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須藤玲子:NUNOの布づくり

開催中〜2024/05/06

水戸芸術館現代美術ギャラリー、広場

茨城県・水戸市

春の江戸絵画まつり ほとけの国の美術

開催中〜2024/05/06

府中市美術館

東京都・府中市

【特別展】花・flower・華 2024 ―奥村土牛の桜・福田平八郎の牡丹・梅原龍三郎のばら―

開催中〜2024/05/06

山種美術館

東京都・渋谷区

古代メキシコ -マヤ、アステカ、テオティワカン

開催中〜2024/05/06

国立国際美術館

大阪府・大阪市

小金沢健人×佐野繁次郎ドローイング/シネマ

開催中〜2024/05/06

神奈川県立近代美術館 鎌倉別館

神奈川県・鎌倉市

第5回「私の代表作」展

開催中〜2024/05/12

ホキ美術館

千葉県・千葉市

ライトアップ木島櫻谷 ― 四季連作大屏風と沁みる『生写し』

開催中〜2024/05/12

泉屋博古館東京

東京都・港区

イヴ・ネッツハマー ささめく葉は空気の言問い

開催中〜2024/05/12

宇都宮美術館

栃木県・宇都宮市

皇室のみやび―受け継ぐ美― 第3期「近世の御所を飾った品々」

開催中〜2024/05/12

皇居三の丸尚蔵館

東京都・千代田区

開館40周年記念 旧朝香宮邸を読み解く A to Z

開催中〜2024/05/12

東京都庭園美術館

東京都・港区

ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか? ——国立西洋美術館65年目の自問|現代美術家たちへの問いかけ

開催中〜2024/05/12

国立西洋美術館

東京都・台東区

国宝・燕子花図屏風 デザインの日本美術

開催中〜2024/05/12

根津美術館

東京都・港区

春陽会誕生100年 それぞれの闘い 岸田劉生、中川一政から岡鹿之助へ

開催中〜2024/05/12

長野県立美術館

長野県・長野市

モダン・タイムス・イン・パリ 1925 ― 機械時代のアートとデザイン

開催中〜2024/05/19

ポーラ美術館

神奈川県・足柄下郡箱根町

版画の青春 小野忠重と版画運動 ―激動の1930-40年代を版画に刻んだ若者たち―

開催中〜2024/05/19

町田市立国際版画美術館

東京都・町田市

HELLO! コレクション ZOZO×千葉県立美術館

開催中〜2024/05/19

千葉県立美術館

千葉県・千葉市

子の日図屏風と宮廷文化

開催中〜2024/05/19

遠山記念館

埼玉県・比企郡川島町

企画展《歌舞音曲鑑 北斎と楽しむ江戸の芸能》

開催中〜2024/05/26

すみだ北斎美術館

東京都・墨田区

百年後芸術祭 -内房総アートフェス-

開催中〜2024/05/26

芸術祭(市原市・木更津市・君津市・袖ケ浦市・富津市の内房総5市)

千葉県・市原市、木更津市、君津市、袖ケ浦市、富津市の内房総5市

特別展 雪舟伝説―「画聖(カリスマ)」の誕生―

開催中〜2024/05/26

京都国立博物館

京都府・京都市

月岡芳年 月百姿

開催中〜2024/05/26

太田記念美術館

東京都・渋谷区

金屏風の祭典 ——黄金の世界へようこそ

開催中〜2024/06/02

岡田美術館

神奈川県・箱根町

日本の山海

開催中〜2024/06/02

松岡美術館

東京都・港区

卒寿記念 人間国宝 鈴木藏の志野展

開催中〜2024/06/02

国立工芸館

石川県・金沢市

川瀬巴水 旅と郷愁の風景

開催中〜2024/06/02

八王子市夢美術館

東京都・八王子市

1950〜60年代の日本画―造形への挑戦

開催中〜2024/06/02

平塚市美術館

神奈川県・平塚市

遠距離現在 Universal / Remote

開催中〜2024/06/03

国立新美術館

東京都・港区

第8回横浜トリエンナーレ「野草:いま、ここで生きてる」

開催中〜2024/06/09

芸術祭(横浜美術館、旧第一銀行横浜支店、BankART KAIKO、クイーンズスクエア横浜、元町・中華街駅連絡通路)

