詳細はミュージアムのオフィシャルサイトなどでご確認ください。

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須藤玲子:NUNOの布づくり

開催中〜2024/05/06

水戸芸術館現代美術ギャラリー、広場

茨城県・水戸市

春の江戸絵画まつり ほとけの国の美術

開催中〜2024/05/06

府中市美術館

東京都・府中市

【特別展】花・flower・華 2024 ―奥村土牛の桜・福田平八郎の牡丹・梅原龍三郎のばら―

開催中〜2024/05/06

山種美術館

東京都・渋谷区

古代メキシコ -マヤ、アステカ、テオティワカン

開催中〜2024/05/06

国立国際美術館

大阪府・大阪市

小金沢健人×佐野繁次郎ドローイング/シネマ

開催中〜2024/05/06

神奈川県立近代美術館 鎌倉別館

神奈川県・鎌倉市

第5回「私の代表作」展

開催中〜2024/05/12

ホキ美術館

千葉県・千葉市

ライトアップ木島櫻谷 ― 四季連作大屏風と沁みる『生写し』

開催中〜2024/05/12

泉屋博古館東京

東京都・港区

イヴ・ネッツハマー ささめく葉は空気の言問い

開催中〜2024/05/12

宇都宮美術館

栃木県・宇都宮市

皇室のみやび―受け継ぐ美― 第3期「近世の御所を飾った品々」

開催中〜2024/05/12

皇居三の丸尚蔵館

東京都・千代田区

開館40周年記念 旧朝香宮邸を読み解く A to Z

開催中〜2024/05/12

東京都庭園美術館

東京都・港区

ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか? ——国立西洋美術館65年目の自問|現代美術家たちへの問いかけ

開催中〜2024/05/12

国立西洋美術館

東京都・台東区

国宝・燕子花図屏風 デザインの日本美術

開催中〜2024/05/12

根津美術館

東京都・港区

春陽会誕生100年 それぞれの闘い 岸田劉生、中川一政から岡鹿之助へ

開催中〜2024/05/12

長野県立美術館

長野県・長野市

モダン・タイムス・イン・パリ 1925 ― 機械時代のアートとデザイン

開催中〜2024/05/19

ポーラ美術館

神奈川県・足柄下郡箱根町

版画の青春 小野忠重と版画運動 ―激動の1930-40年代を版画に刻んだ若者たち―

開催中〜2024/05/19

町田市立国際版画美術館

東京都・町田市

HELLO! コレクション ZOZO×千葉県立美術館

開催中〜2024/05/19

千葉県立美術館

千葉県・千葉市

子の日図屏風と宮廷文化

開催中〜2024/05/19

遠山記念館

埼玉県・比企郡川島町

企画展《歌舞音曲鑑 北斎と楽しむ江戸の芸能》

開催中〜2024/05/26

すみだ北斎美術館

東京都・墨田区

百年後芸術祭 -内房総アートフェス-

開催中〜2024/05/26

芸術祭(市原市・木更津市・君津市・袖ケ浦市・富津市の内房総5市)

千葉県・市原市、木更津市、君津市、袖ケ浦市、富津市の内房総5市

特別展 雪舟伝説―「画聖(カリスマ)」の誕生―

開催中〜2024/05/26

京都国立博物館

京都府・京都市

月岡芳年 月百姿

開催中〜2024/05/26

太田記念美術館

東京都・渋谷区

金屏風の祭典 ——黄金の世界へようこそ

開催中〜2024/06/02

岡田美術館

神奈川県・箱根町

日本の山海

開催中〜2024/06/02

松岡美術館

東京都・港区

卒寿記念 人間国宝 鈴木藏の志野展

開催中〜2024/06/02

国立工芸館

石川県・金沢市

川瀬巴水 旅と郷愁の風景

開催中〜2024/06/02

八王子市夢美術館

東京都・八王子市

1950〜60年代の日本画―造形への挑戦

開催中〜2024/06/02

平塚市美術館

神奈川県・平塚市

遠距離現在 Universal / Remote

開催中〜2024/06/03

国立新美術館

東京都・港区

第8回横浜トリエンナーレ「野草:いま、ここで生きてる」

開催中〜2024/06/09

芸術祭(横浜美術館、旧第一銀行横浜支店、BankART KAIKO、クイーンズスクエア横浜、元町・中華街駅連絡通路)

