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挂甲の武人 国宝指定50周年記念 特別展『はにわ』

開催中〜2024/12/08

東京国立博物館

東京都・台東区

没後50年記念 福田平八郎×琳派

開催中〜2024/12/08

山種美術館

東京都・渋谷区

広重ブルー

開催中〜2024/12/08

太田記念美術館

東京都・渋谷区

荏原 畠山美術館 開館記念展 Ⅰ―與衆愛玩一共に楽しむ

開催中〜2024/12/08

荏原 畠山美術館

東京都・港区

ベル・エポック―美しき時代 パリに集った芸術家たち ワイズマン&マイケル コレクションを中心に

開催中〜2024/12/15

パナソニック汐留美術館

東京都・港区

コスチュームジュエリー ―美の変革者たち― シャネル、ディオール、スキャパレッリ 小瀧千佐子コレクションより

開催中〜2024/12/15

宇都宮美術館

栃木県・宇都宮市

特別展 オタケ・インパクト ―越堂・竹坡・国観、尾竹三兄弟の日本画アナキズム―

開催中〜2024/12/15

泉屋博古館東京

東京都・港区

SENSE ISLAND/LAND|感覚の島と感覚の地 2024

開催中〜2024/12/15

猿島および横須賀市街地(芸術祭)

神奈川県・横須賀市

荒川ナッシュ医 ペインティングス・アー・ポップスターズ

開催中〜2024/12/16

国立新美術館

東京都・港区

廣川 玉枝|皮膚のデザイン

開催中〜2024/12/22

藤沢市アートスペース

神奈川県・藤沢市

OPEN SITE 9 Part 1

開催中〜2024/12/22

トーキョーアーツアンドスペース本郷

東京都・文京区

水墨の魔術師 浦上玉堂

開催中〜2024/12/22

栃木県立美術館

栃木県・宇都宮市

リキッドスケープ 東南アジアの今を見る

開催中〜2024/12/24

アーツ前橋

群馬県・前橋市

追悼 野見山暁治 野っ原との契約

開催中〜2024/12/25

練馬区立美術館

東京都・練馬区

エモーション・クロッシング展

開催中〜2024/12/25

SusHi Tech Square 1F Space

東京都・千代田区

カナレットとヴェネツィアの輝き

開催中〜2024/12/28

SOMPO美術館

東京都・新宿区

「テレンス・コンラン モダン・ブリテンをデザインする」展

開催中〜2025/01/05

東京ステーションギャラリー

東京都・千代田区

さくらももこ展

開催中〜2025/01/05

森アーツセンターギャラリー

東京都・港区

ミュシャ展 マルチ・アーティストの先駆者

開催中〜2025/01/05

そごう美術館

神奈川県・横浜市

上野アーティストプロジェクト2024「ノスタルジア―記憶のなかの景色」&「懐かしさの系譜─大正から現代まで 東京都コレクションより」

開催中〜2025/01/08

東京都美術館

東京都・台東区

心のまんなかでアートをあじわってみる

開催中〜2025/01/13

原美術館ARC

群馬県・渋川市

没後100年 中村 彝 展―アトリエから世界へ

開催中〜2025/01/13

茨城県近代美術館

茨城県・水戸市

アレック・ソス 部屋についての部屋

開催中〜2025/01/19

東京都写真美術館

東京都・目黒区

「ルイーズ・ブルジョワ展:  地獄から帰ってきたところ 言っとくけど、素晴らしかったわ」

開催中〜2025/01/19

森美術館

東京都・港区

現在地のまなざし 日本の新進作家 vol.21

開催中〜2025/01/19

東京都写真美術館

東京都・目黒区

唐ごのみ —国宝 雪松図と中国の書画—

開催中〜2025/01/19

三井記念美術館

東京都・中央区

怪力の魅力

開催中〜2025/01/19

北斎館

長野県・小布施町

グラン・パレ・イマーシブ 永遠のミュシャ

2024/12/03〜2025/01/19

ヒカリエホール

東京都・渋谷区

グラン・パレ・イマーシブ 永遠のミュシャ

2024/12/03〜2025/01/19

ヒカリエホール(渋谷ヒカリエ9F)

