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織田コレクション 北欧モダンデザインの名匠 ポール・ケアホルム展 時代を超えたミニマリズム

開催中〜2024/09/16

パナソニック汐留美術館

東京都・港区

トーキョーアーツアンドスペース レジデンス2024 成果発表展 『微粒子の呼吸』第2期

開催中〜2024/09/22

トーキョーアーツアンドスペース本郷

東京都・文京区

フィロス・コレクション ロートレック展 時をつかむ線

開催中〜2024/09/23

SOMPO美術館

東京都・新宿区

空想旅行案内人 ジャン=ミッシェル・フォロン

開催中〜2024/09/23

東京ステーションギャラリー

東京都・千代田区

吉田克朗展 ものに、風景に、世界に触れる

開催中〜2024/09/23

埼玉県立近代美術館

埼玉県・さいたま市

島袋道浩 : 音楽が聞こえてきた

開催中〜2024/09/23

BankART Station

神奈川県・横浜市

「人間×自然×技術=未来展(ひと かける しぜん かける ぎじゅつ は みらい てん) – Well-being for human & nature – 」

開催中〜2024/09/23

SusHi Tech Square内1F Space

東京都・千代田区

つくる展 TASKOファクトリーのひらめきをかたちに

開催中〜2024/09/23

茨城県近代美術館

茨城県・水戸市

和のあかり×百段階段2024 ~妖美なおとぎはなし~

開催中〜2024/09/23

ホテル雅叙園東京 東京都指定有形文化財「百段階段」

東京都・目黒区

平田晃久―人間の波打ちぎわ

開催中〜2024/09/23

練馬区立美術館

東京都・練馬区

【特別展】没後25年記念 東山魁夷と日本の夏

開催中〜2024/09/23

山種美術館

東京都・渋谷区

令和6年度夏季展「Come on! 九曜紋―見つけて楽しむ細川家の家紋―」

開催中〜2024/09/23

永青文庫

東京都・文京区

内藤礼 生まれておいで 生きておいで

開催中〜2024/09/23

東京国立博物館

東京都・台東区

夏の特集展示2024「戦争の時代 日本における藤田嗣治 日常から戦時下へ」

開催中〜2024/09/24

軽井沢安東美術館

長野県・軽井沢町

印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵

開催中〜2024/09/29

東京富士美術館

東京都・八王子市

昭和モダーン モザイクのいろどり 板谷梅樹の世界

開催中〜2024/09/29

泉屋博古館東京

東京都・港区

梅津庸一 クリスタルパレス

開催中〜2024/10/06

国立国際美術館

大阪府・大阪市

大地に耳をすます 気配と手ざわり

開催中〜2024/10/09

東京都美術館

東京都・台東区

レガシー ―美を受け継ぐ モディリアーニ、シャガール、ピカソ、フジタ

開催中〜2024/10/13

松岡美術館

東京都・港区

GO FOR KOGEI 2024「くらしと工芸、アートにおける哲学的なもの」

開催中〜2024/10/20

富山県富山市/岩瀬エリア、石川県金沢市/東山エリア

富山県・富山市、石川県・金沢市

令和6年度第2期所蔵品展 「特集 新恵美佐子 祈りの花」

開催中〜2024/10/20

横須賀美術館

神奈川県・横須賀市

令和6年度第2期所蔵品展  特集:生誕100年 芥川紗織

開催中〜2024/10/20

横須賀美術館

神奈川県・横須賀市

黄土水とその時代―台湾初の洋風彫刻家と20世紀初頭の東京美術学校

開催中〜2024/10/20

東京藝術大学大学美術館

東京都・台東区

いわいとしお×東京都写真美術館 光と動きの100かいだてのいえ

開催中〜2024/11/03

東京都写真美術館

東京都・目黒区

彫刻の森美術館 開館55周年記念 舟越桂 森へ行く日

開催中〜2024/11/04

彫刻の森美術館

神奈川県・足柄下郡箱根町

北アルプス国際芸術祭 2024

開催中〜2024/11/04

芸術祭(長野県大町市)

長野県・大町市

特別展「眼福―大名家旧蔵、静嘉堂茶道具の粋」

開催中〜2024/11/04

静嘉堂@丸の内(静嘉堂文庫美術館)

