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特別展「古代DNA―日本人のきた道―」

開催中〜2025/06/15

国立科学博物館

東京都・台東区

タピオ・ヴィルカラ 世界の果て

開催中〜2025/06/15

東京ステーションギャラリー

東京都・千代田区

特別展「超 国宝―祈りのかがやき―」

開催中〜2025/06/15

奈良国立博物館

奈良県・奈良市

特別展「日本、美のるつぼ―異文化交流の軌跡―」

開催中〜2025/06/15

京都国立博物館

京都府・京都市

国宝の名刀と甲冑・武者絵 特集展示 三井家の五月人形

開催中〜2025/06/15

三井記念美術館

東京都・中央区

ラーメンどんぶり展 「器」からはじめるラーメン×デザイン考

開催中〜2025/06/15

21_21 DESIGN SIGHT

東京都・港区

特別展「蔦屋重三郎 コンテンツビジネスの風雲児」

開催中〜2025/06/15

東京国立博物館

東京都・台東区

開館記念展III(急) 花ひらく茶と庭園文化―即翁と、二万坪松平不昧 夢の茶苑

開催中〜2025/06/15

荏原 畠山美術館

東京都・港区

春の特別展「食の器と道具」

開催中〜2025/06/20

国際基督教大学博物館湯浅八郎記念館(ICU湯浅八郎記念館)

東京都・三鷹市

花と暮らす展

開催中〜2025/06/22

国立工芸館

石川県・金沢市

横尾忠則 連画の河

開催中〜2025/06/22

世田谷美術館

東京都・世田谷区

総合開館30周年記念 TOPコレクション 不易流行

開催中〜2025/06/22

東京都写真美術館

東京都・目黒区

初夏展「くまもとの絶景―知られざる日本最長画巻『領内名勝図巻』―」

開催中〜2025/06/22

永青文庫

東京都・文京区

藤田嗣治 ―7つの情熱

開催中〜2025/06/22

SOMPO美術館

東京都・新宿区

名作展「川端龍子の描き出した世界 生誕140年を迎えて」

開催中〜2025/06/22

大田区立龍子記念館

東京都・大田区

篠原一男 空間に永遠を刻む——生誕百年 100の問い

開催中〜2025/06/22

TOTOギャラリー・間

東京都・港区

黒の奇跡・曜変天目の秘密

開催中〜2025/06/22

静嘉堂文庫美術館@丸の内

東京都・千代田区

箱根-横須賀連携企画第3弾 アートでつなぐ山と海 箱根・芦ノ湖 成川美術館コレクション展 海辺のミュージアムで楽しむ日本画のきらめき

開催中〜2025/06/22

横須賀美術館

神奈川県・横須賀市

石田尚志 絵と窓の間

開催中〜2025/06/22

アーツ前橋 ギャラリー

群馬県・前橋市

特別企画展「めぐる いのち 熊谷守一美術館40周年展」

開催中〜2025/06/29

豊島区立 熊谷守一美術館

東京都・豊島区

ゴジラ生誕70周年記念 ゴジラ・THE・アート展

開催中〜2025/06/29

森アーツセンターギャラリー

東京都・港区

アーツ・アンド・クラフツとデザイン ウィリアム・モリスからフランク・ロイド・ライトまで

開催中〜2025/06/29

茨城県近代美術館

茨城県・水戸市

まど・みちおのうちゅう―うちゅうの あんなに とおい あそこに さわる―

開催中〜2025/06/29

宇都宮美術館

栃木県・宇都宮市

MOT Plus サウンドウォーク・コレクティヴ & パティ・スミス|コレスポンデンス

開催中〜2025/06/29

東京都現代美術館

東京都・江東区

MOT Plus ハン・ネフケンス財団との共同プロジェクト シャハナ・ラジャニ

開催中〜2025/06/29

東京都現代美術館

東京都・江東区

日本画コレクション再発見と 片岡球子「蔦屋重三郎の浮世絵師たち」

開催中〜2025/06/29

神奈川県立近代美術館 葉山

神奈川県・葉山町

民藝 MINGEI–美は暮らしのなかにある

開催中〜2025/06/29

千葉県立美術館

千葉県・千葉市

鹿島茂コレクション フランスのモダングラフィック展 —20世紀初頭の風刺画からアール・デコ挿絵本、1930年代グラフィック雑誌まで

開催中〜2025/06/29

群馬県立館林美術館

群馬県・館林市

GLAM―黒柳徹子、時代を超えるスタイル―

開催中〜2025/06/29

そごう美術館

神奈川県・横浜市

リビング・モダニティ 住まいの実験 1920s-1970s

開催中〜2025/06/30

国立新美術館

東京都・港区

「この、原美術館ARCという時間芸術」第2期

開催中〜2025/07/06

原美術館ARC

群馬県・渋川市

どうぶつ展 わたしたちはだれ? どこへむかうの?