東京都・渋谷区

再開館記念 「不在」ートゥールーズ=ロートレックとソフィ・カル

開催中〜2025/01/26

三菱一号館美術館

東京都・千代田区

小杉放菴展 小杉放菴記念日光美術館の所蔵作品を中心に

開催中〜2025/01/26

八王子市夢美術館

東京都・八王子市

ポケモン×工芸展-美とわざの大発見-

開催中〜2025/02/02

麻布台ヒルズ ギャラリー

東京都・港区

超絶技巧、未来へ! 明治工芸とそのDNA

開催中〜2025/02/02

山梨県立美術館

山梨県・甲府市

東急 暮らしと街の文化ーー100年の時を拓く

開催中〜2025/02/02

世田谷美術館

東京都・世田谷区

中国陶磁展 うわぐすりの1500年

開催中〜2025/02/09

松岡美術館

東京都・港区

ジャム・セッション 石橋財団コレクション×毛利悠子—ピュシスについて

開催中〜2025/02/09

アーティゾン美術館

東京都・中央区

OPEN SITE 9 Part 2

2025/01/11〜2025/02/09

トーキョーアーツアンドスペース本郷

東京都・文京区

絵画のゆくえ2025

2025/01/18〜2025/02/11

SOMPO美術館

東京都・新宿区

おしゃべり美術館 ひらビあーつま~れ10年記念展

開催中〜2025/02/16

平塚市美術館

神奈川県・平塚市

企画展「ゴミうんち展」

開催中〜2025/02/16

21_21 DESIGN SIGHT

東京都・港区

そこに光が降りてくる 青木野枝・三嶋りつ惠

開催中〜2025/02/16

東京都庭園美術館

東京都・港区

開館2周年記念特別企画「藤田嗣治の愛しきものたち」

開催中〜2025/02/18

軽井沢安東美術館

長野県・軽井沢町

反復と偶然展

2024/12/17〜2025/02/24

国立工芸館

石川県・金沢市

漫画家・森薫と入江亜季 展 ―ペン先が描く緻密なる世界―

開催中〜2025/02/24

世田谷文学館

東京都・世田谷区

Hello Kitty展 –わたしが変わるとキティも変わる–

開催中〜2025/02/24

東京国立博物館

東京都・台東区

特別展「鳥 〜ゲノム解析が解き明かす新しい鳥類の系統〜」

開催中〜2025/02/24

国立科学博物館

東京都・台東区

漫画家・森薫と入江亜季 展 ―ペン先が描く緻密なる世界―

開催中〜2025/02/24

世田谷文学館

東京都・世田谷区

【特別展】HAPPYな日本美術 ―伊藤若冲から横山大観、川端龍子へ―

2024/12/14〜2025/02/24

山種美術館

東京都・渋谷区

【特別展】HAPPYな日本美術 ―伊藤若冲から横山大観、川端龍子へ―

2024/12/14〜2025/02/24

山種美術館

東京都・渋谷区

小西真奈 Wherever

2024/12/14〜2025/02/24

府中市美術館

東京都・府中市

瑞祥のかたち

2025/01/04〜2025/03/02

皇居三の丸尚蔵館

東京都・千代田区

アニメ「鬼滅の刃」 柱展 ーそして無限城へー

開催中〜2025/03/02

CREATIVE MUSEUM TOKYO

東京都・中央区

読み解こう!北斎も描いた江戸のカレンダー

2024/12/18〜2025/03/02

すみだ北斎美術館

東京都・墨田区

evala 現われる場 消滅する像

2024/12/14〜2025/03/09

NTTインターコミュニケーション・センター [ICC]

東京都・新宿区

「生誕120年 宮脇綾子の芸術 見た、切った、貼った」展

2025/01/25〜2025/03/16

東京ステーションギャラリー

東京都・千代田区

花器のある風景

2025/01/25〜2025/03/16

泉屋博古館東京

東京都・港区

寺山修司展(コレクション展)

