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エルマーのぼうけん展

開催中〜2023/10/01

PLAY! MUSEUM

東京都・立川市

テート美術館展 光 ― ターナー、印象派から現代へ

開催中〜2023/10/02

国立新美術館

東京都・港区

モネ、ルノワール 印象派の光

開催中〜2023/10/09

松岡美術館

東京都・港区

名作展 画家と生活—川端龍子の晩年の作品から

開催中〜2023/10/09

大田区立龍子記念館

東京都・大田区

うえののそこから「はじまり、はじまり」荒木珠奈 展

開催中〜2023/10/09

東京都美術館

東京都・台東区

中之条ビエンナーレ2023

開催中〜2023/10/09

芸術祭(群馬県中之条町)

群馬県・中之条町

特別展「海ー生命のみなもとー」

開催中〜2023/10/09

国立科学博物館

東京都・台東区

企画展 楽しい隠遁生活 文人たちのマインドフルネス

開催中〜2023/10/15

泉屋博古館東京

東京都

企画展 甲冑・刀・刀装具 光村コレクション・ダイジェスト

開催中〜2023/10/15

根津美術館

東京都・港区

北島敬三「UNTITLED RECORDS : REVISITED + PORTRAITS」展

開催中〜2023/10/22

BankART Station

神奈川県・横浜市

北陸工芸の祭典 GO FOR KOGEI 2023「物質的想像力と物語の縁起― マテリアル、データ、ファンタジー」

開催中〜2023/10/29

芸術祭(富山県富山市富岩運河沿い)

富山県・富山市

瞳の奥にあるもの -表情でみる人物画展-

開催中〜2023/11/05

ホキ美術館

千葉県・千葉市

堅山南風《大震災実写図巻》と近代の画家 大観・玉堂・青邨・蓬春

開催中〜2023/11/05

半蔵門ミュージアム

東京都・千代田区

ジョセフ・アルバースの授業 色と素材の実験室

開催中〜2023/11/05

DIC川村記念美術館

千葉県・佐倉市

MOTコレクション 被膜虚実/特集展示 横尾忠則―水のように/生誕100年 サム・フランシス

開催中〜2023/11/05

東京都現代美術館

東京都・江東区

宇川直宏展 FINAL MEDIA THERA PIST @DOMMUNE

開催中〜2023/11/05

練馬区立美術館

東京都・練馬区

九谷焼の芸術祭 KUTANism 2023

2023/10/06〜2023/11/05

芸術祭(石川県小松市・能美市各所)

石川県・小松市、能美市

土方久功と柚木沙弥郎――熱き体験と創作の愉しみ

開催中〜2023/11/05

世田谷美術館

東京都・世田谷区

テルマエ展 お風呂でつながる古代ローマと日本

開催中〜2023/11/05

山梨県立美術館

山梨県・甲府市

特別展「めぐりあう大津絵―笠間日動美術館・小絲源太郎コレクションと 神戸女子大学古典芸能研究センター・志水文庫の大津絵」

開催中〜2023/11/05

八王子市夢美術館

東京都・八王子市

アーツ・アンド・クラフツとデザイン ウィリアム・モリスからフランク・ロイド・ライトまで

開催中〜2023/11/05

そごう美術館

神奈川県・横浜市

東京の地場に発する国際芸術祭 東京ビエンナーレ2023

開催中〜2023/11/05

芸術祭(東京都心北東エリア〔千代田区、中央区、文京区、台東区の4区にまたがるエリア〕 、歴史的建築物、公共空間、学校、店舗屋上、遊休化した建物等)

東京都・千代田区、中央区、文京区、台東区

春陽会誕生100年 それぞれの闘い 岸田劉生、中川一政から岡鹿之助へ

開催中〜2023/11/12

東京ステーションギャラリー

東京都・千代田区

MIND TRAIL 奥大和 心のなかの美術館

開催中〜2023/11/12

芸術祭(奈良県 吉野町、下北山村、ほか予定)

奈良県・吉野町、下北山村、ほか予定

奥能登国際芸術祭2023

開催中〜2023/11/12

芸術祭(石川県珠洲市)

石川県・珠洲市

TOKAS Project Vol. 6 『凪ぎ、揺らぎ、』

2023/10/07〜2023/11/12

トーキョーアーツアンドスペース本郷

東京都・文京区

松本秋則+松本倫子「惑星トラリス」展

開催中〜2023/11/12

BankART KAIKO

神奈川県・横浜市

浄瑠璃寺九体阿弥陀修理完成記念 特別展「京都・南山城の仏像」

開催中〜2023/11/12

東京国立博物館

東京都・台東区

第75回 正倉院展

2023/10/28〜2023/11/13

奈良国立博物館

奈良県・奈良市

北斗の拳40周年大原画展 ~愛をとりもどせ!!~

2023/10/07〜2023/11/19

森アーツセンターギャラリー(六本木ヒルズ森タワー52F)

