詳細はミュージアムのオフィシャルサイトなどでご確認ください。

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モネ、ルノワール 印象派の光

開催中〜2023/10/09

松岡美術館

東京都・港区

名作展 画家と生活—川端龍子の晩年の作品から

開催中〜2023/10/09

大田区立龍子記念館

東京都・大田区

うえののそこから「はじまり、はじまり」荒木珠奈 展

開催中〜2023/10/09

東京都美術館

東京都・台東区

中之条ビエンナーレ2023

開催中〜2023/10/09

芸術祭(群馬県中之条町)

群馬県・中之条町

特別展「海ー生命のみなもとー」

開催中〜2023/10/09

国立科学博物館

東京都・台東区

企画展 楽しい隠遁生活 文人たちのマインドフルネス

開催中〜2023/10/15

泉屋博古館東京

東京都

企画展 甲冑・刀・刀装具 光村コレクション・ダイジェスト

開催中〜2023/10/15

根津美術館

東京都・港区

北島敬三「UNTITLED RECORDS : REVISITED + PORTRAITS」展

開催中〜2023/10/22

BankART Station

神奈川県・横浜市

北陸工芸の祭典 GO FOR KOGEI 2023「物質的想像力と物語の縁起― マテリアル、データ、ファンタジー」

開催中〜2023/10/29

芸術祭(富山県富山市富岩運河沿い)

富山県・富山市

瞳の奥にあるもの -表情でみる人物画展-

開催中〜2023/11/05

ホキ美術館

千葉県・千葉市

堅山南風《大震災実写図巻》と近代の画家 大観・玉堂・青邨・蓬春

開催中〜2023/11/05

半蔵門ミュージアム

東京都・千代田区

ジョセフ・アルバースの授業 色と素材の実験室

開催中〜2023/11/05

DIC川村記念美術館

千葉県・佐倉市

MOTコレクション 被膜虚実/特集展示 横尾忠則―水のように/生誕100年 サム・フランシス

開催中〜2023/11/05

東京都現代美術館

東京都・江東区

宇川直宏展 FINAL MEDIA THERA PIST @DOMMUNE

開催中〜2023/11/05

練馬区立美術館

東京都・練馬区

九谷焼の芸術祭 KUTANism 2023

2023/10/06〜2023/11/05

芸術祭(石川県小松市・能美市各所)

石川県・小松市、能美市

土方久功と柚木沙弥郎――熱き体験と創作の愉しみ

開催中〜2023/11/05

世田谷美術館

東京都・世田谷区

テルマエ展 お風呂でつながる古代ローマと日本

開催中〜2023/11/05

山梨県立美術館

山梨県・甲府市

特別展「めぐりあう大津絵―笠間日動美術館・小絲源太郎コレクションと 神戸女子大学古典芸能研究センター・志水文庫の大津絵」

開催中〜2023/11/05

八王子市夢美術館

東京都・八王子市

アーツ・アンド・クラフツとデザイン ウィリアム・モリスからフランク・ロイド・ライトまで

開催中〜2023/11/05

そごう美術館

神奈川県・横浜市

東京の地場に発する国際芸術祭 東京ビエンナーレ2023

開催中〜2023/11/05

芸術祭(東京都心北東エリア〔千代田区、中央区、文京区、台東区の4区にまたがるエリア〕 、歴史的建築物、公共空間、学校、店舗屋上、遊休化した建物等)

東京都・千代田区、中央区、文京区、台東区

春陽会誕生100年 それぞれの闘い 岸田劉生、中川一政から岡鹿之助へ

開催中〜2023/11/12

東京ステーションギャラリー

東京都・千代田区

MIND TRAIL 奥大和 心のなかの美術館

開催中〜2023/11/12

芸術祭(奈良県 吉野町、下北山村、ほか予定)

奈良県・吉野町、下北山村、ほか予定

奥能登国際芸術祭2023

開催中〜2023/11/12

芸術祭(石川県珠洲市)

石川県・珠洲市

TOKAS Project Vol. 6 『凪ぎ、揺らぎ、』

2023/10/07〜2023/11/12

トーキョーアーツアンドスペース本郷

東京都・文京区

松本秋則+松本倫子「惑星トラリス」展

開催中〜2023/11/12

BankART KAIKO

神奈川県・横浜市

浄瑠璃寺九体阿弥陀修理完成記念 特別展「京都・南山城の仏像」

開催中〜2023/11/12

東京国立博物館

東京都・台東区

第75回 正倉院展

2023/10/28〜2023/11/13

奈良国立博物館

奈良県・奈良市

北斗の拳40周年大原画展 ~愛をとりもどせ!!~

2023/10/07〜2023/11/19

森アーツセンターギャラリー(六本木ヒルズ森タワー52F)

