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絵画のゆくえ2025

開催中〜2025/02/11

SOMPO美術館

東京都・新宿区

おしゃべり美術館 ひらビあーつま~れ10年記念展

開催中〜2025/02/16

平塚市美術館

神奈川県・平塚市

企画展「ゴミうんち展」

開催中〜2025/02/16

21_21 DESIGN SIGHT

東京都・港区

開館2周年記念特別企画「藤田嗣治の愛しきものたち」

開催中〜2025/02/18

軽井沢安東美術館

長野県・軽井沢町

反復と偶然展

開催中〜2025/02/24

国立工芸館

石川県・金沢市

漫画家・森薫と入江亜季 展 ―ペン先が描く緻密なる世界―

開催中〜2025/02/24

世田谷文学館

東京都・世田谷区

Hello Kitty展 –わたしが変わるとキティも変わる–

開催中〜2025/02/24

東京国立博物館

東京都・台東区

特別展「鳥 〜ゲノム解析が解き明かす新しい鳥類の系統〜」

開催中〜2025/02/24

国立科学博物館

東京都・台東区

【特別展】HAPPYな日本美術 ―伊藤若冲から横山大観、川端龍子へ―

開催中〜2025/02/24

山種美術館

東京都・渋谷区

手塚治虫 ブラック・ジャック展

開催中〜2025/02/25

そごう美術館

神奈川県・横浜市

瑞祥のかたち

開催中〜2025/03/02

皇居三の丸尚蔵館

東京都・千代田区

アニメ「鬼滅の刃」 柱展 ーそして無限城へー

開催中〜2025/03/02

CREATIVE MUSEUM TOKYO

東京都・中央区

読み解こう!北斎も描いた江戸のカレンダー

開催中〜2025/03/02

すみだ北斎美術館

東京都・墨田区

川端龍子+高橋龍太郎コレクション  コラボレーション企画展「ファンタジーの力」

開催中〜2025/03/02

大田区立龍子記念館

東京都・大田区

evala 現われる場 消滅する像

開催中〜2025/03/09

NTTインターコミュニケーション・センター [ICC]

東京都・新宿区

ミニチュア×百段階段~文化財に広がるちいさな世界~

開催中〜2025/03/09

ホテル雅叙園東京 東京都指定有形文化財「百段階段」

東京都・目黒区

「生誕120年 宮脇綾子の芸術 見た、切った、貼った」展

開催中〜2025/03/16

東京ステーションギャラリー

東京都・千代田区

花器のある風景

開催中〜2025/03/16

泉屋博古館東京

東京都・港区

Artists in FAS 2024 「入選アーティストによる成果発表展」

開催中〜2025/03/16

藤沢市アートスペース

神奈川県・藤沢市

開創1150年記念 特別展「旧嵯峨御所 大覚寺 -百花繚乱 御所ゆかりの絵画-」

開催中〜2025/03/16

東京国立博物館

東京都・台東区

荏原 畠山美術館 開館記念展II[破] 琳派から近代洋画へ—数寄者と芸術パトロン 即翁・酒井億尋ー

開催中〜2025/03/16

荏原 畠山美術館

東京都・港区

吉村靖孝展 マンガアーキテクチャー ――建築家の不在

開催中〜2025/03/23

TOTOギャラリー・間

東京都・港区

「ACT (Artists Contemporary TOKAS) Vol. 7『複数形の身体』」

2025/02/22〜2025/03/23

「ACT (Artists Contemporary TOKAS) Vol. 7『複数形の身体』」

東京都・文京区

FACE展2025

2025/03/01〜2025/03/23

SOMPO美術館

東京都・新宿区

特別展「夢美セレクション展」

開催中〜2025/03/23

八王子市夢美術館

東京都・八王子市

「Alternative Living展」(オルタナティブ リビング展)

