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生誕150年 池上秀畝―高精細画人―

開催中〜2024/04/21

練馬区立美術館

東京都・練馬区

須藤玲子:NUNOの布づくり

開催中〜2024/05/06

水戸芸術館現代美術ギャラリー、広場

茨城県・水戸市

春の江戸絵画まつり ほとけの国の美術

開催中〜2024/05/06

府中市美術館

東京都・府中市

【特別展】花・flower・華 2024 ―奥村土牛の桜・福田平八郎の牡丹・梅原龍三郎のばら―

開催中〜2024/05/06

山種美術館

東京都・渋谷区

古代メキシコ -マヤ、アステカ、テオティワカン

開催中〜2024/05/06

国立国際美術館

大阪府・大阪市

小金沢健人×佐野繁次郎ドローイング/シネマ

開催中〜2024/05/06

神奈川県立近代美術館 鎌倉別館

神奈川県・鎌倉市

第5回「私の代表作」展

開催中〜2024/05/12

ホキ美術館

千葉県・千葉市

ライトアップ木島櫻谷 ― 四季連作大屏風と沁みる『生写し』

開催中〜2024/05/12

泉屋博古館東京

東京都・港区

イヴ・ネッツハマー ささめく葉は空気の言問い

開催中〜2024/05/12

宇都宮美術館

栃木県・宇都宮市

皇室のみやび―受け継ぐ美― 第3期「近世の御所を飾った品々」

開催中〜2024/05/12

皇居三の丸尚蔵館

東京都・千代田区

開館40周年記念 旧朝香宮邸を読み解く A to Z

開催中〜2024/05/12

東京都庭園美術館

東京都・港区

ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか? ——国立西洋美術館65年目の自問|現代美術家たちへの問いかけ

開催中〜2024/05/12

国立西洋美術館

東京都・台東区

国宝・燕子花図屏風 デザインの日本美術

開催中〜2024/05/12

根津美術館

東京都・港区

春陽会誕生100年 それぞれの闘い 岸田劉生、中川一政から岡鹿之助へ

開催中〜2024/05/12

長野県立美術館

長野県・長野市

モダン・タイムス・イン・パリ 1925 ― 機械時代のアートとデザイン

開催中〜2024/05/19

ポーラ美術館

神奈川県・足柄下郡箱根町

版画の青春 小野忠重と版画運動 ―激動の1930-40年代を版画に刻んだ若者たち―

開催中〜2024/05/19

町田市立国際版画美術館

東京都・町田市

HELLO! コレクション ZOZO×千葉県立美術館

開催中〜2024/05/19

千葉県立美術館

千葉県・千葉市

子の日図屏風と宮廷文化

開催中〜2024/05/19

遠山記念館

埼玉県・比企郡川島町

企画展《歌舞音曲鑑 北斎と楽しむ江戸の芸能》

開催中〜2024/05/26

すみだ北斎美術館

東京都・墨田区

百年後芸術祭 -内房総アートフェス-

開催中〜2024/05/26

芸術祭(市原市・木更津市・君津市・袖ケ浦市・富津市の内房総5市)

千葉県・市原市、木更津市、君津市、袖ケ浦市、富津市の内房総5市

特別展 雪舟伝説―「画聖(カリスマ)」の誕生―

開催中〜2024/05/26

京都国立博物館

京都府・京都市

月岡芳年 月百姿

開催中〜2024/05/26

太田記念美術館

東京都・渋谷区

金屏風の祭典 ——黄金の世界へようこそ

開催中〜2024/06/02

岡田美術館

神奈川県・箱根町

日本の山海

開催中〜2024/06/02

松岡美術館

東京都・港区

卒寿記念 人間国宝 鈴木藏の志野展

開催中〜2024/06/02

国立工芸館

石川県・金沢市

川瀬巴水 旅と郷愁の風景

開催中〜2024/06/02

八王子市夢美術館

東京都・八王子市

1950〜60年代の日本画―造形への挑戦

開催中〜2024/06/02

平塚市美術館

神奈川県・平塚市

遠距離現在 Universal / Remote

開催中〜2024/06/03

国立新美術館

東京都・港区

第8回横浜トリエンナーレ「野草:いま、ここで生きてる」

開催中〜2024/06/09

芸術祭(横浜美術館、旧第一銀行横浜支店、BankART KAIKO、クイーンズスクエア横浜、元町・中華街駅連絡通路)

