詳細はミュージアムのオフィシャルサイトなどでご確認ください。

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TOKAS-Emerging

開催中〜2025/05/04

トーキョーアーツアンドスペース本郷

東京都・文京区

百花ひらく-花々をめぐる美-

開催中〜2025/05/06

皇居三の丸尚蔵館

東京都・千代田区

近藤亜樹:我が身をさいて、みた世界は

開催中〜2025/05/06

水戸芸術館現代美術センター

茨城県・水戸市

hideって誰?FINAL PSYCHOVISION hide MUSEUM Since 2000

開催中〜2025/05/07

そごう美術館

神奈川県・横浜市

【特別展】桜 さくら SAKURA 2025 ―美術館でお花見!

開催中〜2025/05/11

山種美術館

東京都・渋谷区

松山智一展 FIRST LAST

開催中〜2025/05/11

麻布台ヒルズ ギャラリー(麻布台ヒルズ ガーデンプラザA MB階)

東京都・港区

「この、原美術館ARCという時間芸術」第1期

開催中〜2025/05/11

原美術館ARC

群馬県・渋川市

春の江戸絵画まつり 司馬江漢と亜欧堂田善 かっこいい油絵

開催中〜2025/05/11

府中市美術館

東京都・府中市

特別展 はにわ

開催中〜2025/05/11

九州国立博物館

福岡県・太宰府市

特別展「国宝・燕子花図屏風-デザインの日本美術-」

開催中〜2025/05/12

根津美術館

東京都・港区

特別展「学習院コレクション 華族文化 美の玉手箱 芸術と伝統文化のパトロネージュ」

開催中〜2025/05/17

霞会館記念学習院ミュージアム

東京都・豊島区

カラーズ — 色の秘密にせまる 印象派から現代アートへ

開催中〜2025/05/18

ポーラ美術館

神奈川県・足柄下郡箱根町

企画展「ライトアップ木島櫻谷II― おうこくの線をさがしに 併設四季連作屏風」

開催中〜2025/05/18

泉屋博古館東京

東京都・港区

略画 — はずむ筆、おどる線—

開催中〜2025/05/18

北斎館

長野県・小布施町

戦後西ドイツのグラフィックデザイン モダニズム再発見

開催中〜2025/05/18

東京都庭園美術館

東京都・港区

三鷹天命反転中!!──荒川修作+マドリン・ギンズの死なないためのエクササイズ

開催中〜2025/05/18

三鷹市美術ギャラリー

東京都・三鷹市

開館30周年記念展 ブラチスラバからやってきた!世界の絵本パレード

開催中〜2025/05/18

千葉市美術館

千葉県・千葉市

生誕100年 中村正義展-その熱と渦-

開催中〜2025/05/18

平塚市美術館

神奈川県・平塚市

手塚治虫「火の鳥」展 -火の鳥は、エントロピー増大と抗う動的平衡(どうてきへいこう)=宇宙生命(コスモゾーン)の象徴-

開催中〜2025/05/25

東京シティビュー(六本木ヒルズ森タワー52階)

東京都・港区

没後80年 小原古邨 ―鳥たちの楽園

開催中〜2025/05/25

太田記念美術館

東京都・渋谷区

アート・アーカイヴ資料展XXVII 「交信詩あるいは書簡と触発:瀧口修造と荒川修作/マドリン・ギンズ」

開催中〜2025/05/30

慶應義塾大学アート・センター(三田キャンパス 南別館 1階)

