詳細はミュージアムのオフィシャルサイトなどでご確認ください。

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「石川九楊大全」

開催中〜2024/07/28

上野の森美術館

東京都・台東区

カルティエと日本 半世紀のあゆみ 『結 MUSUBI』

開催中〜2024/07/28

東京国立博物館

東京都・台東区

トーキョーアーツアンドスペースレジデンス2024 成果発表展「微粒子の呼吸」第1期

開催中〜2024/08/04

トーキョーアーツアンドスペース本郷

東京都・文京区

おとなとこどもの自由研究 工芸の光と影展

開催中〜2024/08/18

国立工芸館

石川県・金沢市

新紙幣発行記念 北斎進化論

開催中〜2024/08/18

北斎館

長野県・小布施町

大川美術館コレクションによる20世紀アートセレクション ―ピカソ、ベン・シャーンからポップ・アートまで

開催中〜2024/08/18

宇都宮美術館

栃木県・宇都宮市

生誕140年 YUMEJI展 大正浪漫と新しい世界

開催中〜2024/08/25

東京都庭園美術館

東京都・港区

特別展「北斎 グレートウェーブ・インパクト —神奈川沖浪 裏の誕生と軌跡—」

開催中〜2024/08/25

すみだ北斎美術館

東京都・墨田区

TRIO パリ・東京・大阪 モダンアート・コレクション

開催中〜2024/08/25

東京国立近代美術館

東京都・千代田区

内藤コレクション 写本 — いとも優雅なる中世の小宇宙

開催中〜2024/08/25

国立西洋美術館

東京都・台東区

超・日本刀入門 revive―鎌倉時代 の名刀に学ぶ

開催中〜2024/08/25

静嘉堂@丸の内(静嘉堂文庫美術館)

東京都・千代田区

「-没後100年-富岡鉄斎 鉄斎と文人書画の優品」(仮称)

開催中〜2024/08/25

山梨県立美術館

山梨県・甲府市

企画展「旅するピーナッツ。」

開催中〜2024/09/01

スヌーピーミュージアム

東京都・町田市

シアスター・ゲイツ展:アフロ民藝

開催中〜2024/09/01

森美術館

東京都・港区

AOMORI GOKAN アートフェス 2024 「つらなりのはらっぱ」

開催中〜2024/09/01

アートフェス(芸術祭)( 青森県立美術館、青森公立大学 国際芸術センター青森、弘前れんが倉庫美術館、八戸市美術館、十和田市現代美術館)

