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生誕150年 池上秀畝―高精細画人―

開催中〜2024/04/21

練馬区立美術館

東京都・練馬区

須藤玲子:NUNOの布づくり

開催中〜2024/05/06

水戸芸術館現代美術ギャラリー、広場

茨城県・水戸市

春の江戸絵画まつり ほとけの国の美術

開催中〜2024/05/06

府中市美術館

東京都・府中市

【特別展】花・flower・華 2024 ―奥村土牛の桜・福田平八郎の牡丹・梅原龍三郎のばら―

開催中〜2024/05/06

山種美術館

東京都・渋谷区

古代メキシコ -マヤ、アステカ、テオティワカン

開催中〜2024/05/06

国立国際美術館

大阪府・大阪市

小金沢健人×佐野繁次郎ドローイング/シネマ

開催中〜2024/05/06

神奈川県立近代美術館 鎌倉別館

神奈川県・鎌倉市

第5回「私の代表作」展

開催中〜2024/05/12

ホキ美術館

千葉県・千葉市

ライトアップ木島櫻谷 ― 四季連作大屏風と沁みる『生写し』

開催中〜2024/05/12

泉屋博古館東京

東京都・港区

イヴ・ネッツハマー ささめく葉は空気の言問い

開催中〜2024/05/12

宇都宮美術館

栃木県・宇都宮市

皇室のみやび―受け継ぐ美― 第3期「近世の御所を飾った品々」

開催中〜2024/05/12

皇居三の丸尚蔵館

東京都・千代田区

開館40周年記念 旧朝香宮邸を読み解く A to Z

開催中〜2024/05/12

東京都庭園美術館

東京都・港区

ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか? ——国立西洋美術館65年目の自問|現代美術家たちへの問いかけ

開催中〜2024/05/12

国立西洋美術館

東京都・台東区

国宝・燕子花図屏風 デザインの日本美術

開催中〜2024/05/12

根津美術館

東京都・港区

春陽会誕生100年 それぞれの闘い 岸田劉生、中川一政から岡鹿之助へ

開催中〜2024/05/12

長野県立美術館

長野県・長野市

モダン・タイムス・イン・パリ 1925 ― 機械時代のアートとデザイン

開催中〜2024/05/19

ポーラ美術館

神奈川県・足柄下郡箱根町

版画の青春 小野忠重と版画運動 ―激動の1930-40年代を版画に刻んだ若者たち―

開催中〜2024/05/19

町田市立国際版画美術館

東京都・町田市

HELLO! コレクション ZOZO×千葉県立美術館

開催中〜2024/05/19

千葉県立美術館

千葉県・千葉市

子の日図屏風と宮廷文化

開催中〜2024/05/19

遠山記念館

埼玉県・比企郡川島町

企画展《歌舞音曲鑑 北斎と楽しむ江戸の芸能》

開催中〜2024/05/26

すみだ北斎美術館

東京都・墨田区

百年後芸術祭 -内房総アートフェス-

開催中〜2024/05/26

芸術祭(市原市・木更津市・君津市・袖ケ浦市・富津市の内房総5市)

千葉県・市原市、木更津市、君津市、袖ケ浦市、富津市の内房総5市

特別展 雪舟伝説―「画聖(カリスマ)」の誕生―

開催中〜2024/05/26

京都国立博物館

京都府・京都市

月岡芳年 月百姿

開催中〜2024/05/26

太田記念美術館

東京都・渋谷区

金屏風の祭典 ——黄金の世界へようこそ

開催中〜2024/06/02

岡田美術館

神奈川県・箱根町

日本の山海

開催中〜2024/06/02

松岡美術館

東京都・港区

卒寿記念 人間国宝 鈴木藏の志野展

開催中〜2024/06/02

国立工芸館

石川県・金沢市

川瀬巴水 旅と郷愁の風景

開催中〜2024/06/02

八王子市夢美術館

東京都・八王子市

1950〜60年代の日本画―造形への挑戦

開催中〜2024/06/02

平塚市美術館

神奈川県・平塚市

遠距離現在 Universal / Remote

開催中〜2024/06/03

国立新美術館

東京都・港区

第8回横浜トリエンナーレ「野草:いま、ここで生きてる」

開催中〜2024/06/09

芸術祭(横浜美術館、旧第一銀行横浜支店、BankART KAIKO、クイーンズスクエア横浜、元町・中華街駅連絡通路)