東京都・千代田区

瑛九 ―まなざしのその先に―

開催中〜2024/11/04

横須賀美術館

神奈川県・横須賀市

山梨モダン 1912~1945 大正・昭和前期に華ひらいた山梨美術

開催中〜2024/11/04

山梨県立美術館

山梨県・甲府市

日本中の子どもたちを笑顔にした 絵本作家 かがくいひろしの世界展

開催中〜2024/11/04

八王子市夢美術館

東京都・八王子市

エジプト古代染織コプト裂100点——織り文様は何を表しているのか

開催中〜2024/11/04

遠山記念館

埼玉県・川島町

MOTコレクション 竹林之七妍/特集展示 野村和弘/Eye to Eye-見ること

開催中〜2024/11/10

東京都現代美術館

東京都・江東区

ICC アニュアル 2024 とても近い遠さ

開催中〜2024/11/10

NTTインターコミュニケーション・センター [ICC]

東京都・新宿区

没後300年記念 英一蝶 ―風流才子、浮き世を写す―

2024/09/18〜2024/11/10

サントリー美術館

東京都・港区

日本現代美術私観:高橋龍太郎コレクション

開催中〜2024/11/10

東京都現代美術館

東京都・江東区

開発好明 ART IS LIVE ―ひとり民主主義へようこそ

開催中〜2024/11/10

東京都現代美術館

東京都・江東区

TOKAS Project Vol. 7『鳥がさえずり、山は動く』

2024/10/05〜2024/11/10

トーキョーアーツアンドスペース本郷

東京都・文京区

北斎の植物図鑑

開催中〜2024/11/10

北斎館

長野県・小布施町

大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2024

開催中〜2024/11/10

芸術祭(越後妻有地域)

新潟県・十日町市、津南町

企画展「作家の視線― 過去と現在、そして…」

開催中〜2024/11/11

ホキ美術館

千葉県・千葉市

田名網敬一 記憶の冒険

開催中〜2024/11/11

国立新美術館

東京都・港区

第76回 正倉院展

2024/10/26〜2024/11/11

奈良国立博物館

奈良県・奈良市

特別展 文明の十字路  バーミヤン大仏の太陽神と弥勒信仰 ―ガンダーラから日本へ―

開催中〜2024/11/12

三井記念美術館

東京都・中央区

生誕130年記念 北川民次展―メキシコから日本へ

2024/09/21〜2024/11/17

世田谷美術館

東京都・世田谷区

森の芸術祭 晴れの国・岡山

2024/09/28〜2024/11/24

芸術祭(岡山県北部12市町村、津山市、新見市、真庭市、鏡野町、奈義町など))