開催中〜2025/03/30

世田谷文学館

東京都・世田谷区

平山郁夫《想一想》と昭和期の日本画家たち

2024/12/11〜2025/03/30

半蔵門ミュージアム

東京都・千代田区

MOTコレクション 竹林之七妍/小さな光/開館30周年記念プレ企画 イケムラレイコ マーク・マンダース  Rising Light/Frozen Moment

2024/12/14〜2025/03/30

東京都現代美術館

東京都・江東区

体感型デジタルアートミュージアム「動き出す浮世絵展 TOKYO」

2024/12/21〜2025/03/31

寺田倉庫G1ビル

東京都・品川区

ブルックリン博物館所蔵 特別展 古代エジプト

2025/01/25〜2025/04/06

森アーツセンターギャラリー

東京都・港区

カラーズ — 色の秘密にせまる 印象派から現代アートへ

2024/12/14〜2025/05/18

ポーラ美術館

神奈川県・足柄下郡箱根町

Exhibitions

こども展―名画にみるこどもと画家の絆―

新鮮で、心温まる展覧会
画家が自分の子どもを描いた絵画
三分の二の作品が日本初公開

   東京展の会場を廻って魅了された。親である画家が、自分の子どもやごく親しい子どもたちを描いた絵画が並ぶ。多くの可愛らしい子どもに出会うことができる。眺めていると、モデルとなった子どもの気持ち、親である画家の想い、そして互いの交流が浮かび上がってくる。19世紀初頭の近代から20世紀の現代までの約200年にわたり、48人の画家によって描かれた87作品(【注意】大阪展では47人による86作品)がそれぞれ、親子と家族の物語を語っている。ありそうで今までなかった、新鮮な感覚の展覧会だ。幅広い年齢層の方々がともに楽しめるだろう。
■「小さな物語」から大きな物語へ
   本展は、クロード・モネの「睡蓮」連作を所蔵することで有名なパリのオランジュリー美術館で、2009年11月から2010年3月まで開催された「Les enfants modèles(モデルとなった子どもたち/模範的な子どもたち)」展を基礎とする。このフランス展には約20万人の観客が訪れたという。日本展は、それを構成しなおして規模を拡大し、オランジュリー美術館とオルセー美術館の支援のもとで実現した。
   「こども展」の特徴は第一に、「親が描く自分の子どもや身近な子どもの肖像」というテーマの魅力だ。誰もが親しみやすい。作品には、子どもの姿とともに、画家とモデルになった子どもたちの間の率直な感情が内包されている。作品を両者の視点で探る面白さは格別である。フランス展を企画立案したオランジュリー美術館 元館長のエマニュエル・ブレオン氏は、代々活躍した有名な画家一族デュビュッフ家の末裔で、先祖がその子どもを描いた肖像画が自宅に飾られていた。「モデルとなった子どもたちは何を考えていたのだろう」と幼い頃からいつも思っていたという。彼が長年いだいていたこの想いがフランス展実現の発端となった。ブレオン氏は本展図録に「学問の主流となるヒエラルキーの外側にある『小さな物語』は、むしろ私たちを大きな物語へと導いてくれるのではないだろうか」と書いておられる。この斬新なテーマは、挑戦的で冒険心に富むものでもあるのだ。なお日本展は、ブレオン氏と千足伸行 成城大学名誉教授によって監修された。
   第二の特徴は、絶妙な作品選定である。モネ、ルノワール、ルソー、マティス、ピカソ、フジタら代表的な画家が多く名を連ねる。それと同時に、日本であまり知られていない画家の作品も出品されるが巨匠作品と肩を並べるもの。子どもの肖像の世界的名作が勢ぞろいした。日本初公開の作品が三分の二を占めることも重要だ。注文肖像画ではなく画家が自分のために描き、遺族が代々大切に保管してきた作品が多いからだ。この点でも意外性や新鮮さが大きい。  