青森県

伊藤潤二展 誘惑

開催中〜2024/09/01

世田谷文学館

東京都・世田谷区

音を観る ―変化観音と観音変化身―

開催中〜2024/09/01

半蔵門ミュージアム

東京都・千代田区

エドワード・ゴーリーを巡る旅

開催中〜2024/09/01

横須賀美術館

神奈川県・横須賀市

ルーヴル美術館の銅版画展

開催中〜2024/09/01

八王子市夢美術館

東京都・八王子市

ザ・キャビンカンパニー 大絵本美術展〈童堂賛歌〉

開催中〜2024/09/01

平塚市美術館

神奈川県・平塚市

「ヨシタケシンスケ展かもしれない」

開催中〜2024/09/02

そごう美術館

神奈川県・横浜市

カルダー:そよぐ、感じる、日本

開催中〜2024/09/06

麻布台ヒルズ ギャラリー

東京都・港区

市制施行70周年記念 自然、生命、平和 私たちは見つめられている 吉田遠志展

開催中〜2024/09/06

府中市美術館

東京都・府中市

日本のまんなかでアートをさけんでみる

開催中〜2024/09/08

原美術館ARC

群馬県・渋川市

企画展「未来のかけら 科学とデザインの実験室」

開催中〜2024/09/08

21_21 DESIGN SIGHT ギャラリー1&2

東京都・港区

特別展「神護寺―空海と真言密教のはじまり」

開催中〜2024/09/08

東京国立博物館

東京都・台東区

須田国太郎の芸術――三つのまなざし

開催中〜2024/09/08

世田谷美術館

東京都・世田谷区

聖書の世界〜伝承と考古学〜/古代オリエントをたのしむ!子どもミュージアム

開催中〜2024/09/08

古代オリエント博物館

東京都・豊島区

慰問 銃後からのおくりもの

開催中〜2024/09/08

昭和館

東京都・千代田区

開館20周年記念 山梨放送開局70周年 平山郁夫 -仏教伝来と旅の軌跡

開催中〜2024/09/09

平山郁夫シルクロード美術館

山梨県・北杜市

織田コレクション 北欧モダンデザインの名匠 ポール・ケアホルム展 時代を超えたミニマリズム

開催中〜2024/09/16

パナソニック汐留美術館

東京都・港区

トーキョーアーツアンドスペース レジデンス2024 成果発表展 『微粒子の呼吸』第2期

2024/08/17〜2024/09/22

トーキョーアーツアンドスペース本郷

東京都・文京区

フィロス・コレクション ロートレック展 時をつかむ線

開催中〜2024/09/23

SOMPO美術館

東京都・新宿区

空想旅行案内人 ジャン=ミッシェル・フォロン

開催中〜2024/09/23

東京ステーションギャラリー

東京都・千代田区

吉田克朗展 ものに、風景に、世界に触れる

開催中〜2024/09/23

埼玉県立近代美術館

埼玉県・さいたま市

島袋道浩 : 音楽が聞こえてきた

開催中〜2024/09/23

BankART Station

神奈川県・横浜市

「人間×自然×技術=未来展(ひと かける しぜん かける ぎじゅつ は みらい てん) – Well-being for human & nature – 」

開催中〜2024/09/23

SusHi Tech Square内1F Space

東京都・千代田区

つくる展 TASKOファクトリーのひらめきをかたちに

開催中〜2024/09/23

茨城県近代美術館

茨城県・水戸市

和のあかり×百段階段2024 ~妖美なおとぎはなし~

開催中〜2024/09/23

ホテル雅叙園東京 東京都指定有形文化財「百段階段」

東京都・目黒区

平田晃久―人間の波打ちぎわ

2024/07/28〜2024/09/23

練馬区立美術館

東京都・練馬区

【特別展】没後25年記念 東山魁夷と日本の夏

開催中〜2024/09/23

山種美術館

東京都・渋谷区

令和6年度夏季展「Come on! 九曜紋―見つけて楽しむ細川家の家紋―」

開催中〜2024/09/23

永青文庫

東京都・文京区

夏の特集展示2024「戦争の時代 日本における藤田嗣治 日常から戦時下へ」

開催中〜2024/09/24

軽井沢安東美術館

長野県・軽井沢町

印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵

開催中〜2024/09/29

東京富士美術館

東京都・八王子市

昭和モダーン モザイクのいろどり 板谷梅樹の世界

2024/08/31〜2024/09/29

泉屋博古館東京

東京都・港区

梅津庸一 クリスタルパレス

開催中〜2024/10/06

国立国際美術館

大阪府・大阪市

大地に耳をすます 気配と手ざわり

開催中〜2024/10/09

東京都美術館

東京都・台東区

レガシー ―美を受け継ぐ モディリアーニ、シャガール、ピカソ、フジタ

開催中〜2024/10/13

松岡美術館

東京都・港区

GO FOR KOGEI 2024「くらしと工芸、アートにおける哲学的なもの」

2024/09/14〜2024/10/20

富山県富山市/岩瀬エリア、石川県金沢市/東山エリア

富山県・富山市、石川県・金沢市

令和6年度第2期所蔵品展 「特集 新恵美佐子 祈りの花」

開催中〜2024/10/20

横須賀美術館

神奈川県・横須賀市

令和6年度第2期所蔵品展  特集:生誕100年 芥川紗織

開催中〜2024/10/20

横須賀美術館

神奈川県・横須賀市

彫刻の森美術館 開館55周年記念 舟越桂 森へ行く日

開催中〜2024/11/04

彫刻の森美術館

神奈川県・足柄下郡箱根町

北アルプス国際芸術祭 2024

2024/09/13〜2024/11/04

芸術祭(長野県大町市)

長野県・大町市

特別展「眼福―大名家旧蔵、静嘉堂茶道具の粋」

2024/09/10〜2024/11/04

静嘉堂@丸の内(静嘉堂文庫美術館)

東京都・千代田区

瑛九 ―まなざしのその先に―

2024/09/14〜2024/11/04

横須賀美術館

神奈川県・横須賀市

MOTコレクション 竹林之七妍/特集展示 野村和弘/Eye to Eye-見ること

2024/08/03〜2024/11/10

東京都現代美術館

東京都・江東区

ICC アニュアル 2024 とても近い遠さ

開催中〜2024/11/10

NTTインターコミュニケーション・センター [ICC]