岡山県・北部12市町村

大正・昭和のモダニスト 蕗谷虹児展

2024/10/05〜2024/11/24

平塚市美術館

神奈川県・平塚市

小川晴暘と飛鳥園 一〇〇年の旅

開催中〜2024/11/24

半蔵門ミュージアム

東京都・千代田区

北斎が紡ぐ平安のみやびー江戸に息づく王朝文学

2024/09/18〜2024/11/24

すみだ北斎美術館

東京都・墨田区

悠久のペルシア‐技・美・伝統‐

2024/09/21〜2024/11/24

古代オリエント博物館

東京都・豊島区

フィリップ・パレーノ:この場所、あの空

開催中〜2024/12/01

ポーラ美術館

神奈川県・足柄下郡箱根町

心象工芸展

開催中〜2024/12/01

国立工芸館

石川県・金沢市

田中一村展 奄美の光 魂の絵画

2024/09/19〜2024/12/01

東京都美術館

東京都・台東区

アルフォンス・ミュシャ ふたつの世界

2024/09/21〜2024/12/01

府中市美術館

東京都・府中市

月百姿×百段階段~五感で愉しむ月めぐり~

2024/10/05〜2024/12/01

ホテル雅叙園東京 東京都指定有形文化財「百段階段」

東京都・目黒区

信長の手紙 ―珠玉の60通大公開―

2024/10/05〜2024/12/01

永青文庫

東京都・文京区

挂甲の武人 国宝指定50周年記念 特別展『はにわ』

2024/10/16〜2024/12/08

東京国立博物館

東京都・台東区

没後50年記念 福田平八郎×琳派

2024/09/29〜2024/12/08

山種美術館

東京都・渋谷区

広重ブルー

2024/10/05〜2024/12/08

太田記念美術館

東京都・渋谷区

ベル・エポック―美しき時代 パリに集った芸術家たち ワイズマン&マイケル コレクションを中心に

2024/10/05〜2024/12/15

パナソニック汐留美術館

東京都・港区

コスチュームジュエリー ―美の変革者たち― シャネル、ディオール、スキャパレッリ 小瀧千佐子コレクションより

開催中〜2024/12/15

宇都宮美術館

栃木県・宇都宮市

特別展 オタケ・インパクト ―越堂・竹坡・国観、尾竹三兄弟の日本画アナキズム―

2024/10/19〜2024/12/15

泉屋博古館東京

東京都・港区

SENSE ISLAND/LAND|感覚の島と感覚の地 2024

2024/10/26〜2024/12/15

猿島および横須賀市街地(芸術祭)

神奈川県・横須賀市

荒川ナッシュ医 ペインティングス・アー・ポップスターズ

2024/10/30〜2024/12/16

国立新美術館

東京都・港区

リキッドスケープ 東南アジアの今を見る

2024/09/21〜2024/12/24

アーツ前橋

群馬県・前橋市

追悼 野見山暁治 野っ原との契約

2024/10/06〜2024/12/25

練馬区立美術館

東京都・練馬区

「テレンス・コンラン モダン・ブリテンをデザインする」展

2024/10/12〜2025/01/05

東京ステーションギャラリー

東京都・千代田区

さくらももこ展

2024/10/05〜2025/01/05

森アーツセンターギャラリー

東京都・港区

心のまんなかでアートをあじわってみる

開催中〜2025/01/13

原美術館ARC

群馬県・渋川市

アレック・ソス 部屋についての部屋

2024/10/10〜2025/01/19

東京都写真美術館

東京都・目黒区

「ルイーズ・ブルジョワ展:  地獄から帰ってきたところ 言っとくけど、素晴らしかったわ」

2024/09/25〜2025/01/19

森美術館

東京都・港区

再開館記念 「不在」ートゥールーズ=ロートレックとソフィ・カル

2024/11/23〜2025/01/26

三菱一号館美術館

東京都・千代田区

ポケモン×工芸展-美とわざの大発見-

2024/11/01〜2025/02/02

麻布台ヒルズ ギャラリー

東京都・港区

中国陶磁展 うわぐすりの1500年

2024/10/29〜2025/02/09

松岡美術館

東京都・港区

ジャム・セッション 石橋財団コレクション×毛利悠子—ピュシスについて

2024/11/02〜2025/02/09

アーティゾン美術館

東京都・中央区

おしゃべり美術館 ひらビあーつま~れ10年記念展

2024/09/21〜2025/02/16

平塚市美術館

神奈川県・平塚市

企画展「ゴミうんち展」

2024/09/27〜2025/02/16

21_21 DESIGN SIGHT

東京都・港区

開館2周年記念特別企画「藤田嗣治の愛しきものたち」

2024/09/27〜2025/02/18

軽井沢安東美術館

長野県・軽井沢町

反復と偶然展

2024/12/17〜2025/02/24

国立工芸館

石川県・金沢市

寺山修司展

2024/10/05〜2025/03/30

世田谷文学館

東京都・世田谷区

東京都庭園美術館の本展の入り口

Exhibitions

生誕140年 YUMEJI展
大正浪漫と新しい世界

  • 東京都庭園美術館 (東京都・港区)
  • 夢二郷土美術館 (岡山県・岡山市)
  • あべのハルカス美術館 (大阪府・大阪市)
  • 富山県水墨美術館 (富山県・富山市)
  • 大分県立美術館 (大分県・大分市)

