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出光真子 おんなのさくひん――ある映像作家の自伝

開催中〜2026/09/21

東京都写真美術館

東京都・目黒区

ピカソmeets ポール・スミス 遊び心の冒険へ

開催中〜2026/09/21

国立新美術館

東京都・港区

町田市立国際版画美術館所蔵 長谷川潔展 ―パリに生きた銅版画家の軌跡

開催中〜2026/09/23

パナソニック汐留美術館

東京都・港区

“カフェ”に集う芸術家―印象派からゴッホ、ロートレック、ピカソまで

開催中〜2026/09/23

三菱一号館美術館

東京都・千代田区

特集展示「ガンダーラの仏像と仏伝―釈尊のすがた―」

開催中〜2026/09/27

半蔵門ミュージアム

東京都・千代田区

トニー・アウスラー:技術と霊知のはざま~魔術、メディア、アート~

開催中〜2026/09/27

TOKYO NODE(東京ノード)

東京都・港区

80 GRAPHIC TRIALS クリエイター80組とTOPPANによる挑戦の20年

開催中〜2026/09/27

印刷博物館 P&Pギャラリー

東京都・文京区

祈りと救いの美-国宝 普賢菩薩騎象像との出会い

開催中〜2026/09/27

大倉集古館

東京都・港区

東京都美術館開館100周年記念 この場所の風景―上野・大牟田・ブエノスアイレス

開催中〜2026/10/07

東京都美術館

東京都・台東区

「風そよぐ情景 ヴィクトリア朝絵画・フランス印象派」展

開催中〜2026/10/12

松岡美術館

東京都・港区

竹村京 うごくせかい

開催中〜2026/10/12

水戸芸術館現代美術ギャラリー

茨城県・水戸市

練馬区立美術館コレクション 若林奮ーRun and Restー 寺田真由美-不在の存在-

開催中〜2026/10/18

練馬区立美術館

東京都・練馬区

四季を写す絵画たち

開催中〜2026/11/08

ホキ美術館

千葉県・千葉市

マリー・アントワネット・スタイル

開催中〜2026/11/23

横浜美術館

神奈川県・横浜市

ルネ・ラリックにみる 日本とフランスの“かわいい”文化交流

開催中〜2026/12/06

箱根ラリック美術館

神奈川県・箱根町

生誕140周年記念企画「ニューヨークの藤田嗣治」展

開催中〜2027/01/11

軽井沢安東美術館

長野県・軽井沢町

方丈記に学ぶ―生きるを編み直す小さな建築ー

開催中〜2027/01/11

21_21 DESIGN SIGHT

東京都・港区

世田谷文学館コレクション展「没後30年 宇野千代展」

開催中〜2027/03/28

世田谷文学館

東京都・世田谷区

モネ没後100年・開館25周年記念 あたらしい目 — モネと21世紀のアート

開催中〜2027/04/07

ポーラ美術館

神奈川県・足柄下郡箱根町

「福田尚代 あわいのほとり」展示風景 (「漂着物/波打ち際」部分 2002-2026年 作家蔵) 撮影:髙橋健治

Exhibitions

福田尚代 あわいのほとり

 言葉を創作の源とし、本や文房具などを用いた美術作品や回文で知られる福田尚代(1967年埼玉県生まれ)の個展が神奈川県立近代美術館 鎌倉別館で開かれている。初期から現在まで主要20作品を集めた。静けさと透明感に満ちた展示空間は、夢と現実の境を行き来するかのような雰囲気だ。

「福田尚代 あわいのほとり」展示風景 撮影:髙橋健治
「福田尚代 あわいのほとり」展示風景 撮影:髙橋健治

 会場入口の左手にある「漂着物/波打ち際」(2002~2026年)は、小さな舟や家や星が点在している。鎌倉の海に近い美術館の中で、さざ波の音が聞こえてくるようだ。
 3月29日に同館で行われた福田と美術評論家の南雄介によるギャラリートークでは、福田が個展の前に海の夢を見たことが話された。海岸線に端のないリボンがあり、よく見ると波打ち際のあわいのところで細長く切り取られていた。その後、美術館に下見に来て展示ケースを見た時にひらめきがあり、「その夢をこの世界に実現させた」と言う。
 横幅約14㍍の展示ケースには7700個以上の小さな消しゴムの彫刻が並べられている。削ったり、中をくりぬいたりしたもので、消え入りそうだが確かにそこにあり、それぞれが集まって、はかなくもどこか暖かい。
 「消しゴムって文字を消しながら自分がどんどん小さくなってしまう。貝殻が波に洗われるように、一瞬の仮の姿がここにある。この作品も展覧会が終わったら全部バラバラになって、この組み合わせは今だけのもの」と話す。
 物があることとないこと、存在のはかなさをみつめてきた。消しゴムのほかにも色鉛筆の芯、栞の紐などの彫刻があり、それについて「明滅、死への接近、この世界にとどまろうとするちから。有と無のゆらぎのなかで存在の汀に触れようとすることが、わたしなりの彫刻となり、美術となった」(福田尚代「有るか無きかのおぼろなもの」より)※1と述べている。今、この瞬間のかけがえのなさを思う。