開催中〜2025/03/23

SusHi Tech Square 1F Space

東京都・千代田区

特別展 ドキュメント「アートキャンプ白州 -記録映像で甦る夏 1988~2010-」

2025/02/15〜2025/03/23

山梨県立美術館

山梨県・甲府市

寺山修司展(コレクション展)

開催中〜2025/03/30

世田谷文学館

東京都・世田谷区

平山郁夫《想一想》と昭和期の日本画家たち

開催中〜2025/03/30

半蔵門ミュージアム

東京都・千代田区

MOTコレクション 竹林之七妍/小さな光/開館30周年記念プレ企画 イケムラレイコ マーク・マンダース  Rising Light/Frozen Moment

開催中〜2025/03/30

東京都現代美術館

東京都・江東区

VOCA展2025 現代美術の展望-新しい平面の作家たち

2025/03/15〜2025/03/30

上野の森美術館

東京都・台東区

特別展 魂を込めた 円空仏 —飛騨・千光寺を中心にして—

開催中〜2025/03/30

三井記念美術館

東京都・中央区

体感型デジタルアートミュージアム「動き出す浮世絵展 TOKYO」

開催中〜2025/03/31

寺田倉庫G1ビル

東京都・品川区

ブルックリン博物館所蔵 特別展 古代エジプト

開催中〜2025/04/06

森アーツセンターギャラリー

東京都・港区

インフルエンサー 北斎

開催中〜2025/04/06

北斎館

長野県・小布施町

キース・ヘリング展 アートをストリートへ

開催中〜2025/04/06

茨城県近代美術館

茨城県・水戸市

【特別展】桜 さくら SAKURA 2025 ―美術館でお花見!

2025/03/08〜2025/05/11

山種美術館

東京都・渋谷区

松山智一展 FIRST LAST

2025/03/08〜2025/05/11

麻布台ヒルズ ギャラリー(麻布台ヒルズ ガーデンプラザA MB階)

東京都・港区

カラーズ — 色の秘密にせまる 印象派から現代アートへ

開催中〜2025/05/18

ポーラ美術館

神奈川県・足柄下郡箱根町

開館50周年記念「1975 甦る 新橋 松岡美術館 ―大観・松園・東洋陶磁―」

2025/02/25〜2025/06/01

松岡美術館

東京都・港区

「総合開館30周年記念 鷹野隆大 カスババ ―この日常を生きのびるために―」展

2025/02/27〜2025/06/08

東京都写真美術館

東京都・目黒区

マシン・ラブ:ビデオゲーム、AI と現代アート

2025/02/13〜2025/06/08

森美術館

東京都・港区

特別展「古代DNA―日本人のきた道―」

2025/03/15〜2025/06/15

国立科学博物館

東京都・台東区

花と暮らす展

2025/03/14〜2025/06/22

国立工芸館

石川県・金沢市

特別企画展「めぐる いのち 熊谷守一美術館40周年展」

2025/04/15〜2025/06/29

豊島区立 熊谷守一美術館

東京都・豊島区

藤田嗣治 猫のいる風景

2025/03/06〜2025/09/28

軽井沢安東美術館

長野県・軽井沢町

展示風景 左より《ロバ》1928年 愛媛県美術館/《本を読む労働者》1927年 郡山市立美術館

Exhibitions

生誕130年記念 北川民次展
メキシコから日本へ

 1920年代から30年代にかけて、メキシコで画家と美術教師として活動し、戦後は愛知県の瀬戸を拠点とした北川民次(1894-1989)の個展が、東京の世田谷美術館で開催されている。回顧展としては約30年ぶり。この間の研究調査の成果も活かし、従来とはまた違う視点からも作家に光をあてた展覧会だ。

展示風景より、《やしの木のある風景》1921年 個人蔵 キューバ滞在期に描かれた貴重な現存作品である。
展示風景より、《やしの木のある風景》1921年 個人蔵 キューバ滞在期に描かれた貴重な現存作品である。