東京都・新宿区

没後300年記念 英一蝶 ―風流才子、浮き世を写す―

2024/09/18〜2024/11/10

サントリー美術館

東京都・港区

日本現代美術私観:高橋龍太郎コレクション

2024/08/03〜2024/11/10

東京都現代美術館

東京都・江東区

企画展「作家の視線― 過去と現在、そして…」

開催中〜2024/11/11

ホキ美術館

千葉県・千葉市

田名網敬一 記憶の冒険

2024/08/07〜2024/11/11

国立新美術館

東京都・港区

特別展 文明の十字路  バーミヤン大仏の太陽神と弥勒信仰 ―ガンダーラから日本へ―

2024/09/14〜2024/11/12

三井記念美術館

東京都・中央区

森の芸術祭 晴れの国・岡山

2024/09/28〜2024/11/24

芸術祭(岡山県北部12市町村、津山市、新見市、真庭市、鏡野町、奈義町など))

岡山県・北部12市町村

大正・昭和のモダニスト 蕗谷虹児展

2024/10/05〜2024/11/24

平塚市美術館

神奈川県・平塚市

フィリップ・パレーノ:この場所、あの空

開催中〜2024/12/01

ポーラ美術館

神奈川県・足柄下郡箱根町

心象工芸展

2024/09/06〜2024/12/01

国立工芸館

石川県・金沢市

田中一村展 奄美の光 魂の絵画

2024/09/19〜2024/12/01

東京都美術館

東京都・台東区

挂甲の武人 国宝指定50周年記念 特別展『はにわ』

2024/10/16〜2024/12/08

東京国立博物館

東京都・台東区

ベル・エポック―美しき時代 パリに集った芸術家たち ワイズマン&マイケル コレクションを中心に

2024/10/05〜2024/12/15

パナソニック汐留美術館

東京都・港区

コスチュームジュエリー ―美の変革者たち― シャネル、ディオール、スキャパレッリ 小瀧千佐子コレクションより

2024/09/08〜2024/12/15

宇都宮美術館

栃木県・宇都宮市

特別展 オタケ・インパクト ―越堂・竹坡・国観、尾竹三兄弟の日本画アナキズム―

2024/10/19〜2024/12/15

泉屋博古館東京

東京都・港区

おしゃべり美術館 ひらビあーつま~れ10年記念展

2024/09/21〜2025/02/16

平塚市美術館

神奈川県・平塚市

Exhibitions

マルモッタン・モネ美術館所蔵 
モネ展   「印象、日の出」から「睡蓮」まで

モネが一生涯続けた絵画への果敢な挑戦
  移ろう光を追い求めた印象派の巨匠クロード・モネ(1840~1926)。日本で展覧会はたびたび開かれてきたが、本展はマルモッタン・モネ美術館所蔵の作品によりモネの創作の世界を探るという初めての企画で、新たな発見をもたらしてくれる。「モネの家を訪ねるような展覧会」といってもいいだろう。東京都美術館を皮切りに福岡市美術館、京都市美術館および新潟県立近代美術館の4会場を巡回。(※展示期間が限定の作品があります。展覧会場により展示作品が一部異なります)
  ■二つの柱:モネが手元に置いていた作品群とド・ベリオ・コレクション
  東京都美術館の会場を入ると、モネ夫妻を描いた対画が我々を迎えてくれる。葉巻をくゆらしながら新聞を読むモネと、はにかむような表情の妻カミーユ。1873年にこれを描いたのは、モネとは60年来の親しい友人である画家ピエール=オーギュスト・ルノワール(1841~1919)。気心の知れた同士で見せる姿であろう。そしてモネの手になる妻や息子たちの家族肖像画が続く。モネはこれらの作品を最期まで手元に置いていたという。
  本展の約90点の出展作品には二つの柱がある。中心は、モネが生涯手放さなかった傑作群だ。彼は86歳の人生の半分となる1883年、パリから西へ約80km にあるジヴェルニーに居を構え、庭を造り、後半生の画業を行った。モネの死後この家に残されたのが、モネが描いた十代の頃のカリカチュア(風刺画)から風景画、そして睡蓮や日本の橋を描いた最晩年までの作品と、モネが収集した敬愛する画家たちの作品の合計約150点。これらは次男ミシェルが受け継ぎ、1966年にマルモッタン美術館に遺贈された。同館はのちにマルモッタン・モネ美術館と改称した。
  もう一つの柱が、《印象、日の出》(1872年)(※東京展・福岡展・京都展のみ出展) (※展示期間:東京展 2015年9月19日~10月18日。福岡展 2016年2月4日~2月21日。京都展 2016年3月1日~3月21日) (※すべてマルモッタン・モネ美術館所蔵)などの、ド・ベリオ・コレクションから出展される4点である。同館の至宝だ。現在最も有名なのは「印象派」という名称の由来となった《印象、日の出》だが、《ヨーロッパ橋、サン=ラザール駅》(1877年)(※東京展・福岡展のみ出展)と《テュイルリー公園》 (1876年)(※京都展・新潟展のみ出展)は、1960年代までは《印象、日の出》よりはるかに高い評価を得ていた。これらはルーマニア出身の貴族で、印象派の画家たちの最初の見識あるコレクターであり、彼らの主治医でもあったジョルジュ・ド・ベリオ(1828~94)の収集品。彼の死後に一人娘が継承し、1940年に同館に寄贈。館外を出ることはめったにないものだ。なお、《印象、日の出》の存在が、ミシェルによるマルモッタン美術館への遺贈の動機になったのだろうといわれている。
  ■展覧会の構成
  展覧会は、以下の7つで構成されている。
  ① 家族の肖像/②若き日のモネ/③収集家としてのモネ/④モティーフの狩人/
  ⑤ジョルジュ・ド・ベリオ・コレクションの傑作―マルモッタン美術館の印象派コレクションの誕生/⑥睡蓮と花―ジヴェルニーの庭/⑦最晩年の作品