東京都・港区

開館50周年記念「1975 甦る 新橋 松岡美術館 ―大観・松園・東洋陶磁―」

開催中〜2025/06/01

松岡美術館

東京都・港区

ゾフィー・トイバー=アルプとジャン・アルプ

開催中〜2025/06/01

アーティゾン美術館

東京都・中央区

すべてを描く萬(よろず)絵師 暁斎 ―河鍋暁斎記念美術館所蔵

2025/04/26〜2025/06/01

中之島 香雪美術館

大阪府・大阪市

イメージの魔術師 エロール・ル・カイン展

開催中〜2025/06/01

八王子市夢美術館

東京都・八王子市

皇室の美と山梨~皇居三の丸尚蔵館の名品~

2025/04/26〜2025/06/01

山梨県立美術館

山梨県・甲府市

特別展 ノー・バウンダリーズ

開催中〜2025/06/01

国立国際美術館

大阪府・大阪市

横浜美術館リニューアルオープン記念展「おかえり、ヨコハマ」

開催中〜2025/06/02

横浜美術館

神奈川県・横浜市

ヨシタケシンスケ展かもしれない たっぷり増量タイプ

開催中〜2025/06/03

CREATIVE MUSEUM TOKYO(東京・京橋TODA BUILDING 6階)

東京都・中央区

「総合開館30周年記念 鷹野隆大 カスババ ―この日常を生きのびるために―」展

開催中〜2025/06/08

東京都写真美術館

東京都・目黒区

マシン・ラブ:ビデオゲーム、AI と現代アート

開催中〜2025/06/08

森美術館

東京都・港区

西洋絵画、どこから見るか?―ルネサンスから印象派まで サンディエゴ美術館 vs 国立西洋美術館

開催中〜2025/06/08

国立西洋美術館

東京都・台東区

企画展示「20世紀イタリアの巨匠 マリノ・マリーニ 新収蔵の版画作品を中心に」

開催中〜2025/06/08

群馬県立近代美術館

群馬県・高崎市

遥かなるイタリア 川村清雄と寺崎武男

開催中〜2025/06/08

目黒区美術館

東京都・目黒区

特別展「古代DNA―日本人のきた道―」

開催中〜2025/06/15

国立科学博物館

東京都・台東区

タピオ・ヴィルカラ 世界の果て

開催中〜2025/06/15

東京ステーションギャラリー

東京都・千代田区

特別展「超 国宝―祈りのかがやき―」

開催中〜2025/06/15

奈良国立博物館

奈良県・奈良市

特別展「日本、美のるつぼ―異文化交流の軌跡―」

開催中〜2025/06/15

京都国立博物館

京都府・京都市

国宝の名刀と甲冑・武者絵 特集展示 三井家の五月人形

開催中〜2025/06/15

三井記念美術館

東京都・中央区

ラーメンどんぶり展 「器」からはじめるラーメン×デザイン考

開催中〜2025/06/15

21_21 DESIGN SIGHT

東京都・港区

特別展「蔦屋重三郎 コンテンツビジネスの風雲児」

2025/04/22〜2025/06/15

東京国立博物館

東京都・台東区

春の特別展「食の器と道具」

開催中〜2025/06/20

国際基督教大学博物館湯浅八郎記念館(ICU湯浅八郎記念館)

