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企画展 よめないけど、いいね! ―根津美術館の書の名品―

開催中〜2022/08/21

根津美術館

東京都・港区

宮城県美術館所蔵 絵本原画の世界 2022 展

開催中〜2022/08/28

山梨県立美術館

山梨県・甲府市

ムーミンコミックス展

開催中〜2022/08/28

東京富士美術館

東京都・八王子市

うるわしき薔薇—ルドゥーテ『バラ図譜』を中心に

開催中〜2022/08/28

群馬県立近代美術館

群馬県・高崎市

目黒区美術館開館35周年記念展 美術館はおもちゃ箱・道具箱

開催中〜2022/08/28

目黒区美術館

東京都・目黒区

貞享本當麻曼荼羅修理完成記念 特別展 中将姫と當麻曼荼羅 ―祈りが紡ぐ物語―

開催中〜2022/08/28

奈良国立博物館

奈良県・奈良市

特別展「北斎 百鬼見参」

開催中〜2022/08/28

すみだ北斎美術館

東京都・墨田区

伝えたい情景〜木版画家・山岸主計と現代作家たち〜

開催中〜2022/08/28

藤沢市アートスペース

神奈川県・藤沢市

中将姫と當麻曼荼羅 ―祈りが紡ぐ物語―

開催中〜2022/08/28

奈良国立博物館

奈良県・奈良市

特別展 「きみとロボット ニンゲンッテ、ナンダ?」

開催中〜2022/08/31

日本科学未来館

東京都・江東区

KAGAYA 星空の世界展

開催中〜2022/08/31

そごう美術館

神奈川県・横浜市

雲をつかむ:原美術館/原六郎コレクション 第1期(春夏季)

開催中〜2022/09/04

原美術館ARC

群馬県・渋川市

こぐまちゃんとしろくまちゃん 絵本作家・わかやまけんの世界

開催中〜2022/09/04

世田谷美術館

東京都・世田谷区

没後25年記念特別企画 斎藤清版画展 飛翔するノスタルジア

開催中〜2022/09/04

高崎市タワー美術館

群馬県・高崎市

とある美術館の夏休み

開催中〜2022/09/04

千葉市美術館

千葉県・千葉市

沖縄復帰50年記念 特別展 琉球

開催中〜2022/09/04

九州国立博物館

福岡県・太宰府市

所蔵作品展 こどもとおとなの自由研究 工芸の〇△□✕展

開催中〜2022/09/04

国立工芸館

石川県・金沢市

市制90周年記念 工藤麻紀子展

開催中〜2022/09/11

平塚市美術館

神奈川県・平塚市

特別展 河内長野の霊地 観心寺と金剛寺─真言密教と南朝の遺産─

開催中〜2022/09/11

京都国立博物館

京都府・京都市

夏休みチャレンジ アートのたねをみつけよう!