東京都・港区

ジャム・セッション 石橋財団コレクション×山口晃 ここへきて やむに止まれぬ サンサシオン

開催中〜2023/11/19

アーティゾン美術館

東京都・中央区

創造の現場― 映画と写真による芸術家の記録

開催中〜2023/11/19

アーティゾン美術館

東京都・中央区

秋の特別展「おまもりとハンコとコイン -古代オリエントの偉大なる小さきものたち-」

開催中〜2023/11/19

古代オリエント博物館

東京都・豊島区

六甲ミーツ・アート芸術散歩 2023 beyond

開催中〜2023/11/23

芸術祭(神戸・六甲山上)

兵庫県・神戸市

美しき時代(ベル・エポック)と異彩のジュエリー

開催中〜2023/11/26

箱根ラリック美術館

神奈川県・箱根町

企画展「北斎のまく笑いの種」

開催中〜2023/11/26

すみだ北斎美術館

東京都・墨田区

横山美術館名品展 明治・大正の輸出陶磁器 技巧から意匠へ

2023/10/07〜2023/11/26

平塚市美術館

神奈川県・平塚市

皇居三の丸尚蔵館収蔵品展 皇室と石川 —麗しき美の煌めき—

2023/10/14〜2023/11/26

国立工芸館(石川県立美術館との共催)

石川県・金沢市

開館20周年 & 富士山世界遺産登録10周年記念 後期「フジヤマミュージアム名品展」

開催中〜2023/11/26

フジヤマミュージアム

山梨県・富士吉田市

特別展「日本画聖地巡礼 ー東山魁夷の京都、奥村土牛の鳴門ー」

開催中〜2023/11/26

山種美術館

東京都・渋谷区

特別展「超絶技巧、未来へ! 明治工芸とそのDNA」

開催中〜2023/11/26

三井記念美術館

東京都・中央区

関東大震災100年企画展 「震災からのあゆみ —未来へつなげる科学技術—」

開催中〜2023/11/26

国立科学博物館

東京都・台東区

シン・ジャパニーズ・ペインティング 革新の日本画―横山大観、 杉山寧から現代の作家まで

開催中〜2023/12/03

ポーラ美術館

神奈川県・足柄下郡箱根町

生誕120年 棟方志功展 メイキング・オブ・ムナカタ

2023/10/06〜2023/12/03

東京国立近代美術館

東京都・千代田区

「横尾忠則 寒山百得」展

開催中〜2023/12/03

東京国立博物館

東京都・台東区

特別展「岡本玉水 人形芸術にかけた生涯—御所人形から玉水人形へ」

2023/10/07〜2023/12/03

さいたま市岩槻人形博物館

埼玉県・さいたま市

特別展「北宋書画精華」

2023/11/03〜2023/12/03

根津美術館

東京都・港区

特別展「やまと絵 -受け継がれる王朝の美-」

2023/10/11〜2023/12/03

東京国立博物館

東京都・台東区

特別展「岡本玉水 人形芸術にかけた生涯—御所人形から玉水人形へ」

2023/10/07〜2023/12/03

さいたま市岩槻人形博物館

埼玉県・さいたま市

日中平和友好条約45周年記念「世界遺産 大シルクロード展」

開催中〜2023/12/10

東京富士美術館

東京都・八王子市

さいたま国際芸術祭2023

2023/10/07〜2023/12/10

芸術祭(さいたま市・旧市民会館おおみや(メイン会場)ほか)

埼玉県・さいたま市

永遠の都ローマ展

開催中〜2023/12/10

東京都美術館

東京都・台東区

イヴ・サンローラン展 時を超えるスタイル

開催中〜2023/12/11

国立新美術館

東京都・港区

コスチュームジュエリー美の変革者たち シャネル、スキャパレッリ、ディオール 小瀧千佐子コレクションより

2023/10/07〜2023/12/17

パナソニック汐留美術館

東京都・港区

布の芸術祭『FUJI TEXTILE WEEK 2023(フジテキスタイルウィーク)』

2023/11/23〜2023/12/17

芸術祭(山梨県富士吉田市)

