詳細はミュージアムのオフィシャルサイトなどでご確認ください。

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TOKAS-Emerging

開催中〜2025/05/04

トーキョーアーツアンドスペース本郷

東京都・文京区

百花ひらく-花々をめぐる美-

開催中〜2025/05/06

皇居三の丸尚蔵館

東京都・千代田区

近藤亜樹:我が身をさいて、みた世界は

開催中〜2025/05/06

水戸芸術館現代美術センター

茨城県・水戸市

hideって誰?FINAL PSYCHOVISION hide MUSEUM Since 2000

開催中〜2025/05/07

そごう美術館

神奈川県・横浜市

【特別展】桜 さくら SAKURA 2025 ―美術館でお花見!

開催中〜2025/05/11

山種美術館

東京都・渋谷区

松山智一展 FIRST LAST

開催中〜2025/05/11

麻布台ヒルズ ギャラリー(麻布台ヒルズ ガーデンプラザA MB階)

東京都・港区

「この、原美術館ARCという時間芸術」第1期

開催中〜2025/05/11

原美術館ARC

群馬県・渋川市

春の江戸絵画まつり 司馬江漢と亜欧堂田善 かっこいい油絵

開催中〜2025/05/11

府中市美術館

東京都・府中市

特別展 はにわ

開催中〜2025/05/11

九州国立博物館

福岡県・太宰府市

特別展「国宝・燕子花図屏風-デザインの日本美術-」

開催中〜2025/05/12

根津美術館

東京都・港区

特別展「学習院コレクション 華族文化 美の玉手箱 芸術と伝統文化のパトロネージュ」

開催中〜2025/05/17

霞会館記念学習院ミュージアム

東京都・豊島区

カラーズ — 色の秘密にせまる 印象派から現代アートへ

開催中〜2025/05/18

ポーラ美術館

神奈川県・足柄下郡箱根町

企画展「ライトアップ木島櫻谷II― おうこくの線をさがしに 併設四季連作屏風」

開催中〜2025/05/18

泉屋博古館東京

東京都・港区

略画 — はずむ筆、おどる線—

開催中〜2025/05/18

北斎館

長野県・小布施町

戦後西ドイツのグラフィックデザイン モダニズム再発見

開催中〜2025/05/18

東京都庭園美術館

東京都・港区

三鷹天命反転中!!──荒川修作+マドリン・ギンズの死なないためのエクササイズ

開催中〜2025/05/18

三鷹市美術ギャラリー

東京都・三鷹市

開館30周年記念展 ブラチスラバからやってきた!世界の絵本パレード

開催中〜2025/05/18

千葉市美術館

千葉県・千葉市

生誕100年 中村正義展-その熱と渦-

開催中〜2025/05/18

平塚市美術館

神奈川県・平塚市

手塚治虫「火の鳥」展 -火の鳥は、エントロピー増大と抗う動的平衡(どうてきへいこう)=宇宙生命(コスモゾーン)の象徴-

開催中〜2025/05/25

東京シティビュー(六本木ヒルズ森タワー52階)

東京都・港区

没後80年 小原古邨 ―鳥たちの楽園

開催中〜2025/05/25

太田記念美術館

東京都・渋谷区

アート・アーカイヴ資料展XXVII 「交信詩あるいは書簡と触発:瀧口修造と荒川修作/マドリン・ギンズ」

開催中〜2025/05/30

慶應義塾大学アート・センター(三田キャンパス 南別館 1階)

東京都・港区

開館50周年記念「1975 甦る 新橋 松岡美術館 ―大観・松園・東洋陶磁―」

開催中〜2025/06/01

松岡美術館

東京都・港区

ゾフィー・トイバー=アルプとジャン・アルプ

開催中〜2025/06/01

アーティゾン美術館

東京都・中央区

すべてを描く萬(よろず)絵師 暁斎 ―河鍋暁斎記念美術館所蔵

2025/04/26〜2025/06/01

中之島 香雪美術館

大阪府・大阪市

イメージの魔術師 エロール・ル・カイン展

開催中〜2025/06/01

八王子市夢美術館

東京都・八王子市

皇室の美と山梨~皇居三の丸尚蔵館の名品~

2025/04/26〜2025/06/01

山梨県立美術館

山梨県・甲府市

特別展 ノー・バウンダリーズ

開催中〜2025/06/01

国立国際美術館

大阪府・大阪市

横浜美術館リニューアルオープン記念展「おかえり、ヨコハマ」

開催中〜2025/06/02

横浜美術館

神奈川県・横浜市

ヨシタケシンスケ展かもしれない たっぷり増量タイプ

開催中〜2025/06/03

CREATIVE MUSEUM TOKYO(東京・京橋TODA BUILDING 6階)