「竹久夢二の作品を、先入観なしに見てください」

 明治末から大正・昭和初期に活躍した竹久夢二(たけひさゆめじ)(1884~1934年)は、独学で自身の画風を確立した画家だ。彼は大きな瞳の哀愁をたたえた「夢二式美人」で一世を風靡し、雑誌や楽譜の装幀、挿絵、日用品のデザインにも人気を博した。「宵待草」の作詞など手掛けた詩人でもあった。当時の日本に華開いた独特の文化を大正浪漫と呼ぶ。その時代、大衆から絶大な支持を得て愛されたのが夢二だった。その大規模な展覧会が開催中だ。東京都庭園美術館を皮切りに全5~6館を巡回。本記事は東京都庭園美術館で取材した。
 
 本展の特徴は、①夢二の幅広い画業と活動を紹介するなかで、②希少な油彩画が多く出品され、③晩年に実現した外遊の際に描いたスケッチ群が初公開されること。よって本展は、夢二芸術の新しい相貌を提示するものだ。監修者の岡部昌幸 帝京大学名誉教授は、「本展で、竹久夢二を先入観なしに見てください」と、開幕前の記者会見で強調された。
 
 東京都庭園美術館の本館は、重要文化財の歴史的建造物だ。「アール・デコの館」として有名な朝香宮邸(基本設計:宮内省内匠寮、主要各室内装設計:フランス人装飾家アンリ・ラパン。1933年竣工)である。鶴 三慧 同館学芸員により、夢二と同時代の優れた邸宅空間を存分に活かした夢二作品の見事な展示がなされた。両者の共鳴も魅力的だ。

東京都庭園美術館の本展の入り口
東京都庭園美術館の本展の入り口

全体構成

 本展の構成は以下である。
 1章 清新な写生と「夢二のアール・ヌーヴォー」/2章 大正浪漫の源泉―異郷、異国への夢/3章 日本のベル・エポック―「夢二の時代」の芸術文化/4章 アール・デコの魅惑と新しい日本画―1924-1931年/5章 夢二の新世界―アメリカとヨーロッパでの活動―1931-1934年。
 出品作品は約180点。主に夢二の故郷・岡山にある夢二郷土美術館のコレクションだ。

油彩画《アマリリス》:中期の挑戦的な絵画

 東京都庭園美術館の会場に入ってまず目に入るのが、油彩画《アマリリス》(1919〈大正8〉年頃)。前面に鉢植えの大きなアマリリス、その後ろに目の大きな面長の、着物姿の女性が描かれる。本に大きな手を置く。テーブルにはコーヒーカップ。花の赤色と女性の半襟と帯締めの赤色が響き合い、帯の青色が輝く。アマリリスは美しくも、鋭く、劇的でもある。何を暗示するのか、など想像力を喚起する。構図も色彩も面白く、不思議な魅力を放つ作品だ。花が髪飾りにも見える。装飾的なアール・ヌーヴォーの影響があり、人物の姿勢は《モナ・リザ》等の西洋肖像画にならうようだ。日本と西洋の伝統、西洋の新しい美術動向を融合させた夢二独自の新しい油彩画である。挑戦的な作品だ。
 
 本作は、夢二が逗留していた東京の菊富士ホテルで描かれ、モデルはお葉(本名は、佐々木カ子ヨ)とされる。1919年(大正8)9月に福島県で開かれた「竹久夢二抒情画展覧会」に出品。代表作だったようだ。長らく行方不明となっていたが、最近、岡部先生のもとに情報がよせられ、発見。本展にて東京での初公開となった。

東京都庭園美術館の会場風景(以下同様)。竹久夢二《アマリリス》1919(大正8)年頃 油彩、カンヴァス 夢二郷土美術館蔵
★東京都庭園美術館の会場風景(以下同様)。竹久夢二《アマリリス》1919(大正8)年頃 油彩、カンヴァス 夢二郷土美術館蔵

自身で画集を出版し、個展を企画/港屋での販売

 竹久夢二は、1884(明治17)年、岡山県邑久(おく)郡本庄村(現・瀬戸内市)に生まれた。本名は茂次郎(もじろう)。18歳で東京の早稲田実業学校に入学するが、画家になることを決意し、新聞や雑誌にコマ絵(カットのこと)や挿絵を描いた。
 