山梨県・富士吉田市

特別企画展 日本画の棲み家

2023/11/02〜2023/12/17

泉屋博古館東京

東京都・港区

開館1周年記念特別展 二つの頂 —宋磁と清朝官窯—

2023/10/07〜2023/12/17

静嘉堂@丸の内(静嘉堂文庫美術館)

東京都・千代田区

国吉康雄展 ~安眠を妨げる夢~ 福武コレクション・岡山県立美術館のコレクションを中心に

2023/10/24〜2023/12/24

茨城県近代美術館

茨城県・水戸市

ヨシタケシンスケ展かもしれない

2023/10/15〜2023/12/24

宇都宮美術館

栃木県・宇都宮市

大巻伸嗣 Interface of Being 真空のゆらぎ

2023/11/01〜2023/12/25

国立新美術館

東京都・港区

「今こそ、ルーシー!」LUCY IS HERE

開催中〜2024/01/08

スヌーピーミュージアム

東京都・町田市

「青空は、太陽の反対側にある:原美術館/原六郎コレクション」第2期(秋冬季)

開催中〜2024/01/08

原美術館ARC

群馬県・渋川市

上野アーティストプロジェクト2023「いのちをうつす ―菌類、植物、動物、人間」

2023/11/16〜2024/01/08

東京都美術館

東京都・台東区

「鹿児島睦 まいにち」展

2023/10/07〜2024/01/08

PLAY! MUSEUM

東京都・立川市

111年目の中原淳一展

2023/11/18〜2024/01/10

そごう美術館

神奈川県・横浜市

ICCアニュアル 2023 ものごとのかたち

開催中〜2024/01/14

NTTインターコミュニケーション・センター [ICC]

東京都・新宿区

企画展「ある従軍カメラマンの追憶 義烈空挺隊員と家族の片影」

開催中〜2024/01/14

平和祈念展示資料館

東京都・新宿区

佐野史郎写真展 瞬間と一日

2023/10/14〜2024/01/14

彫刻の森美術館

神奈川県・足柄下郡箱根町

ゴッホと静物画―伝統と革新へ

2023/10/17〜2024/01/21

SOMPO美術館

東京都・新宿区

モネ 連作の情景

2023/10/20〜2024/01/28

上野の森美術館

東京都・台東区

倉俣史朗のデザイン―記憶のなかの小宇宙

2023/11/18〜2024/01/28

世田谷美術館

東京都・世田谷区

江口寿史展 ノット・コンプリーテッド

開催中〜2024/02/04

世田谷文学館

東京都・世田谷区

アメイジング・チャイナ 深淵なる中国美術の世界

2023/10/24〜2024/02/11

松岡美術館

東京都・港区

みちのく いとしい仏たち

2023/12/02〜2024/02/12

東京ステーションギャラリー

東京都・千代田区

1周年記念特別企画「ようこそ藤田嗣治のお家へ」

開催中〜2024/02/20

軽井沢安東美術館

長野県・軽井沢町

生誕120年 古賀忠雄展 塑造(像)の楽しみ

2023/11/17〜2024/02/25

練馬区立美術館

東京都・練馬区

森美術館開館20周年記念展 私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために

2023/10/18〜2024/03/31

森美術館

東京都・港区

tupera tupera + 遠藤幹子 しつもんパーク in 彫刻の森美術館

開催中〜2024/03/31

彫刻の森美術館

神奈川県・足柄下郡箱根町

岡田健太郎―重なる景体

2023/12/05〜2024/04/07

平塚市美術館

神奈川県・平塚市

《サグラダ・ファミリア聖堂、身廊部模型》 2001~02年 制作:サグラダ・ファミリア聖堂模型室 西武文理大学

Exhibitions

ガウディとサグラダ・ファミリア展

ガウディ建築の集大成である大聖堂

 スペインのバルセロナで活躍したアントニ・ガウディ(1852~1926)の建築は独特の魅力を放つ。曲面、無骨さ、うごめく何か。トウモロコシのような形の塔が並ぶサグラダ・ファミリア聖堂(聖家族の意)は、ヨーロッパの他の教会と随分違う。本展は、ガウディが生涯43年間携わり、現在も建設が続くこの聖堂を中心に紹介する。学術監修は鳥居徳敏 神奈川大学名誉教授。ガウディの創造の源泉を①歴史、②自然、③幾何学から検証し、サグラダ・ファミリア聖堂建設の軌跡を辿り、ガウディが建築に込めたものを考察する。東京国立近代美術館を皮切りに3館を巡回。(※この記事の取材先は東京国立近代美術館です)