開催中〜2025/07/06

PLAY! MUSEUM

東京都・立川市

橋口五葉のデザイン世界

開催中〜2025/07/13

府中市美術館

東京都・府中市

岡崎乾二郎 而今而後 ジコンジゴ Time Unfolding Here

開催中〜2025/07/21

東京都現代美術館

東京都・江東区

開館30周年記念 MOTコレクション 9つのプロフィール 1935→2025

開催中〜2025/07/21

東京都現代美術館

東京都・江東区

江戸の名プロデューサー 蔦屋重三郎と浮世絵のキセキ

開催中〜2025/07/21

千葉市美術館

千葉県・千葉市

開館30周年記念 日本美術とあゆむ―若冲・蕭白から新版画まで

開催中〜2025/07/21

千葉市美術館

千葉県・千葉市

企画展「死と再生の物語(ナラティヴ)―中国古代の神話とデザイン―」

開催中〜2025/07/27

泉屋博古館東京

東京都・港区

【特別展】生誕150年記念 上村松園と麗しき女性たち

開催中〜2025/07/27

山種美術館

東京都・渋谷区

士郎正宗の世界展~『攻殻機動隊』と創造の軌跡~

開催中〜2025/08/17

世田谷文学館

東京都・世田谷区

移転開館5周年記念 重要無形文化財指定50周年記念 喜如嘉の芭蕉布展

2025/07/11〜2025/08/24

国立工芸館

石川県・金沢市

ほとけに随侍するもの

開催中〜2025/08/31

半蔵門ミュージアム

東京都・千代田区

藤田嗣治 絵画と写真

2025/07/05〜2025/08/31

東京ステーションギャラリー

東京都・千代田区

ACN ラムセス大王展 ファラオたちの黄金

開催中〜2025/09/07

ラムセス・ミュージアム at CREVIA BASE Tokyo

東京都・江東区

オランジュリー美術館 オルセー美術館 コレクションより ルノワール×セザンヌ—モダンを拓いた2人の巨匠

開催中〜2025/09/07

三菱一号館美術館

東京都・千代田区

「銀河鉄道999」50周年プロジェクト 松本零士展 創作の旅路

2025/06/20〜2025/09/07

東京シティビュー(六本木ヒルズ森タワー52階)

東京都・港区

特集展よみがえる絵画・展示室内開催イベント「びじゅつかんであそぼ@てんじしつ」

2025/06/21〜2025/09/07

平塚市美術館

神奈川県・平塚市

高畑勲展 ̶日本のアニメーションを作った男。

2025/06/27〜2025/09/15

麻布台ヒルズ ギャラリー

東京都・港区

小湊鉄道開業 100 周年記念展「古往今来・発車オーライ!」

開催中〜2025/09/15

市原湖畔美術館

千葉県市原市

原良介 サギ子とフナ子 光のそばで

2025/06/14〜2025/09/15

平塚市美術館

神奈川県・平塚市

藤田嗣治 猫のいる風景

開催中〜2025/09/28

軽井沢安東美術館

長野県・軽井沢町

知られざる秀逸コレクション 東京・足立区立郷土博物館所蔵浮世絵名品展

開催中〜2025/10/05

北斎館

長野県・小布施町

開館50周年記念 おいでよ!松岡動物園

2025/06/17〜2025/10/13

松岡美術館

東京都・港区

戦後80年 《明日の神話》 次世代につなぐ 原爆×芸術

2025/07/19〜2025/10/19

川崎市岡本太郎美術館

神奈川県・川崎市

Sereneの写実 森本草介・島村信之2人展

開催中〜2025/11/10

ホキ美術館

千葉県・千葉市

企画展「ゴッホ・インパクト—生成する情熱」

開催中〜2025/11/30

ポーラ美術館

神奈川県・足柄下郡箱根町

ライアン・ガンダー:ユー・コンプリート・ミー

開催中〜2025/11/30

ポーラ美術館

神奈川県・足柄下郡箱根町

左手前は、ジュアン・ミロ《太陽の前の人物》1968年 アクリル/カンヴァス ジュアン・ミロ財団、バルセロナ。右奥は、ジュアン・ミロ《ダイヤモンドで飾られた草原に眠るヒナゲシの雌しべへと舞い戻った、金色(こんじき)の青に包まれたヒバリの翼》1967年 アクリル/カンヴァス ジュアン・ミロ財団、バルセロナ(寄託)