開催中〜2022/09/11

府中市美術館

東京都・府中市

ライアン・ガンダー われらの時代のサイン

開催中〜2022/09/19

東京オペラシティ アートギャラリー

東京都・新宿区

リニューアルオープン2 茶の湯の陶磁器 〜“景色”を愛でる〜

開催中〜2022/09/19

三井記念美術館

東京都・中央区

どっちがどっち? いわいとしお×岩井俊雄 ―『100かいだてのいえ』とメディアアートの世界― 

開催中〜2022/09/19

茨城県近代美術館

茨城県・水戸市

日中国交正常化 50 周年記念 特別デジタル展「故宮の世界」

開催中〜2022/09/19

東京国立博物館

東京都・台東区

キース・ヴァン・ドンゲン展―フォーヴィスムからレザネフォール

開催中〜2022/09/25

パナソニック汐留美術館

東京都・港区

【特別展】水のかたち ―《源平合戦図》から千住博の「滝」まで―

開催中〜2022/09/25

山種美術館

東京都・渋谷区

こどもと楽しむ永青文庫

開催中〜2022/09/25

永青文庫

東京都・文京区

開館25周年記念展 Ⅱ 並河靖之の雅な技 世界を魅了した明治の京都七宝

開催中〜2022/09/25

茨城県天心記念五浦美術館

茨城県・北茨城市

ガブリエル・シャネル展― Manifeste de mode

開催中〜2022/09/25

三菱一号館美術館

東京都・千代田区

東北へのまなざし 1930-1945

開催中〜2022/09/25

東京ステーションギャラリー

東京都・千代田区

ルートヴィヒ美術館展 20世紀美術の軌跡―市民が創った珠玉のコレクション

開催中〜2022/09/26

国立新美術館

東京都・港区

ボストン美術館展 芸術×力

開催中〜2022/10/02

東京都美術館

東京都・台東区

「クマのプーさん」展

開催中〜2022/10/02

PLAY! MUSEUM

東京・立川市 

ちひろ・花に映るもの

開催中〜2022/10/02

ちひろ美術館・東京

東京都・練馬区

ちひろ美術館コレクション 江戸からいまへ 日本の絵本展

開催中〜2022/10/02

ちひろ美術館・東京

東京都・練馬区

フィン・ユールとデンマークの椅子

開催中〜2022/10/09

東京都美術館

東京都・台東区

特別展アリス —へんてこりん、へんてこりんな世界ー

開催中〜2022/10/10

森アーツセンターギャラリー( 六本木ヒルズ森タワー 52F)

東京都・港区

名作展「涼風を語る 龍子の描いた風景画を中心に」

開催中〜2022/10/10

大田区立龍子記念館

東京都・大田区

特別展「化石ハンター展 〜ゴビ砂漠の恐竜とヒマラヤの超大型獣〜」

開催中〜2022/10/10

国立科学博物館

東京都・台東区

アールヌーヴォーからアールデコに咲いたデザイン  オールドノリタケ×若林コレクション

2022/09/10〜2022/10/16

そごう美術館

神奈川県・横浜市

企画展  蔵出し蒔絵コレクション

2022/09/10〜2022/10/16

根津美術館

東京都・港区

MOTアニュアル2022 私の正しさは誰かの悲しみあるいは憎しみ

開催中〜2022/10/16

東京都現代美術館

東京都・江東区

MOTコレクション コレクションを巻き戻す 2nd

開催中〜2022/10/16

東京都現代美術館

東京都・江東区

泉屋博古館東京リニューアルオープン記念展Ⅲ 古美術逍遙 ―東洋へのまなざし

2022/09/10〜2022/10/23

泉屋博古館東京

東京都・港区

新版画 進化系UKIYO-Eの美

2022/09/14〜2022/11/03

千葉市美術館

千葉県・千葉市

地球がまわる音を聴く:パンデミック以降のウェルビーイング

開催中〜2022/11/06

森美術館

東京都・港区

特集展示「初公開の収蔵品から」

開催中〜2022/11/06

半蔵門ミュージアム

東京都・千代田区

国立新美術館開館15周年記念 李禹煥

開催中〜2022/11/07

国立新美術館

東京都・港区

大蒔絵展 —漆と金の千年物語

2022/10/01〜2022/11/13

三井記念美術館

東京都・中央区

理想の書物 —英国19世紀挿絵本からプライヴェート・プレスの世界へ—

2022/09/17〜2022/11/13

群馬県立近代美術館

群馬県・高崎市

美をつくし―大阪市立美術館コレクション

2022/09/14〜2022/11/13

サントリー美術館

東京都・港区

誕生50周年記念 ベルサイユのばら展ーベルばらは永遠にー

2022/09/17〜2022/11/20

東京シティビュー(六本木ヒルズ森タワー52階)