神奈川県・横浜市

記憶:リメンブランス-現代写真・映像の表現から

開催中〜2024/06/09

東京都写真美術館

東京都・目黒区

BankART Life7「UrbanNesting:再び都市に棲む」

開催中〜2024/06/09

BankART Station

神奈川県・横浜市

企画展「北斎と感情」

開催中〜2024/06/09

北斎館

長野県・小布施町

名作展「大画面の奔流―川端龍子の『会場芸術』再考」

開催中〜2024/06/09

大田区立龍子記念館

東京都・大田区

特別展「法然と極楽浄土」

開催中〜2024/06/09

東京国立博物館

東京都・台東区

静嘉堂文庫竣工100年 特別展「画鬼 河鍋暁斎×鬼才 松浦武四郎」

開催中〜2024/06/09

静嘉堂@丸の内(静嘉堂文庫美術館)

東京都・千代田区

平野杏子展 – 生きるために描きつづけて

開催中〜2024/06/09

平塚市美術館

神奈川県・平塚市

空海 KŪKAI ―密教のルーツとマンダラ世界

開催中〜2024/06/09

奈良国立博物館

奈良県・奈良市

青山悟 刺繍少年フォーエバー

開催中〜2024/06/09

目黒区美術館

東京都・目黒区

没後120年 エミール・ガレ展 奇想のガラス作家

開催中〜2024/06/09

渋谷区立松濤美術館

東京都・渋谷区

特別展「大哺乳類展3−わけてつなげて大行進」

開催中〜2024/06/16

国立科学博物館

東京都・台東区

茶の湯の美学 ―利休・織部・遠州の茶道具―

開催中〜2024/06/16

三井記念美術館

東京都・中央区

ベル・エポックー美しき時代 パリに集った芸術家たち ワイズマン&マイケル コレクションを中心に

開催中〜2024/06/16

山梨県立美術館

山梨県・甲府市

サントリー美術館コレクション展 名品ときたま迷品

開催中〜2024/06/16

サントリー美術館

東京都・港区

昭和モダン×百段階段 ~東京モダンガールライフ~

開催中〜2024/06/16

ホテル雅叙園東京 東京都指定有形文化財 「百段階段」

東京都・目黒区

宇野亞喜良展 AQUIRAX UNO

開催中〜2024/06/16

東京オペラシティアートギャラリー

東京都・新宿区

板倉鼎・須美子展

開催中〜2024/06/16

千葉市美術館

千葉県・千葉市

高橋由一から黒田清輝へ ―明治洋画壇の世代交代劇―

開催中〜2024/06/16

栃木県立美術館

栃木県・宇都宮市

ここに いても いい リトゥンアフターワーズ 山縣良和と綴るファッション表現のかすかな糸口

2024/04/27〜2024/06/16

アーツ前橋

群馬県・前橋市

“オモシロイフク”大図鑑

開催中〜2024/06/22

文化学園服飾博物館

東京都・渋谷区

「どうぶつ百景 江戸東京博物館コレクションより」展

2024/04/27〜2024/06/23

東京ステーションギャラリー

東京都・千代田区

令和6年度初夏展「殿さまのスケッチブック」

2024/04/27〜2024/06/23

永青文庫

東京都・文京区

シンフォニー・オブ・アート — イメージと素材の饗宴

開催中〜2024/06/23

群馬県立館林美術館

群馬県・館林市

驚異の細密表現展 ―江戸・明治の工芸から現代アートまで―

開催中〜2024/06/23

横須賀美術館

神奈川県・横須賀市

没後70年 戦争を越えて―写真家ロバート・キャパ、愛と共感の眼差し―

開催中〜2024/06/23

東京富士美術館

東京都・八王子市

カール・アンドレ 彫刻と詩、その間

開催中〜2024/06/30

DIC川村記念美術館

千葉県・佐倉市

特別企画展「熊谷守一美術館39周年展 守一、旅を描く。」

開催中〜2024/06/30

豊島区立 熊谷守一美術館

東京都・豊島区

民藝 MINGEI—美は暮らしのなかにある

開催中〜2024/06/30

世田谷美術館

東京都・世田谷区

創刊50周年記念 花とゆめ展

2024/05/24〜2024/06/30

東京シティビュー(六本木ヒルズ森タワー52 階)

