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第24回岡本太郎現代芸術賞展
岡本太郎賞に大西芽布「レクイコロス」-史上最年少・高校3年生が受賞

2021年4月1日

 第24回岡本太郎現代芸術賞の受賞者が決まり、最高賞の岡本太郎賞(賞金200万円)に大西の「レクイコロス」が、準大賞の岡本敏子賞(賞金100万円)にモリソン小林の「break on through」が、特別賞(賞金各10万円)には、植竹雄二郎、牛尾篤、小野環、唐仁原希、浮遊亭骨牌の5人が選ばれた。
 同賞は、時代に先駆け新たな表現への挑戦を続けた美術家の岡本太郎の精神を受け継ぎ、自由な視点と発想で、現代社会に鋭いメッセージを投げかけるアーティストを顕彰するために1997年に設立された。応募資格は、国籍、年齢、プロ、アマを問わず、作品は、高さ、幅、奥行きが各5㍍以内であれば、絵画、彫刻、書、小説など、ジャンルや形状は自由であることが特徴。
 今回は、昨年を164点上回る616点の応募があり、24名が入選、その中から各賞が決定した。審査員は、美術批評家で多摩美術大学教授の椹木野衣、空間メディアプロデューサーで岡本太郎記念館館長の平野暁臣、川崎市岡本太郎美術館館長の北條秀衛、美術史家で明治学院大学教授の山下裕二、ワタリウム美術館キュレーターの和多利浩一。
 授賞式は2月19日に川崎市岡本太郎美術館で行われ、入選、受賞作は4月11日まで同館で展示されている。

●岡本太郎賞は史上最年少の大西芽布「レクイコロス」
 岡本太郎賞を受賞した大西芽布は2003年大阪府生まれ。受賞時は大阪府立港南造形高校美術科3年生で、同賞の最年少受賞者となった。小学3年から父親の知り合いだった白日会の米谷花織里に油絵を学び、2014年には独立展に出品。小学生で史上初の入選となり、話題となった。小学6年の頃、父親と1か月間、フランスやイタリアで美術館を巡って模写をした体験も今に生かされている。授賞式当日は東京芸術大学の入試を翌週に控えている状況だったが、みごと合格し、4月からは同校で学ぶ。
 受賞作の「レクイコロス」はコロナウイルスが蔓延し翻弄される人物を描いた4枚を軸にした55枚の油彩を、5㍍四方の壁と空間に埋め尽くしたインスタレーション。タイトルは「レクイエム」と「コロナウイルス」を合わせた造語だという。昨年2月から、コロナ禍での休校期間に「時間が余ったので半年ほどかけて描いた」コロナをテーマとした前述の4枚を中心に、中学3年時の作品を含む高校3年間に描いたほぼ全ての作品を組み合わせた。「卒業記念作品みたいな感じ」だという。異様な人物の表現や奇抜な構成は、アメリカのカルト宗教やホラー映画などがイメージの元になっている。
 「コロナウイルスの悲惨のみならず、運命的なものに殺された人々の怨嗟の合唱を鎮魂するために作った」。「なぜか、人類の悲惨を作品化することに衝動を感じる」と言う。
 審査員の山下裕二は「すごい迫力。衝動に突き動かされて描いている姿が見えてくる。無限の可能性を感じ、まさに岡本太郎賞にふさわしい作品」と高く評価した。

●岡本敏子賞にモリソン小林の「break on through」
 岡本敏子賞を受賞したモリソン小林は、1969年東京都生まれ。店舗のインテリアデザインや施工、アートワークに携わりながら、美術作品を制作してきた。受賞作の「break on through」は、金属で制作した植物から根を伸ばし壁や床に這わせた初のインスタレーション。自らが山に登って見つけたササユリ、ヤマドリゼンマイ、アサガオ、ヤブツバキなどをモチーフにしている。
「植物を金属で制作し、標本のように枠の中に納めて作品の世界観を構築してきたが、今回は、枠を突き抜けろという思いで、植物の根が枠から出て、壁を這って、床を這って伸びていくというイメージでつくった」という。コロナ禍で早く外に出たいという気持ちが植物が太陽をめがけて育っていくというイメージにもつながった。
 社会人になって間もない頃、仕事で岡本太郎のアトリエに複数人で行ったことがあり、「ペーペーだったので向こうは気づいていないだろうが」岡本敏子にも会っているため、敏子賞受賞は喜びもひとしおだ。また、岡本太郎美術館から自転車で10分ほどの距離にアトリエがあり、美術館にもよく足を運んでいるので、「ストレスを感じずに作業できたのが賞をいただけた理由ではないか」と話している。商業分野で活動する作家の受賞は初めて。
 審査員の和多利浩一は「フレームを突き破ってニョキニョキと根が伸び、近くの植物の根とつながり、美術館のホワイトキューブを一つの地球のような空間にした。現在の地球規模の環境問題が連鎖していることを喚起させる。丁寧な細部にわたる造形技術、予想を裏切る素材感、増殖していく拡張性に魅力を感じた」と高く評価した。

