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レガシー ―美を受け継ぐ モディリアーニ、シャガール、ピカソ、フジタ

開催中〜2024/10/13

松岡美術館

東京都・港区

GO FOR KOGEI 2024「くらしと工芸、アートにおける哲学的なもの」

開催中〜2024/10/20

富山県富山市/岩瀬エリア、石川県金沢市/東山エリア

富山県・富山市、石川県・金沢市

令和6年度第2期所蔵品展 「特集 新恵美佐子 祈りの花」

開催中〜2024/10/20

横須賀美術館

神奈川県・横須賀市

令和6年度第2期所蔵品展  特集:生誕100年 芥川紗織

開催中〜2024/10/20

横須賀美術館

神奈川県・横須賀市

黄土水とその時代―台湾初の洋風彫刻家と20世紀初頭の東京美術学校

開催中〜2024/10/20

東京藝術大学大学美術館

東京都・台東区

いわいとしお×東京都写真美術館 光と動きの100かいだてのいえ

開催中〜2024/11/03

東京都写真美術館

東京都・目黒区

彫刻の森美術館 開館55周年記念 舟越桂 森へ行く日

開催中〜2024/11/04

彫刻の森美術館

神奈川県・足柄下郡箱根町

北アルプス国際芸術祭 2024

開催中〜2024/11/04

芸術祭(長野県大町市)

長野県・大町市

特別展「眼福―大名家旧蔵、静嘉堂茶道具の粋」

開催中〜2024/11/04

静嘉堂@丸の内(静嘉堂文庫美術館)

東京都・千代田区

瑛九 ―まなざしのその先に―

開催中〜2024/11/04

横須賀美術館

神奈川県・横須賀市

山梨モダン 1912~1945 大正・昭和前期に華ひらいた山梨美術

開催中〜2024/11/04

山梨県立美術館

山梨県・甲府市

日本中の子どもたちを笑顔にした 絵本作家 かがくいひろしの世界展

開催中〜2024/11/04

八王子市夢美術館

東京都・八王子市

エジプト古代染織コプト裂100点——織り文様は何を表しているのか

開催中〜2024/11/04

遠山記念館

埼玉県・川島町

MOTコレクション 竹林之七妍/特集展示 野村和弘/Eye to Eye-見ること

開催中〜2024/11/10

東京都現代美術館

東京都・江東区

ICC アニュアル 2024 とても近い遠さ

開催中〜2024/11/10

NTTインターコミュニケーション・センター [ICC]

東京都・新宿区

没後300年記念 英一蝶 ―風流才子、浮き世を写す―

開催中〜2024/11/10

サントリー美術館

東京都・港区

日本現代美術私観:高橋龍太郎コレクション

開催中〜2024/11/10

東京都現代美術館

東京都・江東区

開発好明 ART IS LIVE ―ひとり民主主義へようこそ

開催中〜2024/11/10

東京都現代美術館

東京都・江東区

TOKAS Project Vol. 7『鳥がさえずり、山は動く』

開催中〜2024/11/10

トーキョーアーツアンドスペース本郷

東京都・文京区

北斎の植物図鑑

開催中〜2024/11/10

北斎館

長野県・小布施町

大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2024

開催中〜2024/11/10

芸術祭(越後妻有地域)

新潟県・十日町市、津南町

企画展「作家の視線― 過去と現在、そして…」

開催中〜2024/11/11

ホキ美術館

千葉県・千葉市

田名網敬一 記憶の冒険

開催中〜2024/11/11

国立新美術館

東京都・港区

第76回 正倉院展

2024/10/26〜2024/11/11

奈良国立博物館

奈良県・奈良市

特別展 文明の十字路  バーミヤン大仏の太陽神と弥勒信仰 ―ガンダーラから日本へ―

開催中〜2024/11/12

三井記念美術館

東京都・中央区

生誕130年記念 北川民次展―メキシコから日本へ

開催中〜2024/11/17

世田谷美術館

東京都・世田谷区

手塚雄二展 雲は龍に従う

2024/10/19〜2024/11/17

そごう美術館

神奈川県・横浜市

森の芸術祭 晴れの国・岡山

開催中〜2024/11/24

芸術祭(岡山県北部12市町村、津山市、新見市、真庭市、鏡野町、奈義町など))