東京都・港区

KAGAYA 星空の世界 天空の贈り物

2024/05/01〜2024/07/01

そごう美術館

神奈川県・横浜市

三島喜美代―未来への記憶

2024/05/19〜2024/07/07

練馬区立美術館

東京都・練馬区

石岡瑛子 I デザイン

2024/04/27〜2024/07/07

茨城県近代美術館

茨城県・水戸市

Beautiful Japan 吉田初三郎の世界

2024/05/18〜2024/07/07

府中市美術館

東京都・府中市

ふたり 矢部太郎展

開催中〜2024/07/07

PLAY! MUSEUM

東京都・立川市

MOTコレクション 歩く、赴く、移動する 1923→2020/Eye to Eye-見ること

開催中〜2024/07/07

東京都現代美術館

東京都・江東区

ホー・ツーニェン エージェントのA 

開催中〜2024/07/07

東京都現代美術館

東京都・江東区

Tokyo Contemporary Art Award 2022-2024 受賞記念展

開催中〜2024/07/07

東京都現代美術館

東京都・江東区

【特別展】犬派?猫派? ―俵屋宗達、竹内栖鳳、藤田嗣治から山口晃まで―

2024/05/12〜2024/07/07

山種美術館

東京都・渋谷区

TOPコレクション 時間旅行 ― 千二百箇月の過去とかんずる方角から

開催中〜2024/07/07

東京都写真美術館

東京都・目黒区

企画展 歌と物語の絵 ―雅やかなやまと絵の世界

2024/06/01〜2024/07/21

泉屋博古館東京

東京都・港区

藤田嗣治 エコール・ド・パリの時代 1918~1928年

開催中〜2024/07/23

軽井沢安東美術館

長野県・軽井沢町

「石川九楊大全」

2024/06/08〜2024/07/28

上野の森美術館

東京都・台東区

国芳の団扇絵 ―猫と歌舞伎とチャキチャキ娘

2024/06/01〜2024/07/28

太田記念美術館

東京都・渋谷区

企画展「未来のかけら 科学とデザインの実験室」

開催中〜2024/08/12

21_21 DESIGN SIGHT ギャラリー1&2

東京都・港区

生誕140年 YUMEJI展 大正浪漫と新しい世界

2024/06/01〜2024/08/25

東京都庭園美術館

東京都・港区

特別展「北斎 グレートウェーブ・インパクト —神奈川沖浪 裏の誕生と軌跡—」

2024/06/18〜2024/08/25

すみだ北斎美術館

東京都・墨田区

TRIO パリ・東京・大阪 モダンアート・コレクション

2024/05/21〜2024/08/25

東京国立近代美術館

東京都・千代田区

内藤コレクション 写本 — いとも優雅なる中世の小宇宙

2024/06/11〜2024/08/25

国立西洋美術館

東京都・台東区

企画展「旅するピーナッツ。」

開催中〜2024/09/01

スヌーピーミュージアム

東京都・町田市

シアスター・ゲイツ展:アフロ民藝

開催中〜2024/09/01

森美術館

東京都・港区

AOMORI GOKAN アートフェス 2024 「つらなりのはらっぱ」

開催中〜2024/09/01

アートフェス(芸術祭)( 青森県立美術館、青森公立大学 国際芸術センター青森、弘前れんが倉庫美術館、八戸市美術館、十和田市現代美術館)

青森県

伊藤潤二展 誘惑

2024/04/27〜2024/09/01

世田谷文学館

東京都・世田谷区

音を観る ―変化観音と観音変化身―

開催中〜2024/09/01

半蔵門ミュージアム

東京都・千代田区

アートキャンプ白州 2024 Camp and Art in Each Heart!