●特別賞は植竹雄二郎、牛尾篤、小野環、唐仁原希、浮遊亭骨牌の5人
 「全体を通して非常に高い水準の作品が多く、力が近いところでせめぎ合っていた」(椹木野衣)ことから特別賞は昨年と同様、過去最大の5人が受賞した。
 そのうち、「戦後の高度経済成長期にお茶の間にもれなくあった『百科事典』や『美術全集』を、非常にこまやかな手つきで、団地や美術館の模型として組み立て直し、見る者を内省させる」(椹木野衣)と評価された小野環(たまき)の「再編街」は、廃棄されたり古書店でただ同然に売られている『百科事典』や『美術全集』を「ばらして組み直すことで無価値だった古本に別の価値を与える」という主旨で、本をカッターで切り抜いて、団地、美術館、本棚のある空間を制作した作品。本1冊を丸ごと用いて再現することにこだわった。
 団地の作品は上から見ると星のように見えるスターハウスを再現。土台には本の箱を使った。
 美術館の作品は1951年に日本で最初の公立美術館として鎌倉に開館し、小野が「美術や美術館に触れた最初の場」である神奈川県立近代美術館(現・鎌倉文華館 鶴岡ミュージアム)を主に『原色日本の美術』を切り抜いて制作。同館を設計した坂倉準三の図面を元に鉄骨を組み、記録集を研究して展覧会を再現、展示の台として使用していたコンクリートブロックなどにも着目し、美術館の裏側にも迫った。
 本棚の作品は、『百科事典』を素材とし、「本が切り出され、整頓され、崩壊して、素材に戻っていく」流れを表現した。
 「本が劣化した現在の姿は過去の夢見た未来との距離をいかに伝えてくれるか」を問いかけている。
 小野は1973年北海道生まれ。98年東京芸術大学大学院美術研究科油画専攻修了。2007年からアーティスト・イン・レジデンス「AIR Onomichi」の運営に携わっている。

 特別賞はほかに、自らの顔貌を彫刻した植竹雄二郎(1991年千葉県生まれ)の「Self portrait」 、鯖の縞とシマウマの縞を〝図画〟にした牛尾篤(1958年島根県生まれ)の「大漁鯖ン魚」、古典絵画や児童文学などのアイコンを利用した静寂な空気漂う絵画4点による唐仁原希(1984年滋賀県生まれ)「虹のふもとには宝物があるの」、軽トラックを改造し、移動や油圧での上昇も可能な茶室を制作した浮遊亭骨牌(昭和 日本生まれ)「浮遊亭κοιλία」。
 入選作家はほかに、東弘一郎、AYUMI ADACHI、袁方洲、太田琴乃、かえるかわる子、加藤立、金子朋樹、黒木重雄、さとうくみ子、許寧、園部惠永子、ながさわたかひろ、西野壮平、原田愛子、藤田朋一、みなみりょうへい、山崎良太。

執筆・写真:西澤美子(文中・敬称略)

第24回岡本太郎現代芸術賞展
2月20日(土)~4月11日(日)
川崎市岡本太郎美術館(神奈川県川崎市多摩区枡形7―1-5)
044―900―9898
9時30分~17時(入館は16時30分まで)
一般700円、高大生、65歳以上500円、中学生以下無料

詳細:https://www.taromuseum.jp/

写真キャプション
① 第24回岡本太郎現代芸術賞の受賞者と入選者と審査員
② 岡本太郎賞の大西芽布と受賞作「レクイコロス」
③ 岡本太郎記念現代芸術振興財団の清水井敏夫理事長から賞状を受ける大西芽布
④ 岡本敏子賞のモリソン小林と受賞作「break on through」
⑤ 特別賞の小野環と受賞作「再編街」
⑥ 「再編街」のうち神奈川県立近代美術館・鎌倉館