東京都・三鷹市

花と暮らす展

開催中〜2025/06/22

国立工芸館

石川県・金沢市

横尾忠則 連画の河

2025/04/26〜2025/06/22

世田谷美術館

東京都・世田谷区

総合開館30周年記念 TOPコレクション 不易流行

開催中〜2025/06/22

東京都写真美術館

東京都・目黒区

初夏展「くまもとの絶景―知られざる日本最長画巻『領内名勝図巻』―」

2025/04/26〜2025/06/22

永青文庫

東京都・文京区

藤田嗣治 ―7つの情熱

開催中〜2025/06/22

SOMPO美術館

東京都・新宿区

名作展「川端龍子の描き出した世界 生誕140年を迎えて」

開催中〜2025/06/22

大田区立龍子記念館

東京都・大田区

篠原一男 空間に永遠を刻む——生誕百年 100の問い

開催中〜2025/06/22

TOTOギャラリー・間

東京都・港区

黒の奇跡・曜変天目の秘密

開催中〜2025/06/22

静嘉堂文庫美術館@丸の内

東京都・千代田区

箱根-横須賀連携企画第3弾 アートでつなぐ山と海 箱根・芦ノ湖 成川美術館コレクション展 海辺のミュージアムで楽しむ日本画のきらめき

開催中〜2025/06/22

横須賀美術館

神奈川県・横須賀市

石田尚志 絵と窓の間

開催中〜2025/06/22

アーツ前橋 ギャラリー

群馬県・前橋市

特別企画展「めぐる いのち 熊谷守一美術館40周年展」

開催中〜2025/06/29

豊島区立 熊谷守一美術館

東京都・豊島区

ゴジラ生誕70周年記念 ゴジラ・THE・アート展

2025/04/26〜2025/06/29

森アーツセンターギャラリー

東京都・港区

アーツ・アンド・クラフツとデザイン ウィリアム・モリスからフランク・ロイド・ライトまで

開催中〜2025/06/29

茨城県近代美術館

茨城県・水戸市

まど・みちおのうちゅう―うちゅうの あんなに とおい あそこに さわる―

2025/04/27〜2025/06/29

宇都宮美術館

栃木県・宇都宮市

MOT Plus サウンドウォーク・コレクティヴ & パティ・スミス|コレスポンデンス

2025/04/26〜2025/06/29

東京都現代美術館

東京都・江東区

MOT Plus ハン・ネフケンス財団との共同プロジェクト シャハナ・ラジャニ

2025/04/29〜2025/06/29

東京都現代美術館

東京都・江東区

日本画コレクション再発見と 片岡球子「蔦屋重三郎の浮世絵師たち」

開催中〜2025/06/29

神奈川県立近代美術館 葉山

神奈川県・葉山町

民藝 MINGEI–美は暮らしのなかにある

2025/04/22〜2025/06/29

千葉県立美術館

千葉県・千葉市

鹿島茂コレクション フランスのモダングラフィック展 —20世紀初頭の風刺画からアール・デコ挿絵本、1930年代グラフィック雑誌まで

2025/04/26〜2025/06/29

群馬県立館林美術館

群馬県・館林市

リビング・モダニティ 住まいの実験 1920s-1970s

開催中〜2025/06/30

国立新美術館

東京都・港区

「この、原美術館ARCという時間芸術」第2期

2025/05/16〜2025/07/06

原美術館ARC

群馬県・渋川市

どうぶつ展 わたしたちはだれ? どこへむかうの?