神奈川県・横浜市

記憶:リメンブランス-現代写真・映像の表現から

開催中〜2024/06/09

東京都写真美術館

東京都・目黒区

BankART Life7「UrbanNesting:再び都市に棲む」

開催中〜2024/06/09

BankART Station

神奈川県・横浜市

企画展「北斎と感情」

開催中〜2024/06/09

北斎館

長野県・小布施町

名作展「大画面の奔流―川端龍子の『会場芸術』再考」

開催中〜2024/06/09

大田区立龍子記念館

東京都・大田区

特別展「法然と極楽浄土」

開催中〜2024/06/09

東京国立博物館

東京都・台東区

静嘉堂文庫竣工100年 特別展「画鬼 河鍋暁斎×鬼才 松浦武四郎」

開催中〜2024/06/09

静嘉堂@丸の内(静嘉堂文庫美術館)

東京都・千代田区

平野杏子展 – 生きるために描きつづけて

開催中〜2024/06/09

平塚市美術館

神奈川県・平塚市

空海 KŪKAI ―密教のルーツとマンダラ世界

開催中〜2024/06/09

奈良国立博物館

奈良県・奈良市

青山悟 刺繍少年フォーエバー

2024/04/20〜2024/06/09

目黒区美術館

東京都・目黒区

没後120年 エミール・ガレ展 奇想のガラス作家

開催中〜2024/06/09

渋谷区立松濤美術館

東京都・渋谷区

特別展「大哺乳類展3−わけてつなげて大行進」

開催中〜2024/06/16

国立科学博物館

東京都・台東区

茶の湯の美学 ―利休・織部・遠州の茶道具―

開催中〜2024/06/16

三井記念美術館

東京都・中央区

ベル・エポックー美しき時代 パリに集った芸術家たち ワイズマン&マイケル コレクションを中心に

2024/04/20〜2024/06/16

山梨県立美術館

山梨県・甲府市

サントリー美術館コレクション展 名品ときたま迷品

開催中〜2024/06/16

サントリー美術館

東京都・港区

昭和モダン×百段階段 ~東京モダンガールライフ~

開催中〜2024/06/16

ホテル雅叙園東京 東京都指定有形文化財 「百段階段」

東京都・目黒区

宇野亞喜良展 AQUIRAX UNO

開催中〜2024/06/16

東京オペラシティアートギャラリー

東京都・新宿区

板倉鼎・須美子展

開催中〜2024/06/16

千葉市美術館

千葉県・千葉市

高橋由一から黒田清輝へ ―明治洋画壇の世代交代劇―

2024/04/20〜2024/06/16

栃木県立美術館

栃木県・宇都宮市

ここに いても いい リトゥンアフターワーズ 山縣良和と綴るファッション表現のかすかな糸口

2024/04/27〜2024/06/16

アーツ前橋

群馬県・前橋市

“オモシロイフク”大図鑑

開催中〜2024/06/22

文化学園服飾博物館

東京都・渋谷区

「どうぶつ百景 江戸東京博物館コレクションより」展

2024/04/27〜2024/06/23

東京ステーションギャラリー

東京都・千代田区

令和6年度初夏展「殿さまのスケッチブック」

2024/04/27〜2024/06/23

永青文庫

東京都・文京区

シンフォニー・オブ・アート — イメージと素材の饗宴

2024/04/20〜2024/06/23

群馬県立館林美術館

群馬県・館林市

驚異の細密表現展 ―江戸・明治の工芸から現代アートまで―

2024/04/20〜2024/06/23

横須賀美術館

神奈川県・横須賀市

没後70年 戦争を越えて―写真家ロバート・キャパ、愛と共感の眼差し―

開催中〜2024/06/23

東京富士美術館

東京都・八王子市

カール・アンドレ 彫刻と詩、その間

開催中〜2024/06/30

DIC川村記念美術館

千葉県・佐倉市

特別企画展「熊谷守一美術館39周年展 守一、旅を描く。」