東京都・港区

江森天寿と石川梅子 夭折の画家と県内初の女流画家

2022/10/08〜2022/11/27

遠山記念館

埼玉県・川島町

開館25周年記念展 Ⅲ 再興院展の立役者 齋藤隆三

2022/10/08〜2022/11/27

茨城県天心記念五浦美術館

茨城県・北茨城市

企画展「市制90周年記念 私たちの絵 時代の自画像展」

2022/10/01〜2022/11/27

平塚市美術館

神奈川県・平塚市

旅と想像/創造 いつかあなたの旅になる

2022/09/23〜2022/11/27

東京都庭園美術館

東京都・港区

特別展  将軍家の襖絵

2022/11/03〜2022/12/04

根津美術館

東京都・港区

特別展 京(みやこ)に生きる文化 茶の湯

2022/10/08〜2022/12/04

京都国立博物館

京都府・京都市

ポンペイ

2022/10/12〜2022/12/04

九州国立博物館

福岡県・太宰府市

【特別展】没後80年記念 竹内栖鳳

2022/10/06〜2022/12/04

山種美術館

東京都・渋谷区

アーツ・アンド・クラフツとデザイン ウィリアム・モリスからフランク・ロイド・ライトまで

2022/09/23〜2022/12/04

府中市美術館

東京都・府中市

ジャンルレス工芸展

2022/09/16〜2022/12/04

国立工芸館

石川県・金沢市

辻 永 ふたつの顔を持つ画家 油彩と植物画

2022/10/25〜2022/12/11

茨城県近代美術館

茨城県・水戸市

永青文庫漆芸コレクション かがやきの名品

2022/10/08〜2022/12/11

永青文庫

東京都・文京区

加耶―古代東アジアを生きた、ある王国の歴史―

2022/10/04〜2022/12/11

国立歴史民俗博物館

千葉県・佐倉市

花鳥風月 名画で見る日本の四季 琳派・浮世絵から御舟・一村まで

開催中〜2022/12/18

岡田美術館

神奈川・箱根町

生誕150年記念 板谷波山の陶芸

2022/11/03〜2022/12/18

泉屋博古館東京

東京都・港区

川内倫子展(タイトル未定)

2022/10/08〜2022/12/18

東京オペラシティ アートギャラリー

東京都・新宿区

つながる琳派スピリット 神坂雪佳展

2022/10/29〜2022/12/18

パナソニック汐留美術館

東京都・港区

静嘉堂創設130周年・新美術館開館記念 響きあう名宝 ―曜変・琳派のかがやき―

2022/10/01〜2022/12/18

静嘉堂文庫美術館

東京都・千代田区

かこさとしの世界 だるまちゃんもからすのパンやさんも大集合!

2022/10/08〜2022/12/25

群馬県立館林美術館

群馬県・館林市

展覧会 岡本太郎 Okamoto Taro: A Retrospective

2022/10/18〜2022/12/28

東京都美術館

東京都・台東区

特別展 すべて未知の世界へ―GUTAI 分化と統合

2022/10/22〜2023/01/09

国立国際美術館

大阪府・大阪市

雲をつかむ:原美術館/原六郎コレクション 第2期(秋冬季)

2022/09/10〜2023/01/09

原美術館ARC

群馬県・渋川市

鉄道と美術の150年

2022/10/08〜2023/01/09

東京ステーションギャラリー

東京都・千代田区

ポーラ開館20周年記念展 ピカソ 青の時代を超えて

2022/09/17〜2023/01/15

ポーラ美術館

神奈川県・足柄下郡箱根町

おいしいボタニカル・アート ー食を彩る植物のものがたり

2022/11/05〜2023/01/15

SOMPO美術館

東京都・新宿区

ビーズ ―つなぐ かざる みせる  国立民族学博物館コレクション

2022/11/15〜2023/01/15

渋谷区立松濤美術館

東京都・渋谷区

マン・レイのオブジェ 日々是好物|いとしきものたち

2022/10/08〜2023/01/15

DIC川村記念美術館

千葉県・佐倉市

ピカソとその時代 ベルリン国立ベルクグリューン美術館展

2022/10/08〜2023/01/22

国立西洋美術館

東京都・台東区

ルートヴィヒ美術館展 20世紀美術の軌跡―市民が創った珠玉のコレクション

2022/10/14〜2023/01/22

京都国立近代美術館

京都府・京都市

春日大社 若宮国宝展 ―祈りの王朝文化―

2022/12/10〜2023/01/22

奈良国立博物館

奈良県・奈良市

クリストとジャンヌ=クロード “包まれた凱旋門”