神奈川県・横浜市

記憶:リメンブランス-現代写真・映像の表現から

開催中〜2024/06/09

東京都写真美術館

東京都・目黒区

BankART Life7「UrbanNesting:再び都市に棲む」

開催中〜2024/06/09

BankART Station

神奈川県・横浜市

企画展「北斎と感情」

開催中〜2024/06/09

北斎館

長野県・小布施町

名作展「大画面の奔流―川端龍子の『会場芸術』再考」

開催中〜2024/06/09

大田区立龍子記念館

東京都・大田区

特別展「法然と極楽浄土」

開催中〜2024/06/09

東京国立博物館

東京都・台東区

静嘉堂文庫竣工100年 特別展「画鬼 河鍋暁斎×鬼才 松浦武四郎」

開催中〜2024/06/09

静嘉堂@丸の内(静嘉堂文庫美術館)

東京都・千代田区

平野杏子展 – 生きるために描きつづけて

開催中〜2024/06/09

平塚市美術館

神奈川県・平塚市

空海 KŪKAI ―密教のルーツとマンダラ世界

開催中〜2024/06/09

奈良国立博物館

奈良県・奈良市

青山悟 刺繍少年フォーエバー

開催中〜2024/06/09

目黒区美術館

東京都・目黒区

没後120年 エミール・ガレ展 奇想のガラス作家

開催中〜2024/06/09

渋谷区立松濤美術館

東京都・渋谷区

特別展「大哺乳類展3−わけてつなげて大行進」

開催中〜2024/06/16

国立科学博物館

東京都・台東区

茶の湯の美学 ―利休・織部・遠州の茶道具―

開催中〜2024/06/16

三井記念美術館

東京都・中央区

ベル・エポックー美しき時代 パリに集った芸術家たち ワイズマン&マイケル コレクションを中心に

開催中〜2024/06/16

山梨県立美術館

山梨県・甲府市

サントリー美術館コレクション展 名品ときたま迷品

開催中〜2024/06/16

サントリー美術館

東京都・港区

昭和モダン×百段階段 ~東京モダンガールライフ~

開催中〜2024/06/16

ホテル雅叙園東京 東京都指定有形文化財 「百段階段」

東京都・目黒区

宇野亞喜良展 AQUIRAX UNO

開催中〜2024/06/16

東京オペラシティアートギャラリー

東京都・新宿区

板倉鼎・須美子展

開催中〜2024/06/16

千葉市美術館

千葉県・千葉市

高橋由一から黒田清輝へ ―明治洋画壇の世代交代劇―

開催中〜2024/06/16

栃木県立美術館

栃木県・宇都宮市

ここに いても いい リトゥンアフターワーズ 山縣良和と綴るファッション表現のかすかな糸口

2024/04/27〜2024/06/16

アーツ前橋

群馬県・前橋市

“オモシロイフク”大図鑑

開催中〜2024/06/22

文化学園服飾博物館

東京都・渋谷区

「どうぶつ百景 江戸東京博物館コレクションより」展

2024/04/27〜2024/06/23

東京ステーションギャラリー

東京都・千代田区

令和6年度初夏展「殿さまのスケッチブック」

2024/04/27〜2024/06/23

永青文庫

東京都・文京区

シンフォニー・オブ・アート — イメージと素材の饗宴

開催中〜2024/06/23

群馬県立館林美術館

群馬県・館林市

驚異の細密表現展 ―江戸・明治の工芸から現代アートまで―

開催中〜2024/06/23

横須賀美術館

神奈川県・横須賀市

没後70年 戦争を越えて―写真家ロバート・キャパ、愛と共感の眼差し―

開催中〜2024/06/23

東京富士美術館

東京都・八王子市

カール・アンドレ 彫刻と詩、その間

開催中〜2024/06/30

DIC川村記念美術館

千葉県・佐倉市

特別企画展「熊谷守一美術館39周年展 守一、旅を描く。」

開催中〜2024/06/30

豊島区立 熊谷守一美術館

東京都・豊島区

民藝 MINGEI—美は暮らしのなかにある

開催中〜2024/06/30

世田谷美術館

東京都・世田谷区

創刊50周年記念 花とゆめ展

2024/05/24〜2024/06/30

東京シティビュー(六本木ヒルズ森タワー52 階)