東京都・中央区

「総合開館30周年記念 鷹野隆大 カスババ ―この日常を生きのびるために―」展

開催中〜2025/06/08

東京都写真美術館

東京都・目黒区

マシン・ラブ:ビデオゲーム、AI と現代アート

開催中〜2025/06/08

森美術館

東京都・港区

西洋絵画、どこから見るか?―ルネサンスから印象派まで サンディエゴ美術館 vs 国立西洋美術館

開催中〜2025/06/08

国立西洋美術館

東京都・台東区

企画展示「20世紀イタリアの巨匠 マリノ・マリーニ 新収蔵の版画作品を中心に」

開催中〜2025/06/08

群馬県立近代美術館

群馬県・高崎市

遥かなるイタリア 川村清雄と寺崎武男

開催中〜2025/06/08

目黒区美術館

東京都・目黒区

特別展「古代DNA―日本人のきた道―」

開催中〜2025/06/15

国立科学博物館

東京都・台東区

タピオ・ヴィルカラ 世界の果て

開催中〜2025/06/15

東京ステーションギャラリー

東京都・千代田区

特別展「超 国宝―祈りのかがやき―」

開催中〜2025/06/15

奈良国立博物館

奈良県・奈良市

特別展「日本、美のるつぼ―異文化交流の軌跡―」

開催中〜2025/06/15

京都国立博物館

京都府・京都市

国宝の名刀と甲冑・武者絵 特集展示 三井家の五月人形

開催中〜2025/06/15

三井記念美術館

東京都・中央区

ラーメンどんぶり展 「器」からはじめるラーメン×デザイン考

開催中〜2025/06/15

21_21 DESIGN SIGHT

東京都・港区

特別展「蔦屋重三郎 コンテンツビジネスの風雲児」

2025/04/22〜2025/06/15

東京国立博物館

東京都・台東区

春の特別展「食の器と道具」

開催中〜2025/06/20

国際基督教大学博物館湯浅八郎記念館(ICU湯浅八郎記念館)