2024/07/06〜2024/09/01

山梨県立美術館

山梨県・甲府市

エドワード・ゴーリーを巡る旅

2024/07/06〜2024/09/01

横須賀美術館

神奈川県・横須賀市

カルダー:そよぐ、感じる、日本

2024/05/30〜2024/09/06

麻布台ヒルズ ギャラリー

東京都・港区

日本のまんなかでアートをさけんでみる

開催中〜2024/09/08

原美術館ARC

群馬県・渋川市

特別展「神護寺―空海と真言密教のはじまり」

2024/07/17〜2024/09/08

東京国立博物館

東京都・台東区

開館20周年記念 山梨放送開局70周年 平山郁夫 -仏教伝来と旅の軌跡

開催中〜2024/09/09

平山郁夫シルクロード美術館

山梨県・北杜市

フィロス・コレクション ロートレック展 時をつかむ線

2024/06/22〜2024/09/23

SOMPO美術館

東京都・新宿区

空想旅行案内人 ジャン=ミッシェル・フォロン

2024/07/13〜2024/09/23

東京ステーションギャラリー

東京都・千代田区

吉田克朗展 ものに、風景に、世界に触れる

2024/07/13〜2024/09/23

埼玉県立近代美術館

埼玉県・さいたま市

印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵

2024/07/06〜2024/09/29

東京富士美術館

東京都・八王子市

梅津庸一 クリスタルパレス

2024/06/04〜2024/10/06

国立国際美術館

大阪府・大阪市

大地に耳をすます 気配と手ざわり

2024/07/20〜2024/10/09

東京都美術館

東京都・台東区

レガシー ―美を受け継ぐ モディリアーニ、シャガール、ピカソ、フジタ

2024/06/18〜2024/10/13

松岡美術館

東京都・港区

企画展「作家の視線― 過去と現在、そして…」

2024/05/23〜2024/11/11

ホキ美術館

千葉県・千葉市

Exhibitions

「レオナール・フジタとモデルたち」展

フジタが生き生きと私たちに語りかけてくる。
モデルを通して浮かび上がるフジタの思考。圧巻の4つの大壁画。

  レオナール・フジタ(藤田嗣治)(1886~1968年)は、欧州で高く評価される油彩画の世界的芸術家として成功を遂げた。明治時代半ばに東京に生れ、第一次世界大戦前の1913年(大正2)年にフランスへ渡ったフジタは、1920年代に独自の画面「乳白色の下地」を確立。裸婦像によってパリ画壇における時代の寵児となる。人物画を中心に、風景画や戦争画を描き、挿絵、壁画も手掛けた。第二次大戦後、日本を離れてフランスに永住。1955年にフランスに帰化し、欧州で没した。本展は、絵画作品と資料から人物画のモデルに注目することで、フジタの画業における思考を人間関係と共に検証するものだ。加えて、フランス、エソンヌ県のメゾン=アトリエ・フジタ所蔵の壁画大作4点を展示し、フジタの群像表現への挑戦を紹介する。フジタやモデルたちが生き生きと私たちに語りかけてくる。そんな印象をもたらす親しみ深い展覧会だ。2016年秋から2017年11月まで、DIC川村記念美術館、いわき市立美術館、新潟県立万代島美術館、秋田県立美術館の4館を巡回。DIC川村記念美術館での展示を一部紹介しよう。
  ■展覧会構成
  展覧会構成は、次の4つの章から成る。
  1 画家フジタ誕生―1910年代/ 2 パリ、成功の時代―1920年代/ 3 世界をめぐる旅―1930年から/ 4 追憶と祈り―フランス帰国後/1950年代から
  ■モデルたち
  ●しゃべり、動いていたアンナ・ド・ノアイユ ≪アンナ・ド・ノアイユの肖像≫(レオナール・フジタ、1926年、DIC川村記念美術館)(★以下、作品データで作家名がないものは全てレオナール・フジタ画)は、豪華で魅力的な作品である。画面中央に黒い長い髪を肩にたらした細身の女性が立つ。当時流行したアール・デコ調の金糸のロングドレスをまとい、真珠の長いネックレスをたすき掛けにし、こちらを直視する。ドレスにはレースが多用され、花を散らした模様も華麗だ。裾のレース越しに足が少しだけのぞく。金色の使用は、日本をモチーフにしたといわれる。女性の表情も衣装の細部も緻密に描かれ、女性の高貴な家柄、意志の強さ、そして芸術家がもつ独特の自由奔放さも伝わる。しかし不思議なのは背景が全く描かれていないことだ。サインもない。
  本作のモデルはルーマニア貴族の家系の女流詩人で、パリ社交界の花形アンナ・ド・ノアイユ(1876~1933年)だ。ジャン・コクトー、ポール・クローデル、マルセル・プルーストらとも親しく交流し、彼女の詩は日本にも『珊瑚集』(永井荷風 訳)などによって紹介されている。フジタが有名になり注文が殺到した頃の注文肖像画。フジタの当時の妻だったユキ・デスノスの回想録『ユキの打ち明け話』(1957年刊)によると、アンナはポーズを取るとき、「ひっきりなしにしゃべり、動いていたのです。」また彼女は、「分かるでしょう、フジタ、私たちはふたりとも天才です。この絵もいずれルーヴルに飾られるでしょう。」とフジタに語ったという(引用部分は、横山由紀子 訳)。本作はなぜ未完成なのだろう。興味深い。