神奈川県・横浜市

記憶:リメンブランス-現代写真・映像の表現から

開催中〜2024/06/09

東京都写真美術館

東京都・目黒区

BankART Life7「UrbanNesting:再び都市に棲む」

開催中〜2024/06/09

BankART Station

神奈川県・横浜市

企画展「北斎と感情」

開催中〜2024/06/09

北斎館

長野県・小布施町

名作展「大画面の奔流―川端龍子の『会場芸術』再考」

開催中〜2024/06/09

大田区立龍子記念館

東京都・大田区

特別展「法然と極楽浄土」

開催中〜2024/06/09

東京国立博物館

東京都・台東区

静嘉堂文庫竣工100年 特別展「画鬼 河鍋暁斎×鬼才 松浦武四郎」

開催中〜2024/06/09

静嘉堂@丸の内(静嘉堂文庫美術館)

東京都・千代田区

平野杏子展 – 生きるために描きつづけて

開催中〜2024/06/09

平塚市美術館

神奈川県・平塚市

空海 KŪKAI ―密教のルーツとマンダラ世界

開催中〜2024/06/09

奈良国立博物館

奈良県・奈良市

青山悟 刺繍少年フォーエバー

2024/04/20〜2024/06/09

目黒区美術館

東京都・目黒区

没後120年 エミール・ガレ展 奇想のガラス作家

開催中〜2024/06/09

渋谷区立松濤美術館

東京都・渋谷区

特別展「大哺乳類展3−わけてつなげて大行進」

開催中〜2024/06/16

国立科学博物館

東京都・台東区

茶の湯の美学 ―利休・織部・遠州の茶道具―

開催中〜2024/06/16

三井記念美術館

東京都・中央区

ベル・エポックー美しき時代 パリに集った芸術家たち ワイズマン&マイケル コレクションを中心に

2024/04/20〜2024/06/16

山梨県立美術館

山梨県・甲府市

サントリー美術館コレクション展 名品ときたま迷品

開催中〜2024/06/16

サントリー美術館

東京都・港区

昭和モダン×百段階段 ~東京モダンガールライフ~

開催中〜2024/06/16

ホテル雅叙園東京 東京都指定有形文化財 「百段階段」

東京都・目黒区

宇野亞喜良展 AQUIRAX UNO

開催中〜2024/06/16

東京オペラシティアートギャラリー

東京都・新宿区

板倉鼎・須美子展

開催中〜2024/06/16

千葉市美術館

千葉県・千葉市

高橋由一から黒田清輝へ ―明治洋画壇の世代交代劇―

2024/04/20〜2024/06/16

栃木県立美術館

栃木県・宇都宮市

ここに いても いい リトゥンアフターワーズ 山縣良和と綴るファッション表現のかすかな糸口

2024/04/27〜2024/06/16

アーツ前橋

群馬県・前橋市

“オモシロイフク”大図鑑

開催中〜2024/06/22

文化学園服飾博物館

東京都・渋谷区

「どうぶつ百景 江戸東京博物館コレクションより」展

2024/04/27〜2024/06/23

東京ステーションギャラリー

東京都・千代田区

令和6年度初夏展「殿さまのスケッチブック」

2024/04/27〜2024/06/23

永青文庫

東京都・文京区

シンフォニー・オブ・アート — イメージと素材の饗宴

2024/04/20〜2024/06/23

群馬県立館林美術館

群馬県・館林市

驚異の細密表現展 ―江戸・明治の工芸から現代アートまで―

2024/04/20〜2024/06/23

横須賀美術館

神奈川県・横須賀市

没後70年 戦争を越えて―写真家ロバート・キャパ、愛と共感の眼差し―

開催中〜2024/06/23

東京富士美術館

東京都・八王子市

カール・アンドレ 彫刻と詩、その間

開催中〜2024/06/30

DIC川村記念美術館

千葉県・佐倉市

特別企画展「熊谷守一美術館39周年展 守一、旅を描く。」

開催中〜2024/06/30

豊島区立 熊谷守一美術館

東京都・豊島区

民藝 MINGEI—美は暮らしのなかにある

2024/04/24〜2024/06/30

世田谷美術館

東京都・世田谷区

創刊50周年記念 花とゆめ展

2024/05/24〜2024/06/30

東京シティビュー(六本木ヒルズ森タワー52 階)