  以下、心に残った作品など、展覧会のごく一部を紹介したい。
  ■家族の肖像:モネの家族
  モネは肖像画を描くことはまれであり、家族肖像画を生前発表することはなかった。子供たちをすばやい筆触で描いた作品は、自然な表情が印象的だ。画家の愛情が溢れるようだ。《トゥルーヴィルの海辺にて》 (1870年)は、普仏戦争による徴兵を避けロンドンへ行く前に入籍した若い妻カミーユが、白と青の縞のドレスを身につけ花を飾った黒い帽子をかぶり、海を背に椅子に腰かける姿を生き生きと表す。小さいサイズながら訴えるものが強い。モネが少し前より始めた、光の表現に専念したすばやい筆致を効果的に使っている。
  モネの妻カミーユは二人の息子をもうけたが、1879年に32歳で死去。モネは6人の子供のいるエルネスト・オシュデ一家との奇妙な同居生活を続け、1892年にオシュデ夫人だったアリスと再婚し、子供たちを継子とした。アリスの娘たちはモネの絵のモデルも務め、画家でもあった次女ブランシュ・オシュデ(1865~1947)はモネの長男ジャンと結婚し、夫の他界後モネが亡くなるまで献身的にモネの世話をした。ブランシュの作品も展示。
  ■収集家としてのモネ:影響を受けた画家や交友関係
  モネは敬愛する画家たちから真摯に学び、彼らの作品を収集し大切にした。これらの作品から、彼が影響を受けた画家や人間関係を知ることができ、興味深い。例えばウジェーヌ・ブーダン(1824~98)が描いた海景の水彩画がある。モネはブーダンを師と仰いでいた。1845年の幼少期からフランス北西部ノルマンディーの港町ル・アーヴルで家族と共に暮らしたモネは、本展にも10点ほど出品されているカリカチュアを得意とし、15歳にして風刺画家として有名になった。これを見てモネの才能を見出したのがブーダンだった。「見ること、そして色彩で描くことを学びなさい。デッサンをしなさい。風景画を描きなさい」と指導し、のちに戸外制作を薦めた。
  色彩鮮やかな表現でロマン派を代表し、印象派に大きな影響を与えたウジェーヌ・ドラクロワ(1798~1863)や、モネがル・アーヴルで知り合った風景画に優れたオランダ人ヨハン・バルトルト・ヨンキント(1819~91)の水彩画もモネは所蔵していた。1889年にパリで二人展を行った彫刻家オーギュスト・ロダン(1840~1917)の《洞窟の中の若い母》(1885年)なども出展。また、モネがアトリエに飾っていたルノワール作の石膏《ココの肖像》(1907年)は、ルノワールの三男クロードの横顔。同じものをルノワールも所有していた。
  ■《印象、日の出》:「印象派」の名称の由来
  ド・ベリオ・コレクションの《印象、日の出》(1872年) (※東京展・福岡展・京都展のみ出展) (※展示期間:東京展 2015年9月19日~10月18日。福岡展 2016年2月4日~2月21日。京都展 2016年3月1日~3月21日)は、朝靄に霞むル・アーヴル港に日が昇り、空も海も橙色に染まっていく瞬間の大気の表情を美しくとらえている。しかし発表当時は、伝統的な絵画を見慣れた目には未完成に見えた。本作は後に第一回印象派展と呼ばれる、1874年開催の「画家、彫刻家、版画家などによる共同出資会社」の展覧会に出品されたが、美術記者ルイ・ルロワが風刺紙『シャリヴァリ』上で、作品名からつけた「印象派の展覧会」と題する記事にて「描きかけの壁紙でさえ、この海景画から比べたら仕上がり過ぎ」と酷評。その後、「印象派」が変化する自然の表現を目指すモネらの画家を指すことになった。
  なおマルモッタン・モネ美術館では、2014年の同館開館80周年に際し、長く議論をよんでいた本作の描かれた日時や場所について、天文学者も交えての調査を行い、特定することができた。その成果を本展で紹介している。
  ■モティーフの狩人:風景画の変遷
  空も海も海岸線も遠い岩山も沈む太陽の光の変化を表す《プールヴィルの海岸、日没》(1882年)や、中央に浮かぶヨットの黒い影と、白、黄色、桃色と層状に美しく変色する背景の対比が際立つ《ヨット、夕暮れの効果》(1885年)を見ていると、画面が動いているようだ。《印象、日の出》(1872年)や、モネが所蔵するドラクロワの水彩画の延長線上にあるようにも感じる。
  モネは、後半生ジヴェルニーに落ち着くまでよく旅に出かけ、その風景をすばやくとらえたため、「狩人」とも称された。最初の大旅行は1870年に普仏戦争を逃れてのロンドンへの旅だった。近代的なロンドン風景を知るだけでなく、英国風景画の巨匠ジョセフ・マラード・ウィリアム・ターナー(1775~1851)らが表現した移りゆく光の効果からの影響を色濃く受け、そのことが印象派絵画の形成に決定的な意味をもった。翌年オランダ経由でフランスに帰国後、アルジャントゥイユ、ヴェトゥイユを経て、1883年にジヴェルニーに移住。1880~85年には上述の2作品を描いたノルマンディーの沿岸をよく訪れた。その後もたまにヴェネチアなどにも出かけ、風景画のモティーフを求め続けた。オランダのチューリップ畑やジヴェルニーのアイリス畑の作品を含む多様な風景画から、その変遷を辿ることができる。
 