東京都・港区

ジャム・セッション 石橋財団コレクション×山口晃 ここへきて やむに止まれぬ サンサシオン

開催中〜2023/11/19

アーティゾン美術館

東京都・中央区

創造の現場― 映画と写真による芸術家の記録

開催中〜2023/11/19

アーティゾン美術館

東京都・中央区

秋の特別展「おまもりとハンコとコイン -古代オリエントの偉大なる小さきものたち-」

開催中〜2023/11/19

古代オリエント博物館

東京都・豊島区

六甲ミーツ・アート芸術散歩 2023 beyond

開催中〜2023/11/23

芸術祭(神戸・六甲山上)

兵庫県・神戸市

美しき時代(ベル・エポック)と異彩のジュエリー

開催中〜2023/11/26

箱根ラリック美術館

神奈川県・箱根町

企画展「北斎のまく笑いの種」

開催中〜2023/11/26

すみだ北斎美術館

東京都・墨田区

横山美術館名品展 明治・大正の輸出陶磁器 技巧から意匠へ

2023/10/07〜2023/11/26

平塚市美術館

神奈川県・平塚市

皇居三の丸尚蔵館収蔵品展 皇室と石川 —麗しき美の煌めき—

2023/10/14〜2023/11/26

国立工芸館(石川県立美術館との共催)

石川県・金沢市

開館20周年 & 富士山世界遺産登録10周年記念 後期「フジヤマミュージアム名品展」

開催中〜2023/11/26

フジヤマミュージアム

山梨県・富士吉田市

特別展「日本画聖地巡礼 ー東山魁夷の京都、奥村土牛の鳴門ー」

開催中〜2023/11/26

山種美術館

東京都・渋谷区

特別展「超絶技巧、未来へ! 明治工芸とそのDNA」

開催中〜2023/11/26

三井記念美術館

東京都・中央区

関東大震災100年企画展 「震災からのあゆみ —未来へつなげる科学技術—」

開催中〜2023/11/26

国立科学博物館

東京都・台東区

シン・ジャパニーズ・ペインティング 革新の日本画―横山大観、 杉山寧から現代の作家まで

開催中〜2023/12/03

ポーラ美術館

神奈川県・足柄下郡箱根町

生誕120年 棟方志功展 メイキング・オブ・ムナカタ

2023/10/06〜2023/12/03

東京国立近代美術館

東京都・千代田区

「横尾忠則 寒山百得」展

開催中〜2023/12/03

東京国立博物館

東京都・台東区

特別展「岡本玉水 人形芸術にかけた生涯—御所人形から玉水人形へ」

2023/10/07〜2023/12/03

さいたま市岩槻人形博物館

埼玉県・さいたま市

特別展「北宋書画精華」

2023/11/03〜2023/12/03

根津美術館

東京都・港区

特別展「やまと絵 -受け継がれる王朝の美-」

2023/10/11〜2023/12/03

東京国立博物館

東京都・台東区

特別展「岡本玉水 人形芸術にかけた生涯—御所人形から玉水人形へ」

2023/10/07〜2023/12/03

さいたま市岩槻人形博物館

埼玉県・さいたま市

日中平和友好条約45周年記念「世界遺産 大シルクロード展」

開催中〜2023/12/10

東京富士美術館

東京都・八王子市

さいたま国際芸術祭2023

2023/10/07〜2023/12/10

芸術祭(さいたま市・旧市民会館おおみや(メイン会場)ほか)

埼玉県・さいたま市

永遠の都ローマ展

開催中〜2023/12/10

東京都美術館

東京都・台東区

イヴ・サンローラン展 時を超えるスタイル

開催中〜2023/12/11

国立新美術館

東京都・港区

コスチュームジュエリー美の変革者たち シャネル、スキャパレッリ、ディオール 小瀧千佐子コレクションより

2023/10/07〜2023/12/17

パナソニック汐留美術館

東京都・港区

布の芸術祭『FUJI TEXTILE WEEK 2023(フジテキスタイルウィーク)』

2023/11/23〜2023/12/17

芸術祭(山梨県富士吉田市)

山梨県・富士吉田市

特別企画展 日本画の棲み家

2023/11/02〜2023/12/17

泉屋博古館東京

東京都・港区

開館1周年記念特別展 二つの頂 —宋磁と清朝官窯—

2023/10/07〜2023/12/17

静嘉堂@丸の内(静嘉堂文庫美術館)