 1909(明治42)年、初の著作『夢二画集 春の巻』を刊行し、爆発的人気を得た。画集を次々と刊行。また1912(大正元)年には京都府立図書館で初の個展を自らの考案で開催し、大盛況となった。その出品作の油彩画《初恋》(1912〈大正元〉年)は、島崎藤村の詩「初恋」に因むものとされ、男女の心模様が画面全体に漂う印象深い作品。本展で本作は、朝香宮邸の書庫だった暗闇空間に一点のみ架かり、展示方法も圧巻。その後も夢二は、全国各地で個展を開催してゆく。

★竹久夢二《初恋》1912(大正元)年 油彩、カンヴァス 夢二郷土美術館蔵
竹久夢二《初恋》1912(大正元)年 油彩、カンヴァス 夢二郷土美術館蔵
手前から、竹久夢二《林檎》1914(大正3)年 絹本着色 夢二郷土美術館蔵。竹久夢二《白夜》1922(大正11)年頃 絹本着色  夢二郷土美術館蔵
手前から、竹久夢二《林檎》1914(大正3)年 絹本着色 夢二郷土美術館蔵。竹久夢二《白夜》1922(大正11)年頃 絹本着色  夢二郷土美術館蔵

 1914(大正3)年に妻たまきを店主として「港屋絵草紙店」を開店。夢二の木版画、著作やデザインした千代紙や半襟などの日用品を販売し、多くの客が訪れた(2年後に閉店)。

竹久夢二《一座の花形(みなとや版)》1916(大正5)年頃 木版、紙 夢二郷土美術館蔵
竹久夢二《一座の花形(みなとや版)》1916(大正5)年頃 木版、紙 夢二郷土美術館蔵
手前から、竹久夢二《千代紙「桜草」「蔓草」(みなとや版)》大正前期 木版、紙 夢二郷土美術館蔵
手前から、竹久夢二《千代紙「桜草」「蔓草」(みなとや版)》大正前期 木版、紙 夢二郷土美術館蔵

 夢二は作品を「抒情画」と名付けた。本人の積極的な活動によって、夢二作品の人気は高まるばかりだった。1923(大正12)年の関東大震災では、連日行ったスケッチと文章を都新聞に連載し、ジャーナリストとしても活動。本展では、震災スケッチの原画も見られる。その翌年、東京都荏原郡松沢村松原(現・世田谷区松原)に自身の設計になるアトリエ兼住居「少年山荘」を建てた。これは夢二郷土美術館に復元設置されている。

手前から、竹久夢二《初恋之歌『セノオ楽譜』No.15》1918(大正7)年 3版/1916(大正5)年 初版 夢二郷土美術館蔵。《アイ・ウォント・ア・プレティ・ガール『セノオ楽譜』No.361》1924(大正13)年 初版 夢二郷土美術館蔵
手前から、竹久夢二《初恋之歌『セノオ楽譜』No.15》1918(大正7)年 3版/1916(大正5)年 初版 夢二郷土美術館蔵。《アイ・ウォント・ア・プレティ・ガール『セノオ楽譜』No.361》1924(大正13)年 初版 夢二郷土美術館蔵
竹久夢二《憩い(女)》昭和初期 絹本着色 夢二郷土美術館蔵。二曲屛風が一対となる作品の一つ。この女性が座るのは、夢二が住んだ「少年山荘」のテラスとされる。
竹久夢二《憩い(女)》昭和初期 絹本着色 夢二郷土美術館蔵。二曲屛風が一対となる作品の一つ。この女性が座るのは、夢二が住んだ「少年山荘」のテラスとされる。

晩年の渡米と渡欧/帰国の翌年に49歳で病没

 1931(昭和6)年、夢二は『週刊朝日』編集長の翁久允に欧米への旅に誘われ、旅費のために個展を開催した。豊作の女神を描いた《立田姫》(1931〈昭和6〉年)はその出品作だ。

竹久夢二《立田姫》1931(昭和6)年 紙本着色 夢二郷土美術館蔵
竹久夢二《立田姫》1931(昭和6)年 紙本着色 夢二郷土美術館蔵

 夢二は1931(昭和6)年5月にアメリカへ出発。西海岸に滞在し、外国人をモデルに描いた唯一の作品として現存する油彩画《西海岸の裸婦》(1931~32〈昭和6~7〉年)や、風景画などを残した。翌年9月に渡欧。スイスの画家で、バウハウスに招聘された美術教育者のヨハネス・イッテン(1888~1967年)とも交流した。夢二はイッテンがベルリンに開校したイッテン画塾で1933(昭和8)年2月から日本画の講習会を行い、市内で個展も開いた。しかし6月末、画塾はナチスの突撃を受け、閉鎖されてしまう。同年9月、夢二は帰国した
 