東京都・港区

KAGAYA 星空の世界 天空の贈り物

2024/05/01〜2024/07/01

そごう美術館

神奈川県・横浜市

三島喜美代―未来への記憶

2024/05/19〜2024/07/07

練馬区立美術館

東京都・練馬区

石岡瑛子 I デザイン

2024/04/27〜2024/07/07

茨城県近代美術館

茨城県・水戸市

Beautiful Japan 吉田初三郎の世界

2024/05/18〜2024/07/07

府中市美術館

東京都・府中市

ふたり 矢部太郎展

開催中〜2024/07/07

PLAY! MUSEUM

東京都・立川市

MOTコレクション 歩く、赴く、移動する 1923→2020/Eye to Eye-見ること

開催中〜2024/07/07

東京都現代美術館

東京都・江東区

ホー・ツーニェン エージェントのA 

開催中〜2024/07/07

東京都現代美術館

東京都・江東区

Tokyo Contemporary Art Award 2022-2024 受賞記念展

開催中〜2024/07/07

東京都現代美術館

東京都・江東区

【特別展】犬派?猫派? ―俵屋宗達、竹内栖鳳、藤田嗣治から山口晃まで―

2024/05/12〜2024/07/07

山種美術館

東京都・渋谷区

TOPコレクション 時間旅行 ― 千二百箇月の過去とかんずる方角から

開催中〜2024/07/07

東京都写真美術館

東京都・目黒区

企画展 歌と物語の絵 ―雅やかなやまと絵の世界

2024/06/01〜2024/07/21

泉屋博古館東京

東京都・港区

藤田嗣治 エコール・ド・パリの時代 1918~1928年

開催中〜2024/07/23

軽井沢安東美術館

長野県・軽井沢町

「石川九楊大全」

2024/06/08〜2024/07/28

上野の森美術館

東京都・台東区

国芳の団扇絵 ―猫と歌舞伎とチャキチャキ娘

2024/06/01〜2024/07/28

太田記念美術館

東京都・渋谷区

企画展「未来のかけら 科学とデザインの実験室」

開催中〜2024/08/12

21_21 DESIGN SIGHT ギャラリー1&2

東京都・港区

生誕140年 YUMEJI展 大正浪漫と新しい世界

2024/06/01〜2024/08/25

東京都庭園美術館

東京都・港区

特別展「北斎 グレートウェーブ・インパクト —神奈川沖浪 裏の誕生と軌跡—」

2024/06/18〜2024/08/25

すみだ北斎美術館

東京都・墨田区

TRIO パリ・東京・大阪 モダンアート・コレクション

2024/05/21〜2024/08/25

東京国立近代美術館

東京都・千代田区

内藤コレクション 写本 — いとも優雅なる中世の小宇宙

2024/06/11〜2024/08/25

国立西洋美術館

東京都・台東区

企画展「旅するピーナッツ。」

開催中〜2024/09/01

スヌーピーミュージアム

東京都・町田市

シアスター・ゲイツ展:アフロ民藝

開催中〜2024/09/01

森美術館

東京都・港区

AOMORI GOKAN アートフェス 2024 「つらなりのはらっぱ」

開催中〜2024/09/01

アートフェス(芸術祭)( 青森県立美術館、青森公立大学 国際芸術センター青森、弘前れんが倉庫美術館、八戸市美術館、十和田市現代美術館)

青森県

伊藤潤二展 誘惑

2024/04/27〜2024/09/01

世田谷文学館

東京都・世田谷区

音を観る ―変化観音と観音変化身―

開催中〜2024/09/01

半蔵門ミュージアム

東京都・千代田区

アートキャンプ白州 2024 Camp and Art in Each Heart!