東京国立近代美術館の入り口。左端の青色の作品は、イサム・ノグチ《門》1969年
東京国立近代美術館の入り口。左端の青色の作品は、イサム・ノグチ《門》1969年

 会場で筆者は驚きと発見の連続だった。サグラダ・ファミリア聖堂は、キリスト教の信仰を建築と芸術で表現する教会である。と同時に、ガウディの建築と人生の集大成なのだ。幼い頃から親しんだ自然からの数多の発見、学生時代からの勉学、様々な建築設計での独創的方法などをここに総合させた。また自分が完成を見られない大仕事を後継者に引き継ぐ手掛かりを残した。

若き日のガウディ

 本展冒頭でガウディの猛烈な勉強ぶりが紹介されている。1852年、カタルーニャ地方のレウス市の銅板機具職人の父のもとに生まれた彼は、16歳でバルセロナに移り住み、21歳でバルセロナ建築学校に入学。学校の図書館にこもって建築書や写真集を読み眺め入った。特に熱中したのが、フランスでゴシック聖堂の修復を多数手掛けたウジェーヌ・エマニュエル・ヴィオレ=ル=デュクが著した『フランス中世建築事典(全10巻)』と『建築講話(全20講話)』だった。これらで特にゴシック建築を深く研究した。スペインのアルハンブラ宮殿などイスラム建築を紹介する書物にも親しんだ。
 
 若い頃からデザインセンスも抜群だ。建築家資格取得後すぐの1878年、パリ万博に革手袋店ショーケースを出品。メタルフレームの総ガラス張りのもの。このモダンなデザインに稀有な才能を見出したのが、のちにパトロンとなる資産家アウゼビ・グエルだった。
 
 ガウディのサイン(A.Gaudiの署名)も面白い。コローニア・グエル教会堂計画案のスケッチ(あとに掲載)などでも見られるが、大きく傾斜したAに曲線のGがかぶり、audiが飛翔するよう。お洒落で、なんだかガウディ建築を思わせる。

破砕タイル/逆さ吊り実験/パラボラ形(放物線)の塔

 ガウディは独創的方法で建築の仕事を進めた。鉄柵装飾に棕櫚の葉をそのまま施した。タイルによる多彩色装飾は、イスラム建築やカタルーニャ地方の伝統に学んだ成果だ。彼はさらに破砕タイルで曲面を覆うという新手法を見出し、グエル公園、そしてサグラダ・ファミリア聖堂の鐘塔頂華(先端の装飾)の傑作を生みだした。

東京国立近代美術館の会場風景(以下同様)。左から、アントニ・ガウディ《カサ・ビセンス 鉄柵の棕櫚の模型》1886年頃。アントニ・ガウディ《カサ・ビセンス、正面のセラミック・タイル》1883年。共にサグラダ・ファミリア聖堂
東京国立近代美術館の会場風景(以下同様)。左から、アントニ・ガウディ《カサ・ビセンス 鉄柵の棕櫚の模型》1886年頃。アントニ・ガウディ《カサ・ビセンス、正面のセラミック・タイル》1883年。共にサグラダ・ファミリア聖堂
アントニ・ガウディ《グエル公園、破砕タイル被覆ピース》1904年頃 制作:ジャウマ・ブジョールの息子 ガウディ記念講座、ETSAB(バルセロナ・デザイン美術館寄託)
アントニ・ガウディ《グエル公園、破砕タイル被覆ピース》1904年頃 制作:ジャウマ・ブジョールの息子 ガウディ記念講座、ETSAB(バルセロナ・デザイン美術館寄託)

 逆さ吊り実験は、自然の法則に基づいた紐の垂れ下がる形状を模型で追求し、反転させる。驚異的な発想だ。コローニア・グエル教会堂(1898~上部は未完)の設計にて10年かけて行い、実験成果はサグラダ・ファミリア聖堂にも応用した。