 メキシコとの関わりのイメージが強い北川だが、メキシコに渡ったのは偶然だったそうだ。静岡の製茶業の家に生まれた北川は、大学予科を中退後、20歳で北米西部在住の兄を頼って渡米。転居したニューヨークで劇場の舞台背景を描く仕事をしながら美術学校で学ぶが、1920年には「もっと充実したライフと暖かさを求めて」南部へと向かう。ところがキューバで現金と荷物を盗まれ、描きかけの画布と絵具箱だけを手に革命後のメキシコに辿りついたのだという。同地でも赤痢にかかったり、聖画を売り歩いて放浪したりと、ドラマチックな生活を送るも、30歳頃から国立美術学校などで学び、やがて主に先住民のための野外美術学校の指導者を務めながら、個展を開催するなど画家としての活動を本格化させた。

「1.民衆へのまなざし」展示風景 メキシコ時代の作品群
「1.民衆へのまなざし」展示風景 メキシコ時代の作品群

 今回の回顧展では、時系列で作品が並ぶ展示とは異なり、北川を特徴づける5つの視点をもとにした章のそれぞれで、メキシコ時代の作品や着想から1936年の帰国後の展開を見せていく構成がとられている。章ごとに「メキシコから日本へ」という流れがループ状に繰り返されるが、この構成によって北川がいくつもの面をもった画家であったことがわかると同時に、全体を通して見ると、彼が一貫して市井の人々に温かな眼差しを向けるとともに、その民衆を翻弄する社会に対して鋭い批判の目をもっていたことが感じとれる。

展示風景 左より、《トラルパム霊園のお祭り》1930年 名古屋市美術館/《ランチェロの唄》1938年 東京国立近代美術館
展示風景 左より、《トラルパム霊園のお祭り》1930年 名古屋市美術館/《ランチェロの唄》1938年 東京国立近代美術館

 「1.民衆へのまなざし」では、キューバやメキシコでの初期作や帰国後の戦中戦後の作品が並ぶ。メキシコ時代の代表作《トラルパム霊園のお祭り》は、「生」を象徴する赤子を囲む女性たちと「死」を象徴する葬列を教会と霊園とともに描いたもの。当時の北川は第一子が誕生した頃で、その子と妻を描き入れたと思われる絵には、メキシコ人の文化に自身の体験を重ね合わせようとする共感の姿勢が感じられるという。
 一方、メキシコを題材としたように見える《ランチェロの唄》は、実は帰国後の作。戦時体制に入るなか、武器を傍らに楽器を弾いて人々を踊りに誘う男たちに国家権力を象徴させ、世相を揶揄している。戦争画が描かれた時代、北川が軍国主義を批判的にとらえた作品に取り組んでいたことは、その後の作品からも見てとれる。

展示風景より、《メキシコ三童女》1937年 愛知県美術館
展示風景より、《メキシコ三童女》1937年 愛知県美術館

 特に力強い大作が多数並ぶのは、「2.壁画と社会」の章。メキシコ革命後の新しい国家の理想を民衆に伝えるための「壁画運動」の影響を受け、自身も社会に関与する作品を生み出そうと望んだ北川は、帰国後も壁画に引きのばす意図をもって制作した。

展示風景より、《タスコの祭》1937年 静岡県立美術館
展示風景より、《タスコの祭》1937年 静岡県立美術館

 メキシコの人々やその営みを卵黄を使ったテンペラ技法で力強く描いた絵画は注目を浴び、その後は日本の労働者や安保問題などを扱った大作の制作へと続いていく。画材を買う余裕がないため、評価を受けた展覧会出品作を塗りつぶして新しい絵を描いたといった解説を読むと、北川にはそこまでしても描きたい、訴えたいメッセージがあったのだということが伝わってくる。

「2.壁画と社会」展示風景
「2.壁画と社会」展示風景
「3.幻想と象徴」展示風景
「3.幻想と象徴」展示風景
展示風景より、《百鬼夜行》1973年 刈谷市美術館
展示風景より、《百鬼夜行》1973年 刈谷市美術館