東京都・三鷹市

花と暮らす展

開催中〜2025/06/22

国立工芸館

石川県・金沢市

横尾忠則 連画の河

2025/04/26〜2025/06/22

世田谷美術館

東京都・世田谷区

総合開館30周年記念 TOPコレクション 不易流行

開催中〜2025/06/22

東京都写真美術館

東京都・目黒区

初夏展「くまもとの絶景―知られざる日本最長画巻『領内名勝図巻』―」

2025/04/26〜2025/06/22

永青文庫

東京都・文京区

藤田嗣治 ―7つの情熱

開催中〜2025/06/22

SOMPO美術館

東京都・新宿区

名作展「川端龍子の描き出した世界 生誕140年を迎えて」

開催中〜2025/06/22

大田区立龍子記念館

東京都・大田区

篠原一男 空間に永遠を刻む——生誕百年 100の問い

開催中〜2025/06/22

TOTOギャラリー・間

東京都・港区

黒の奇跡・曜変天目の秘密

開催中〜2025/06/22

静嘉堂文庫美術館@丸の内

東京都・千代田区

箱根-横須賀連携企画第3弾 アートでつなぐ山と海 箱根・芦ノ湖 成川美術館コレクション展 海辺のミュージアムで楽しむ日本画のきらめき

開催中〜2025/06/22

横須賀美術館

神奈川県・横須賀市

石田尚志 絵と窓の間

開催中〜2025/06/22

アーツ前橋 ギャラリー

群馬県・前橋市

特別企画展「めぐる いのち 熊谷守一美術館40周年展」

開催中〜2025/06/29

豊島区立 熊谷守一美術館

東京都・豊島区

ゴジラ生誕70周年記念 ゴジラ・THE・アート展

2025/04/26〜2025/06/29

森アーツセンターギャラリー

東京都・港区

アーツ・アンド・クラフツとデザイン ウィリアム・モリスからフランク・ロイド・ライトまで

開催中〜2025/06/29

茨城県近代美術館

茨城県・水戸市

まど・みちおのうちゅう―うちゅうの あんなに とおい あそこに さわる―

2025/04/27〜2025/06/29

宇都宮美術館

栃木県・宇都宮市

MOT Plus サウンドウォーク・コレクティヴ & パティ・スミス|コレスポンデンス

2025/04/26〜2025/06/29

東京都現代美術館

東京都・江東区

MOT Plus ハン・ネフケンス財団との共同プロジェクト シャハナ・ラジャニ

2025/04/29〜2025/06/29

東京都現代美術館

東京都・江東区

日本画コレクション再発見と 片岡球子「蔦屋重三郎の浮世絵師たち」

開催中〜2025/06/29

神奈川県立近代美術館 葉山

神奈川県・葉山町

民藝 MINGEI–美は暮らしのなかにある

2025/04/22〜2025/06/29

千葉県立美術館

千葉県・千葉市

鹿島茂コレクション フランスのモダングラフィック展 —20世紀初頭の風刺画からアール・デコ挿絵本、1930年代グラフィック雑誌まで

2025/04/26〜2025/06/29

群馬県立館林美術館

群馬県・館林市

リビング・モダニティ 住まいの実験 1920s-1970s

開催中〜2025/06/30

国立新美術館

東京都・港区

「この、原美術館ARCという時間芸術」第2期

2025/05/16〜2025/07/06

原美術館ARC

群馬県・渋川市

どうぶつ展 わたしたちはだれ? どこへむかうの?