アントニ・ガウディ《コローニア・グエル教会堂計画案のスケッチ(リトグラフ)》1979年(オリジナル:1908年) ガウディ記念講座、ETSAB。うごめく生命を感じさせる。下方にガウディのサインが見える
アントニ・ガウディ《コローニア・グエル教会堂計画案のスケッチ(リトグラフ)》1979年(オリジナル:1908年) ガウディ記念講座、ETSAB。うごめく生命を感じさせる。下方にガウディのサインが見える
《コローニア・グエル教会堂、逆さ吊り実験》(手前は、部分/後ろは、1:50)1984~85年 西武文理大学
《コローニア・グエル教会堂、逆さ吊り実験》(手前は、部分/後ろは、1:50)1984~85年 西武文理大学

 パラボラ(放物線)形の塔を含めサグラダ・ファミリア聖堂へつながる未完の計画案も紹介されている。モロッコのタンジール計画案、また300mもの高さのニューヨーク大ホテル計画案だ。

《ニューヨーク大ホテル計画案模型(ジュアン・マタマラのドローイングに基づく)》1985年 制作:群馬県左官組合 伊豆の長八美術館
《ニューヨーク大ホテル計画案模型(ジュアン・マタマラのドローイングに基づく)》1985年 制作:群馬県左官組合 伊豆の長八美術館

サグラダ・ファミリア聖堂の歩み

 正式名称サグラダ・ファミリア贖罪聖堂は、格差が拡大する状況下でバルセロナの書店経営者が提案し、貧しい人々からなる信心会の献金によって出発した。ガウディはグエルら富裕層の邸宅等を設計する傍ら、31歳の1883年に同聖堂2代目建築家として着任した。初代建築家ビリャール・イ・ロサーノはネオ・ゴシック案で1882年に着手。翌年引き継いで主任建築家となったガウディは、革新的な構想で進行し、1906年に計画案の全貌を初公表。構想は大きく変貌を遂げた。彼は石膏模型によってさらに案を練り、最終案模型を残した。
 
 ガウディは、クリプタ(地下聖堂)と付属仮設学校(曲線造形屋根が特徴)に加え、長年を要した「降誕の正面」をほぼ完成させて1926年に73歳で他界した。「降誕の正面」とは、4つの鐘塔が並び、鍾乳石洞窟のような壁面にキリストの喜びの物語を数多の動植物と共に彫刻で表現した東側の正面だ。その後スペイン内戦で資料は焼失し、最終石膏模型は破壊されたが、後継者が模型を補修し、ガウディの意図に沿って建設を継続。そして着工から140年経った今、完成の時期が視野に入ってきた。

左から、アントニ・ガウディ《サグラダ・ファミリア聖堂、側廊高窓模型》スケール:1:25 1883~1912年頃。アントニ・ガウディ《サグラダ・ファミリア聖堂、側廊高窓外観頂部オリジナル模型》 スケール:1:10 1918~22年。共にサグラダ・ファミリア聖堂
左から、アントニ・ガウディ《サグラダ・ファミリア聖堂、側廊高窓模型》スケール:1:25 1883~1912年頃。アントニ・ガウディ《サグラダ・ファミリア聖堂、側廊高窓外観頂部オリジナル模型》 スケール:1:10 1918~22年。共にサグラダ・ファミリア聖堂

サグラダ・ファミリア聖堂の全体構造

 壮大なサグラダ・ファミリア聖堂だが、全体構造はどのようなものなのだろう。
 完成すると塔が18本立つ。内部は、内陣(北)に向かう身廊は5廊式、直交する翼廊は3廊式のラテン十字形のバシリカ平面。全長95m。主身廊の天井高45m。正面は3つで、大正面が「栄光の正面」(南)、そして翼廊先端の「降誕の正面」(東)と「受難の正面」(西)である。聖堂断面は重力と横力を合わせた力の向きに沿った曲線で構成され、ゴシック建築に見られる控え壁や飛び梁をなくした。
 
 天に向かう18本の塔のなかでいちばん高くそびえるのは、身廊と翼廊の交差部に立つイエスの塔だ。約170mの高さ。近くにマリアの塔(完成)が立ち、福音書作家を示す4塔が囲む。そして12使徒の塔として、3つの正面にそれぞれ4つの鐘塔が並ぶ。
 
 内部は樹木式構造となっている。二重らせん状に回転する柱が枝を広げるようにして立ち並ぶ。天井は多数の採光丸穴が開く。これらもガウディの独創である。

《サグラダ・ファミリア聖堂、全体模型》スケール:1:200 制作:サグラダ・ファミリア聖堂模型室 サグラダ・ファミリア聖堂
《サグラダ・ファミリア聖堂、全体模型》スケール:1:200 制作:サグラダ・ファミリア聖堂模型室 サグラダ・ファミリア聖堂
《サグラダ・ファミリア聖堂、身廊部模型》 2001~02年 制作:サグラダ・ファミリア聖堂模型室 西武文理大学
《サグラダ・ファミリア聖堂、身廊部模型》 2001~02年 制作:サグラダ・ファミリア聖堂模型室 西武文理大学