東京都・港区

KAGAYA 星空の世界 天空の贈り物

2024/05/01〜2024/07/01

そごう美術館

神奈川県・横浜市

三島喜美代―未来への記憶

2024/05/19〜2024/07/07

練馬区立美術館

東京都・練馬区

石岡瑛子 I デザイン

2024/04/27〜2024/07/07

茨城県近代美術館

茨城県・水戸市

Beautiful Japan 吉田初三郎の世界

2024/05/18〜2024/07/07

府中市美術館

東京都・府中市

ふたり 矢部太郎展

2024/04/24〜2024/07/07

PLAY! MUSEUM

東京都・立川市

MOTコレクション 歩く、赴く、移動する 1923→2020/Eye to Eye-見ること

開催中〜2024/07/07

東京都現代美術館

東京都・江東区

ホー・ツーニェン エージェントのA 

開催中〜2024/07/07

東京都現代美術館

東京都・江東区

Tokyo Contemporary Art Award 2022-2024 受賞記念展

開催中〜2024/07/07

東京都現代美術館

東京都・江東区

【特別展】犬派?猫派? ―俵屋宗達、竹内栖鳳、藤田嗣治から山口晃まで―

2024/05/12〜2024/07/07

山種美術館

東京都・渋谷区

TOPコレクション 時間旅行 ― 千二百箇月の過去とかんずる方角から

開催中〜2024/07/07

東京都写真美術館

東京都・目黒区

企画展 歌と物語の絵 ―雅やかなやまと絵の世界

2024/06/01〜2024/07/21

泉屋博古館東京

東京都・港区

藤田嗣治 エコール・ド・パリの時代 1918~1928年

開催中〜2024/07/23

軽井沢安東美術館

長野県・軽井沢町

「石川九楊大全」

2024/06/08〜2024/07/28

上野の森美術館

東京都・台東区

国芳の団扇絵 ―猫と歌舞伎とチャキチャキ娘

2024/06/01〜2024/07/28

太田記念美術館

東京都・渋谷区

企画展「未来のかけら 科学とデザインの実験室」

開催中〜2024/08/12

21_21 DESIGN SIGHT ギャラリー1&2

東京都・港区

生誕140年 YUMEJI展 大正浪漫と新しい世界

2024/06/01〜2024/08/25

東京都庭園美術館

東京都・港区

特別展「北斎 グレートウェーブ・インパクト —神奈川沖浪 裏の誕生と軌跡—」

2024/06/18〜2024/08/25

すみだ北斎美術館

東京都・墨田区

TRIO パリ・東京・大阪 モダンアート・コレクション

2024/05/21〜2024/08/25

東京国立近代美術館

東京都・千代田区

内藤コレクション 写本 — いとも優雅なる中世の小宇宙

2024/06/11〜2024/08/25

国立西洋美術館

東京都・台東区

企画展「旅するピーナッツ。」

開催中〜2024/09/01

スヌーピーミュージアム

東京都・町田市

シアスター・ゲイツ展:アフロ民藝

2024/04/24〜2024/09/01

森美術館

東京都・港区

AOMORI GOKAN アートフェス 2024 「つらなりのはらっぱ」

開催中〜2024/09/01

アートフェス(芸術祭)( 青森県立美術館、青森公立大学 国際芸術センター青森、弘前れんが倉庫美術館、八戸市美術館、十和田市現代美術館)

青森県

伊藤潤二展 誘惑

2024/04/27〜2024/09/01

世田谷文学館

東京都・世田谷区

音を観る ―変化観音と観音変化身―

2024/04/24〜2024/09/01

半蔵門ミュージアム

東京都・千代田区

アートキャンプ白州 2024 Camp and Art in Each Heart!