2024/07/06〜2024/09/01

山梨県立美術館

山梨県・甲府市

エドワード・ゴーリーを巡る旅

2024/07/06〜2024/09/01

横須賀美術館

神奈川県・横須賀市

カルダー:そよぐ、感じる、日本

2024/05/30〜2024/09/06

麻布台ヒルズ ギャラリー

東京都・港区

日本のまんなかでアートをさけんでみる

開催中〜2024/09/08

原美術館ARC

群馬県・渋川市

特別展「神護寺―空海と真言密教のはじまり」

2024/07/17〜2024/09/08

東京国立博物館

東京都・台東区

開館20周年記念 山梨放送開局70周年 平山郁夫 -仏教伝来と旅の軌跡

開催中〜2024/09/09

平山郁夫シルクロード美術館

山梨県・北杜市

フィロス・コレクション ロートレック展 時をつかむ線

2024/06/22〜2024/09/23

SOMPO美術館

東京都・新宿区

空想旅行案内人 ジャン=ミッシェル・フォロン

2024/07/13〜2024/09/23

東京ステーションギャラリー

東京都・千代田区

吉田克朗展 ものに、風景に、世界に触れる

2024/07/13〜2024/09/23

埼玉県立近代美術館

埼玉県・さいたま市

印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵

2024/07/06〜2024/09/29

東京富士美術館

東京都・八王子市

梅津庸一 クリスタルパレス

2024/06/04〜2024/10/06

国立国際美術館

大阪府・大阪市

大地に耳をすます 気配と手ざわり

2024/07/20〜2024/10/09

東京都美術館

東京都・台東区

レガシー ―美を受け継ぐ モディリアーニ、シャガール、ピカソ、フジタ

2024/06/18〜2024/10/13

松岡美術館

東京都・港区

企画展「作家の視線― 過去と現在、そして…」

2024/05/23〜2024/11/11

ホキ美術館

千葉県・千葉市

Exhibitions

鉄道と美術の150年

  • 東京ステーションギャラリー (東京都・千代田区)

 「鉄道」と聞くと妙に心がときめく。列車、線路、駅。移り変わる窓の風景。遠くへ運ばれていく自分。今年2022年は日本の鉄道開業150年。1872(明治5)年10月14日(太陽暦)、日本で初めての鉄道が新橋-横浜間29kmを走った。「美術」という語がそれまでの書画などに代わって初めて登場したのも同年だった。殖産興業の一環として翌年のウィーン万博に参加のため、新たに造られた語だ。その後、鉄道と美術は互いに影響を及ぼしつつ、共に日本の近代化の流れと複雑にからみあいながら進展した。
  
 JR東京駅丸の内北口にある東京ステーションギャラリーで開催中の本展は、150年にわたる鉄道に関する美術(鉄道美術)を多様な視点で紹介する。同館の渾身の企画展と聞いていたが、予想をはるかに超える幅広さと刺激的な内容に驚嘆した。あえて章を設けずに構成したという展示は、めくるめく景色を展開し疾走する。展示替えを含み150作品が出品。

1872(明治5)年、日本で初めての鉄道、出発進行!

 世界初の蒸気機関車は英国で1804年に走行し、1825年に実用化された。日本には1853年ロシアが長崎に、翌年アメリカが横浜に来航時、模型を走らせた。そして1877年、日本初の鉄道が開業。当時それを速報として人々に伝えたのは瓦版や浮世絵だった。
   
 歌川広重(三代)(1842~94)は歌川広重の門人で明治広重と自称した。その浮世絵《東京汐留鉄道御開業祭礼図》(1872年、鉄道博物館)では新橋駅での明治天皇臨席の祝祭を、《横浜海岸鉄道蒸気車図》(1874年、神奈川県立博物館など)では蒸気機関車と帆船が並ぶ華々しい横浜の情景を、赤色を基調として描写する。