開催中〜2025/07/06

PLAY! MUSEUM

東京都・立川市

橋口五葉のデザイン世界

2025/05/25〜2025/07/13

府中市美術館

東京都・府中市

岡崎乾二郎 而今而後 ジコンジゴ Time Unfolding Here

2025/04/29〜2025/07/21

東京都現代美術館

東京都・江東区

開館30周年記念 MOTコレクション 9つのプロフィール 1935→2025

2025/04/29〜2025/07/21

東京都現代美術館

東京都・江東区

企画展「死と再生の物語(ナラティヴ)―中国古代の神話とデザイン―」

2025/06/07〜2025/07/27

泉屋博古館東京

東京都・港区

【特別展】生誕150年記念 上村松園と麗しき女性たち

2025/05/17〜2025/07/27

山種美術館

東京都・渋谷区

士郎正宗の世界展~『攻殻機動隊』と創造の軌跡~

開催中〜2025/08/17

世田谷文学館

東京都・世田谷区

ほとけに随侍するもの

2025/04/23〜2025/08/31

半蔵門ミュージアム

東京都・千代田区

ACN ラムセス大王展 ファラオたちの黄金

開催中〜2025/09/07

ラムセス・ミュージアム at CREVIA BASE Tokyo

東京都・江東区

オランジュリー美術館 オルセー美術館 コレクションより ルノワール×セザンヌ—モダンを拓いた2人の巨匠

2025/05/29〜2025/09/07

三菱一号館美術館

東京都・千代田区

高畑勲展 ̶日本のアニメーションを作った男。

2025/06/27〜2025/09/15

麻布台ヒルズ ギャラリー

東京都・港区

小湊鉄道開業 100 周年記念展「古往今来・発車オーライ!」

2025/04/26〜2025/09/15

市原湖畔美術館

千葉県市原市

藤田嗣治 猫のいる風景

開催中〜2025/09/28

軽井沢安東美術館

長野県・軽井沢町

知られざる秀逸コレクション 東京・足立区立郷土博物館所蔵浮世絵名品展

2025/05/24〜2025/10/05

北斎館

長野県・小布施町

開館50周年記念 おいでよ!松岡動物園

2025/06/17〜2025/10/13

松岡美術館

東京都・港区

企画展「ゴッホ・インパクト—生成する情熱」

2025/05/31〜2025/11/30

ポーラ美術館

神奈川県・足柄下郡箱根町

Exhibitions

メトロポリタン美術館 古代エジプト展 「女王と女神」

女性ファラオや女神を通して見る
古代エジプト世界の底知れぬ魅力。
ニューヨークから、すべて日本初公開。

   何千年も前の遠い世界なのに、古代エジプト美術には大人も子供もどうしてこんなにワクワクさせられるのだろう。出品されているニューヨークのメトロポリタン美術館所蔵の約200点は、すべて日本初公開。「女王と女神」をテーマとして権力を手にした女性に的を絞った本展覧会は、古代エジプト美術の図抜けた迫力と、意外な親近感とを同時に体感でき、すばらしく楽しい。
   本展では、優れた女性ファラオ(王)のハトシェプスト女王にまつわる名品と、美と豊穣をつかさどるハトホルらの女神像を中心に、加えて王族の女性たちの姿やきらびやかな装身具なども紹介する。動物をかたどるものや動物と合体する造形も多いので、動物たちも本展の一方の主役ともいえるだろう。出品物には、大きくて重量感のある石像から極小の護符・スカラベ・奉納板までサイズもさまざまだが、どれもがエジプト美術のかけがえのない至宝だ。一つ一つを細かく見ていくと興味が尽きない。
■ハトシェプスト女王の像
   会場に入ると最初に、≪ハトシェプスト女王像の頭部≫(新王国時代、第18王朝)に出会える。高さ50cm弱。眼も口も大きく鼻が高く、涼やかな気品と威厳をもった見事な彫像だ。もとはハトシェプスト女王葬祭殿内のアメン神礼拝堂の柱としてあった全身像。胸の上で腕を交差するオシリス神としての姿だった。女王の死後、次のファラオのトトメス3世によって破壊され、この頭部は壊れた2体を合わせたものだ。赤に彩色された冠を被るが、実はこの上に白冠がのっていて赤と白で上・下エジプト全土の支配者を表した。全身像も観てみたかった、と思った。
   続く、白い石灰岩の≪ハトシェプスト女王のスフィンクス≫には女性らしい優しさや親しみやすさが感じられる。また、斑な花崗岩を彫った≪ひざまずくハトシェプスト女王像≫(ともに新王国時代、第18王朝)は、ファラオであることを示す付け髭と頭巾をつけた若い男性の姿。それぞれ様相が異なり、面白い。ともに女王葬祭殿に設置されていた像だ。
■ハトシェプスト女王とその時代
   古代エジプトでは、全土が統一された前3100年頃から約3000年間の間に多くのファラオが治世を行ったが、そのうち女王は6人とされる。プトレマイオス王朝のクレオパトラ7世(前51~前30年頃統治)が有名だが、最も成功したのが新王国時代 第18王朝のハトシェプスト女王だった。
   ハトシェプスト女王は、ファラオであるトトメス1世の娘であり、次のファラオのトトメス2世に嫁ぎ(第一王妃)、自らもファラオとなって約20年のあいだ実権を掌握して統治した(前1479~前1473頃:継子で甥のトトメス3世の摂政/前1473~前1458頃:ファラオとしてトトメス3世と共同統治)。その治世下は平和で繁栄した時代だった。プント(ソマリア沿岸とされる)への遠征など諸外国との交易も行い、その様子を描いたレリーフが女王葬祭殿の壁画にも残る(本展でそのレプリカを展示)。一方でヌビアと2度の戦いもあり、女王も指揮をとったとされる。
   本展ではハトシェプスト女王葬祭殿から出土した名品が数多く展示されるが、この優れた建築物の造営は女王の行った最大の芸術的事業となった。女王は、彼岸とされるナイル川西岸にある、100mの崖を背にしたディール・エル・バハリの地に巨大な三段のテラス式の葬祭殿を築いた。ここにアメン神をはじめとする神々の礼拝堂も造り、葬儀と神殿が結びついた建造物とした。そして最高神と密接に関係づけることで自らを神格化し、女王は女神となった。新王国時代の18王朝は前1550年頃から約150年続くが、都はナイルの中流域のテーベにまず開かれた。ナイル川東岸にはカルナック大神殿とルクソール神殿が建設され、毎年の祭の儀式ではカルナック大神殿が祀るアメン神がナイル川を渡り、ハトシェプスト女王葬祭殿に運ばれた。展覧会では、メトロポリタン美術館が1923~36年に行った発掘当時の図面に基づく女王葬祭殿の精巧な100分の1の模型が展示され、また1925年の発掘現場の映像も見ることができ、理解しやすい。
■ハトホルらの女神たち
   古代エジプトには数多くの神がいたが、その半分近くが女神だった。会場には、特にハトホル女神像やレリーフが多く出品されている。その形も材質も実にさまざまだ。動物の牛の形そのものの姿、泣いているようにも怒っているようにも見える独特の表情の女性の顔に牛の耳が付いているもの、また女性の頭上に太陽円盤を挟んだ牛の角をのせた像もある。シストラムやメナトという楽器の装飾にもハトホル女神はよく使われている。ハトホルとは、ファラオの生まれ変わりとされるホルス神を守り育てる母性の神であり、太陽神ラーとの関係も深く、創造の神ともされる。よって母性の象徴として雌牛に関係する姿で表され、美や豊穣、芸術をつかさどる。会場を巡ると、ハトホル女神が親しまれ、長期にわたって信仰されてきたことがわかる。
   他の女神像も面白い。例えば、アメンヘテプ3世葬祭殿に置かれていた雌ライオンの頭をもつ≪セクメト女神像≫(新王国時代、第18王朝)。坐像なのだが、すらっとしていてのびやか。戦闘と病気治癒の神だ。頭がネコの≪バステト女神の小像≫(末期王朝時代-プトレマイオス時代初期)もある。繁殖と関連づけられるという。ユーモラスで特に魅力的なのが、カバ・ライオン・ワニ・女性が合体した姿のタウェレト女神。青色の≪呪術のための壺≫(第2中間期‐第18王朝初期)や≪タウェレト女神の小像≫(マケドニア朝‐プトレマイオス朝)などが観られる。母性や出産をつかさどる女神とされる。
   メトロポリタン美術館のエジプト部門キュレーターのアデラ・オッペンハイム氏によると、「古代エジプトの神々は人間や動物との合体などさまざまな姿で表されているが、人々は神がこういう姿だったとは考えていなかった。その動物がもつ性格を備えた神がいた、と考えた」とのことだ。