開催中〜2024/06/30

豊島区立 熊谷守一美術館

東京都・豊島区

民藝 MINGEI—美は暮らしのなかにある

2024/04/24〜2024/06/30

世田谷美術館

東京都・世田谷区

創刊50周年記念 花とゆめ展

2024/05/24〜2024/06/30

東京シティビュー(六本木ヒルズ森タワー52 階)

東京都・港区

KAGAYA 星空の世界 天空の贈り物

2024/05/01〜2024/07/01

そごう美術館

神奈川県・横浜市

三島喜美代―未来への記憶

2024/05/19〜2024/07/07

練馬区立美術館

東京都・練馬区

石岡瑛子 I デザイン

2024/04/27〜2024/07/07

茨城県近代美術館

茨城県・水戸市

Beautiful Japan 吉田初三郎の世界

2024/05/18〜2024/07/07

府中市美術館

東京都・府中市

ふたり 矢部太郎展

2024/04/24〜2024/07/07

PLAY! MUSEUM

東京都・立川市

MOTコレクション 歩く、赴く、移動する 1923→2020/Eye to Eye-見ること

開催中〜2024/07/07

東京都現代美術館

東京都・江東区

ホー・ツーニェン エージェントのA 

開催中〜2024/07/07

東京都現代美術館

東京都・江東区

Tokyo Contemporary Art Award 2022-2024 受賞記念展

開催中〜2024/07/07

東京都現代美術館

東京都・江東区

【特別展】犬派?猫派? ―俵屋宗達、竹内栖鳳、藤田嗣治から山口晃まで―

2024/05/12〜2024/07/07

山種美術館

東京都・渋谷区

TOPコレクション 時間旅行 ― 千二百箇月の過去とかんずる方角から

開催中〜2024/07/07

東京都写真美術館

東京都・目黒区

企画展 歌と物語の絵 ―雅やかなやまと絵の世界

2024/06/01〜2024/07/21

泉屋博古館東京

東京都・港区

藤田嗣治 エコール・ド・パリの時代 1918~1928年

開催中〜2024/07/23

軽井沢安東美術館

長野県・軽井沢町

「石川九楊大全」

2024/06/08〜2024/07/28

上野の森美術館

東京都・台東区

国芳の団扇絵 ―猫と歌舞伎とチャキチャキ娘

2024/06/01〜2024/07/28

太田記念美術館

東京都・渋谷区

企画展「未来のかけら 科学とデザインの実験室」

開催中〜2024/08/12

21_21 DESIGN SIGHT ギャラリー1&2

東京都・港区

生誕140年 YUMEJI展 大正浪漫と新しい世界

2024/06/01〜2024/08/25

東京都庭園美術館

東京都・港区

特別展「北斎 グレートウェーブ・インパクト —神奈川沖浪 裏の誕生と軌跡—」

2024/06/18〜2024/08/25

すみだ北斎美術館

東京都・墨田区

TRIO パリ・東京・大阪 モダンアート・コレクション

2024/05/21〜2024/08/25

東京国立近代美術館

東京都・千代田区

内藤コレクション 写本 — いとも優雅なる中世の小宇宙

2024/06/11〜2024/08/25

国立西洋美術館

東京都・台東区

企画展「旅するピーナッツ。」

開催中〜2024/09/01

スヌーピーミュージアム

東京都・町田市

シアスター・ゲイツ展:アフロ民藝

2024/04/24〜2024/09/01

森美術館

東京都・港区

AOMORI GOKAN アートフェス 2024 「つらなりのはらっぱ」

開催中〜2024/09/01

アートフェス(芸術祭)( 青森県立美術館、青森公立大学 国際芸術センター青森、弘前れんが倉庫美術館、八戸市美術館、十和田市現代美術館)

