覧会の副題の言葉も、この写真作品やモノローグに含まれている。

《静かな水(テムズ川、例として)》(部分) 1999年 15点の写真と文字のオフセット・リトグラフィー/非塗工紙 Courtesy of the artist and Hauser & Wirth  © Roni Horn Photo: Koroda Takeru
《静かな水(テムズ川、例として)》(部分) 1999年 15点の写真と文字のオフセット・リトグラフィー/非塗工紙 Courtesy of the artist and Hauser & Wirth  © Roni Horn Photo: Koroda Takeru
《水と言う》2012年5月、ルイジアナ近代美術館(フムレベック、デンマーク)でのパフォーマンス ヴィデオ 39分11秒 日本語字幕:良知暁、石井麻希
《水と言う》2012年5月、ルイジアナ近代美術館(フムレベック、デンマーク)でのパフォーマンス ヴィデオ 39分11秒 日本語字幕:良知暁、石井麻希

 作家自身が来日して設営に関わった展示空間は、部屋ごとに変化に富み、とても美しい。観ること、感じること、知りたいと思うこと、そして考えることを促される作品の数々に、特別にしつらえられた空間でじっくりと対峙できるのは大きな喜びだ。

「森の遊歩道」に常設設置された《鳥葬(箱根)》 2017-2018年 鋳放しの鋳造ガラス ポーラ美術館 © Roni Horn  Photo: Koroda Takeru
「森の遊歩道」に常設設置された《鳥葬(箱根)》 2017-2018年 鋳放しの鋳造ガラス ポーラ美術館 © Roni Horn  Photo: Koroda Takeru

執筆:中山ゆかり
写真提供:ポーラ美術館

*本展は、ルールを守った上での作品撮影が許可されています。
*参考文献:「ロニ・ホーン:水の中にあなたを見るとき、あなたの中に水を感じる?」展覧会カタログ(ホーンの言葉は、アンドリュー・マークルによるインタビュー「偏在多様」を参照しました)

ロニ・ホーン:水の中にあなたを見るとき、あなたの中に水を感じる?
Roni Horn: When You See Your Reflection in Water, Do You Recognize the Water in You?

【会期・会場】
2021年9月18日(土)〜2022年3月30日(水) ポーラ美術館(神奈川県・箱根町)
※来場にあたっての注意事項等については、公式ウェブサイトをご確認ください。
美術館HP:https://www.polamuseum.or.jp