開催中〜2025/07/06

PLAY! MUSEUM

東京都・立川市

橋口五葉のデザイン世界

2025/05/25〜2025/07/13

府中市美術館

東京都・府中市

岡崎乾二郎 而今而後 ジコンジゴ Time Unfolding Here

2025/04/29〜2025/07/21

東京都現代美術館

東京都・江東区

開館30周年記念 MOTコレクション 9つのプロフィール 1935→2025

2025/04/29〜2025/07/21

東京都現代美術館

東京都・江東区

企画展「死と再生の物語(ナラティヴ)―中国古代の神話とデザイン―」

2025/06/07〜2025/07/27

泉屋博古館東京

東京都・港区

【特別展】生誕150年記念 上村松園と麗しき女性たち

2025/05/17〜2025/07/27

山種美術館

東京都・渋谷区

士郎正宗の世界展~『攻殻機動隊』と創造の軌跡~

開催中〜2025/08/17

世田谷文学館

東京都・世田谷区

ほとけに随侍するもの

2025/04/23〜2025/08/31

半蔵門ミュージアム

東京都・千代田区

ACN ラムセス大王展 ファラオたちの黄金

開催中〜2025/09/07

ラムセス・ミュージアム at CREVIA BASE Tokyo

東京都・江東区

オランジュリー美術館 オルセー美術館 コレクションより ルノワール×セザンヌ—モダンを拓いた2人の巨匠

2025/05/29〜2025/09/07

三菱一号館美術館

東京都・千代田区

高畑勲展 ̶日本のアニメーションを作った男。

2025/06/27〜2025/09/15

麻布台ヒルズ ギャラリー

東京都・港区

小湊鉄道開業 100 周年記念展「古往今来・発車オーライ!」

2025/04/26〜2025/09/15

市原湖畔美術館

千葉県市原市

藤田嗣治 猫のいる風景

開催中〜2025/09/28

軽井沢安東美術館

長野県・軽井沢町

知られざる秀逸コレクション 東京・足立区立郷土博物館所蔵浮世絵名品展

2025/05/24〜2025/10/05

北斎館

長野県・小布施町

開館50周年記念 おいでよ!松岡動物園

2025/06/17〜2025/10/13

松岡美術館

東京都・港区

企画展「ゴッホ・インパクト—生成する情熱」

2025/05/31〜2025/11/30

ポーラ美術館

神奈川県・足柄下郡箱根町

Exhibitions

はじまり、美の饗宴展 
すばらしき大原美術館コレクション

倉敷にある大原美術館のベストコレクション。多様性にも驚く。
  ■西洋美術を公開展示する「はじまり」の場所
  岡山県倉敷市にある大原美術館は1930年、日本で初めて西洋美術を紹介する本格的な美術館として、倉敷の実業家である大原孫三郎(1880~1943)によって創設された。基軸となるコレクションは、彼と強い信頼関係にあった一歳年下の岡山県出身の画家・児島虎次郎(1881~1929)が欧州で収集した作品だ。社会事業にも熱心だった大原孫三郎は「日本の芸術界のために最も有益なる次第にて…」との児島虎次郎の懇願に応え、財を投じ支援した。孫三郎は美術がもつ社会的意味を重視したのだった。大原美術館は虎次郎が47歳で亡くなった翌年に開館。その後も代々孫三郎の理想を引き継ぎ、そのコレクションを拡大してゆく。大原美術館所蔵のエル・グレコ(1541~1614)の《受胎告知》(1590頃~1603)(※以下、作品はすべて大原美術館蔵)を初めとする傑作群をみるために、毎年国内外から多くの人が倉敷を訪れる。
  現在、そのベストコレクションとして選ばれた約150点が、東京の国立新美術館にやってきている。大原美術館で常時展示している作品が多いが、印象が少し異なる。倉敷だと、ギリシャ式神殿のようなファサードの本館に西洋美術、分館には日本美術というふうに点在する建物を巡りながらの作品鑑賞になる。しかし本展覧会では作品がまさに一堂に会したことで、大原美術館コレクションの、古代から現代美術に至るその多様性が際立ってみえる。その全体像にも驚嘆させられた。
  ■展覧会構成
  本展は、以下の7つの章から構成される。第1章 古代への憧憬/第2章 西洋の近代美術/第3章 日本の近代洋画/第4章 民芸運動ゆかりの作家たち/第5章 戦中期の美術/第6章 戦後の美術/第7章 21世紀へ
  ■古代の美術
  会場に入ると、最初の部屋でエジプト時代の《猫像》(末期王朝時代:紀元前664~紀元前335/34頃)が両脚を前に伸ばして座るブロンズ像に対面した。当時は愛、陶酔、快楽、家内安全などを司るバステト女神が顕現したものとしてネコは崇拝された。エメラルド色の地に可愛らしい鳥や植物が描かれたファイアンス製の《花鳥文蓋付容器》(中王国時代 第12王朝後期:紀元前19世紀頃)も、片手を目の前に掲げ哀悼のポーズをする《女神イシスまたはネフティス像》(プトレマイオス朝時代:紀元前305/04~紀元前30頃)も古代エジプト時代の遺物だ。一方、天板に虎が付いた釣鐘形の楽器《錞宇 虎形紐》(東周~漢時代:紀元前770~紀元後220)や白大理石から彫られた《白玉弥勒仏倚坐像》(天保3年:522年、北斉時代)などの古代中国の名作もみられる。また白地に青、緑、黒、赤で愛嬌のあるトルコ風衣裳をまとった二人の人間と、植物文様を描いたトルコのオスマン朝時代の皿《白地多彩人物草花文皿》(16世紀末~17世紀初期)や、様々な形の壺などオリエントの名品も並んでいる。
  大原美術館というと西洋近代美術のイメージが強いが、それが一新される思いがした。エジプトとオリエント美術は児島虎次郎が西洋美術とともに最初期から収集し、古代中国美術のほうは児島が個人コレクションとして集めたものという。
  ■エル・グレコ《受胎告知》と西洋近代美術
  次の部屋では、最も有名なエル・グレコ《受胎告知》がじっくりみられるように工夫されている。大原美術館がもつ唯一のオールドマスターによる絵画(18世紀以前のヨーロッパ絵画の古典作品)である。日本に所蔵されているが奇跡的ともいわれている。エル・グレコは同主題を十数点描いたが、本作は雲に乗って突然現れた天使と鳩に驚くマリアの姿を、限られた要素で主題を明確に表現した独特の作品。強い印象を残す。児島虎次郎が1922年にパリの画廊でみつけたものだ。