「福田尚代 あわいのほとり」展示風景 (「漂着物/波打ち際」部分 2002-2026年 作家蔵) 撮影:髙橋健治
「福田尚代 あわいのほとり」展示風景 (「漂着物/波打ち際」部分 2002-2026年 作家蔵) 撮影:髙橋健治

 「不忍、蜘蛛の糸」も水を感じる作品だ。
 遠目には淡い虹色の帯が描かれた画面。近付くと「蓮」の文字が一面に書き込まれているのがわかる。芥川龍之介の『蜘蛛の糸』に出てくる蓮池から着想を得た作品で、東京芸術大学大学院の修了制作。不忍は、福田も学生時代に「よく歩いていた」という蓮で有名な不忍池から付けられている。文字は万年筆のブルー、ブルーブラック、ブラックのさまざまなメーカーのインクを使って書かれているという。文字数は約40万。祈りが、広く、深く水面に溶け込んでいくかのようだ。

「福田尚代 あわいのほとり」展示風景 (「不忍、蜘蛛の糸」1992年 東京都現代美術館蔵)撮影:髙橋健治
「福田尚代 あわいのほとり」展示風景 (「不忍、蜘蛛の糸」1992年 東京都現代美術館蔵)撮影:髙橋健治

 「不忍、蜘蛛の糸」のイメージにもつながるのは、「凪いだ澪で蓮が開き遠い風の虚空で舞う」で始まり、「この世界を解き明かす果てを見たいな」で終わる新作の回文「あわいのほとり」。文字は壁に投影され、静かに光を発している。

「福田尚代 あわいのほとり」展示風景 (回文「あわいのほとり」)撮影:髙橋健治
「福田尚代 あわいのほとり」展示風景 (回文「あわいのほとり」)撮影:髙橋健治

 66点の文庫本のページがそれぞれ両端から1頁ずつ折り込まれて、翼を広げた鳥のように立つ「翼あるもの/岬」は、海に突き出す岬にたくさんの鳥が休んでいる光景を連想させる。本は『アンナ・カレーニナ』『宝島』『スタンド・バイ・ミー』など海外作家の小説が多く、ページを折っていくことでたまたま現れた1行だけを読むことができる。
 「『お会いできてうれしいです』」の文が現れた本の隣に「『ぼくはあなたが大好きです』」と書かれた本が続いて会話しているようだったり、「ここはまだ、海の上なのか?そうだ、測ることもできないスピードで運ばれている。」や「数メートルもあると思えるその層を通して海の奥深いところが見えるようになりました。」など海にまつわる言葉もあったりして、鳥たちのささやきが聞こえるようだ。

「福田尚代 あわいのほとり」展示風景 (「翼あるもの/岬」部分 2003-2025年 作家蔵)撮影:髙橋健治
「福田尚代 あわいのほとり」展示風景 (「翼あるもの/岬」部分 2003-2025年 作家蔵)撮影:髙橋健治

 ギャラリートークでは、福田が生まれ育った埼玉県の浦和にある老舗書店、須原屋が話題となった。幼少期よりよく訪れていたこの書店には、地下に噴水がある。「言葉と水が私の中でものすごく結びついているのは、須原屋さんでいつも水の音を聞いていたからかもしれない」という。本展には小さいカードに刺繍した「メッセージカード#01/スハラヤ」が出品されている。

「福田尚代 あわいのほとり」展示風景 撮影:髙橋健治
「福田尚代 あわいのほとり」展示風景 撮影:髙橋健治

 福田は幼少期より、この世界が小さな粒子となって浮遊する様を見ていたという。
 言葉の粒子、水の粒子が浮遊して、それぞれの作品を行き交い、つながっている感じだ。

美術館入口の横 筆者撮影
美術館入口の横 筆者撮影

執筆・西澤美子(文中敬称略)
 
※1「雰囲気のかたち―見えないもの、形のないもの、そしてここにあるもの」展図録 うらわ美術館 2022年
 
参考文献:福田尚代『あわいのほとりのひとり』(平凡社 2026年)、福田尚代『ひかり埃のきみ 美術と回文』(平凡社 2016年)、「雰囲気のかたち―見えないもの、形のないもの、そしてここにあるもの」展図録(うらわ美術館 、東京新聞 2022年)
 
※冒頭の写真は「福田尚代 あわいのほとり」展示風景 (「漂着物/波打ち際」部分 2002-2026年 作家蔵) 撮影:髙橋健治

【会期・会場】
2026年2月21日(土)~5月17日(日)神奈川県立近代美術館 鎌倉別館(神奈川県鎌倉市)
 
美術館HP:https://www.moma.pref.kanagawa.jp/