開催中〜2023/02/12

21_21 DESIGN SIGHT

東京都・港区

交歓するモダン 機能と装飾のポリフォニー

2022/12/17〜2023/03/05

東京都庭園美術館

東京都・港区

六本木クロッシング2022展(仮題)

2022/12/01〜2023/03/26

森美術館

東京都・港区

特別展「動画クリエイター展」

2022/10/08〜2023/04/02

日本科学未来館

東京都・江東区

Exhibitions

パナソニック 汐留ミュージアム「没後50年 河井寬次郎展~過去が咲いてゐる今、未来の蕾で一杯な今~」

 陶芸作品をはじめ木彫や書など河井寬次郎(1890~1966)の約130点を紹介する「没後50年 河井寬次郎展」が「パナソニック 汐留ミュージアム」で開催されている。本展では、山口大学が所蔵する寬次郎の初期作品も初公開となる。パナソニックの創業者・松下幸之助が所有していた寬次郎の陶芸作品や幸之助が文化勲章を推薦した際に寬次郎に贈った当時の最新トランジスタラジオ「パナペット(R-8)」の同型品を特別出品するなど、会場との縁を感じさせる。

中国・朝鮮古陶磁に倣う
 温かみを感じる形に図柄や色合いが素晴らしい河井寬次郎の陶芸作品に魅かれていた。旧宅である「河井寬次郎記念館」も、京都に行くと訪れたいスポット。本展では、同記念館所蔵作品を中心にした約130点の作品で寬次郎の世界に浸ることができる。

 本展は「河井寬次郎の生み出したもの」「河井寬次郎の愛したもの」の二部で構成する。最初に並ぶのは、商品学の研究資料として大正時代に山口大学が二度にわたって収集し2014年に発見された初公開の作品。寬次郎により寄贈との記録が残る《澱彩透文喰籠(でんさいすかしもんじきろう)》は、くすんだ色みの中に現れる赤紫やザクロの実が秀逸で、33歳の時の作品ながら晩年作り出されたような風格を感じる。

 果実や野菜をモチーフにした作品が並び、《葡萄図壺》では白地に浮彫りされた赤い葡萄の実が映える。白菜の葉脈や茎まで表されている《青瓷鱔血葉文花瓶(せいじぜんけつようもんかびん)》は白菜がそのまま花瓶になったような形がおもしろく、2つの色が織りなす色合いもいい。図録によると、中国元時代の鈞窯(きんよう)などの釉薬を研究した成果が見られるという。当時、中国や朝鮮古陶磁に心酔し、作陶にも影響を受けていた。多様な古陶磁の技法を駆使した作品は「奇才」と絶賛を浴びたが、本人はそうした作陶に疑問を抱き始める。

人間性でも周囲を引きつけた寬次郎
 学術優秀で運動神経もよく、文筆と弁論にも優れていた。島根県に生まれ母を4歳で亡くし、子どもの頃から近所の窯で陶器が作られるのを見ていた寬次郎は、叔父の勧めで10代で陶器の道に進むことを決意する。叔父と同じ医者を考えたこともあったようだが、叔父自身から「医者の仕事など底が知れている。陶器の仕事は無限の世界だ」との言葉をかけられたという。

 学校長の推薦を受け東京高等工業学校(現・東京工業大学)窯業科に無試験で入学。帝大に進学し政治家になるだろうと思っていた周囲は驚いたようだ。学校卒業後、24歳で京都市立陶磁器試験場に入所する。同試験場で、濱田庄司(1894~1978)と共に一万種もの釉薬の調合と焼成実験を行ったとされており、釉薬の豊富な知識と色の美しさに、「釉の河井」と称された。彼の作品の卓越した色合いは、こうしたところから生まれているのだ。寬次郎は学生時代、実験に見とれ方式が頭からとんでしまうなど科学が苦手だったというが、陶器を作り出してからは一番役に立ったと振り返っている。