青森県

伊藤潤二展 誘惑

2024/04/27〜2024/09/01

世田谷文学館

東京都・世田谷区

音を観る ―変化観音と観音変化身―

2024/04/24〜2024/09/01

半蔵門ミュージアム

東京都・千代田区

アートキャンプ白州 2024 Camp and Art in Each Heart!

2024/07/06〜2024/09/01

山梨県立美術館

山梨県・甲府市

エドワード・ゴーリーを巡る旅

2024/07/06〜2024/09/01

横須賀美術館

神奈川県・横須賀市

カルダー:そよぐ、感じる、日本

2024/05/30〜2024/09/06

麻布台ヒルズ ギャラリー

東京都・港区

日本のまんなかでアートをさけんでみる

開催中〜2024/09/08

原美術館ARC

群馬県・渋川市

特別展「神護寺―空海と真言密教のはじまり」

2024/07/17〜2024/09/08

東京国立博物館

東京都・台東区

開館20周年記念 山梨放送開局70周年 平山郁夫 -仏教伝来と旅の軌跡

開催中〜2024/09/09

平山郁夫シルクロード美術館

山梨県・北杜市

フィロス・コレクション ロートレック展 時をつかむ線

2024/06/22〜2024/09/23

SOMPO美術館

東京都・新宿区

空想旅行案内人 ジャン=ミッシェル・フォロン

2024/07/13〜2024/09/23

東京ステーションギャラリー

東京都・千代田区

吉田克朗展 ものに、風景に、世界に触れる

2024/07/13〜2024/09/23

埼玉県立近代美術館

埼玉県・さいたま市

印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵

2024/07/06〜2024/09/29

東京富士美術館

東京都・八王子市

梅津庸一 クリスタルパレス

2024/06/04〜2024/10/06

国立国際美術館

大阪府・大阪市

大地に耳をすます 気配と手ざわり

2024/07/20〜2024/10/09

東京都美術館

東京都・台東区

レガシー ―美を受け継ぐ モディリアーニ、シャガール、ピカソ、フジタ

2024/06/18〜2024/10/13

松岡美術館

東京都・港区

企画展「作家の視線― 過去と現在、そして…」

2024/05/23〜2024/11/11

ホキ美術館

千葉県・千葉市

Exhibitions

クラーナハ展 ――500年後の誘惑

刺激的なクラーナハの世界。挑戦的な展覧会構成で紹介。
  ■ドイツ・ルネサンスを代表する画家クラーナハを、広い視座でとらえる
  ルカス・クラーナハ(父)(1472~1553年)は、アルブレヒト・デュ―ラー(1471~1528年)と共にドイツ・ルネサンスを代表する画家だ。クラーナハの描く華奢で妖艶な女性像は独特の熱を放ち、観る者を刺激し惹きつける。一方、マルティン・ルター(1483~1546年)の肖像画の油彩板画や版画を大量に制作し、宗教改革の成功に貢献したことでも知られる。1517年の宗教改革からちょうど500年を経たいま、日本で初めてのクラーナハの大回顧展が開催中だ。本展の企画は、ウィーン美術史美術館ドイツ絵画担当学芸員グイド・メスリング氏、国立西洋美術館研究員の新藤淳氏、及び国立国際美術館研究員の福元崇志氏による。クラーナハは近現代の芸術家や文学者に大きな影響を与えたが、本展ではそれら後世の作品を並置するという画期的な構成をとり、広い視座でクラーナハの全体像に迫る。ウィーン美術史美術館を初め、世界各地に所蔵されるクラーナハの作品約60点、関連作品を含め総数120点を展示。輸送困難な板絵も多い。様々な意味で貴重な展覧会である。東京の国立西洋美術館と大阪の国立国際美術館を巡回。
 