  ●日本にて病気で亡くなったフランス人のマドレーヌ ≪眠れる女≫(1931年、公益財団法人平野政吉美術財団)は、上部の漆黒の背景の境目に、乳白色の下地に細い絶妙な線で縁取られた、まどろむ女性の優美な裸体像が浮かび上がる。手前に同じ向きで眠る猫が並ぶ。モデルは、カジノ・ド・パリの踊り子マドレーヌ・ルク―(1906~36年)である。彼女との邂逅は、フジタが3番目の妻ユキと別居した頃の1931年だった。フジタとマドレーヌは同年秋、約2年間にわたる中南米の旅に出かける。画業の新天地を求めたようだ。《メキシコに於けるマドレーヌ》(1934年、京都国立近代美術館)は、鮮やかな空の青色と仙人掌の緑を背景に、白を基調として軽やかな衣裳のマドレーヌが描かれ、パリでの作品とは異なり濃密な趣がある。メキシコやペルーで二人が入手した考古遺物や民芸品も展示する。
  1933年11月、彼らは旅行の最後に日本を訪問する。マドレーヌだけが一旦フランスに帰国後、1936年4月に再来日するが、2ヵ月後に脳血栓のために亡くなる。29歳だった。マドレーヌは都立多磨霊園にフジタの妻として埋葬され、今も故国を離れてここに眠っている。フランスに眠るフジタと対照的だ。フジタはマドレーヌの没後も彼女をモデルにした作品を制作した。《私の夢》(1947年、新潟県立近代美術館・万代島美術館)は、《眠れる女》をやや縮小したサイズで同ポーズの裸婦像。ただし周りを多くの動物が囲み不穏な雰囲気だ。フジタが日本で戦争画批判にさらされ、新しい天地を求めていた頃の作品である。
  ●フジタのパートナーやキキ  本展には、単身パリに渡ったフジタから、最初の妻であった鴇田とみ(1886~1932年)に宛てた書簡や写真などの資料が出品されていて、フジタのパリでの生活や葛藤、若妻への心情にも触れることができる。彼はとみと離婚後、パリで結婚したフェルナンド・バレー(1893~1960年)をモデルに、平面的でプリミティブな描写の作品を制作。その後、エコール・ド・パリの画家たちに人気のあったキキ(本名:アリス・エルネスティーヌ・プラン。1901~53年)をモデルに、乳白色の下地による最初の裸体画を完成させた。フジタの3番目の妻で白い肌ゆえ「ユキ」と呼ばれたリュシー・バドゥ―(1903~66年)も裸婦像のモデルをたびたび務めた。また、フジタの最後の妻となった君代(旧姓は堀内。1910~2009年)は第二次大戦後フジタと共に日本を離れ、1950年よりフランスに永住。晩年のフジタの画業を支え、フジタ没後はその遺産を守り、現在はフジタが装飾を手掛けたフランスの礼拝堂に一緒に眠る。本展では、フジタと君代をモデルとした祈りをテーマとする作品や、君代が保管していたフジタ制作の贈り物も展示する。猫や子供を描いた小鉢など、フジタの愛情とユーモアがあふれる。なお、フジタと占領下の日本で親しく交流したフランク・シャーマンの旧蔵コレクションも出品され、フジタの当時をしのぶことができる。
  ■四大壁画《ライオンのいる構図》《犬のいる構図》《争闘Ⅰ》《争闘Ⅱ》
  「この4つの大壁画はじっくり見てほしいです。スケール感と空間の奥行き。これは実際に見ないとわからないものです」と、DIC川村記念美術館学芸員の横山由紀子さんは、開幕前の内覧会で話してくださった。4つの大壁画の《ライオンのいる構図》《犬のいる構図》《争闘Ⅰ》《争闘Ⅱ》(すべて、1928年、ミュゼ・メゾン=アトリエ・フジタ、エソンヌ県議会)の前に立つと、フジタの世界にすっぽり包まれるようだ。1点は3×3mで、4点合わせると3×12mの大画面。《ライオンのいる構図》と《犬のいる構図》、《争闘Ⅰ》と《争闘Ⅱ》の2点組の対とされる。フジタがルネサンス以降の西洋画の最高位である歴史画に挑んだもので、彼が手掛けた最初の群像表現である。乳白色や薄黄色の淡い色調に優美な描線で、立派な体格の男性と女性の裸体像・半裸体像が多数描かれ、陰影が施されている。《ライオンのいる構図》《犬のいる構図》は、檻に入ったライオンなどの猛獣、西洋の裸体画を運ぶ人々、様々なポーズの男女、猫や犬などが描写され、船からの荷揚げにも見える。《争闘Ⅰ》《争闘Ⅱ》では、組になって闘う姿が多い。各部分の多数のデッサンも残されていて、周到な準備を経て完成作品に至る過程を知ることができる。本作には、ヴァチカンのシスティナ礼拝堂にあるミケランジェロの天井画からの影響が指摘されている。
  「最も美しく愛するもの、それは私が精魂を込めて作りあげた4枚の大作」とフジタが記した本作を、彼は1931年、中南米への旅の前にユキに託した。しばらく行方が知れず、1992年に再発見された。本作は同寸法の、薩摩治郎八(1901~76年)がパリ国際大学都市に寄贈した学生寮のためにフジタに依頼した油彩金屏風《欧人日本到来の図》と《馬の図》(1929年制作の大壁画)の前段階のものとされる。そしてこれら群像表現の経験が、1937年の《秋田の行事》や戦争画(共に本展の出展なし)の制作に効果を発揮することになる。
  見どころの多い展覧会です。是非足をお運びください。
 