 来客が絶えないほど人との交流も盛んだったというが、寬次郎の誠実かつ温かい人間性に多くの人が引き寄せられたのだろう。高島屋の総支配で横浜支店専務取締役を務めた川勝堅一も彼の人間性に魅せられた一人。高島屋で毎年のように個展を開催し、川勝個人も約1000点にのぼる寬次郎の作品を所有していた。そのうち425点が川勝コレクションとして、京都国立近代美術館に所蔵されている。

 人間国宝や文化勲章などを辞退した寬次郎だったが、川勝は本人に黙って昭和12(1937)年に開かれたパリ万国博覧会に本展出品作《鉄辰砂草花図壺(てつしんしゃそうかずつぼ)》を出品し、グランプリに輝いた。続いて昭和32(1957)年のミラノトリエンナーレには隣に展示されている《白地草花絵編壺》と同型の作品を出品し、またもやグランプリを受賞した。独自の草花文があしらわれ、「これぞ河井寬次郎」と感じる作品だ。受賞インタビューには「友人が出品したもので、仮に栄誉が与えられるとすれば、私個人ではなく、作品がもらったものでしょう」と答えたという(図録より)。

銘が消え、実用を重んじた作品に
 1924(大正13)年、親友だった濱田を介して柳宗悦(1889~1961)との親交が始まる。寬次郎が称賛を受けていた頃、柳は「模倣に過ぎない」と雑誌で批判し、寬次郎も雑誌で反論した。濱田に誘われ寬次郎が柳の家を訪れ、置かれていた彫刻に感動したことで一気に和解し生涯の友になったという。そうして、無名の職人が作った日用品の中に美が息づいていると提唱する「民藝運動」が柳、寬次郎、濱田を中心に始まる。

 作陶に疑問を感じ煩悶を抱えていた寬次郎は大正から昭和に移る頃、個展での発表を3年間、中断。1929(昭和4)年に再開された個展には日常の用途に即した作品が多く並び、作品からは作家名を示す銘が消えていた。その頃に作られた《流し描壺》はぷっくりと丸みを帯びた愛着を感じる形で光沢を持ち、濃い色に映える緑を含んだ黄色が黄金色のような存在感で見る者を引きつける。自然体で生み出された力強さのような強い魅力をまとっている。また40歳から72歳の間に作られた6センチ~9センチほどの6つの小箱は、それぞれの色や形、違いを味わうことができ楽しい。

魅力あふれる寬次郎の陶芸作品
 《辰砂抜蠟菱花文碗(しんしゃばつろうひしばなもんわん)》と翌年に描かれた《墨画〔抜蠟菱花文碗〕》、同じ図柄が陶器と墨画の姿になった作品を共に鑑賞できるのが楽しく、バランスのよいサイズと配置がお互いを引き立てている。《草花絵碗》と《鉄釉筒描文碗(てつゆうつつがきもんわん)》も含め、4作品が一つの世界をつくりあげている。陶器を描いた寬次郎の墨画がまた新鮮で、平面でありながら重厚感を感じる作品となっている。墨画の色もやはり趣があり、先に展示されていた《墨画〔青瓷紅斑壺〕》などは、まさに陶器作品にみられる青瓷の色合いが描き出されている。

 63歳で作られた《呉洲筒描扁壺(ごすつつがきへんこ)》、《辰砂筒描花文扁壺(しんしゃつつがきはなもんへんこ)》、《灰釉筒描扁壺(はいゆうつつがきへんこ)》は、白や白みを帯びたぷっくりと厚みのある線が輪郭を描き出す。以前、これと近い彼の作品を見た時に感じた「お好み焼きの上のマヨネーズ」のイメージがまた浮かぶ。これは「スポイトに入れた泥漿を絞り出すことで線を高く盛り上げ、さまざまな装飾を施す筒描という技法」(図録より)だという。このぷっくりした線が厚みを変えながら陶器の上を自由に動き回る様子が気持ちがいい。陶板の「手考足思」や「眼聴耳視」、蓋物「喜者皆美」などにも同じ技法を見ることができる。寬次郎は筒描の特色を生かし、豊かな色彩を持つ「筒描彩釉」という独創的な技法も生み出したとのことで、やはり寬次郎にとって色彩は重要で、独自の技法を編み出すことで求める作品を生み出していったことがわかる。