  ■展覧会構成  
  展覧会構成は、次の六つの章から成る。
  1.蛇の紋章とともに―宮廷画家としてのクラーナハ/2.時代の相貌―肖像画家としてのクラーナハ/3.グラフィズムの実験―版画家としてのクラ―ナハ/4.時を超えるアンビヴァレンス―裸体表現の諸相/5.誘惑する絵―「女のちから」というテーマ系/6.宗教改革の「顔」たち―ルターを超えて
  どのような画家なのだろう。会場をたどってみよう。
 
  ■聖母子などの宗教画 
  聖家族と闊達な大勢の天使たちとの交流が温かく描かれるのは、クラーナハ初期の祭壇画《天使に囲まれた聖家族》及び《聖母の教育》(〈「聖母伝」を表わした祭壇画の左翼パネル及び同、右翼パネル〉、1510/12年頃、アンハルト絵画館、デッサウ)(注★作品表記で作者名がないものは全てルカス・クラーナハ(父))である。鬱蒼とした森などの自然描写も溌剌としている。《ブドウを持った聖母》(1509/10年頃、ティッセン=ボルミネッサ美術館、マドリード)も背景が光溢れる緑の風景だ。聖母が優美である。しかしその後に描かれた《聖母子と幼き洗礼者ヨハネ》(1537年以降、チロル州立博物館フェルディナンデウム、インスブルック)では描法の変化が見られ、背景が黒一色となり構成も簡潔になる。愛らしい幼子を抱いた長い巻き毛の聖母が、左に首を傾け優しい眼差しで観者を見つめる。
  本作の聖母は、表情は全く違うが顔の形や髪の毛などが次に述べるユディトと酷似しているようだ。宗教改革後も聖母子像は描かれ、カトリック信者に渡ったとされる。なおルターは、聖母子や聖人そのものが救済の力を分与されるという考えを問題視したが、宗教画を否定したのではなく、自身もクラーナハの聖母像を所持した。
  ■強靭な美しさの≪ホロフェルネスの首を持つユディト≫ 
  本展で最も注目される作品の一つ、《ホロフェルネスの首を持つユディト》(1525/30年頃、ウィーン美術史美術館)は、ワニス層、広範囲の加筆と補彩の除去など3年にわたる修復を経て初めて公開された。漆黒の背景に赤系の華麗な衣装をまとった女性が輝やくようだ。装身具や大きな羽根帽子も豪華。宮廷女性の肖像画にも見えるが、右手に刀を持ち、左手で斬られた男の首の髪の毛を抑えるという恐ろしい場面だ。金髪の巻き毛の卵形の美しい顔と、観者に向けた無感情の眼差しが、作品の緊張感を増す。この女性は『旧約聖書』外典のユディトである。ユダヤの敵将アッシリアのホロフェルネスにとりいって斬首し、ユダヤの民を救ったヒロインだ。本作には情欲や高慢に対する正義という教訓的な意味や、当時の政治的な意味を込めたといわれる。しかし、斬首後、微動だにせずこちらを直視するユディトのなんと強靭なことか。
  本作の近くに、名画に自身が入り込む作品を制作してきた現代美術家の森村泰昌(1951年~)による《Mother(Judith Ⅰ)》(1991年、東京都写真美術館)が展示されている。森村がユディトとホロフェルネスの二人を演じた巨大サイズの画面は、別種の強烈さを孕む。
  ■刺激的な女性裸体像≪ヴィーナス≫と≪ルクレティア≫ 
  古代ギリシャ神話の愛欲の女神を描く《ヴィーナス》(1532年、シュテーデル美術館、フランクフルト)と、古代ローマの物語における貞節な女性を描く《ルクレティア》(1532年、ウィーン造形芸術アカデミー)の二作は、著しく類似する。小ぶりな作品サイズも同寸法。黒色の背景に痩身をややくねらせ、裸身を強調する透明なベールをまとい、小石の散らばる地面に立つ女性の全身像。優雅でありながら奇妙な官能性を放つ。画題はルネサンスの他の画家と同様の古代からの参照であるが、身体表現はデュ―ラーが標榜したイタリア・ルネサンスの人体造形とは異なり、中世以来の形を継承。構図は全面漆黒の浅い奥行きに裸体像だけを配するシンプルなもの。両作品は、人気を博したクラーナハによる女性裸体像の代表作であり典型例だ。これらは王侯貴族の私的な美術蒐集室に収められたとされる。