東京都・千代田区

国吉康雄展 ~安眠を妨げる夢~ 福武コレクション・岡山県立美術館のコレクションを中心に

2023/10/24〜2023/12/24

茨城県近代美術館

茨城県・水戸市

ヨシタケシンスケ展かもしれない

2023/10/15〜2023/12/24

宇都宮美術館

栃木県・宇都宮市

大巻伸嗣 Interface of Being 真空のゆらぎ

2023/11/01〜2023/12/25

国立新美術館

東京都・港区

「今こそ、ルーシー!」LUCY IS HERE

開催中〜2024/01/08

スヌーピーミュージアム

東京都・町田市

「青空は、太陽の反対側にある:原美術館/原六郎コレクション」第2期(秋冬季)

開催中〜2024/01/08

原美術館ARC

群馬県・渋川市

上野アーティストプロジェクト2023「いのちをうつす ―菌類、植物、動物、人間」

2023/11/16〜2024/01/08

東京都美術館

東京都・台東区

「鹿児島睦 まいにち」展

2023/10/07〜2024/01/08

PLAY! MUSEUM

東京都・立川市

111年目の中原淳一展

2023/11/18〜2024/01/10

そごう美術館

神奈川県・横浜市

ICCアニュアル 2023 ものごとのかたち

開催中〜2024/01/14

NTTインターコミュニケーション・センター [ICC]