2024/07/06〜2024/09/01

山梨県立美術館

山梨県・甲府市

エドワード・ゴーリーを巡る旅

2024/07/06〜2024/09/01

横須賀美術館

神奈川県・横須賀市

カルダー:そよぐ、感じる、日本

2024/05/30〜2024/09/06

麻布台ヒルズ ギャラリー

東京都・港区

日本のまんなかでアートをさけんでみる

開催中〜2024/09/08

原美術館ARC

群馬県・渋川市

特別展「神護寺―空海と真言密教のはじまり」

2024/07/17〜2024/09/08

東京国立博物館

東京都・台東区

開館20周年記念 山梨放送開局70周年 平山郁夫 -仏教伝来と旅の軌跡

開催中〜2024/09/09

平山郁夫シルクロード美術館

山梨県・北杜市

フィロス・コレクション ロートレック展 時をつかむ線

2024/06/22〜2024/09/23

SOMPO美術館

東京都・新宿区

空想旅行案内人 ジャン=ミッシェル・フォロン

2024/07/13〜2024/09/23

東京ステーションギャラリー

東京都・千代田区

吉田克朗展 ものに、風景に、世界に触れる

2024/07/13〜2024/09/23

埼玉県立近代美術館

埼玉県・さいたま市

印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵

2024/07/06〜2024/09/29

東京富士美術館

東京都・八王子市

梅津庸一 クリスタルパレス

2024/06/04〜2024/10/06

国立国際美術館

大阪府・大阪市

大地に耳をすます 気配と手ざわり

2024/07/20〜2024/10/09

東京都美術館

東京都・台東区

レガシー ―美を受け継ぐ モディリアーニ、シャガール、ピカソ、フジタ

2024/06/18〜2024/10/13

松岡美術館

東京都・港区

企画展「作家の視線― 過去と現在、そして…」

2024/05/23〜2024/11/11

ホキ美術館

千葉県・千葉市

Exhibitions

特別展 京都-洛中洛外図と障壁画の美

輝きに満ちた400年前の京都を体感する。
東京国立博物館で限定48日間。

■「見るのではない」日本美術がいざなう京都への旅
京都には国内外から年間5000万人が観光に訪れる。本展はその魅力あふれる京の都に入り込み直接感じてみる、という画期的で優れた展覧会である。時代は天下人が覇を唱えた16~17世紀。つまり織田信長、豊臣秀吉によって戦乱の世が終結し、徳川家康が江戸幕府を開いていく頃だ。まず第1部で洛中洛外図屏風の傑作によって当時の京都を俯瞰し、第2部で京都御所、龍安寺、二条城という京都の三名所に降り立ってダイナミックな障壁画に囲まれてみる、という二部構成の仕掛けである。
果たして、黄金の名品群に身をおいて会場を回ってみると、本展の主人公である、栄華を誇った「京都の姿」を楽しみながら捉えることができた、との実感をもった。それは、「見るのではない」日本美術への接し方を感得することで可能になったのだ。
■洛中洛外図:絵に入り込んで動き回る
「洛中洛外図」とは、京都の市中(洛中)と郊外(洛外)の景観や人々の暮らしぶりを四季の移ろいのなかで鳥瞰的に描いた風俗画だ。室町から江戸時代にかけて数多く制作され100点ほどが知られるが、今回は国宝・重要文化財の洛中洛外図屏風7作品がすべて出品される(すべて六曲一双)(※展示替えあり)。全部揃うのは初めてとのことだ。なかでも特に名高いのが、国宝《上杉本》(※前期展示)と重文《舟木本》(※全期間展示)である。
さて、《洛中洛外図 舟木本》(東京国立博物館所蔵)を見てみよう。金雲たなびく間にあまたの京都名所や建物、そして2700人を超えるという大勢の人々が描かれている。目を近づけてみる。驚異的な面白さだ。たとえば右隻中央の五条大橋。橋の上では、着物もお洒落な花見帰りの集団が傘を掲げ桜の花を手にして身をくねらせ踊りながら進んでくる。大変な騒ぎ。橋の下では鴨川を上る2隻の舟を漕ぐ船頭たちが驚いた顔で彼らを見上げている。左隻に目をやると、こちらは祇園祭。武者姿の者が担ぐ巨大な幌の赤、緑、白、橙色の色の鮮やかさが際立つ。近くには南蛮人の姿。街のあちこちで、公家、武士、僧、庶民ら人々の織りなす営みが実に表情豊かに展開する。彼らは3cmくらいの大きさだが、それぞれが負う人生をも想像されるような卓抜の描写力。喧噪の様子も話し声も響いてくる。眺めているうちに夢中になり、屏風絵のなかに入り込んで動き回っている自分を発見した。このような絵への接し方があったのだと開眼。建物としては、屏風の右端に秀吉が建造した大仏殿、左端に家康が築いた二条城が大きく描かれているが、両者を対峙させたといわれる。この屏風を描いたのは浮世絵の創始者 岩佐又兵衛(1578~1650)だ。近年、学会で意見の一致をみた。17世紀の制作。
