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岡崎乾二郎 而今而後 ジコンジゴ Time Unfolding Here

開催中〜2025/07/21

東京都現代美術館

東京都・江東区

開館30周年記念 MOTコレクション 9つのプロフィール 1935→2025

開催中〜2025/07/21

東京都現代美術館

東京都・江東区

江戸の名プロデューサー 蔦屋重三郎と浮世絵のキセキ

開催中〜2025/07/21

千葉市美術館

千葉県・千葉市

開館30周年記念 日本美術とあゆむ―若冲・蕭白から新版画まで

開催中〜2025/07/21

千葉市美術館

千葉県・千葉市

企画展「死と再生の物語(ナラティヴ)―中国古代の神話とデザイン―」

開催中〜2025/07/27

泉屋博古館東京

東京都・港区

【特別展】生誕150年記念 上村松園と麗しき女性たち

開催中〜2025/07/27

山種美術館

東京都・渋谷区

『機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-』特別企画展

開催中〜2025/08/11

アニメ東京ステーション

東京都・豊島区

士郎正宗の世界展~『攻殻機動隊』と創造の軌跡~

開催中〜2025/08/17

世田谷文学館

東京都・世田谷区

生誕140年 YUMEJI展 大正浪漫と新しい世界

開催中〜2025/08/17

大分県立美術館

大分県・大分市

移転開館5周年記念 重要無形文化財指定50周年記念 喜如嘉の芭蕉布展

開催中〜2025/08/24

国立工芸館

石川県・金沢市

特別展「ポップ・アート 時代を変えた4人」

開催中〜2025/08/24

山梨県立美術館

山梨県・甲府市

唐絵 中国絵画と日本中世の水墨画

2025/07/19〜2025/08/24

根津美術館

東京都・港区

レオ・レオーニの絵本づくり展

開催中〜2025/08/27

ヒカリエホール(渋谷ヒカリエ9F)

東京都・渋谷区

ほとけに随侍するもの

開催中〜2025/08/31

半蔵門ミュージアム

東京都・千代田区

藤田嗣治 絵画と写真

開催中〜2025/08/31

東京ステーションギャラリー

東京都・千代田区

野町和嘉―人間の大地

開催中〜2025/08/31

世田谷美術館

東京都・世田谷区

旅にまつわる絵とせとら ー歌川広重から東山魁夷までー

開催中〜2025/08/31

茨城県近代美術館

茨城県・水戸市

企画展「あ!っと北斎〜みて、みつけて、みえてくる浮世絵〜」

開催中〜2025/08/31

すみだ北斎美術館

東京都・墨田区

ますむらひろしの銀河鉄道の夜-完結編

開催中〜2025/08/31

八王子市夢美術館

東京都・八王子市

夏季展「書斎を彩る名品たち―文房四宝の美―」

開催中〜2025/08/31

永青文庫

東京都・文京区

Ukiyo-e 猫百科 ごろごろまるまるネコづくし

2025/07/19〜2025/09/02

そごう美術館

神奈川県・横浜市

ACN ラムセス大王展 ファラオたちの黄金

開催中〜2025/09/07

ラムセス・ミュージアム at CREVIA BASE Tokyo

東京都・江東区

オランジュリー美術館 オルセー美術館 コレクションより ルノワール×セザンヌ—モダンを拓いた2人の巨匠

開催中〜2025/09/07

三菱一号館美術館

東京都・千代田区

「銀河鉄道999」50周年プロジェクト 松本零士展 創作の旅路

開催中〜2025/09/07

東京シティビュー(六本木ヒルズ森タワー52階)

東京都・港区

特集展よみがえる絵画・展示室内開催イベント「びじゅつかんであそぼ@てんじしつ」

開催中〜2025/09/07

平塚市美術館

神奈川県・平塚市

美術の遊びとこころⅨ 花と鳥

開催中〜2025/09/07

三井記念美術館

東京都・中央区

高畑勲展 ̶日本のアニメーションを作った男。

開催中〜2025/09/15

麻布台ヒルズ ギャラリー

東京都・港区

小湊鉄道開業 100 周年記念展「古往今来・発車オーライ!」

開催中〜2025/09/15

市原湖畔美術館

千葉県市原市

原良介 サギ子とフナ子 光のそばで

開催中〜2025/09/15

平塚市美術館

神奈川県・平塚市

ピクチャレスク陶芸 アートを楽しむやきもの―「民藝」から現代まで

開催中〜2025/09/15

パナソニック汐留美術館

東京都・港区

トーベとムーミン展〜とっておきのものを探しに〜

開催中〜2025/09/17

森アーツセンターギャラリー

東京都・港区

総合開館30周年記念 TOPコレクション トランスフィジカル

開催中〜2025/09/21

東京都写真美術館

東京都・目黒区

彼女たちのアボリジナル・アート オーストラリア現代美術

開催中〜2025/09/21

アーティゾン美術館

東京都・中央区

名作展「時局と画家―川端龍子の1930~40年代」

開催中〜2025/09/21

大田区立龍子記念館

東京都・大田区

new born 荒井良二  いつも しらないところへ たびするきぶんだった

2025/07/20〜2025/09/23

宇都宮美術館

栃木県・宇都宮市

和のあかり×百段階段2025 ~百鬼繚乱~

開催中〜2025/09/23

東京都指定有形文化財「百段階段」(ホテル雅叙園東京)