会場風景(以下同様)。歌川広重(三代)《横浜海岸鉄道蒸気車図》1874年、神奈川県立歴史博物館 *展示替えあり
会場風景(以下同様)。歌川広重(三代)《横浜海岸鉄道蒸気車図》1874年、神奈川県立歴史博物館 *展示替えあり

 先の拙稿(2022年11月2日記事「響きあう名宝―曜変天目・琳派のかがやきー」の最後で、幕末明治に活躍した画家・河鍋暁斎(1831~89)筆の傑作画帖『地獄極楽めぐり図』(表紙、見返し等除き35図)に触れたが、その内に「極楽行きの汽車」(1872年、静嘉堂文庫美術館)がある。本画帖は14歳で亡くなった娘・田鶴の追善供養として父の勝田五兵衛が暁斎に依頼。暁斎は田鶴が楽しく冥界を廻り極楽へ旅する様子を、温かくユーモアいっぱいに微細に描いた。目新しい鉄道を極楽行きの乗り物として登場させた暁斎の冴えに感服する。

河鍋暁斎『地獄極楽めぐり図』より「極楽行きの汽車」1872年、静嘉堂文庫美術館 画像提供:静嘉堂文庫美術館/DNPartcom *展示期間:10/8~11/6 (★11/8~1/9は下絵(1872年、公益財団法人 河鍋暁斎記念美術館)を展示)
河鍋暁斎『地獄極楽めぐり図』より「極楽行きの汽車」1872年、静嘉堂文庫美術館 画像提供:静嘉堂文庫美術館/DNPartcom *展示期間:10/8~11/6 (★11/8~1/9は下絵(1872年、公益財団法人 河鍋暁斎記念美術館)を展示)

 1872年には太陽暦が採用され、学制が発布。また日本初の博物館である東京国立博物館の始まりとなる湯島聖堂での博覧会が開催。ところで150年前とは遠い過去なのだろうか。祖父母のさらに祖父母か曾祖父母の時代になろうか。鉄道開業日に多くの市民が沿道に集まったという。その中に彼らがいたかもしれない。

明治中期:東海道線全通

 赤松麟作(1878~1953)の油彩大作《夜汽車》(1901年、東京藝術大学)は、明け方の客車内の人々の寛いだ様子を写実的に表す。会話が聴こえてきそうだ。1889(明治22)年に、新橋-神戸間が全通した東海道線の三等列車内、名古屋辺りとされる。眺めていると小説を読んでいる気分にもなる。ドストエフスキー『白痴』(1868)、夏目漱石『三四郎』(1908)の冒頭は汽車の場面だった。赤松は黒田清輝が結成した白馬会研究所で学び、1889年に開校し1896年に西洋画科を創設した東京美術学校に進む。1906(明治39)年、鉄道国有化。

赤松麟作《夜汽車》1901年、東京藝術大学
赤松麟作《夜汽車》1901年、東京藝術大学

1914(大正3)年、東京駅竣工。大正から昭和初期

 1914(大正3)年に東京駅(中央停車場)が竣工。ドーム屋根と赤煉瓦の壁を特徴とする幅335m、3階建ての駅舎は建築家・辰野金吾の設計。第一次世界大戦勃発の年である。
  
 川上涼花(1887~1921)は、油彩《鉄路》(1912年、東京国立近代美術館)を明るい色彩で汽車の疾走感を描いて新境地を拓く。長谷川利行(1891~1940)は、油彩大作《汽罐車庫》(1928年、鉄道博物館)にて田端駅の車庫を激情ほとばしる色彩と筆致で描写。また不染鉄(1891~1976)による日本画《山海図絵(伊豆の追憶)》(1925年、公益財団法人木下美術館)は、中央に富士山と駅と汽車を、手前に魚が泳ぐ太平洋を配し、独特な味わい。鉄道と駅の整備と共に絵画の領野が拡大する。