岡山県・北部12市町村

大正・昭和のモダニスト 蕗谷虹児展

開催中〜2024/11/24

平塚市美術館

神奈川県・平塚市

小川晴暘と飛鳥園 一〇〇年の旅

開催中〜2024/11/24

半蔵門ミュージアム

東京都・千代田区

悠久のペルシア‐技・美・伝統‐

開催中〜2024/11/24

古代オリエント博物館

東京都・豊島区

フィリップ・パレーノ:この場所、あの空

開催中〜2024/12/01

ポーラ美術館

神奈川県・足柄下郡箱根町

心象工芸展

開催中〜2024/12/01

国立工芸館

石川県・金沢市

田中一村展 奄美の光 魂の絵画

開催中〜2024/12/01

東京都美術館

東京都・台東区

アルフォンス・ミュシャ ふたつの世界

開催中〜2024/12/01

府中市美術館

東京都・府中市

月百姿×百段階段~五感で愉しむ月めぐり~

開催中〜2024/12/01

ホテル雅叙園東京 東京都指定有形文化財「百段階段」

東京都・目黒区

信長の手紙 ―珠玉の60通大公開―

開催中〜2024/12/01

永青文庫

東京都・文京区

2024年秋季 “富士山と雲〜出会いの形〜”展

開催中〜2024/12/01

フジヤマミュージアム

山梨県・富士吉田市

挂甲の武人 国宝指定50周年記念 特別展『はにわ』

2024/10/16〜2024/12/08

東京国立博物館

東京都・台東区

没後50年記念 福田平八郎×琳派

開催中〜2024/12/08

山種美術館

東京都・渋谷区

広重ブルー

開催中〜2024/12/08

太田記念美術館

東京都・渋谷区

ベル・エポック―美しき時代 パリに集った芸術家たち ワイズマン&マイケル コレクションを中心に

開催中〜2024/12/15

パナソニック汐留美術館

東京都・港区

コスチュームジュエリー ―美の変革者たち― シャネル、ディオール、スキャパレッリ 小瀧千佐子コレクションより

開催中〜2024/12/15

宇都宮美術館

栃木県・宇都宮市

特別展 オタケ・インパクト ―越堂・竹坡・国観、尾竹三兄弟の日本画アナキズム―

2024/10/19〜2024/12/15

泉屋博古館東京

東京都・港区

SENSE ISLAND/LAND|感覚の島と感覚の地 2024

2024/10/26〜2024/12/15

猿島および横須賀市街地(芸術祭)

