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アレック・ソス 部屋についての部屋

開催中〜2025/01/19

東京都写真美術館

東京都・目黒区

「ルイーズ・ブルジョワ展:  地獄から帰ってきたところ 言っとくけど、素晴らしかったわ」

開催中〜2025/01/19

森美術館

東京都・港区

唐ごのみ —国宝 雪松図と中国の書画—

開催中〜2025/01/19

三井記念美術館

東京都・中央区

怪力の魅力

開催中〜2025/01/19

北斎館

長野県・小布施町

グラン・パレ・イマーシブ 永遠のミュシャ

開催中〜2025/01/19

ヒカリエホール

東京都・渋谷区

再開館記念 「不在」ートゥールーズ=ロートレックとソフィ・カル

開催中〜2025/01/26

三菱一号館美術館

東京都・千代田区

小杉放菴展 小杉放菴記念日光美術館の所蔵作品を中心に

開催中〜2025/01/26

八王子市夢美術館

東京都・八王子市

ポケモン×工芸展-美とわざの大発見-

開催中〜2025/02/02

麻布台ヒルズ ギャラリー

東京都・港区

超絶技巧、未来へ! 明治工芸とそのDNA

開催中〜2025/02/02

山梨県立美術館

山梨県・甲府市

東急 暮らしと街の文化ーー100年の時を拓く

開催中〜2025/02/02

世田谷美術館

東京都・世田谷区

中国陶磁展 うわぐすりの1500年

開催中〜2025/02/09

松岡美術館

東京都・港区

ジャム・セッション 石橋財団コレクション×毛利悠子—ピュシスについて

開催中〜2025/02/09

アーティゾン美術館

東京都・中央区

OPEN SITE 9 Part 2

開催中〜2025/02/09

トーキョーアーツアンドスペース本郷

東京都・文京区

絵画のゆくえ2025

2025/01/18〜2025/02/11

SOMPO美術館

東京都・新宿区

おしゃべり美術館 ひらビあーつま~れ10年記念展

開催中〜2025/02/16

平塚市美術館

神奈川県・平塚市

企画展「ゴミうんち展」

開催中〜2025/02/16

21_21 DESIGN SIGHT

東京都・港区

そこに光が降りてくる 青木野枝・三嶋りつ惠

開催中〜2025/02/16

東京都庭園美術館

東京都・港区

開館2周年記念特別企画「藤田嗣治の愛しきものたち」

開催中〜2025/02/18

軽井沢安東美術館

長野県・軽井沢町

反復と偶然展

開催中〜2025/02/24

国立工芸館

石川県・金沢市

漫画家・森薫と入江亜季 展 ―ペン先が描く緻密なる世界―

開催中〜2025/02/24

世田谷文学館

東京都・世田谷区

Hello Kitty展 –わたしが変わるとキティも変わる–

開催中〜2025/02/24

東京国立博物館

東京都・台東区

特別展「鳥 〜ゲノム解析が解き明かす新しい鳥類の系統〜」

開催中〜2025/02/24

国立科学博物館

東京都・台東区

【特別展】HAPPYな日本美術 ―伊藤若冲から横山大観、川端龍子へ―

開催中〜2025/02/24

山種美術館

東京都・渋谷区

瑞祥のかたち

開催中〜2025/03/02

皇居三の丸尚蔵館

東京都・千代田区

アニメ「鬼滅の刃」 柱展 ーそして無限城へー

開催中〜2025/03/02

CREATIVE MUSEUM TOKYO

東京都・中央区

読み解こう!北斎も描いた江戸のカレンダー

開催中〜2025/03/02

すみだ北斎美術館

東京都・墨田区

川端龍子+高橋龍太郎コレクション  コラボレーション企画展「ファンタジーの力」

開催中〜2025/03/02

大田区立龍子記念館

東京都・大田区

evala 現われる場 消滅する像

開催中〜2025/03/09

NTTインターコミュニケーション・センター [ICC]

東京都・新宿区

「生誕120年 宮脇綾子の芸術 見た、切った、貼った」展

2025/01/25〜2025/03/16

東京ステーションギャラリー

東京都・千代田区

花器のある風景

2025/01/25〜2025/03/16

泉屋博古館東京

東京都・港区

寺山修司展(コレクション展)