  続いて19世紀後半から20世紀前半までの西洋絵画が並ぶ。ピエール・ピュヴィス・ド・シャヴァンヌ(1824~98)やギュスターヴ・モロー(1826~98)ら象徴主義、またクロード・モネ(1840~1926)やピエール=オーギュスト・ルノワール(1841~1919)ら印象派、ポール・ゴーギャン(1848~1903)やポール・セザンヌ(1839~1906)らポスト印象派、そして抽象絵画へと、教科書などでも馴染み深い錚々たる作品ばかりだ。その中に亜麻色の髪を梳かしてもらいながらこちらを向いて座る女性を描いた楕円形の優美な作品がみえる。フランス画壇で活躍したエドモン=フランソワ・アマン=ジャン(1860~1936)の《髪》(1912頃)である。これは児島が最初の渡欧時に大原孫三郎に購入を願い出て帰国時に持ち帰った大原美術館コレクションの「はじまり」である。また、青色の水面に浮かぶ睡蓮と、池に映る木々や光が描かれたクロード・モネの《睡蓮》(1906頃)は、児島が直接モネを訪ねて購入を頼み、再訪時に幾つかの候補作から選んだ作品だ。
  ■日本の近代洋画
  3度渡欧して作品を収集した児島虎次郎は、実力のある画家でもあった。彼の《和服を着たベルギーの少女》(1911)は、紫地で赤い絞りの着物に橙色の帯を締めたベルギーの少女が窓からの光を浴びながら室内に立つ姿を大画面に描いたもの。本作はユニークな主題、鮮やかな色彩と勢いのある筆触によって強く訴える。1908年パリに到着し1909年よりベルギーで学んだ児島の力が発揮された。フランスの国民美術協会展初入選の作品とされる。
  大原孫三郎の長男である大原總一郎(1909~68)は、1940年に家督を譲られ、1943年に死去した父の諸事業を継いだ。美術館の活動は「美術館は…常に生きて成長していなければならない」との考えのもとで精力的に行った。第二次世界大戦後すぐ1945年12月には美術館を再開。1951年のマティス展をはじめとする幾つかの巡回展を受け入れ成功させた。そして1951年より日本の近代洋画を集中的に収集し、1961年にはそれらを展示する新館(現在の分館)も増設した。
  20歳で夭折した関根正二(1899~1919)の代表作《信仰の悲しみ》(1918)は5人の女性が花を手に歩く幻想的な作品。總一郎のお気に入りだった。また、小出楢重(1887~1931)のデビュー作《Nの家族》(1919)は、暗い画面に画家の家族を、セザンヌ風の静物、ホルバインの画集、自身の自画像とともに堂々と描いた。両作品とも重要文化財である。独創的な表現に富む。一方、藤田嗣治(1886~1968)の《舞踏会の前》(1925)は、布と壁を背景に様々なポーズをする7人の「乳白色の肌」の女性の群像で、圧倒的な存在感だ。昨年2015年に修復が完成した。
  ■民芸運動ゆかりの作家
  大原孫三郎および大原總一郎は、民芸運動と深い関係をもった。民芸運動とは、思想家である柳宗悦(1889~1961)が大正時代末期、それまで誰も顧みなかった無名の職人の手になる日常の道具に驚くべき本来の美を見出し、民芸(民衆的工芸品)と名付け、それを広めようとする活動であり、柳とともに濱田庄司(1894~1978)らが運動の担い手となった。柳は稀有な直感で日本全国や諸外国から蒐集した民芸を収蔵・展示するために、1936年に日本民藝館を東京の駒場に開設するが、これは孫三郎の出資によるものだった。一方、總一郎は1961年と1963年に大原美術館に、民芸に関わった作家たちの展示施設を開館(現在の工芸館)し、自身と父のコレクションを寄贈した。
  本展でも民芸に関わった6人の作家― 濱田庄司、バーナード・リーチ(1887~1979)、富本憲吉(1886~1963)、河井寛次郎(1890~1966)ら陶芸家、そして版画家の棟方志功(1903~75)および染織家の芹沢銈介(1895~1984)の重要な作品が展示されている。倉敷の大原美術館工芸館は江戸時代の米蔵を芹沢がデザインした建物で、空間自体の深い味わいも魅力だが、本展では特に陶芸について作家を比較しながらみられる面白さがある。棟方志功の代表作『二菩薩釈迦十大弟子板画柵』(1939)は版面ぎりぎりまで彫られ、紙から飛び出さんばかりの白黒の力強い造形。それが国立新美術館の白壁に12点並ぶ様は壮観である。
  ■戦中から戦後の作品
  大原總一郎は1950年代後半にアンフォルメル系の作家の作品、アメリカの抽象表現主義やポップアート、さらに1960年代にかけて日本の先鋭的な作品の収集を進めた。なお、アンフォルメルとはフランスの美術評論家ミッシェル・タピエ(1909~87)が唱導した型破りな抽象絵画の動向。タピエは1957年に来日し、日本でもアンフォルメル旋風が起こった。
  本展には、アンフォルメルの先駆的作家といえるジャン・フォートリエ(1898~1964)の戦時中の作品《人質》(1944)が出品されている。ドイツのゲシュタポに逮捕され、凄惨な場面を目撃した彼の経験をもとに力強い筆致で描かれた黄色の横顔は、みる者の胸に深くささる。また、4m近くの横長の画面に青、黒、緑などの曲線が勢いよく動き、海や空などの自然の息吹を感じさせる豪快で澄み渡った作品は、堂本尚郎(1928~2013)の《集中する力Ⅰ》(1957)だ。彼がアンフォルメルに加わった頃に制作された。一方、1996年より制作を続けた「日付絵画」で有名な河原温(1933~2014)の《黒人兵》(1955)は、変形のカンヴァスに靴の底が大きく描かれ、極端な遠近法が使用された。河原が23才のときの作品で、彼にとってのはじめてのパブリック・コレクションが大原美術館となった。
  ■21世紀の美術
  会場を進むと、さらに面白い展開がある。福田美蘭(1963~)の《安井曾太郎と孫》(2002)は、室内で絵画制作中の和服の画家を、そのキャンヴァスをのぞくモデルとなった孫娘とともに描く。すぐ横に、もとになった安井曾太郎(1888~1955)の《孫》(1950)が並べて置かれる。福田の作品では、安井の変形や強調の手法をとりいれ、絵画批評と再構築を行うなかで、絵画とは何かを考えさせる。本作は、大原家の旧別荘である有隣荘で行われた展覧会で発表された。大原美術館では2002年より有隣荘にて現代作家の展覧会を開催している。
 