  誘惑と警告が共存する二律背反。クラーナハの革新的な女性像は、それまでの画家が成しえなかった特異な魅惑を放ち、後世の芸術家たちをも夢中にさせた。クラーナハは、アルプス以北で初めて等身大の裸体像を描いた画家だ。それは1509年に制作された油彩画《ヴィーナスとキューピッド》(エルミタージュ美術館)(※本展に出品無し)であり、のちに有名になる。20世紀の天才パブロ・ピカソ(1881~1973年)もクラーナハに魅せられ、この油彩画とそれに先立つ木版画とをイメージソースとしたリトグラフ連作を制作している。本展ではピカソによる《ヴィーナスとキューピッド(クラーナハにならって)Ⅰ》(1949年、横浜美術館)などの連作も出品。また、ダダイスムのマルセル・デュシャン(1887~1968年)がクラーナハ作品に喚起されて行った活動や、エッチングも紹介されている。
  ■ルターの肖像画/ルター翻訳『新約聖書(9月聖書)』挿絵:宗教改革への貢献 
  1517年、神学者で修道士のルターはヴィッテンブルク聖堂の扉に『95ヵ条の論題』を打ち付けた。それは、ローマ教皇レオ10世がサン・ピエトロ大聖堂改築のために多く販売した贖宥状に抗議し、ローマ教皇の腐敗を非難し、人は信仰のみによって救われることを唱えるものだ。宗教改革の始まりである。肖像画家の名手として同時代の皇帝や選帝侯の肖像画で名を馳せたクラーナハだが、1520年以降には、親交のあったルターの肖像画を量産し、宗教改革者ルターのイメージを拡散させ、これが視覚的プロパガンダとして機能した。《マルティン・ルターとカタリナ・フォン・ボラ≫(1529年、ウフィツィ美術館、フィレンツェ)は、青地背景に堂々としたルターと、堅実そうな容貌の妻の半身像を描いた二連画。本作は結婚した市民としてのルターを描くことで修道士は結婚が許されることも示す。
  ルターは『新約聖書』のドイツ語翻訳と出版を行い、それは彼の最大の功績の一つとされる。クラーナハとその工房では、挿絵を木版画で手掛け、印刷を手配した。会場で『新約聖書(9月聖書)』(マルティン・ルター翻訳、ルカス・クラーナハ(父)およびとその工房の木版画、1522年9月刊、広島経済大学)を見ることができる。
  ■ルカス・クラーナハ(父)の生涯
  ルカス・クラーナハ(父)を、「(父)」を入れて表記するのは、同名の画家の次男がいるためである。1472年、クラーナハは神聖ローマ帝国内のクローナハ(現在のドイツ、バイエルン州)に生れた。1500年頃に同帝国の中心都市ウィーンで人文学者たちと交流するなかで、画家として頭角を現わす。1505年、ザクセン選帝侯により北ドイツのヴィッテンベルクに宮廷画家として招聘され、その後50年もの長期間、三代の選帝侯に仕え、祭壇画、肖像画、裸体画など傑出した作品群で名声を得た。1508年にフリードリヒ賢明公から有翼の蛇の紋章を授けられ、クラーナハはこれを作品に付し、署名と商標として機能させる。また3人のザクセン選帝侯はヴィッテンベルクで開始された宗教改革を庇護し展開させた。
  同時代の学者でヴィッテンベルク初代学長クリストフ・ショイルルはクラーナハを「素速い画家」と称賛した。クラーナハは自ら確立した典雅で流麗な絵画様式を基本として、二人の息子も所属する大工房で、版画だけでなく板画も効率的に集団制作できるシステムを創出し、作品を量産し、多くの注文に応じたのだ。作品は一枚として同じものはなく、高品質を保つ。総数は5,000点ともいわれる。彼は市長を3度務め、印刷所も経営し、画家としても企業家としても成功を遂げた。クラーナハは宗教改革に大きな役割を果たしたが、一方でルターと対立したアルブレヒト・フォン・ブランデンブルグ枢機卿やカトリック信者からの発注にも応じた。1553年、81歳のクラーナハはヴァイマールで生涯を終えた。
  本展は、様々に「イメージの連鎖」がからみあう興味深い展示空間となっている。展覧会企画者の一人である新藤氏は開幕に先立つプレス発表会で、「クラーナハのオリジナル作品と、後世の作家の読み替えを並べることで、クラーナハの意図を探りたい」と語られた。クラーナハは21世紀の我々に向かって強烈なビームを投げかけている。
  展覧会を是非お楽しみください。