   第三には、19世紀初頭から現代まで約200年の美術史における子どもの肖像画の変遷を、時代の変化とともに辿りながら楽しめるよう、優れた展覧会構成がなされていることだ。次のように、序章と六つの章から構成される。序章(19世紀前半~新古典主義からロマン主義の時代の作品)、①家族(19世紀~20世紀末までの家族肖像画)/②模範的な子どもたち(ベル・エポックの1870年代~1914年の作品)/③印象派④ポスト印象派とナビ派⑤フォーヴィスムとキュビスム⑥20世紀のレアリスト
   そして第四の特徴は、人々がそれぞれ自由に楽しみ、発見ができることだ。会場内に画家の家系図や交流図が紹介されており、また当時モデルとなった子どもたちが、画家である親や祖父の作品制作の様子を語る映像も観ることができる。順々に作品を辿るだけでなく、会場を行ったり来たりしながら、画家の人生や一族を探ったり、モデルと一緒に描かれているものを比べたり、いろいろな楽しみかたができるだろう。
■画家と子どもと家族:たくさんの小さな物語
   見どころの多い展覧会だが、一部をご紹介したい。
●デュビュッフ家  最初の円形の部屋に入ると、大きな楕円形の肖像画対作品が飾られている。小公子と小公女のような子どもたちで、立派で可愛い。正装して椅子のまえでやや緊張気味にポーズをとっていて記念写真のようでもある。これは19世紀半ば、クロード=マリー・デュビュッフ(1790~1864)が幼い息子を描いた≪ポール・デュビュッフの肖像≫(1848年、個人蔵)と、ポールの将来の妻となるネリーを描いた≪ネリー・ビュネルの肖像≫(1850年頃、個人蔵)だ。デュビュッフは新古典主義の巨匠ジャック・ルイ・ダヴィッド(1748~1825)の弟子であり、デュビュッフ家は代々活躍し有名な画家一族となる。本展の立案企画者のブレオン氏は、先述したように一族の子孫で、肖像画の二人は彼の4代前の先祖にあたる。この対肖像画は子孫が大事に保管してきたもの。一族代々の画家たちの優品も多く出品され、繋がりも辿ることができる。
●モデルとなったジュリー・マネ  会場にはもう一つ円形のスペースがある。ここにある6作品のモデルがジュリー・マネ(1878~1966)だ。エドゥアール・マネ(1832~1883)の弟で画家だったウジェーヌ・マネを父に、印象派の女流画家として活躍したベルト・モリゾ(1841~1895)を母にもつ、彼らの一人娘。芸術的な環境で育ち、自身も画家となった。母モリゾは、自分の分身のように繰り返し愛娘を描いた。≪庭のウジェーヌ・マネとその娘≫(1883年、個人蔵)は、光あふれる緑の庭で5歳の娘と彼女をスケッチする父の微笑ましい情景を、モリゾらしい素早い筆致で描いた傑作だ。また、ピエール=オーギュスト・ルノワール(1841~1919)による≪ジュリー・マネの肖像、あるいは猫を抱く子ども≫(1887年、オルセー美術館)は、8歳の少女らしい端正な姿と気持ちよさそうな猫の表情が忘れがたい。モリゾが、親しいルノワールに依頼して描いてもらった肖像画だ。その頃のルノワールは印象派の描法から離れ、明確な輪郭と滑らかな絵の表面を重視するアングル風の古典主義を探求しており、ジュリーの顔の表現にそれが採用されている。ルノワールは後年、詩人のステファヌ・マラルメ(1842~98)とともに、母を10代で亡くしたジュリーの後見人となった。また、後にエドガー・ドガ(1834~1917)の紹介でジュリーと知り合い、その夫となった画家ルエルネスト・ルーアール(1874~1942)が、書斎で手紙を書くジュリーを描いた作品や、ジュリー自身による幼い甥のオーギュスタン・ルーアール(1907~97)の肖像画も出品され、我々はジュリーの生涯の一端を知ることができる。その後、甥のオーギュスタンも画家になり、その作品は1970年代のポスト・モダン以降再評価される。彼が、眠る息子をキリストになぞらえて描いた≪天使に囲まれた子ども≫(1949年、個人蔵)は浮世絵版画をも思わせる淡い色彩と線描が特徴で、清新な息吹がある。なお、ジュリーの母モリゾは、エドゥアール・マネの多くの作品のモデルにもなり、マネの名作を生み出したことでも有名である。マネの代表作≪すみれの花束をつけたベルト・モリゾ≫(1872年、オルセー美術館)をジュリーは生涯大事に自宅居間に飾っていたという。