東京都・目黒区

藤田嗣治 猫のいる風景

開催中〜2025/09/28

軽井沢安東美術館

長野県・軽井沢町

スウェーデン国立美術館 素描コレクション展—ルネサンスからバロックまで

開催中〜2025/09/28

国立西洋美術館

東京都・台東区

藤田嗣治 戦争と芸術のはざまで -戦場、銃後の風景、日常を描く-

開催中〜2025/09/28

軽井沢安東美術館

長野県・軽井沢町

特別展「深宇宙展~人類はどこへ向かうのか」To the Moon and Beyond

開催中〜2025/09/28

日本科学未来館

東京都・江東区

総合開館30周年記念 ルイジ・ギッリ 終わらない風景

開催中〜2025/09/28

東京都写真美術館

東京都・目黒区

知られざる秀逸コレクション 東京・足立区立郷土博物館所蔵浮世絵名品展

開催中〜2025/10/05

北斎館

長野県・小布施町

開館50周年記念 おいでよ!松岡動物園

開催中〜2025/10/13

松岡美術館

東京都・港区

戦後80年 《明日の神話》 次世代につなぐ 原爆×芸術

2025/07/19〜2025/10/19

川崎市岡本太郎美術館

神奈川県・川崎市

横浜美術館リニューアルオープン記念展 佐藤雅彦展 新しい×(作り方+分かり方)

開催中〜2025/11/03

横浜美術館

神奈川県・横浜市

特別展 巨匠ハインツ・ヴェルナーの描いた物語(メルヘン)—現代マイセンの磁器芸術―

2025/08/30〜2025/11/03

泉屋博古館東京

東京都・港区

企画展「そのとき、どうする?展―防災のこれからを見渡す―」

開催中〜2025/11/03

21_21 DESIGN SIGHT

東京都・港区

藤本壮介の建築:原初・未来・森

開催中〜2025/11/09

森美術館

東京都・港区

カルン・タカール・コレクション インド更紗 世界をめぐる物語

2025/09/13〜2025/11/09

東京ステーションギャラリー

東京都・千代田区

Sereneの写実 森本草介・島村信之2人展

開催中〜2025/11/10

ホキ美術館

千葉県・千葉市

企画展「ゴッホ・インパクト—生成する情熱」

開催中〜2025/11/30

ポーラ美術館

神奈川県・足柄下郡箱根町

ライアン・ガンダー:ユー・コンプリート・ミー

開催中〜2025/11/30

ポーラ美術館

神奈川県・足柄下郡箱根町

HOKUSAI−ぜんぶ、北斎のしわざでした。展

2025/09/13〜2025/11/30

CREATIVE MUSEUM TOKYO(東京・京橋TODA BUILDING 6階)

東京都・中央区

トロイメライ

開催中〜2026/01/12

原美術館ARC

群馬県・渋川市

野口哲哉 鎧を着て見る夢 –ARMOURED DREAMER–

2025/07/19〜2026/01/12

彫刻の森美術館

神奈川県・足柄下郡箱根町

Exhibitions

そこに光が降りてくる
青木野枝/三嶋りつ惠

 鉄の彫刻家、青木野枝(1958年東京都生まれ)とガラスの作家、三嶋りつ惠(1962年京都府生まれ)が、東京都庭園美術館のアール・デコの装飾空間をそれぞれの作品から生み出される光で照らし出し、建物の歴史を浮かび上がらせるかのような展覧会が開かれている。
 東京都庭園美術館の本館は1933年に皇族の朝香宮家の自邸として建てられた。内装はアール・デコ様式で、2015年に重要文化財に指定されている。展覧会を担当した森千花同館学芸員が、「90年前の時間が凍結されたような空間が、現代アーティストの創造によって、過去と現在が共存しながら手を結ぶ風景となるのを見たい」という思いから旧朝香宮邸の装飾として特徴的に用いられている鉄とガラスという素材に着目し、青木と三嶋に展覧会への参加を依頼した。

青木野枝(左)と三嶋りつ惠(右)
青木野枝(左)と三嶋りつ惠(右)