  ■睡蓮と花:連作の展開。20世紀の画家としてのモネ
  モネは園芸愛好家でもあった。1883年にジヴェルニーに移ったのち、1890年に屋敷と土地を購入し、1893年に隣接地も手に入れて池を造成。睡蓮の池や周囲の小道や樹木も整備していった。この水の庭を舞台にした作品は多数生み出され、特に「睡蓮」は約200点以上描かれた。睡蓮や花の作品のいずれも、筆致の力強さと自由度を格段に増加させ、生命の躍動を謳歌するようだ。
  《小舟》(1887年)は右上に斜めに小舟を配し、小枝が覆う。他はすべて水中の黒々とした水草がゆらゆらと揺れる様子を描く。《睡蓮とアガパンサス》(1914~17年)は水辺から勢いよく伸びた数本のアガパンサスが斜めに画面を横切り、水面に浮かぶ黄色の睡蓮たちが話を交わしているようだ。また、《睡蓮、柳の反映》(1916~19年)は濃紺と深い緑色の水面に、空と黄緑の柳が映り、中央と下方にある二つの睡蓮の強烈な赤が神秘的。《睡蓮》(1916~19年)は爽やかな水色の空と周りの緑の樹々が映りこみ、水面がどこにあるのかは浮かぶ睡蓮によってやっと推測できる。睡蓮と池、花と葉、光の吸収と反射などのコントラストを追求しているという。
  そして縦100×横300cmの大画面に余白を残しながらも、赤、橙、緑、黒、黄土色などの線が勢いよく自在に動いて、円を描き、横にも伸びる《睡蓮》(1917~19年)に至っては、茫然となる。同時に喝采を浴びせたい気持ちになった。モネが20世紀の抽象絵画へと向かっていったことが見てとれる。本年8月まで東京・品川の原美術館で展覧会があったサイ・トゥオンブリー(1928~2011)の作品にも通じるようだ。モネが再発見されたのは、アメリカで抽象表現主義が起こった時代だった。
  モネは、1880年代終わりから90年代、同じモティーフで時間を変えて描く連作を「積み藁」「ルーアンの大聖堂」などで開始。90年代末より「睡蓮」の連作を少し手掛け、1903年より本格的に「睡蓮」を数多く描き出す。そして1914年から、モネの死後オランジュリー美術館に設置された「睡蓮」の大装飾壁画にとりかかった。本展の出品作は大装飾画のための習作ともいわれる。最終目標に向かって突き進む研究心と執念が伝わる。
  ■最晩年の作品:形態が消え、生命力みなぎる世界
  モネは白内障による視力の衰えに苦しみながらも、最晩年まで制作を続けた。1923年に手術を受けるが青色が強く見える病気になり、特殊な眼鏡をかけた。表現はさらに変化を遂げ、水の庭を描いた画面から段々に花が消えていく。東京会場の最後の部屋には、没する2年前まで描かれた、柳、日本の橋、バラの小道から見た家などの作品が展示されている。《しだれ柳》(1918~19年)の3作は中央に太いがっちりとした幹と緑の葉や枝を同じ視点から描き、色調を変えた連作。同じく1918年から制作を始めた「日本の橋」連作では形態は判別できなくなり、原色に近い色彩が躍動。モネが最晩年に達した世界は、生命力みなぎる新境地だった。
  本展ではモネのあくなき挑戦に圧倒された。
  見逃せない「モネ展」です。是非お楽しみください。