●カリエール/アンリ・ルソー:子どもの夭逝
  ウジェーヌ・カリエール(1849~1906)の傑作≪病気の子ども≫(1885年、オルセー美術館)は、200×246cmの巨大な画面。全体が霧にかかったようにみえる。この作品で彼独特のデリケートな明暗の諧調を確立させたといわれる。兄弟たちが見守るなか、母にいだかれた赤ん坊が力なくこちらを向いている。赤ちゃんはこのあと息を引きとったという。本作は1885年のサロンに出品され、画家を大成功に導いたのだが、子どもを亡くしたカリエールの気持ちはどんなだったろう。また、素朴派の画家アンリ・ルソー(1844~1910)も授かった実の7人の子どものうち6人もが早世した。彼は生涯に数点しか子どもを描いていない。その貴重な一点である≪人形を抱く子ども≫(1904~05年頃、オランジュリー美術館)では、明るい青空と緑の草原を背景に、赤地に白い水玉模様のワンピースの金髪の少女が、人形を抱え思いつめたような表情で真正面を見据える。強烈な色彩と奇妙な造形が独特の魅力を創る本作は、父としての鎮魂の絵画だったのかもしれない。
●ルノワール/ドニ:生き生きした普段の姿  一方、印象派の代表的な画家ルノワールは、3人の息子の遊んでいるところなど普段の姿を、成長記録のように繰り返し描いた。明るく、生きる喜びを体現するような子どもたち。しかし、その代表作≪道化姿のクロード・ルノワール≫(1909年、オランジュリー美術館)では珍しく赤い衣装を着せてポーズをとらせた。モデルとなった次男クロードは「ちょっとした拷問」のように感じたとの話が残る。ナビ派の代表的な画家モーリス・ドニ(1870~1943)が鮮やかな色彩で描いた、溌剌とした青い目の子どもたちの作品にも愛情がいっぱいだ。2人の息子たちが遊ぶ≪ボクシング≫(1918年、個人蔵)や≪トランペットを吹くアコ≫(1919年、個人蔵)などからも、ドニがいかに子煩悩な父だったかが伝わる。彼は、ナビ派のなかでも温かみのある家族の情景を好んで描くアンチミスト(親密派)の一人で、10人の子ども(一人は夭逝)に恵まれた。

●ピカソ:父母が描いた子どもたち
  20世紀に絵画の革命を行ったパブロ・ピカソ(1881~1973)も、ドニと同様に自分の子どもを最も多く描いた画家である。ピカソの4人の子どものうち、本展では画家でもあったフランソワ―ズ・ジロー(1921~)との間に生まれたクロードとパロマを描いた作品が、厚紙を切り抜いた遊び道具も含め、数多く出品されている。ピカソ作品の変幻自在ぶりも観られる。お絵かきをする二人の子どもを母が見守る≪母とこどもたち≫(1953年、個人蔵)は、黒色の版画に色鉛筆で彩色され、単純な造形。ピカソの家族愛が強く伝わる。彼にインスピレーションを与えたというフランソワーズの子どもを描いた作品も出品され、ピカソのコーナーではこの家族に会っているような気持ちになった。息子クロードが映像で、父ピカソはいつも自分たちを自由に遊ばせながら描いていたと話している。それにしても、出来上がったピカソの作品は、モデルの姿とどのくらい似ているのだろう。
●エンダディアン:横向きの姿  イラン人の画家ダヴード・エンダディアン(1944~2005)の作品も印象深い。≪ヤシャール=アザールの肖像≫(1986年、個人蔵)は、室内で民族衣装を身に着け、ペルシャ絨毯の上に窓に向かって横向きに立つ黒髪の5歳の息子を描く。また、《ネガールの肖像》(1994年、個人蔵)は、大きな絵画の前でやはり横向きに座る黒髪の娘が描かれる。光の入り方が絶妙だ。モデルになったネガールによると、光が最良になったとき、父から呼ばれアトリエに入ったという。主役は現代の子どもだが、イタリアのルネサンス絵画や17世紀オランダの室内画にも通じる。美術史への畏敬の念と透徹した世界観を感じられる作品である。