開催中〜2025/03/30

世田谷文学館

東京都・世田谷区

平山郁夫《想一想》と昭和期の日本画家たち

開催中〜2025/03/30

半蔵門ミュージアム

東京都・千代田区

MOTコレクション 竹林之七妍/小さな光/開館30周年記念プレ企画 イケムラレイコ マーク・マンダース  Rising Light/Frozen Moment

開催中〜2025/03/30

東京都現代美術館

東京都・江東区

体感型デジタルアートミュージアム「動き出す浮世絵展 TOKYO」

開催中〜2025/03/31

寺田倉庫G1ビル

東京都・品川区

ブルックリン博物館所蔵 特別展 古代エジプト

2025/01/25〜2025/04/06

森アーツセンターギャラリー

東京都・港区

第3回 企画展「くろねこJIJI」

開催中〜2025/04/07

魔法の文学館(江戸川区角野栄子児童文学館)2階ギャラリー

東京都・江戸川区

カラーズ — 色の秘密にせまる 印象派から現代アートへ

開催中〜2025/05/18

ポーラ美術館

神奈川県・足柄下郡箱根町

Exhibitions

魅力と才能に驚く「武井武雄展」

 大正期、子どものための文化が目覚ましく広がる中で、「子どものための芸術こそ本物の芸術でなければならない」と「童画」という言葉を使い、一つのジャンルとして確立することを目指し活動したのが武井武雄(1894-1983)だった。その活動はデザイン、版画、刊本作品と名づけた造本美術作品、他にも多岐にわたり、その才能とこだわりに驚くばかりである。

新しい道を切り開く

 東京美術学校(現・東京藝術大学)の西洋画科で学び洋画家を志していた武井は、知り合いの紹介で『子供之友』に絵を描き始める。当時、創作童話の絵は物語の添え物という存在だったが、仕事を始めて半年も経つと、子どもに向けての絵は、子どもの魂に触れるものでなくてはいけないと考えるようになり、生涯の仕事とすることを決める。
 
 1922年には、当時としては画期的だった絵を中心にした雑誌「コドモノクニ」(東京社、現ハースト婦人画報社)の創刊に企画から携わり、表紙絵を描いた。タイトルロゴのデザインもし、日本で初めてのデザイン化された文字は称賛を浴びたという。

会場風景

 さらに、「子どもの心を知りたい、子どもが絵本より先に手にするのは玩具」と郷土玩具の収集を始め、その数は一万点にも及んだ。自ら玩具のデザインも始め、「古い」の反対、新しいおもちゃという意味を込めた武井の造語「イルフ・トイス」展を1929年から開き、デザインした玩具を毎年紹介した。

会場風景

 武井の年譜をたどっていくと、多くの組織を発足、主催していたことに驚く。芸術家としての才能だけでなく強い行動力と統率力で、精力的に新しい道を切り開いていく姿があった。
 
 1935年には、版画年賀状交換会「榛の会」を結成し、棟方志巧など版画家たちが年賀状を制作し競った。競うことで技量を高め、創作版画の発展に貢献したというのが面白い。戦時中、3年間の疎開生活であってさえも文化活動を主宰して、郷土・岡谷での版画の振興に貢献したという話にも感心する。
 
 1961年に武井が中心となって新たに立ち上げた日本童画家協会の展覧会の招待状が展示されている。武井のデザインで、招待状とは思えない出来上がりに、コレクションする人がいたというのも納得する。

日本童画家協会展 招待状(以下、所蔵は全てイルフ童画館)

 武井の偉業は展覧会を見るうちに、まだまだ知ることになる。大学卒業後、同校研究科でエッチング(銅版画)の基礎を学んでいた武井は、1930年代に入ると、本格的に版画制作に打ち込むようになる。絵雑誌などに描いた絵が印刷により思うように再現されることが少なく、版に関して徹底的に研究したことも版画制作につながっていった。武井は銅・木・石・紙・陶などさまざまな版材やオリジナルの版式(Vari-type(バリタイプ))を使って創作した。バリタイプは紙や糸などの厚みを圧力差で擦り出す技法で、白みがふんわりと広がり情緒を生み出す。

バリタイプを使った《刊本作品 No.22 秒間の符》

 初めて見た武井の版画が素晴らしく感動する。色、形、どれをとっても秀逸で一瞬で心を奪われる。子どもを感動させるもの、ひいては大人を感動させる作品制作に熱心に取り組んだ武井の心意気と圧巻の才能を作品を通して知る。《鳥の連作》は、共通の題材である鳥が縦横無尽に姿、形を変えて表現されていて面白い。

《鬼》(1952年 木版・紙)
左上《鳥の連作 No.6 玉乗》1969年 、左下《鳥の連作 No.9》1970年、右《鳥の連作 No.5 金曜日の鳥》1968年、全て木版・紙 