【参考文献】
1) グイド・メスリング、新藤 淳=責任編集:『クラ―ナハ展――500年後の誘惑』(展覧会図録)、国立西洋美術館、飯塚 隆、福元崇志、ウィーン美術史美術館、TBSテレビ=編集、グイド・メスリング、エルケ・アンナ・ヴェルナー、新藤 淳、福元崇志、アリス・ホップ=ハーノンクール、ラウル・クルカ=執筆、TBSテレビ=発行、2016年。

執筆:細川 いづみ (HOSOKAWA Fonte Idumi) 
(2016年12月)

※会場風景の画像は主催者側の許可を得て撮影したものです。
20161216_001
写真1 東京の会場風景。
ルカス・クラーナハ(父)《ホロフェルネスの首を持つユディト》、
1525/30年頃、ウィーン美術史美術館。
(撮影:I.HOSOKAWA)
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写真2 東京の会場風景。
左から、ルカス・クラーナハ(父)《天使に囲まれた聖家族》
(「聖母伝」を表わした祭壇画の左翼パネル)
および《聖母の教育》(「聖母伝」を表わした祭壇画の右翼パネル)、
1510/12年頃、アンハルト絵画館、デッサウ。
(撮影:I.HOSOKAWA)
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写真3 東京の会場風景。
左から、ルカス・クラーナハ(父)《聖母子と幼き洗礼者ヨハネ》、
1537年以降、チロル州立博物館フェルディナンデウム、インスブルック。
ルカス・クラーナハ(父)《幼児キリストを礼拝する洗礼者ヨハネ》、
1515/20年頃、個人蔵。
(撮影:I.HOSOKAWA)
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写真4 東京の会場風景。
ルカス・クラーナハ(父)《マルティン・ルターとカタリナ・フォン・ボラ≫、
1529年、ウフィツィ美術館、フィレンツェ。
(撮影:I.HOSOKAWA)
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写真5 東京の会場風景。
左から、アルブレヒト・デュ―ラー《メランコリー》(メレンコリアⅠ)、
1514年、エングレーヴィング、国立西洋美術館。
ルカス・クラーナハ(父)《メランコリー》1533年(?)、個人蔵。
(撮影:I.HOSOKAWA)

【展覧会欧文表記】
LUCAS CRANACH THE ELDER
500 Years of the Power of Temptation
【会期・会場】

東京 2016年10月15日~2017年1月15日 国立西洋美術館
大阪 2017年 1月28 日~4月16日 国立国際美術館
[電話]03-5777-8600(ハローダイヤル) 
[詳細HP]http://www.tbs.co.jp/vienna2016

※本文・図版とも無断引用・無断転載を禁じます。

2016年12月16日