神奈川県・横須賀市

荒川ナッシュ医 ペインティングス・アー・ポップスターズ

2024/10/30〜2024/12/16

国立新美術館

東京都・港区

廣川 玉枝|皮膚のデザイン

開催中〜2024/12/22

藤沢市アートスペース

神奈川県・藤沢市

OPEN SITE 9 Part 1

2024/11/23〜2024/12/22

トーキョーアーツアンドスペース本郷

東京都・文京区

リキッドスケープ 東南アジアの今を見る

開催中〜2024/12/24

アーツ前橋

群馬県・前橋市

追悼 野見山暁治 野っ原との契約

開催中〜2024/12/25

練馬区立美術館

東京都・練馬区

カナレットとヴェネツィアの輝き

開催中〜2024/12/28

SOMPO美術館

東京都・新宿区

「テレンス・コンラン モダン・ブリテンをデザインする」展

開催中〜2025/01/05

東京ステーションギャラリー

東京都・千代田区

さくらももこ展

開催中〜2025/01/05

森アーツセンターギャラリー

東京都・港区

上野アーティストプロジェクト2024「ノスタルジア―記憶のなかの景色」&「懐かしさの系譜─大正から現代まで 東京都コレクションより」

2024/11/16〜2025/01/08

東京都美術館

東京都・台東区

心のまんなかでアートをあじわってみる

開催中〜2025/01/13

原美術館ARC

群馬県・渋川市

没後100年 中村 彝 展―アトリエから世界へ

2024/11/10〜2025/01/13

茨城県近代美術館

茨城県・水戸市

アレック・ソス 部屋についての部屋

開催中〜2025/01/19

東京都写真美術館

東京都・目黒区

「ルイーズ・ブルジョワ展:  地獄から帰ってきたところ 言っとくけど、素晴らしかったわ」

開催中〜2025/01/19

森美術館

東京都・港区

現在地のまなざし 日本の新進作家 vol.21

2024/10/17〜2025/01/19

東京都写真美術館

東京都・目黒区

唐ごのみ —国宝 雪松図と中国の書画—

2024/11/23〜2025/01/19

三井記念美術館

東京都・中央区

怪力の魅力

2024/11/16〜2025/01/19

北斎館

長野県・小布施町

再開館記念 「不在」ートゥールーズ=ロートレックとソフィ・カル

2024/11/23〜2025/01/26

三菱一号館美術館

東京都・千代田区

ポケモン×工芸展-美とわざの大発見-

2024/11/01〜2025/02/02

麻布台ヒルズ ギャラリー

東京都・港区

中国陶磁展 うわぐすりの1500年

2024/10/29〜2025/02/09

松岡美術館

東京都・港区

ジャム・セッション 石橋財団コレクション×毛利悠子—ピュシスについて

2024/11/02〜2025/02/09

アーティゾン美術館

東京都・中央区

OPEN SITE 9 Part 2

2025/01/11〜2025/02/09

トーキョーアーツアンドスペース本郷

東京都・文京区

おしゃべり美術館 ひらビあーつま~れ10年記念展

開催中〜2025/02/16

平塚市美術館

神奈川県・平塚市

企画展「ゴミうんち展」

開催中〜2025/02/16

21_21 DESIGN SIGHT

東京都・港区

開館2周年記念特別企画「藤田嗣治の愛しきものたち」

開催中〜2025/02/18

軽井沢安東美術館

長野県・軽井沢町

反復と偶然展

2024/12/17〜2025/02/24

国立工芸館

石川県・金沢市

漫画家・森薫と入江亜季 展 ―ペン先が描く緻密なる世界―

2024/11/02〜2025/02/24

世田谷文学館

東京都・世田谷区

寺山修司展(コレクション展)

開催中〜2025/03/30

世田谷文学館

東京都・世田谷区

Exhibitions

ゴッホ展 巡りゆく日本の夢 東京都美術館

 「巡りゆく日本の夢」と題する本展は、浮世絵などの日本美術から大きな影響を受けたフィンセント・ファン・ゴッホ(Vincent van Gogh, 1853-1890)の日本初公開の4点を含む油彩画やデッサン約40点、彼が影響を受けた浮世絵など約50点を展示する。「第1章 パリ 浮世絵との出逢い」「第2章 アルル 日本の夢」「第3章 深まるジャポニスム」「第4章 自然の中へ 遠ざかる日本の夢」「第5章 日本人のファン・ゴッホ巡礼」の5章で構成し、後に日本の芸術家が彼に憧れ、縁の地オーヴェールを巡礼した様子を約 80 点の資料で紹介するなど、ファン・ゴッホと日本との関わりにスポットを当てている。

ファン・ゴッホが挑んだ浮世絵の油彩模写
 展覧会に足を踏み入れるとすぐに、《花魁(溪斎英泉による)》(1887年、ファン・ゴッホ美術館)が登場する。ファン・ゴッホは浮世絵に出会い強く引きつけられ、油彩で模写をした。これは『パリ・イリュストレ』誌の日本特集号(1886年5月)の表紙に印刷された溪斎英泉の《雲龍打掛の花魁》を拡大模写したものだという。模写といっても着物やかんざしの色合いは異なり、油彩の厚みや存在感なども含め、オリジナルとは全く違った印象を与える。模写した絵を囲むように竹や葦、睡蓮が浮かぶ水辺、他の浮世絵のモチーフを引用した鶴や蛙などが描かれ、一つの作品に彼の持つ日本のイメージや美が凝縮されているようである。ファン・ゴッホに模写をされた画家たちはこの作品をみてどのような感想を持つのだろう。本展では展示がないが、画材屋の店主を描いた《タンギー爺さんの肖像》(1887年、ロダン美術館)の背景にもこの作品があしらわれている。実際にはタンギーの店では浮世絵を扱っていなかったが、自分の愛した浮世絵をあえて背景に描いたという。

 《エゾギク、サルビアを生けた花瓶》(1886年、ハーグ市立美術館)は8種ほどの花が描かれ、華やかだ。本展図録に、ファン・ゴッホの「螺鈿細工の黒い日本の漆器のような感じ」(書簡460/568)との言葉があるが、油絵具をたっぷり塗り重ねた立体感のある花々が、漆器のように黒く輝く下地に浮かび上がり、美しい。どの花も白が入ることで輝きを増し、実物の花とはまた違った趣を感じさせる。主役は作品名にもなっているエゾ菊とサルビアのようでもあるが、イエローオーカーが厚ぼったく塗り重ねられたひまわりを見て、脇役であってもやっぱり「ゴッホのひまわり」だなあと思う。