力を尽くした「刊本作品」の世界

 そして本展で大きな衝撃を受けたのが、武井があらゆる素材と技法を駆使し、手間と時間を惜しまず力を尽くした「刊本作品」だった。表現方法、物語、装幀、印刷方法、紙や活字の指定など制作全行程を自らが指揮をとり、「本という形式と素材によって表現する美術」の分野を確立したいという思いを込め「刊本作品」と呼んだ。

会場風景

 作品ごとに新たな材質や技法に挑戦し、それらは螺鈿細工、寄せ木細工、ゴブラン織り、友禅染、磁器、パピルス紙など多岐にわたり、本にする素材に不可能はないのだと感じさせる。
 
 ある時は、紙に螺鈿細工を施す職人の存在を記事で読み、その職人を10年探す。またある時は、西陣織のベテラン職人に、ゴブラン織りの手法を用いてSベラン(樹脂をしみこませ耐水性に優れた紙)に印刷した画を糸状に裂いてこれを横糸とし、本物の絹糸を縦糸として織り上げてもらう。
 
 「隅々まで神経と努力の行き届いた刊本作品を作るには、限定300部が人力の及び得るマキシマムである」と、300人の登録会員だけが原価(制作費÷数)で買うことのできる仕組みにし、武井が自ら全冊全ページを検品しサインしたものを手渡した。「武井が作りたいものを支えた形」と同館学芸員の重田正惠さんは話す。

セルロイドに螺鈿を施した《刊本作品No.59 人魚と嫦娥》(螺鈿細工・紙 樹脂 漆 螺鈿 1966年)
《刊本作品No.74 笛を吹く城》(ゴブラン織り・Sベラン 1967年)
自然な色を生かした5ミリほどの寄せ木細工《刊本作品 No.31 木魂の伝記》(1957年)

 86歳になる頃、108作目として紀元前から古代エジプトで使われていた紙の祖であるパピルス紙を使うことを決める。岐阜県高冷地農業試験場に勤めていた専門家に依頼し、パピルス栽培から着手し、必要な2000枚のパピルス紙を用意するのに4年かかったという。繊維が粗く脆いため、印刷も製本も丁寧に行われ、4年半かけて「ナイルの葦」が完成した。武井は「技法は底をついた」としながらも88歳で亡くなるまで精力的に制作を続けた。50年近くライフワークとして力を注ぎ、作り上げた139点の刊本作品は、人々を魅了し、「本の宝石」と称された。

《刊本作品No.108 ナイルの葦》(1980 パピルス紙)

 螺鈿細工の人魚や船は七色に輝き、絹糸を織り込んだゴブラン織りはしなやかで上質な質感。起毛のようなヴィベール紙はふんわりと軽く、繊維を感じるパピルス紙は紙の祖という堂々とした佇まいである。作品ごとにそれぞれ全く異なる世界が広がり、「刊本作品」というくくりの中に、果てしない世界が広がっていることを実感する。字の形やサイズ、奥付の配置デザインやサインに至るまで一つひとつに精神がいき届いていて、一冊一冊に込められた武井の深く強い思いと作品に対する愛情が伝わってくる。

《刊本作品 No.111 提灯の詩》(ヴィベール造本 1977年)

 見れば見るほど丁寧な仕事から生み出された美しさと完成度に魅了され、知れば知るほどその芸術作品を生み出す執念のようなこだわりとそれを実現させた実行力に恐れ入る。 
 
 武井武雄が生み出したものは多く、のこした功績は大きい。武井の残した傑作を味わい、そこから放つエネルギーを感じとることで、我々にも力が満ちてくる。
 
 
(文中敬称略)
執筆・写真撮影:堀内まりえ
*写真は主催者の許可を得て撮影しています。刊本作品内ページの写真は8月4日に同館で行われたワークショップ「大人のための美術カフェ」にて撮影しました。
 
 
<参考文献等>
・本展解説
・別冊太陽 日本のこころ216「武井武雄の本 童画とグラフィックの王様」 イルフ童画館監修 平凡社 2014年

生誕130年 武井武雄展~幻想の世界へようこそ~
The Takeo TAKEI Exhibition Celebrating 130 Years of His Birth :Welcome to the World of Fantasy
 
【会期・会場】
2024年7月6日(土)~2024年8月25日(日) 目黒区美術館(東京・目黒区)
美術館HP:https://mmat.jp/
 
【今後の巡回予定】
2024年9月7日~10月6日 石川県立美術館(石川県・金沢市)
2024年10月12日~11月24日 一宮市三岸節子記念美術館(愛知県・一宮市)