  245×737cmの巨大な横長の画面にイタリアの建築物や爆発する噴煙、そして小さな日の丸などが、おもに墨や胡粉などで描かれたモノクロの作品は、三瀬夏ノ介(1973~)の《君主論―Il Principe―》(2007)だ。和紙を支持体とし、沢山のパーツをつないで構成。これは、大原美術館で2005年から始まった事業ARKO(Artist in Residence Kurashiki, Ohara)によって、三瀬が倉敷に滞在して制作して公開された作品だ。
  大原美術館では、有隣荘の展覧会やARKOに加え、2007年からはAM倉敷としておもに映像や身体表現の作家に、倉敷で取材した作品を公開することも実施。理事の大原謙一郎(1940~)のもと、大原美術館は21世紀にも新しい事業も行うなかで現代美術コレクションを広げている。本展でも多くの意欲的な作品により美術の新しい地平を知ることができる。
  ■美術館をとりまく状況
  先述したように大原美術館は、西洋美術を本格的に公開展示する日本で初めての美術館で、1930年(昭和5)に開館した。ところで当時の日本の美術館や博物館はどのような状況だったのだろう。博物館としては、明治時代の1872年(明治5)に東京国立博物館が開館し、続いて1889年(明治22)に京都国立博物館と奈良国立博物館が開館。一方、日本最初の私立美術館は、1917年(大正6)に開館した大倉集古館だった。大倉財閥の祖であった大倉喜八郎の収集した東洋・日本美術を収蔵する。近代美術館としては、第二次大戦後の1951年に神奈川県立近代美術館、1952年に東京国立近代美術館が開館。また1952年にはブリヂストンを創業した石橋正二郎がブリヂストン美術館を開館する。そして1959年に国立西洋美術館が開館している。その収蔵作品の中心は川崎造船所(川崎重工の前身)の初代社長だった松方幸次郎の松方コレクションだった。このようにみると、開館も作品収集についても大原美術館の活動の早さにあらためて驚かされる。
  本展は、倉敷の大原美術館を訪れたことのあるかたにとっても新たな鑑賞体験といえるだろう。多くの方々にご覧いただきたく思う。なお、これほどの傑作群が東京に出品されてしまったあとの倉敷の大原美術館はどうなっているのだろう、との声も聞かれるようだが、本展開催中は、通常みられない貴重な作品が倉敷では展示されていて、そちらもまたとても面白い、とのことである。
【参考文献】
1) 国立新美術館 長屋光枝・瀧上華・岩﨑美千子、大原美術館 柳沢秀行・吉川あゆみ 編集:『はじまり、美の饗宴展 すばらしき大原美術館コレクション』(カタログ)、学研G-ART PROJECT 編集人、NHKプロモーション 発行 、2016年。
2) 大原美術館 監修:『大原美術館で学ぶ美術入門』(JTBキャンブックス)、JTBパブリッシング、2006年