長谷川利行《汽罐車庫》1928年、鉄道博物館
長谷川利行《汽罐車庫》1928年、鉄道博物館

戦時下

 鉄道の煙だけが、また車窓からの湖の景色だけが描かれている2作品。例えようのない強烈な感情と苦しみが胸に突き刺さる。香月康男(1911~74)による油彩《煙》(1969年)と《バイカル》(1971年、共に山口県立美術館)だ。1942年12月の応召からシベリア抑留を経て1947年5月の帰国まで、その壮絶な体験を復員後に作品化したシベリア・シリーズだ。香月は《煙》に強い望郷の念を込め、鉄道で欧州留学した画家の先達にも思いを馳せた。

香月泰男《煙》1969年、山口県立美術館
香月泰男《煙》1969年、山口県立美術館

 東京駅は1945年5月25日の東京大空襲でドーム屋根が焼失し延焼。伊藤善(1916~73)による油彩《東京駅(爆撃後)》(1946年頃、東京駅)は衝撃的だ。その後、東京駅は戦災復興工事で2階建てとなった。長らくそのままだったが、2007年からの工事で創建当時の状態に復元され、現在に至る。

1964(昭和39)年、東海道新幹線開業。戦後から現在

 多くの人が行きかう駅という公共空間は、開業式を含め多様なパフォーマンスの舞台となった。平田実(1930~2018)が東京駅八重洲口で1964年に撮影したのは、東京-大阪間を開業したばかりの新幹線と、100号の自作絵画を両手に掲げて通勤者に見せる二人の画家・中村宏と立石紘一。彼らは「路上歩行展」を開催中だ。

平田実《「路上歩行展」と通勤者たち(中村宏・立石紘一作): 東京駅~京橋かいわい》1964年(プリント2016年)、東京ステーションギャラリー
平田実《「路上歩行展」と通勤者たち(中村宏・立石紘一作): 東京駅~京橋かいわい》1964年(プリント2016年)、東京ステーションギャラリー

 2011年5月、渋谷駅構内にある岡本太郎作の巨大壁画《明日の神話》に、芸術家集団Chim↑Pom(当時)(2005~)が原子力事故をテーマとした作品《LEVEL7feat「明日の神話」》(2011年、岡本太郎記念館)を無断設置し、翌日撤去された。本作も出展。
  
 立石大河亜(1941~98)こと立石紘一による油彩《香春岳対サント・ビクトワール山》(1992年、田川市美術館)は、福岡県田川市に生まれた画家の自伝的絵画。奇妙な煙と共に向かってくる蒸気機関車は、「SL人吉」としてJR 九州で運行され動態保存されている。

立石大河亞《香春岳対サント・ビクトワール山》1992年、田川市美術館
立石大河亞《香春岳対サント・ビクトワール山》1992年、田川市美術館

 日常的に利用し身近なものだが、「鉄道」とは何か? 鉄道美術は社会を鮮やかに写し出す。見応えのある展覧会だ。
  
  
【参考文献】
1)東京ステーションギャラリー 冨田章 田中晴子 柚花文 若山満大 半澤紀江 編集・執筆、羽鳥綾 編集:『鉄道と美術の150年』(展覧会図録)、左右社、2022年
2)東秀紀:『東京駅の建築家 辰野金吾伝』、講談社、2002年
  
執筆・見出し写真:細川いづみ(HOSOKAWA Fonte Idumi)
作品画像提供:東京ステーションギャラリー(明記のものを除く) 
(2022年11月)
※本文・図版とも無断引用・無断転載を禁じます。

鉄道と美術の150年
Art and Railway –150th Anniversary of Railway in Japan
  
【会期・会場】
2022年10月8日(土)~2023年1月9日(月) 東京ステーションギャラリー(東京都・千代田区)
  
※①②③の期間、前期・後期で一部作品の展示替えをいたします。
①:10月8日~11月6日 
②:11月8日~12月4日
③:12月6日~2023年1月9日 
前期:10月8日~11月20日
後期:11月22日~2023年1月9日
※詳細は公式サイトでご確認ください。
公式サイト:www.ejrcf.or.jp/gallery