Exhibitions

ミロ展

ジュアン・ミロの70年の画業をじっくりたどる

 カタルーニャ生まれのジュアン・ミロ(1893~1983年)は、ピカソ、ダリと並んで20世紀スペイン絵画を代表する巨匠である。優れた内容のミロの回顧展が、東京都美術館で開催中だ。バルセロナのジュアン・ミロ財団創立50周年を記念し、同館長らの監修のもと、絵画を中心に陶芸やオブジェ等も含む100点近い作品が撰ばれ、出展。本展を担当した東京都美術館学芸員の髙城靖之氏は、「ミロを客観的に見ることができる」と語る。これほど大規模なミロ展は日本では1966年以来、約60年ぶりという。
 
 ミロの芸術は独特だ。洞窟壁画?象形文字?記号なのか? 日月星辰や女なのか? 原色の多用はなぜ? 長い作品名の意味は? なお日本の思想との共通点は早くから指摘がある。1966年に初来日した73歳のミロは、「長いあいだ日本を夢見ていた」と述べた。ミロはその3年後にも来日し、1970年大阪万博のガス・パビリオンのための壁画を制作した。
 
 ミロの画業は、90年の生涯のうち約70年にわたり、大きく変容を遂げる。しかし一貫するものがある。本展英文サブタイトルは、“Poetry into Painting”である。

東京都美術館の会場風景(以下同様)。右から、ジュアン・ミロ《クモを苦しめる赤い太陽》1948年 油彩/カンヴァス ナーマド・コレクション。ジュアン・ミロ《螺旋を描いて彗星へと這うヘビを追う赤トンボ》1951年 油彩/カンヴァス 国立ソフィア王妃芸術センター、マドリード
東京都美術館の会場風景(以下同様)。右から、ジュアン・ミロ《クモを苦しめる赤い太陽》1948年 油彩/カンヴァス ナーマド・コレクション。ジュアン・ミロ《螺旋を描いて彗星へと這うヘビを追う赤トンボ》1951年 油彩/カンヴァス 国立ソフィア王妃芸術センター、マドリード

模索する若きミロ

 ミロは1893年4月にバルセロナに生まれた。アントニオ・ガウディ(1852~1926年)の設計によるサグラダ・ファミリア大聖堂は、この年に「降誕の正面」が着工。ミロは幼いときから大聖堂建設を眺めていただろう。因みにミロが20歳の頃、聖ルカ芸術協会の素描教室で、老いてもなお、素描を勉強していたガウディに会っている。
 ミロは美術と簿記を学んだが、17歳で父の希望に従い会計係の仕事に就いた。しかし全く合わない。うつ病と腸チフスを患ってしまう。そして、葡萄畑の広がる美しい村モンロッチにある父の別荘で療養し、回復後に画家になることを決意し、バルセロナで美術の勉強に励んだ。また、モンロッチはミロが常に回帰する大事な場所となり、頻繁に訪れた。
 
 力強い筆致の《シウラナの教会》(1917年)は、モンロッチの北に位置する場所の風景だ。フォーヴィスム等の影響が見える。しかし、翌年の《ヤシの木のある家》(1918年)では画風が一変し、細密描写となる。単純化された形態も共存する。会場にはミロの言葉も紹介されている。「誰もが木々や山々の大きな塊ばかりを求め、それを描こうとしますが、草の葉や小さな花の音楽を聞くこともなく、渓谷の小さな石に注意を払うこともありません。――それはとても魅惑的なのに。 1918年」

ジュアン・ミロ《シウラナの教会》1917年 油彩/カンヴァス 静岡県立美術館
ジュアン・ミロ《シウラナの教会》1917年 油彩/カンヴァス 静岡県立美術館
ジュアン・ミロ《ヤシの木のある家》1918年 油彩/カンヴァス 国立ソフィア王妃芸術センター、マドリード
ジュアン・ミロ《ヤシの木のある家》1918年 油彩/カンヴァス 国立ソフィア王妃芸術センター、マドリード