彫刻

 ガウディは彫刻についても深く研究した。会場では「降誕の正面」を飾るための人体彫刻塑像断片(内戦で破壊されたため、トルソーのようだ)や植物や小動物や虫の彫刻が展示されている。また40年以上サグラダ・ファミリア聖堂で彫刻を制作する外尾悦郎氏による「歌う天使たち」の石膏像も出展。訴えるものが強い。

2点とも、アントニ・ガウディ《サグラダ・ファミリア聖堂、降臨の正面:女性の塑像断片》1898~1900年 サグラダ・ファミリア聖堂
2点とも、アントニ・ガウディ《サグラダ・ファミリア聖堂、降臨の正面:女性の塑像断片》1898~1900年 サグラダ・ファミリア聖堂
外尾悦郎《サグラダ・ファミリア聖堂、降臨の正面:歌う天使たち》(部分) サグラダ・ファミリア聖堂、降臨の正面に1990~2000年に設置 作家蔵
外尾悦郎《サグラダ・ファミリア聖堂、降臨の正面:歌う天使たち》(部分) サグラダ・ファミリア聖堂、降臨の正面に1990~2000年に設置 作家蔵

「生命ある造形的ヴィジョン」(ガウディの言葉)

 ガウディは重要な言葉も残した。「常に開かれて、務めて読むのに適切な偉大な書物は、自然のそれである」「生命ある造形的ヴィジョン―この生命の感覚、これを私たちは作品に与えねばならない。この観点から私たちの在り方を反省しなければならないのである」「さまざまな事柄を洞察するために、それらを辛抱強く追求しなければならない。忍耐はすべてを達成する」(※参考文献2より)など。深く強く心に響く。入江正之先生への映像インタビューや会場の最後で一部が紹介されている。
 
 ガウディの魅力は尽きない。本展学術監修者の鳥居先生は、「(観るかたがた)それぞれのとらえ方があればいい」と語っておられる。
 
【参考文献】
1)鳥居徳敏 学術監修、東京国立近代美術館・佐川美術館・名古屋市美術館・NHK・NHKプロモーション・東京新聞・中日新聞社・D_CODE 編集:『ガウディとサグラダ・ファミリア展』公式図録、鳥居徳敏・山村健・鈴木勝雄・ジョルディ・ファウリ・佐々木睦朗・馬場まどか・久保田舞美 執筆、外尾悦郎 インタビュー、NHK・NHKプロモーション・東京新聞・中日新聞社 発行、2023年
2)入江正之 編訳:『ガウディの言葉』彰国社、1991年
3)外尾悦郎:『ガウディの伝言』光文社新書、光文社、2006年
4)酒井健:『ゴシックとは何か 大聖堂の精神史』ちくま学芸文庫、筑摩書房、2006年
5)磯崎新:「ガウディ建築の発想と構造」(中山公男・磯崎新・粟津潔 責任編集:『ガウディ全作品 1芸術と建築/2解説と資料』六耀社、1981年)
6)ファン・バセゴーダ・ノネール、フランソワ・ルネ・ロラン:『ガウディの作品 芸術と建築』六耀社、1985年
 
執筆・撮影:細川いづみ(HOSOKAWA Fonte Idumi) 
(2023年8月)
※会場内の風景画像は主催者側の許可を得て撮影したものです。
※本文・図版とも無断引用・無断転載を禁じます。

ガウディとサグラダ・ファミリア展
Gaudí and the Sagrada Família
 
【会期・会場】
[東京会場]
2023年6月13日(火)~9月10日(日)  東京国立近代美術館(東京都・千代田区)
※日時予約推奨
 
[滋賀会場]
2023年9月30日(土)~12月3日(日)  佐川美術館(滋賀県・守山市)
※日時予約制
 
[愛知会場]
2023年12月19日(火)~2024年3月10日(日)  名古屋市美術館(愛知県・名古屋市)
 
※詳細は展覧会公式サイトでご確認ください。
展覧会公式サイト https://gaudi2023-24.jp/