 《練上鉢》は鮮やかな色彩がないものの、うねるような線で表される図柄が見る者を楽しませる。鉢は内面と外面に柄が現れているのを見ることができ、興味深い。《白地三色打薬扁壺》や《三色打薬扁壺》は本展のチラシに使われている《三色打薬双頭扁壺(さんしきうちぐすりそうとうへんこ)》と同じ、落ち着いた色合いの緑と赤と黒の三色が織り成す素晴らしい作品。しぶきを立てながら打ちつけられた筆の動きをそのまま感じることができる。ああ、やはり寬次郎の陶芸作品は素晴らしい。

人間が生み出した工業製品
 55歳で終戦を迎え、晩年に高度経済成長期を迎える。若い頃には機械を「個性なきもの」としてカタキのように思っていたようだが、機械を生み出したのは人間の手や思いで、機械と人間は不可分なものと捉えるようになる。「河井寬次郎の宇宙」(講談社発行)で娘の河井須也子さんが、父の職業を「陶磁器製造業者」と書くように河井に指示されたと書いている。カメラや車など機械製品に興味を持ち、新聞広告を切り抜き、まとめていたという。

 寬次郎の独特な形の陶器も並ぶ。上述のチラシ掲載作品や《黄釉塗分扁壺(きぐすりぬりわけへんこ)》は土管を彷彿とさせ、《呉洲丸花文蓋付壺(ごすまるはなもんふたつきつぼ)》はインク壺のようである。だが、眺めるうちに、色のバランスと図柄の強い魅力に、ユニークな形という印象は包み込まれていく。どれも丸みを帯びていて寬次郎の温かい人柄がにじみ出ている。中でも《黄釉塗分扁壺》は母の胎内でもあるかのような温かさ・包容感に満ちた作品」と書いていると、図録に寬次郎が集めていた切り抜きから《黄釉塗分扁壺》と形が似ている「鉄管継手」の画像を、パナソニック 汐留ミュージアム学芸員の岩井美恵子さんが載せていることに気づく。手の温かみ溢れる陶器作品が鉄管継手から構想を得ているとは・・、寬次郎の表現力の豊かさに驚く。

 本展には、松下幸之助が文化勲章に推薦した際に寬次郎に贈った当時の最新トランジスタラジオ「パナペット(R-8)」の同型品が展示されている。寬次郎は文化勲章を辞退したが、贈られた最新機器に感嘆し、「これが文化勲章に値する」と喜んだということで、いかに機械に興味を持っていたかが伝わるエピソードである。
 
木彫や書、遺愛品など寬次郎の世界に包まれる
 同記念館に所蔵されている家具や晩年の木彫作品も並ぶ。1937(昭和12)年、47歳の時に自邸(現・河井寬次郎記念館)の設計を手掛け兄が大工の棟梁を務めたが、その時に出た余材が木彫制作のきっかけとなったという。大工棟梁の家に生まれた寬次郎が晩年に木彫を手掛けたのは、元々親しみを持っていた木という材に回帰したようにも思える。無名の職人の仕事を敬う、民藝運動の理念を抱いたのもそうした生まれが関係していたように思う。

 愛らしさを感じる面や手の平の上の球など、木彫で作られたモチーフが陶器でも作られているのも興味深い。寬次郎の孫で河井寬次郎記念館の学芸員でもある本展監修者の鷺珠江さんは、亡くなる直前、寬次郎が両手の間に見えない玉を抱くように掌を丸め上下に動かしていたと図録に記しているが、それに通じた造形の《木彫像》も見ることができる。この形に込められた意味を探りながら眺める。