パリへ。「夢の絵画」で名声を得る

 1920年、ミロは初めて前衛芸術の中心地パリを訪れた。すぐに尊敬するパブロ・ピカソ(1881~1973年)を訪問し、両者の親交は生涯続く。本展ではピカソが所蔵したミロの《自画像》(1919年)も出品されている。パリでミロはしばらく一本の線も描けないほど圧倒された。翌年、ブロメ通り45番地にある画家アンドレ・マッソン(1896~1987年)の隣のアトリエを借り、シュルレアリストの詩人や芸術家たちと交流した。パリとモンロッチを往復して制作に励み、シュルレアリスムの影響が顕著な「夢の絵画」と呼ばれる100点以上の絵画を生み出した。好評を得たが、ミロは人気画家になることには反発した。
 《絵画=詩(栗毛の彼女を愛する幸せ)》(1925年)は、「夢の絵画」のうち、文字を伴った連作「絵画=詩」の一点だ。

ジュアン・ミロ《絵画=詩(栗毛の彼女を愛する幸せ)》1925年 油彩/カンヴァス ジュアン・ミロ財団、バルセロナ(寄託)
ジュアン・ミロ《絵画=詩(栗毛の彼女を愛する幸せ)》1925年 油彩/カンヴァス ジュアン・ミロ財団、バルセロナ(寄託)

スペイン内戦から第二次世界大戦。苦悩するミロ。<星座>シリーズへ

 1936年7月、軍部のクーデターを契機にスペイン内戦が勃発した。身の危険を感じたミロはパリに逃れ、その後4年帰国できず仮住まいを転々とした。
 《スペインを救え》(1937年)は、共和国支援の資金調達のための切手のデザインだったが、切手発行は実現せず、雑誌の付録となった。ミロは余白に「…計り知れぬ創造力の源泉をもった民衆を見る」等を記載。1937年のパリ万博で、ミロはスペイン共和国パヴィリオンに高さ5.5mの壁画《刈り入れ》を制作した。本作は現在行方不明。実作を見てみたい。この万博にはピカソの《ゲルニカ》が展示された。しかし1939年、スペインではフランコ独裁政権が成立。ミロと独裁政権との対立は、1975年のフランコの死まで続いた。

ジュアン・ミロ《スペインを救え》1937年 ステンシル ジュアン・ミロ財団、バルセロナ
ジュアン・ミロ《スペインを救え》1937年 ステンシル ジュアン・ミロ財団、バルセロナ

 1939年9月には第二次世界大戦が勃発。ミロはその1ヵ月前にパリを離れ、ノルマンディーに避難した。彼は凄惨な戦争から逃避し殻にこもり、極限の精神状態のなかで、<星座>シリーズを開始した。危難をくぐり抜け帰国して妻の故郷のマジョルカ島やモンロッチで、23点の連作を完成させた。携行できる小さなサイズで、「紙」に描かれたグワッシュ画である。母国でも亡命者のように暮らした。「バッハの曲に慰められた」、「夜や音楽や星たちが絵の中で重要な役割を演じ始めた」という。本展にはこの重要な<星座>シリーズのうち3点が出品。
 《明けの明星》(1940年)は妻へ贈った作品。淡い赤黄青茶の背景に、星や女の人や鳥や怪物らしきものがつながり浮遊するようにも見える。ミロはこの連作で、その後に一貫する独自の記号的な造形言語を確立した。髙城 学芸員は本連作を「凄惨な現実を超えて、その先の希望を提示する」と評する。

ジュアン・ミロ《明けの明星》1940年 グワッシュ、油彩、パステル/紙 ジュアン・ミロ財団、バルセロナ
ジュアン・ミロ《明けの明星》1940年 グワッシュ、油彩、パステル/紙 ジュアン・ミロ財団、バルセロナ

内省を重ねて新たな創造へ。絵画の本質を問う

 1941年、ニューヨーク近代美術館でミロの展覧会が開催され、高い評価を得た。1947年にミロは壁画制作のため初訪米。アメリカに亡命した前衛芸術家の旧友たちと再会し、アメリカの芸術家とも交流した。1956年、パルマ・デ・マジョルカに定住し、広いアトリエを構えた。1966年には初めて日本を訪れた。ミロの作品はサイズが大きくなり、オブジェも手掛ける。絵画の本質へ探究を続けるミロの芸術は、自身老いてもなお、生き生きと自由闊達さを増してゆく。
 