舟木本の部分詳細の拡大映像は、4×4mの大スクリーン4つの超高細映像(4K)でも見ることができる。これほどに極端に拡大してもまったくぶれない細密原画の力技に脱帽した。
洛中洛外図屏風の白眉とされる国宝の《洛中洛外図屏風 上杉本》(山形・米沢市上杉博物館所蔵)も圧巻だ。華やかな色彩や金雲の間から覗く建物の鋭角の屋根の造形リズムが印象的である。人物は舟木本よりかなり小さく、その多彩な細密描写に舌を巻く。人々のすっきりした穏やかな表情がよい。愛敬がある。優美で品格のある屏風である。16世紀に室町幕府13代将軍足利義輝が、若き狩野永徳(1543~90)に描かせ、義輝没後に織田信長が上杉謙信に贈ったとされるもの。画中の武家行列で輿に乗るのが謙信だとの説がある。上杉本では2500人を超える人々が登場し、235か所もの名所が描かれているという。
洛中洛外図は当時の京都の姿でもあり、同時に注文主や絵師の描く都の理想でもあった。よって支配者の眼差しが色濃く反映されている。
ふと、中国の北宋時代(12世紀)の神品、《清明上河図巻》(張択端 筆)を思い出した。昨年2012年初めに東京国立博物館で展示されたものだ。《清明上河図巻》は日本の洛中洛外図の源流なのだろうか。
■障壁画:空間を造り、直接感じさせる
第2部に入ると、洛中洛外図にも描かれていた京都の名所3か所で障壁画の美を体験することになる。王権(宮廷)、社寺、武家それぞれの権威の象徴といえる場所だ。
第一は京都御所。代々天皇が住み、執務した場所だ。理想とされる神的存在としての中国の仙人が描かれた《群仙図襖》(重文)は狩野永徳の作。現存最古の御所の障壁画として貴重な作品。また中国の賢人聖人32人が居並ぶ様が《賢聖障子絵》(重文)は、御所の正殿である紫宸殿に永徳の次男 狩野孝信が描いた。
当時の御所の様子を知ることができる。
第二の場所は、石庭で有名な龍安寺だ。室町幕府の管領、守護大名だった細川勝元が15世紀半ばに創建した名刹だが、堂内の方丈襖絵は明治の廃仏毀釈などによって散逸してしまった。近年その一部の《群仙図襖》が寺に戻った。本展ではそれに加えてアメリカのメトロポリタン美術館、シアトル美術館から里帰りした《列子図襖》《琴棋書画図襖》が一堂に会し、仏教の荘厳な禅空間が再現された。龍安寺石庭の美しい四季の4K動画映像がほぼ原寸大で見られるのも嬉しい。
そして第三番目に降り立つのは二条城である。見どころの多い本展のもう一つのハイライトであろう。徳川家康が慶長8年(1603)に築城した二条城は、15代徳川慶喜が大政奉還を行った城でもあり、江戸幕府の開始と最後を飾った徳川という武家の威光を示す建物だ。
本展では、京都の現地では取り外されている「二の丸御殿」の「黒書院 一の間」「黒書院 二の間」と「大広間 四の間」の全84面の障壁画(すべて重文)と空間を再現した。金地に描かれた障壁画は豪華絢爛の極地である。一の間は将軍の間、二の間は家臣の間で、続きの間となっている。将軍が背にするのは雪をかぶった老松の絵。そして全体には桜を主題とする《桜花雉子図》《桜花図》に飾られた優美な空間。黒書院では一の間が、二の間よりやや高くなっているため、障壁画がそのように見えるように展示方法に細かな工夫が凝らされた。そしていよいよ大広間 四の間へ。ここは二の丸御殿で最も格式の高い部屋で大名たちが揃って将軍に謁見する場所である。《松鷹図》の重厚な躍動感に圧倒された。巨大な松の画面を突き破るように伸びる枝振りと眼光鋭い鷹の存在感。永徳の孫の狩野探幽(1602~74)の筆による。壁や襖に描かれた障壁画に囲まれると、絵によって緊張したり、和んだりもして、絵とは飾るとともに空間を造るものであることを直接、身をもって感じることができた。
■屏風絵と障壁画のルール
屏風絵や障壁画には時間などについてのルールがある。図録の巻頭の総論に松嶋雅人氏が詳述しておられるので読んでほしい。要点を少しまとめると、まず屏風絵では絵巻と同様に右から左に時間や季節が進む。また上や右に描かれたものが、下や左のものよりも格が高いとされる、など。障壁画では四方に絵が描かれた場合、北が冬、東が春、南が夏、西が秋というように方位と季節が対応することが多い。つまり障壁画での時間の流れは屏風絵とは異なり、時計廻りとなる。
このような決め事を知ると、絵のなかに季節の風物を探すなどもでき、絵との会話がしやすくなるだろう。
体感するものである日本の絵のなんという面白さ。「京都」展はそのことをなんとかして知ってほしいとの、松嶋氏ら展覧会企画者の熱意が強く伝わってくる展覧会である。今秋は、東京国立博物館での京都旅行に出かけてみてはどうだろう。ゆっくり時間をとって。できれば一眼鏡を携帯するとよい。楽しみがなお増すことだろう。
執筆:HOSOKAWA Fonte Idumi
●場所:東京国立博物館 平成館
●電話:03-5777-8600(ハローダイヤル)
●期間:2013年10月8日~12月1日
(前期展示:10月8日~11月4日)(後期展示:11月6日~12月1日)

2013年10月15日