執筆:細川 いづみ (HOSOKAWA Fonte Idumi) 
(2016年2月)

※会場内の風景画像は主催者側の許可を得て撮影したものです。
20160219-001
写真1 会場風景。
エル・グレコ《受胎告知》、1590頃~1603年、109×80.2cm、油彩・カンヴァス、大原美術館所蔵。
(撮影:I.HOSOKAWA)
20160219-002
写真2 会場風景。左から、
トルコ、イズニク《白地多彩人物草花文皿》、16世紀末~17世紀初期、
h.5.5cm、d.29.4cm、陶器、大原美術館所蔵。
イラン《刻線花文碗》、17世紀、h.5.5cm、d.12.5cm、陶器、大原美術館所蔵。
(撮影:I.HOSOKAWA)
20160219-003
写真3 会場風景。左から、
小出楢重《Nの家族》、1919年、78.0×90.5cm、油彩・カンヴァス、重要文化財、大原美術館所蔵。
関根正二《信仰の悲しみ》、1918年、73.0×100.0cm、油彩・カンヴァス、重要文化財、大原美術館所蔵。
(撮影:I.HOSOKAWA)

【展覧会英語表記】
THE BEST SELECTION OF THE OHARA MUSEUM OF ART
【会期・会場】
2016年1月20日~4月4日  国立新美術館
<電話> 03-5777-8600(ハローダイヤル) 
【展覧会詳細】http://www.hajimari2016.jp

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2016年2月20日