 《太陽の前の人物》(1968年)は、力強い筆触、シンプルな形態と色彩、飛び散るような描法で描かれ、なんともいえぬ愛嬌をもつ。筆者は強く心をつかまれ、しばし眺め入った。日本の江戸時代の画僧・仙厓義梵(1750~1837年)が宇宙を表現したとの「〇△□画」(18世紀前半)に関連した作品だ。アメリカ抽象表現主義の影響も見える。

左手前は、ジュアン・ミロ《太陽の前の人物》1968年 アクリル/カンヴァス ジュアン・ミロ財団、バルセロナ。右奥は、ジュアン・ミロ《ダイヤモンドで飾られた草原に眠るヒナゲシの雌しべへと舞い戻った、金色(こんじき)の青に包まれたヒバリの翼》1967年 アクリル/カンヴァス ジュアン・ミロ財団、バルセロナ(寄託)
左手前は、ジュアン・ミロ《太陽の前の人物》1968年 アクリル/カンヴァス ジュアン・ミロ財団、バルセロナ。右奥は、ジュアン・ミロ《ダイヤモンドで飾られた草原に眠るヒナゲシの雌しべへと舞い戻った、金色(こんじき)の青に包まれたヒバリの翼》1967年 アクリル/カンヴァス ジュアン・ミロ財団、バルセロナ(寄託)

 ミロ80歳の頃の作品も面白い。《花火Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ》(1974年)は、驚くべき迫力の黒い花火の三連画。日本の前衛書道からの影響が色濃い。《焼かれたカンヴァス2》(1973年)は、実際にカンヴァスの絵画を切り、焼いてしまった。詩的なタイトルの《涙の微笑》(1973年)は、下地のないむき出しの画面の上空に歪んだ月と星が浮かぶ。下方は収穫時の畑だろうか。筆者にはモンロッチの田園風景に見えてくる。

右手前は、ジュアン・ミロ《焼かれたカンヴァス2》1973年 アクリル/切られて焼かれたカンヴァス ジュアン・ミロ財団、バルセロナ(寄託)。左奥は、ジュアン・ミロ《花火Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ》1974年 アクリル/カンヴァス ジュアン・ミロ財団、バルセロナ
右手前は、ジュアン・ミロ《焼かれたカンヴァス2》1973年 アクリル/切られて焼かれたカンヴァス ジュアン・ミロ財団、バルセロナ(寄託)。左奥は、ジュアン・ミロ《花火Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ》1974年 アクリル/カンヴァス ジュアン・ミロ財団、バルセロナ
ジュアン・ミロ《涙の微笑》1973年 アクリル/カンヴァス ジュアン・ミロ財団、バルセロナ(寄託)
ジュアン・ミロ《涙の微笑》1973年 アクリル/カンヴァス ジュアン・ミロ財団、バルセロナ(寄託)

ミロの作品に「眼をひたす」

 本展会場をめぐると、謎は謎のままなのだが、ミロその人に近づけて、ミロの宏大な宇宙の一隅に自分が入り込んだような感覚を得た。ミロは生涯、独自の造形言語で自然への讃歌を歌っていたのか。
 
 ミロの良き理解者であった詩人ミシェル・レリス(1901~90年)は、「ミロの作品に近づく最良の方法…」として次のように記した。「自分を空(から)にし、底意なしにそれを眺め、多くの傑作のうえに積もった塵を洗い流す水さながらのそれに、眼をひたすことだ。このようにして再び得られた無垢のおかげで、私たちのなかに、詩の扉が大きくひらくであろう。 1947年」(参考文献3。35頁)。
 
【参考文献】
1)東京都美術館、朝日新聞社 編集:『ミロ展』(本展図録)、朝日新聞社、2025年
2)松田健児、副田一穂 著:『もっと知りたい ミロ 生涯と作品』、東京書籍、2022年
3)ミシェル・レリス 著、岡谷公二 編訳:『デュシャン ミロ マッソン ラム』人文書院、2002年
4)酒井健 著:『シュルレアリスム 終わりなき革命』中公新書、中央公論新社、2011年
 
執筆・撮影:細川いづみ(HOSOKAWA Fonte Idumi)(2025年5月)
 
※会場内の風景画像は主催者側の許可を得て撮影したものです。
※本文・図版とも無断引用・無断転載を禁じます。

ミロ展
Joan Miró. Poetry into Painting
 
【会期・会場】
2025年3月1日(土)~7月6日(日) 東京都美術館(東京都・台東区)
 
※詳細は公式サイトでご確認ください。
公式サイト https://miro2025.exhibit.jp/
※なお、5月17日~6月1日は「スペイン☆ミロウィ―ク 第2弾」を実施。