 2年4カ月に及ぶ外遊は世界の激動期と重なった。夢二は貧苦のなかで、新しい画境を模索し続けた。常にスケッチ帖を携えていた。帰国後に台北で個展を開いたが、少年山荘に帰宅したのち結核の病に倒れた。翌1934(昭和8)年1月、長野県の富士見高原療養所の正木不如丘所長に迎えられ、同療養所特別病棟に入院。そして9月に没した。50歳目前の49歳であった。外遊前に発表し意欲を燃やした「榛名山美術研究所」の構想も潰えてしまった。
 夢二は、正木所長に外遊中に描いた膨大な量のスケッチを託していた。この一部が本展で初めて公開されている。女性像、風景、また日記にはヒトラーらしき顔も見られる。夢二の限りなき探求心が伝わってくる。

手前から、竹久夢二《ワイニマの桟橋》1932(昭和7)年 油彩、カンヴァス 夢二郷土美術館蔵。《海岸》1932(昭和7)年 油彩、板 夢二郷土美術館蔵
手前から、竹久夢二《ワイニマの桟橋》1932(昭和7)年 油彩、カンヴァス 夢二郷土美術館蔵。《海岸》1932(昭和7)年 油彩、板 夢二郷土美術館蔵
竹久夢二《ベルリンの公園》1933(昭和8)年 ペン・水彩、紙 夢二郷土美術館蔵
竹久夢二《ベルリンの公園》1933(昭和8)年 ペン・水彩、紙 夢二郷土美術館蔵

 夢二というと、思うのは、「夢二」の号のこと。傾倒する画家・藤島武二(1867~1943年)にあやかって自ら名付け、21歳から使用した名前だが、彼が創り出した世界になんとふさわしいのだろう。本展は、夢二の本領であるその抒情的世界とともに、自身で道を拓き、挑戦を重ねる夢二の姿を、その逞しさを浮かび上がらせる。充実した内容で見応えがある。
 
 

【参考文献】
1)岡部昌幸 監修:『生誕140年 YUMEJI展 大正浪漫と新しい世界』(展覧会図録)、岡部昌幸・高橋世織・小嶋光信・小嶋ひろみ・平松里美・井土真菜・鶴 三慧・横山志野・池田隆代・木藤野絵 執筆、産経新聞社、2024年
2)小川晶子:『もっと知りたい 竹久夢二 生涯と作品』東京美術、2009年
3)石川桂子・谷口朋子:『竹久夢二―美と愛への憧憬に生きた漂泊の画人』六耀社、1999年
 
執筆・撮影(★を除く):細川いづみ(HOSOKAWA Fonte Idumi) 
(2024年7月)
 
※会場内の風景画像は主催者側の許可を得て撮影したものです。
※本文・図版とも無断引用・無断転載を禁じます。

生誕140年 YUMEJI展 大正浪漫と新しい世界
 
TAKEHISA YUMEJI: TAISHO ROMANTICISM AND THE NEW WORLD
AN EXHIBITION COMMEMORATING
THE 140TH ANNIVERSARY OF THE ARIST’S BIRTH
 
【会期・会場】
[東京展] 2024年6月1日(土)~8月25日(日) 東京都庭園美術館(東京都・港区)
 
※詳細は公式サイトでご確認ください。
公式サイト https://www.teien-art-museum.ne.jp
 
[岡山展] 2024年9月7日(土)~12月8日(日) 夢二郷土美術館(岡山県・岡山市)
[大阪展] 2025年1月18日(土)~3月16日(日) あべのハルカス美術館(大阪府・大阪市)
[富山展] 2025年5月23日(金)~6月29日(日) 富山県水墨美術館(富山県・富山市)
[大分展] 2025年7月6日(日)~8月17日(日) 大分県立美術館(大分県・大分市)