 視点の新しさが特に感じられる章は、「3.幻想と象徴」だろうか。社会の諸相をリアルにとらえる北川が、シュルレアリスムにも影響を受けていたことを示唆する章だ。戦時下には、そうした暗示的な手法によって時代への抵抗を示すこともあったとか。そして、人々や社会に対するそのまなざしは、「4.都市と機械文明」にも見られる。1943年に瀬戸に疎開した北川は、陶磁器の焼成を生業とする人々やかまどのある情景を好んで描いたが、のちには公害をテーマにした作品も描いている。

展示風景 左より、《砂の工場》1959年 愛知県美術館/《哺育》1964年 名古屋市美術館
展示風景 左より、《砂の工場》1959年 愛知県美術館/《哺育》1964年 名古屋市美術館
展示風景 左より、《赤いオイルタンク》1960年 瀬戸市美術館/《瀬戸のまちかど》1946年 個人蔵
展示風景 左より、《赤いオイルタンク》1960年 瀬戸市美術館/《瀬戸のまちかど》1946年 個人蔵

 教育活動を展示で見せるのは難しいというが、北川の教育者としてのあり方を見せるため、本展では1章が捧げられている。メキシコの生活や労働に不可欠なロバの温かな表情を丁寧な筆致と美しい色彩で描いた《ロバ》は、教え子の制作に刺激を受けて新しい表現に取り組んだ時期の作だという。この章では、教え子たちの作品や資料とともに、戦時下に制作した絵本や戦後の児童美術学校での活動の紹介もある。北川は絵を描くことを通して、子どもたちが「自由」を希求する生き方をつかみとれるようにしたいと願っていたという。

展示風景 左より《ロバ》1928年 愛媛県美術館/《本を読む労働者》1927年 郡山市立美術館
展示風景 左より《ロバ》1928年 愛媛県美術館/《本を読む労働者》1927年 郡山市立美術館
「5. 美術教育と絵本の仕事」展示風景
「5. 美術教育と絵本の仕事」展示風景

 エピローグは、ここまで「メキシコから日本へ」のループをたどってきた者には、ハッピーエンドの感がある。1955年、北川は第二の故郷とも呼ぶべきメキシコへの再訪をはたし、友人との旧交も温めた。そして1950年代末以降には、企業や公共施設からの依頼で、念願の壁画制作も実現したのだ。

展示風景 左より《メキシコ市場の一隅》1956年 東京都現代美術館/《名古屋CBC会館壁画原画 芸術と平和》1958年 中部日本放送株式会社
展示風景 左より《メキシコ市場の一隅》1956年 東京都現代美術館/《名古屋CBC会館壁画原画 芸術と平和》1958年 中部日本放送株式会社
展示風景より《名古屋旧カゴメビル壁画原画 TOMATO》1962年頃 カゴメ株式会社
展示風景より《名古屋旧カゴメビル壁画原画 TOMATO》1962年頃 カゴメ株式会社

 今回の展覧会は、約180点に及ぶ作品と資料を通じ、北川のこうした濃密な人生とその表現の多彩さにふれられる貴重な機会となっている。論考に加え、採録や年譜の充実した展覧会図録も、見応え・読み応えがある。
 
 
執筆・写真撮影 中山ゆかり
*会場内の写真はすべて主催者の許可を得て撮影した北川民次の作品です。
 
*参考文献:
「北川民次展 メキシコから日本へ」図録

生誕130年記念 北川民次展 メキシコから日本へ
Kitagawa Tamiji Retrospective: From Mexico to Japan
 
【会期・会場】
2024 年9月21 日(土)〜 11 月17日(日) 世田谷美術館(東京都・世田谷区)
 
※本記事は世田谷美術館の会場を取材したものですが、同展は下記の会場に巡回します。
2025年1月25日(土)〜3月23日(日)
郡山市立美術館(福島県・郡山市)
 
※来場にあたっての注意事項等については、公式ウェブサイトをご確認ください。
https://www.setagayaartmuseum.or.jp/