アルルに重ねたファン・ゴッホの理想郷
 ファン・ゴッホはジャポニスム(日本趣味)が盛り上がりを見せていたパリで浮世絵と出会った。決して裕福ではない生活の中で、弟のテオドルス・ファン・ゴッホ(テオ)とともに400点以上の浮世絵を収集し、研究、模写をした。彼の書簡からは美術や文書を通して知る「日本」を彼の理想郷に掲げ、南フランスのアルルにそれを見出したことが読みとれる。ファン・ゴッホは自分の理想郷に身を置きながら穏やかで明るい作品の数々を生み出した。1888年に手掛けた数は200点にものぼるという。
 ファン・ゴッホはアルルでの雪景色を「まるで日本人の画家たちが描いたよう」だとし、自身も、今回、日本初公開の《雪景色》(1888年、個人蔵)を描いた。雪に覆われながらも絵からは冬の暗鬱さは感じられず明るさに満ちている。《サント=マリーの海》(1888年、プーシキン美術館)は、波が青や黄、白、緑など多彩に描かれる。しぶきをあげる波、たなびくヨットの帆、臨場感のある描写に、目の前に広がる海にいざなわれる。解説によると、この2作品に見られる地平線、水平線を高い位置にとる構図は浮世絵によく見られる手法で、そこから取り入れていった可能性が高いという。《サント=マリーの海》に描かれるヨットの赤とダークグリーンの配色は、日本初公開の《タラスコンの乗合馬車》(1888年、ヘンリー&ローズ・パールマン財団)にも共通していて、青ベースと白ベースの画面に調和している。

ファン・ゴッホの描く花と人物画
 サン・レミの精神病療養所に入ってからもファン・ゴッホは描き続ける。《渓谷(レ・ペイルレ)》(1889年)や《草むらの中の幹》(1890年、共にクレラー=ミュラー美術館)に見られる岩山や川、木の幹が織りなすうねりや黒く太い線は彼の不安定な精神状態も関係しているのかもしれないが、強いエネルギーを感じる。

 ファン・ゴッホにとって南仏に咲く「夾竹桃(きょうちくとう)」の花は「日本」への思いにつながる特別なモチーフだった。強い花で復興のシンボルとされながら強い毒性も併せ持つという夾竹桃だが可愛らしい花を咲かせ、《夾竹桃と本のある静物》(1888年、メトロポリタン美術館)」には生い茂る葉と桃色の可愛い花が広がっている。モチーフや色など画面全体から穏やかさが漂うこの絵からは、同年に耳を切り取るという行動を起こすとは想像できない。新印象派の点描技法で明るく優しく描いた《アニエールの公園》(1887年)と《蝶の舞う庭の片隅》(1889年、共に個人蔵)で徐々にモチーフに近づいていき、《蝶とけし》と《ヤママユガ》(共に1889年、ファン・ゴッホ美術館)では間近で対象を覗きこむほどに近い。そして色合いは共通して、暗い。

 ファン・ゴッホの描く花の絵は傑作揃いだが、彼は人物画を描くことが「絵画において僕を心の底まで感動させ、ほかのもの以上に無限を感じさせるのだ」(本展図録、書簡516/652)という。ファン・ゴッホをそこまで引きつけた人物画の魅力とは一体何だったのだろう。《アルルの女(ジヌー夫人)》(1890年、ローマ国立近代美術館)や《男の肖像》(1888年、クレラー=ミュラー美術館)を見ていると、表情豊かで今にも喋りそうな雰囲気さえある。上述の「タンギー爺さん」は絵からも彼の優しさや穏やかさがにじみ出ていて、人への興味がないとこんな風に描けないと思う。「ゴッホへの招待」(朝日出版社)では、画家になる前の伝道師時代に抱いていた「農民や労働者などを救いたい」との思いが彼らを描くことにつながり、次第に親しい人物を描き相手の人生を見つめることで彼自身の救いにつながっていたのだと分析する。