■王家の女性たち:ティイ王妃、ネフェルティティ王妃、キヤ/ネフェルタリ王妃ら

   ハトシェプスト女王の後の時代の王家の女性たちに関係する名品も多く登場する。その紹介の前に、歴史の流れを少し辿っておこう。新王国第18王朝5代目に当たるハトシェプスト女王の死後、継子のトトメス3世が単独統治を行い、この時エジプトの領土が最大となる。その後、アメンヘテプ3世が自らの即位30年の祭のために都テーベの西にマルカタ王宮都市を建設。次のアメンヘテプ4世(アクエンアテン王)は面長の顔貌がレリーフなどで知られているが、特異なファラオだった。彼はそれまでのアメン神信仰から、アテン神を唯一神と変える宗教改革を行った。都を、ナイル川を下ったアマルナに移したため、この時代はアマルナ時代と呼ばれるが、美術も変化し、個性を強調する表現がみられる。しかしその宗教改革は10年ほどの一代限りで終わり、次のツタンカーメンはアメン神信仰に復帰し、メンフィスに遷都した。その後、将軍ラムセス1世が即位し19王朝に入る。また、ラムセス2世は巨大建造物の造営や遠征に力を入れた。なお、パリのコンコルド広場にあるオベリスクは、もとはルクソール神殿入り口に置かれていた「ラムセス2世のオベリスク」だ。
   王家の女性たちにまつわる品々の展示のなかで、アマルナ時代のものが特に印象深かった。アメンヘテプ3世の妻で、アクエンアテン王の母であるティイ王妃をかたどった≪ティイ王妃の複合石像の顔面部≫は、話しかけてくるようだ。やや面長なので、息子は母似なのかもしれない。≪清めの儀式を受けるキヤのレリーフ≫には、アクエンアテン王の後宮の妻であり、ツタンカーメンの母との説もあるキヤの横顔が刻まれ、その美貌を伝える。また、エジプト・アラバスタ―でつくられた《アクエンアテン王とネフェルティティ王妃のコブレット》はハス形の杯だが、その柔らかく優雅で繊細な表現に心を奪われた。以上がアマルナ時代のもの。また、19王朝のラムセス2世の王妃ネフェルタリが王宮でゲームをする≪セネトゲームで遊ぶネフェルタリ王妃(模写)≫(オリジナルは、「死者の書」第17章の呪文の挿絵。新王国時代、第19王朝)は、王妃の真剣な様子が微笑ましい。
■装身具や化粧道具 
   主に「トトメス3世の3人の外国人妻の墓」から発掘された装身具や化粧道具が展示されている。≪ロゼット形装飾の集合体≫(新王国時代、第18王朝)の赤と金の装飾の豪華さには息をのむ。また、キツネがちょこんとついた小さな髪飾りのような≪髪結いの道具≫(新王国時代、第18王朝)や香油や軟膏の入った整った形の壺形の容器を眺めていると、当時の王族の女性たちの美意識や日常生活が身近に感じられる。なお、古代エジプト独特のアイラインを強調する化粧は、強い日差しや虫を防ぐ効用があったとのことだ。
■来世への信仰/ミイラの棺、カノプス容器
   古代エジプト人は永遠の生命を信じ、それを得るために、ミイラとして身体を保存し、埋葬の準備をとどこおりなく行った。本展で最も驚嘆させられたのが、≪アメン・ラー神の歌い手ヘネトタウィの人型内棺とミイラ板≫(第3中間期、第21王朝)だ。その凛々しく美しい容姿と、隙間なく描かれためくるめく装飾の素晴らしさ。正面中央には天空の女神ヌゥトが翼を大きく広げる。ヘネトタウィは高位の神官だったようだ。また、4個一組の≪カノポス容器≫(第3中間期、第25王朝)はミイラをつくるために死者から取り出した内臓を入れる容器だが、なんとも愛敬のある造形で、惹きつけられた。
■メトロポリタン美術館とエジプト美術コレクション
   つい先日、ニューヨークのメトロポリタン美術館を訪ねる機会を得た。マンハッタンのセントラルパークに建つ巨大な建物に入るとグレイトホールというロビーがある。その右側に大きな古代エジプト像が立ち、観光客たちが集合する目印ともなっている。メトロポリタン美術館には毎年500万人もの人々が世界中から訪れるという。展示されている作品だけでも大変な数で、何日かけても観きれない。しかも逸品ぞろいだ。なかでもエジプト美術部門は非常に人気があるように感じた。ここでは通常の展示室に加えて、エジプト南部に建っていたデンドゥール神殿(前15年頃)なども移築されていて(サックラーホール)、壮観だった。なお、同神殿はアスワン・ハイ・ダムに水没する古代遺跡に対してアメリカが援助してくれたことへの感謝を示すために、エジプトが寄贈した。
   今回の日本の展覧会開幕に際し、メトロポリタン美術館のジェニファー・ラッセル副館長と、先述したエジプト美術部門キュレーターのアデラ・オッペンハイム氏が来日され、内覧会での解説と、貴重な講演会も行ってくださった。そのお話によると、1870年に教育機関として創立したメトロポリタン美術館は、その4年前にパリに集まった若いアメリカ人たちがヨーロッパの美術館に感動し、アメリカにも必要と考えて、実現させた私立美術館である。当初、1点の所蔵品も無かったが、その後すべての時代・文化を網羅する「美術の百科事典」としての世界有数の優れたコレクションを築いた。現在は17の学芸部門をもち、所蔵作品は約200万点。そしてエジプト美術部門は1906年に設置され、エジプト政府とともに考古学調査と発掘を行い、現在も継続している。エジプト・コレクションは約3万点。強みは収蔵品の半分以上がエジプトでの発掘調査で入手したという点だ。20世紀初頭にはエジプト政府との共同での発掘品は半分譲ってもらうという合法的なパルタージュの制度があったためである。現在はその制度はない。なお、この日本での展覧会の企画は、エジプト美術部門の名誉キュレーターのドロテア・アーノルド氏がつくりあげたとのことだった。
   ニューヨークからやってきた古代エジプトの名品たち。遥かなる過去からさまざまな経緯を経て、いま我々の目の前に在る。一つ一つゆっくりと楽しんでください。