●フジタ:絵の子どもが自分の子ども
  展覧会の最後を飾るのは、日本展であらたに加えられたレオナール・フジタ(1886~1968)の作品群だ。裸婦、自画像、猫、静物などとともに子どもというのは、彼の重要な画題だった。≪機械化の時代≫(1958~59年、パリ市近代美術館)や≪フランスの48の富≫(1960~61年、パリ市近代美術館)には目の大きな人形のような表情の子どもたちの群像が描かれる。彼は実際の子どもには恵まれなかったが、「私の絵の子どもが私の息子なり娘なりで一番愛したい子どもだ」と語っている。子どもへの深い愛情と、彼らに託す願いと希望がみえるようだ。
■子どもの肖像画はどう描かれてきたのか
   画家が自分の子どもを描いたのはいつ頃からなのだろう。バロックの巨匠ピーテル・パウル・ルーベンス(1577~1640)やレンブラント・ファン・レイン(1606~69)は自分の子どもの肖像画を多く描いたが、実は例外的なことだった。当時西欧では子どもは一人の人間としてとらえられることはなく、また実の両親と過ごす時間は少なかった。18世紀半ば、スイス人の哲学者であるジャン=ジャック・ルソー(1712~78)が著作『エミール』により、子どもを固有の人格をもつ自立した存在ととらえる革新的な考え方を提唱し、教育法として両親とのふれあいを大切にすることを説いた。1789年のフランス革命による市民階級の台頭とともに子どもの地位が確立していき、18世紀後半から19世紀に入り、近代的な意味での子どもの肖像画が描かれ始めるようになる。市民的絵画でもある印象派にも、またアンチミストとしてのナビ派にとっても子どもは身近な存在だ。よって印象派やナビ派の時代は、自分の子どもを描いた肖像画の頂点だった。20世紀に入って起こったダダイスム、シュルレアリスムなどの芸術運動は子どもを画題とせず、子どもの肖像画という分野を追いやってしまう。しかしその流れとは異なる画家たちがいた。エコール・ド・パリの画家をはじめ20世紀のレアリスト(写実主義)の画家たちが子どもの肖像を描き続けていた。21世紀はどのような流れになるのだろうか。

■重層する楽しみ

   「子どもでなかった大人は居ない。」そのことにも気づかされる展覧会だ。ブレオン氏の個人的体験から始まってフランス展が開催され、その際ブレオン氏が全く予想しなかった日本展が実現した。何層も重なる楽しみを是非体験していただきたい。
【参考文献】
千足伸行 監修、日本テレビ放送網 編集『こども展―名画にみる子どもと画家の絆―(Les enfants modèles)』、日本テレビ放送網 発行、2014年。

執筆:HOSOKAWA Fonte Idumi 
(2014年5月)


東京展会場風景。
ウジェーヌ・カリエール≪病気の子ども≫。(©I.HOSOKAWA)
2014_05_19_002
東京展会場風景。
左から、アンリ・ルソー≪人形を抱く子ども≫。
エルネスト・ルーアール≪人形を抱く娘≫。
(©I.HOSOKAWA)
2014_05_19_003
東京展会場風景。
左から、ピエール=オーギュスト・ルノワール
≪ジュリー・マネの肖像、あるいは猫を抱く子ども≫。
ベルト・モリゾ≪犬を抱く娘≫、≪庭のウジェーヌ・マネとその娘≫。(©I.HOSOKAWA)
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東京展会場風景。
左から、モーリス・ドニ≪ボクシング≫、
≪トランペットを吹くアコ≫。(©I.HOSOKAWA)

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【会期・会場】
[東京展] 2014年4月19日~6月29日 森アーツセンターギャラリー
電話:03-5777-8600(ハローダイヤル)
詳細http://www.ntv.co.jp/kodomo/
[大阪展] 
2014年7月19日~10月13日 大阪市立美術館
電話:06-6771-4874
詳細http://www.osaka-art-museum.jp/sp_evt/children-on-canvas/
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※本文・図版とも無断引用を禁じます。

2014年5月20日