ファン・ゴッホを通して日本の美に気づく
 日本語で「縮緬紙(ちりめんがみ)」と呼ばれるしわの寄った紙に浮世絵が刷られ、外国人向けの安価な土産物として大量に輸出されていたという。《三十六花撰/東都入谷朝顔》、《東京名所/五ツ目》(共に前期展示、作家・制作年不詳、及川茂コレクション)など、赤や黄、紫など鮮やかな色合いが美しい。ファン・ゴッホのさまざまな作品を観賞した後にこれらの作品を見ると、画面の構成や技法などの類似性を見つけ「なるほど、こういうことか」と納得する。これらの作品の中には、額縁のように周囲に美しい色や柄が施されているものもあり、絵と呼応しながらその完成度を高めている。ファン・ゴッホの作品を通して改めて浮世絵を見つめ、浮世絵ひいては日本の伝統美に魅せられていることに気づく。
 日本初のファン・ゴッホ美術館との国際共同プロジェクトでもある本展、「ファン・ゴッホ美術館は、長い間、ファン・ゴッホが日本の浮世絵から受けた影響について展覧会で紹介したいという夢を強く抱いていた」と同館館長は記している。そして本展に展示されているどの作品も浮世絵から影響を受けた可能性が指摘されている。ファン・ゴッホの傑作たちが、日本の浮世絵から影響を受けたという事実、またファン・ゴッホ美術館がそれを重要視していることは日本人の私にとって嬉しいことだと思った。

ファン・ゴッホに憧れた日本人たち
 1890(明治23)年、ファン・ゴッホはパリの北西に位置するオーヴェール=シュル=オワーズで37歳の短くも激しい人生を終えた。ファン・ゴッホが絵を描き始めたのは27歳の時。精力的に描き続け、10年の間に油彩画860枚を含む2000枚もの膨大な作品を生み出したという。だが生前に売れた絵はたった一枚ということに驚く。最晩年にファン・ゴッホの主治医となり、テオと共に彼を看取った医師ポール・フェルディナン・ガシェの家にも彼の作品が20点ほど残されており、彼の死後、彼に魅了された多くの日本人がこの地を訪れた。最終章ではこの巡礼の様子を紹介し、ガシェ家に残されていた日本人約240人の署名が残る「芳名録」3冊を日本初公開する。
 洋画家・佐伯祐三も芳名禄に名前を残した一人。パリにアトリエがあった佐伯は、オーヴェールを度々訪れガシェの遺族とも親交を深めたという。佐伯の絵はユトリロの影響を感じさせるが、部屋にはファン・ゴッホの複製画が飾られ、ファン・ゴッホを崇拝していたということに驚く。

 章ごとに異なる背景色がそれぞれ違った空気感を作りあげていて、抑えられた色合いが絵と調和しているのも印象的だった。さまざまな美術館や収蔵家などから出品されており、美術館の尽力と「浮世絵の影響を受けたファン・ゴッホの作品」をテーマに、各地から作品が集い、この展覧会が実現したのだと感じた。(文中・敬称略)

※会場内の風景画像は主催者側の許可を得て撮影したものです。

写真1)《花魁(溪斎英泉による)》
(フィンセント・ファン・ゴッホ、1887年、油彩、綿布、ファン・ゴッホ美術館)


写真2)フィンセント・ファン・ゴッホ《エゾギク、サルビアを生けた花瓶》
(1886年、油彩、カンヴァス、ハーグ市立美術館)


写真3)第2章「アルル 日本の夢」展示風景。
右から《サント=マリーの海》(プーシキン美術館)、《サント=マリーの道》(個人蔵)、《アイリスの咲くアルル風景》(ファン・ゴッホ美術館)(以上全てフィンセント・ファン・ゴッホ、1888年、油彩、カンヴァス)


写真4)第4章「自然の中へ 遠ざかる日本の夢」展示風景。
左から《東京名所/五ツ目》、《三十六花撰/東都入谷朝顔》。
(共に前期展示、作家・制作年不詳、木版、紙(縦中判ちりめん絵)、及川茂コレクション)


写真5)第5章「日本人のファン・ゴッホ巡礼」展示風景

(参考文献)
1)「ゴッホ展 巡りゆく日本の夢(Van Gogh&Japan)」展覧会図録
北海道立近代美術館、北海道新聞社、NHK、NHKプロモーション=編集、圀府寺司、コルネリア・ホンブルク、尾本圭子、佐藤幸宏、鎌田亨、松山聖央、森本陽香、門間仁史、岡本純子、牧口千夏=執筆、青幻舎=制作、北海道新聞社、NHK、NHKプロモーション=発行、2017年

2)「ゴッホへの招待」 編者・発行=朝日新聞出版、2016年

写真・執筆=堀内まりえ

「ゴッホ展 巡りゆく日本の夢」
2017 年 10 月 24 日~2018 年 1 月 8 日
東京都美術館
http://gogh-japan.jp