【参考文献】
1)東京都美術館・日本テレビ放送網・マルモッタン・モネ美術館 編集『マルモッタン・モネ美術館所蔵  モネ展 「印象、日の出」から「睡蓮」まで』(展覧会カタログ)、(執筆=マリアンヌ・マチュー、オーレリー・ガヴォワル、クレール・グーデン、大橋菜都子、後藤結美子、平石昌子、渡抜由季)、日本テレビ放送網 発行、2015年
2)高橋明也 監修、安井裕雄 著『もっと知りたいモネ 生涯と作品』東京美術、2010年
3)六人部昭典『モネ―《睡蓮》への歩み―』六耀社、2001年

執筆:細川いづみ (HOSOKAWA Fonte Idumi) 
(2015年10月)


※会場内の風景画像は主催者側の許可を得て撮影したものです。

20151015001
写真1 東京都美術館の会場風景。左から、クロード・モネ《睡蓮とアガパンサス》、1914~17年、マルモッタン・モネ美術館所蔵。
クロード・モネ《小舟》、1887年、マルモッタン・モネ美術館所蔵。
(撮影:I.HOSOKAWA)
20151015002
写真2 東京都美術館の会場風景。左から、クロード・モネ《睡蓮》、1916~19年、マルモッタン・モネ美術館所蔵。
クロード・モネ《睡蓮、柳の反映》、1916~19年、マルモッタン・モネ美術館所蔵。
(撮影:I.HOSOKAWA)
20151015003
写真3 東京都美術館の会場風景。クロード・モネ《印象、日の出》、1872年、マルモッタン・モネ美術館所蔵。
(※展示期間:東京展 2015年9月19日~10月18日。福岡展 2016年2月4日~2月21日。京都展 2016年3月1日~3月21日)
(撮影:I.HOSOKAWA)
20151015004
写真4 東京都美術館の会場風景。左から、クロード・モネ《プールヴィルの海岸、日没》、1882年、マルモッタン・モネ美術館所蔵。
クロード・モネ《ヨット、夕暮れの効果》、1885年、マルモッタン・モネ美術館所蔵。
(撮影:I.HOSOKAWA)

===============
【会期・会場】
2015年9月19日~12月13日  東京都美術館
  <電話> 03-5777-8600(ハローダイヤル)
  <東京展公式サイト> http://www.ntv.co.jp/monet/
2015年12月22日~2016年2月21日  福岡市美術館
  <福岡展公式サイト> http://monet-fukuoka.jp
2016年3月1日~5月8日  京都市美術館
2016年6月4日~8月21日  新潟県立近代美術館

※本文・図版とも無断引用・無断転載を禁じます。

2015年10月16日