【参考文献】
1)メトロポリタン美術館 監修、東京都美術館・神戸市立博物館・朝日新聞社 編集『メトロポリタン美術館 古代エジプト展 女王と女神(図録)』、朝日新聞社、2014年
2)磯崎新(篠山紀信 写真)『磯崎新の建築談義 ♯1カルナック神殿 [エジプト時代]』、六耀社、2001年

執筆:HOSOKAWA Fonte Idumi 
(2014年7月)

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会場風景。≪ハトシェプスト女王像の頭部≫。(©I.HOSOKAWA)
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会場風景。手前は≪ひざまずくハトシェプスト女王像≫。(©I.HOSOKAWA)
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会場風景。≪ロゼット形装飾の集合体≫。(©I.HOSOKAWA)
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会場風景。≪カノポス容器≫(4個一組の一部)。(©I.HOSOKAWA)
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会場風景。≪アメン・ラー神の歌い手ヘネトタウィの人型内棺とミイラ板≫
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メトロポリタン美術館(ニューヨーク)のデンドゥール神殿(サックラーホール)(©I.HOSOKAWA)

【展覧会の欧文表記】
Ancient Egyptian Queens and Goddesses:
Treasures from The Metropolitan Museum of Art, New York
【会期・会場】
東京展 2014年7月19日~9月23日 東京都美術館
電話:ハローダイヤル 03-5777-8600
神戸展 2014年10月13日~2015年1月12日 神戸市立博物館
電話:078-391-0035
展覧会公式サイト: http://met-egypt2014.jp/
※本文・図版とも無断引用を禁じます。

2014年7月30日