東京都・新宿区

企画展「ある従軍カメラマンの追憶 義烈空挺隊員と家族の片影」

2023/10/03〜2024/01/14

平和祈念展示資料館

東京都・新宿区

佐野史郎写真展 瞬間と一日

2023/10/14〜2024/01/14

彫刻の森美術館

神奈川県・足柄下郡箱根町

ゴッホと静物画―伝統と革新へ

2023/10/17〜2024/01/21

SOMPO美術館

東京都・新宿区

モネ 連作の情景

2023/10/20〜2024/01/28

上野の森美術館

東京都・台東区

倉俣史朗のデザイン―記憶のなかの小宇宙

2023/11/18〜2024/01/28

世田谷美術館

東京都・世田谷区

江口寿史展 ノット・コンプリーテッド

開催中〜2024/02/04

世田谷文学館

東京都・世田谷区

アメイジング・チャイナ 深淵なる中国美術の世界

2023/10/24〜2024/02/11

松岡美術館

東京都・港区

みちのく いとしい仏たち

2023/12/02〜2024/02/12

東京ステーションギャラリー

東京都・千代田区

1周年記念特別企画「ようこそ藤田嗣治のお家へ」

開催中〜2024/02/20

軽井沢安東美術館

長野県・軽井沢町

生誕120年 古賀忠雄展 塑造(像)の楽しみ

2023/11/17〜2024/02/25

練馬区立美術館

東京都・練馬区

森美術館開館20周年記念展 私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために

2023/10/18〜2024/03/31

森美術館

東京都・港区

tupera tupera + 遠藤幹子 しつもんパーク in 彫刻の森美術館

開催中〜2024/03/31

彫刻の森美術館

神奈川県・足柄下郡箱根町

岡田健太郎―重なる景体

2023/12/05〜2024/04/07

平塚市美術館

神奈川県・平塚市

Exhibitions

こども展―名画にみるこどもと画家の絆―

新鮮で、心温まる展覧会
画家が自分の子どもを描いた絵画
三分の二の作品が日本初公開

   東京展の会場を廻って魅了された。親である画家が、自分の子どもやごく親しい子どもたちを描いた絵画が並ぶ。多くの可愛らしい子どもに出会うことができる。眺めていると、モデルとなった子どもの気持ち、親である画家の想い、そして互いの交流が浮かび上がってくる。19世紀初頭の近代から20世紀の現代までの約200年にわたり、48人の画家によって描かれた87作品(【注意】大阪展では47人による86作品)がそれぞれ、親子と家族の物語を語っている。ありそうで今までなかった、新鮮な感覚の展覧会だ。幅広い年齢層の方々がともに楽しめるだろう。
■「小さな物語」から大きな物語へ
   本展は、クロード・モネの「睡蓮」連作を所蔵することで有名なパリのオランジュリー美術館で、2009年11月から2010年3月まで開催された「Les enfants modèles(モデルとなった子どもたち/模範的な子どもたち)」展を基礎とする。このフランス展には約20万人の観客が訪れたという。日本展は、それを構成しなおして規模を拡大し、オランジュリー美術館とオルセー美術館の支援のもとで実現した。
   「こども展」の特徴は第一に、「親が描く自分の子どもや身近な子どもの肖像」というテーマの魅力だ。誰もが親しみやすい。作品には、子どもの姿とともに、画家とモデルになった子どもたちの間の率直な感情が内包されている。作品を両者の視点で探る面白さは格別である。フランス展を企画立案したオランジュリー美術館 元館長のエマニュエル・ブレオン氏は、代々活躍した有名な画家一族デュビュッフ家の末裔で、先祖がその子どもを描いた肖像画が自宅に飾られていた。「モデルとなった子どもたちは何を考えていたのだろう」と幼い頃からいつも思っていたという。彼が長年いだいていたこの想いがフランス展実現の発端となった。ブレオン氏は本展図録に「学問の主流となるヒエラルキーの外側にある『小さな物語』は、むしろ私たちを大きな物語へと導いてくれるのではないだろうか」と書いておられる。この斬新なテーマは、挑戦的で冒険心に富むものでもあるのだ。なお日本展は、ブレオン氏と千足伸行 成城大学名誉教授によって監修された。
   第二の特徴は、絶妙な作品選定である。モネ、ルノワール、ルソー、マティス、ピカソ、フジタら代表的な画家が多く名を連ねる。それと同時に、日本であまり知られていない画家の作品も出品されるが巨匠作品と肩を並べるもの。子どもの肖像の世界的名作が勢ぞろいした。日本初公開の作品が三分の二を占めることも重要だ。注文肖像画ではなく画家が自分のために描き、遺族が代々大切に保管してきた作品が多いからだ。この点でも意外性や新鮮さが大きい。  
   第三には、19世紀初頭から現代まで約200年の美術史における子どもの肖像画の変遷を、時代の変化とともに辿りながら楽しめるよう、優れた展覧会構成がなされていることだ。次のように、序章と六つの章から構成される。序章(19世紀前半~新古典主義からロマン主義の時代の作品)、①家族(19世紀~20世紀末までの家族肖像画)/②模範的な子どもたち(ベル・エポックの1870年代~1914年の作品)/③印象派④ポスト印象派とナビ派⑤フォーヴィスムとキュビスム⑥20世紀のレアリスト
   そして第四の特徴は、人々がそれぞれ自由に楽しみ、発見ができることだ。会場内に画家の家系図や交流図が紹介されており、また当時モデルとなった子どもたちが、画家である親や祖父の作品制作の様子を語る映像も観ることができる。順々に作品を辿るだけでなく、会場を行ったり来たりしながら、画家の人生や一族を探ったり、モデルと一緒に描かれているものを比べたり、いろいろな楽しみかたができるだろう。
■画家と子どもと家族:たくさんの小さな物語
   見どころの多い展覧会だが、一部をご紹介したい。
●デュビュッフ家  最初の円形の部屋に入ると、大きな楕円形の肖像画対作品が飾られている。小公子と小公女のような子どもたちで、立派で可愛い。正装して椅子のまえでやや緊張気味にポーズをとっていて記念写真のようでもある。これは19世紀半ば、クロード=マリー・デュビュッフ(1790~1864)が幼い息子を描いた≪ポール・デュビュッフの肖像≫(1848年、個人蔵)と、ポールの将来の妻となるネリーを描いた≪ネリー・ビュネルの肖像≫(1850年頃、個人蔵)だ。デュビュッフは新古典主義の巨匠ジャック・ルイ・ダヴィッド(1748~1825)の弟子であり、デュビュッフ家は代々活躍し有名な画家一族となる。本展の立案企画者のブレオン氏は、先述したように一族の子孫で、肖像画の二人は彼の4代前の先祖にあたる。この対肖像画は子孫が大事に保管してきたもの。一族代々の画家たちの優品も多く出品され、繋がりも辿ることができる。
●モデルとなったジュリー・マネ  会場にはもう一つ円形のスペースがある。ここにある6作品のモデルがジュリー・マネ(1878~1966)だ。エドゥアール・マネ(1832~1883)の弟で画家だったウジェーヌ・マネを父に、印象派の女流画家として活躍したベルト・モリゾ(1841~1895)を母にもつ、彼らの一人娘。芸術的な環境で育ち、自身も画家となった。母モリゾは、自分の分身のように繰り返し愛娘を描いた。≪庭のウジェーヌ・マネとその娘≫(1883年、個人蔵)は、光あふれる緑の庭で5歳の娘と彼女をスケッチする父の微笑ましい情景を、モリゾらしい素早い筆致で描いた傑作だ。また、ピエール=オーギュスト・ルノワール(1841~1919)による≪ジュリー・マネの肖像、あるいは猫を抱く子ども≫(1887年、オルセー美術館)は、8歳の少女らしい端正な姿と気持ちよさそうな猫の表情が忘れがたい。モリゾが、親しいルノワールに依頼して描いてもらった肖像画だ。その頃のルノワールは印象派の描法から離れ、明確な輪郭と滑らかな絵の表面を重視するアングル風の古典主義を探求しており、ジュリーの顔の表現にそれが採用されている。ルノワールは後年、詩人のステファヌ・マラルメ(1842~98)とともに、母を10代で亡くしたジュリーの後見人となった。また、後にエドガー・ドガ(1834~1917)の紹介でジュリーと知り合い、その夫となった画家ルエルネスト・ルーアール(1874~1942)が、書斎で手紙を書くジュリーを描いた作品や、ジュリー自身による幼い甥のオーギュスタン・ルーアール(1907~97)の肖像画も出品され、我々はジュリーの生涯の一端を知ることができる。その後、甥のオーギュスタンも画家になり、その作品は1970年代のポスト・モダン以降再評価される。彼が、眠る息子をキリストになぞらえて描いた≪天使に囲まれた子ども≫(1949年、個人蔵)は浮世絵版画をも思わせる淡い色彩と線描が特徴で、清新な息吹がある。なお、ジュリーの母モリゾは、エドゥアール・マネの多くの作品のモデルにもなり、マネの名作を生み出したことでも有名である。マネの代表作≪すみれの花束をつけたベルト・モリゾ≫(1872年、オルセー美術館)をジュリーは生涯大事に自宅居間に飾っていたという。