【参考文献】
1)企画・構成=横山由紀子、水野昌美、ユリス・エック=コキール、
編集=中村水絵:『レオナール・フジタとモデルたち』(展覧会図録)、
執筆=アン・ル・デイベルデル、シルヴィ・ビュイッソン、佐藤幸宏、
横山由紀子、原田久美子、澤田佳三、植田玲子、佐々木佳苗、水野昌美、発行=キュレイターズ、2016年。
2)林洋子:『藤田嗣治 作品をひらく』、名古屋大学出版会、2008年。
3)林洋子、内呂博之:『もっと知りたい 藤田嗣治 生涯と作品』、東京美術、2013年。

執筆:細川 いづみ (HOSOKAWA Fonte Idumi) 
(2016年12月)

※会場風景の画像は主催者側の許可を得て撮影したものです。
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写真1 会場風景(DIC川村記念美術館)。
レオナール・フジタ、≪アンナ・ド・ノアイユの肖像≫、1926年、DIC川村記念美術館。
(撮影:I.HOSOKAWA)
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写真2 会場風景(DIC川村記念美術館)。
左から、レオナール・フジタ、≪眠れる女≫、1931年、公益財団法人平野政吉美術財団。
レオナール・フジタ、《私の夢》、1947年、新潟県立近代美術館・万代島美術館。
(撮影:I.HOSOKAWA)
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写真3 会場風景(DIC川村記念美術館)。
左から、レオナール・フジタ、《メキシコに於けるマドレーヌ》、
1934年、京都国立近代美術館。レオナール・フジタ、《角力》、1934年、公益財団法人平野政吉美術財団。
レオナール・フジタ、《自画像》、1936年、公益財団法人平野政吉美術財団。
(撮影:I.HOSOKAWA)
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写真4 会場風景(DIC川村記念美術館)。
左から、レオナール・フジタ、《ライオンのいる構図》《犬のいる構図》《争闘Ⅰ》《争闘Ⅱ》、
全て1928年、ミュゼ・メゾン=アトリエ・フジタ、エソンヌ県議会。
(撮影:I.HOSOKAWA)


【展覧会欧文表記】
Léonard Foujita et ses modèles
【会期・会場】

2016年9月17日~2017年1月15 日 DIC川村記念美術館
  [HP] http://kawamura-museum.dic.co.jp
  [展覧会詳細]http://kawamura-museum.dic.co.jp/exhibition/index.html
2017年4月15日~ 5月28日 いわき市立美術館
  [HP] http://www.city.iwaki.lg.jp/artmuseum.html
2017年6月24日~ 9月 3日 新潟県立万代島美術館
  [HP] http://banbi.pref.niigata.lg.jp/
2017年9月 9日~11月12日 秋田県立美術館
  [HP] http://www.akita-museum-of-art.jp/

※本文・図版とも無断引用・無断転載を禁じます。

2016年12月18日