 岩井さんが力を入れたという言葉の展示空間は暗く、俳優の井浦新さんの朗読を聴きながら、寬次郎の言葉と字、書の世界にじっくりと浸ることができる。寬次郎は著書も多く残し、「いのちの窓」(1948年、西村書店)に掲載されているものをはじめとした深みのある言葉が、陶器や木彫のモチーフにも見られる画を添えて書かれている。柳に捧げた「道を歩かない人、歩いたあとが道になる人」や仕事への意気込みを表した「新しい自分が見たいのだ―仕事する」、陶板の「かぎりのない高さ 人間の登れる高さ」など、ユーモアを含みながら前向きで意欲に満ちた言葉の数々から彼の芯の強さが感じられ、見る者にも力を与える。26歳の時には既に語句集を自家製本「火の寄贈」としてまとめていたという。「勉学や文論にすぐれていた」という表現では表すことのできない、すぐれた感性と、それを表す能力が元々備わっていたのだろう。本当に多才というか、人間性も含めあらゆる能力・性質を備えた人だと感服する。先に挙げた両手で球を包み込むような画が添えられた拓本「此世このまま大調和」は、彼が最後に到達した境地だった。

 「寬次郎の愛したもの」にはコレクションや遺愛品が並ぶ。須也子さんによると、日々の暮らしは寬次郎が選んだ家具や日用品が並び、「仕事が暮らし、暮らしが仕事」と本人の言葉が示すようなシンプルな生活だったというだったが、食卓では寬次郎が大ファンだったチャーリー・チャップリンの話やエジソンやヘレン・ケラーのサリバン先生の話など、話題に富んでいたという。また、孫のおもちゃの安価な陶製の珈琲カップに目を留め小鳥マークに注目。製造者の苦しい生活を思い、「我々の仕事ももっともっと勉強しなくちゃ、この玩具の陶器に対して恥ずかしくて申し訳がないよ」と涙をにじませているのを見て、「寬次郎という人のすごさを知らされた」と記している。

 さまざまな魅力にあふれた寬次郎の作品の数々に出合うことができ、改めて河井寬次郎という人の魅力に圧倒された(文中、敬称略)。



(写真1)会場風景



(写真2)左から《呉洲刷毛目大壺》(1939年頃、河井寬次郎記念館)、《三色打薬双頭扁壺》(1961年頃、個人蔵)



(写真3)左から《辰砂筒描花文扁壺》(1953年頃)、《黄釉塗分扁壺》(1951年頃)、《灰釉筒描扁壺》(1953年頃、以上全て河井寬次郎記念館)



(写真4)左から《草花絵碗》(1940年頃、河井寬次郎記念館)、《辰砂抜蠟菱花文碗》(1943年頃、個人蔵)、《墨画〔抜蠟菱花文碗〕》(1944年頃、河井寬次郎記念館)、《鉄釉筒描文碗》(1953年頃、個人蔵)



(写真5)左は《木彫像》(1954年頃、河井寬次郎記念館)、奥が言葉の展示スペース


(写真6)言葉の展示の様子

※画像は主催者側の許可を得て撮影したものです。

(参考文献)
・本展図録 監修=鷺珠江、編集=鷺珠江、長谷川由美子、山崎剛、藍畑啓二、中川貴雄、発行=毎日新聞社、2016年
・「河井寬次郎の宇宙」編者=河井寬次郎記念館、発行=講談社、2014年
・「火の誓い」河井寬次郎、発行=講談社1996年、
・「蝶が飛ぶ 葉っぱが飛ぶ」河井寬次郎、発行=講談社2006年、

執筆・写真:堀内まりえ

【展覧会情報】
パナソニック 汐留ミュージアム「没後50年 河井寬次郎展~過去が咲いてゐる今、未来の蕾で一杯な今~」
2018年7月7日~9月16日