 青木は、鉄を溶断することを制作の核とし、切り抜かれた鉄の輪を繋ぎ合わせた軽やかな作風で知られている。40年以上ひたすら鉄を切り続ける経験から「鉄は透明な金属。そしていつも内部に透明な光を持っている」と語る。
 今回、旧朝香宮邸の大食堂には鉄の輪が繋がれたお椀のような形の2つの立体から成る「ふりそそぐもの/朝香宮邸 Ⅰ」を、その奥にある半円形の出窓のある大広間には輪を球体に組み上げた「ふりそそぐもの/朝香宮邸 Ⅱ」を制作した。いずれもいくつかの輪に赤いガラスがはめ込まれている。この二つの作品は、青木が「今、自分が感じている世界を朝香宮邸の中に作りたい」との思いで取り組んだ。
 制作のため美術館に滞在すればするほど、ここで暮らしていた人たちの生活がリアルに感じられた。「これまで、父親や祖父の歴史を無視していたが、日本がどのようなことをしてきたのか、昭和の時代を自分がどのように生きてきたのかを考えるようになり、自らを検証しながら作品を作った」という。
 祖父は軍人で、日清戦争や乃木将軍の下で日露戦争にも従軍し、多くの人が亡くなったことを改めて考えた。また、今、最も気になるのは中東のガザ地区の問題で、イスラエルとパレスチナの戦争やウクライナとロシアの戦争にも心を痛め、何かできないかと葛藤している。
 「朝香宮邸が完成した1933年はナチスが政権を取って日本が国際連盟を脱退した年。そうした時期に朝香宮允子妃がフランスとやりとりしながら、美しいものをどうしても建てたかった気持ちと、自分が今、ものを作りたいという気持ちが少し被るような気がした」という。
 青木は2019年の長崎県美術館での個展で初めて赤い色ガラスを作品に取り込んだ。父親が九州の人で、いとこが原爆で亡くなっていたり、キリシタン弾圧の歴史があったりすることから赤を用いたが、赤は長崎だけと明言し、その後は白や青のガラスを使っていた。しかし、「今回は、絶対に赤を使いたいと思った」。「戦争や弾圧のイメージと繋がり、血の色でもある。白いガラスを使う予定だったが、白ではないと思った」と話す。

青木野枝 「ふりそそぐもの/朝香宮邸 Ⅱ」 2024年
青木野枝 「ふりそそぐもの/朝香宮邸 Ⅱ」 2024年

 2階の階段の横の、普段はそこにあることすら気付かない部屋にも作品がある。厚い扉が半分ほど開いていて、中をのぞくと台の上に鉄の棒を円形に立てた作品「ふりそそぐもの/朝香宮邸 Ⅶ」がアンティークなライトに照らし出されている。ここは金庫室で台は金庫。中には引き出しがあり「ティアラとかお金とかが入っていたのだろう」と想像する。「氏神様などを祭るような暗い所というイメージで、鉄に丸く切った紙を吊るして」(青木)制作した。作品のあるすべての部屋の中で90年前の空気が最も立ち込めているような空間に静かに佇んでいる。

青木野枝 「ふりそそぐもの/朝香宮邸 Ⅶ」 2024 年
青木野枝 「ふりそそぐもの/朝香宮邸 Ⅶ」 2024 年

 三嶋は、20代後半にイタリアに渡り、1996年からヴェネツィアの工房で職人と協働しながらガラス作品を制作してきた。「光が降りて来て、ガラスが窓のようになる。作品を通して光を感じてほしい」との思いから、無色透明のガラスに強いこだわりを持っている。
 美術館に入って最初に足を踏み入れる大広間には、さまざまな形の透明なガラス作品が白いガラス板の上に展示され、華やかな空気をたたえている。「ここは人を招き入れて喜んでもらう空間だったと思う」と三嶋。「天井のアール・デコと日本の様式が混ざったようなライトに惹かれ、その数に合わせて約40個の作品を並べて、現代に放つ光と対話ができるようにしたかった」という作品で、タイトルは「光の海」。「それぞれのフォルムは光を放ち、光で満たされた海を遊泳する」(三嶋)。作品の周りをゆっくりと歩きながら見て行くと、光が揺らぐような感覚がわき起こる。

三嶋りつ惠 「光の海」 2024年
三嶋りつ惠 「光の海」 2024年

 2階への階段を上ると見えてくるのが2万2千個のガラスビーズの光がまばゆい「光の場」。ここは2階広間で、家族が集まるにぎやかな場所だったという。「昔はこんな感じの華やかさがあったのではないかと思い、そのイメージを現代に再現した」(三嶋)。

三嶋りつ惠 「光の場」 2019年
三嶋りつ惠 「光の場」 2019年

 本館と新館の間の庭の木の枝にも作品がある。イタリア語で雫を意味する「RUGIADA」(ルジャーダ)というタイトルで、雫が連なるようなガラスの粒に風景が映り、光でガラスがきらめき、自然に溶け込む。

三嶋りつ惠 「RUGIADA」 2024年
三嶋りつ惠 「RUGIADA」 2024年

 建物の存在や周囲の風景を、キャリアを積んだ二人の作家の研ぎ澄まされた感性による作品を通して実感することができる。時代をじっくりと見つめ直すきっかけになりそうだ。
 
執筆・写真撮影:西澤美子(文中敬称略)
 
※写真は主催者の許可を得て撮影しています
冒頭の写真は、青木野枝 「ふりそそぐもの/朝香宮邸 Ⅰ」2024年

2024年11月30日(土)~2025年2月16日(日) 東京都庭園美術館(東京都・港区)
美術館HP:https://www.teien-art-museum.ne.jp/