●カリエール/アンリ・ルソー:子どもの夭逝
  ウジェーヌ・カリエール(1849~1906)の傑作≪病気の子ども≫(1885年、オルセー美術館)は、200×246cmの巨大な画面。全体が霧にかかったようにみえる。この作品で彼独特のデリケートな明暗の諧調を確立させたといわれる。兄弟たちが見守るなか、母にいだかれた赤ん坊が力なくこちらを向いている。赤ちゃんはこのあと息を引きとったという。本作は1885年のサロンに出品され、画家を大成功に導いたのだが、子どもを亡くしたカリエールの気持ちはどんなだったろう。また、素朴派の画家アンリ・ルソー(1844~1910)も授かった実の7人の子どものうち6人もが早世した。彼は生涯に数点しか子どもを描いていない。その貴重な一点である≪人形を抱く子ども≫(1904~05年頃、オランジュリー美術館)では、明るい青空と緑の草原を背景に、赤地に白い水玉模様のワンピースの金髪の少女が、人形を抱え思いつめたような表情で真正面を見据える。強烈な色彩と奇妙な造形が独特の魅力を創る本作は、父としての鎮魂の絵画だったのかもしれない。
●ルノワール/ドニ:生き生きした普段の姿  一方、印象派の代表的な画家ルノワールは、3人の息子の遊んでいるところなど普段の姿を、成長記録のように繰り返し描いた。明るく、生きる喜びを体現するような子どもたち。しかし、その代表作≪道化姿のクロード・ルノワール≫(1909年、オランジュリー美術館)では珍しく赤い衣装を着せてポーズをとらせた。モデルとなった次男クロードは「ちょっとした拷問」のように感じたとの話が残る。ナビ派の代表的な画家モーリス・ドニ(1870~1943)が鮮やかな色彩で描いた、溌剌とした青い目の子どもたちの作品にも愛情がいっぱいだ。2人の息子たちが遊ぶ≪ボクシング≫(1918年、個人蔵)や≪トランペットを吹くアコ≫(1919年、個人蔵)などからも、ドニがいかに子煩悩な父だったかが伝わる。彼は、ナビ派のなかでも温かみのある家族の情景を好んで描くアンチミスト(親密派)の一人で、10人の子ども(一人は夭逝)に恵まれた。

●ピカソ:父母が描いた子どもたち
  20世紀に絵画の革命を行ったパブロ・ピカソ(1881~1973)も、ドニと同様に自分の子どもを最も多く描いた画家である。ピカソの4人の子どものうち、本展では画家でもあったフランソワ―ズ・ジロー(1921~)との間に生まれたクロードとパロマを描いた作品が、厚紙を切り抜いた遊び道具も含め、数多く出品されている。ピカソ作品の変幻自在ぶりも観られる。お絵かきをする二人の子どもを母が見守る≪母とこどもたち≫(1953年、個人蔵)は、黒色の版画に色鉛筆で彩色され、単純な造形。ピカソの家族愛が強く伝わる。彼にインスピレーションを与えたというフランソワーズの子どもを描いた作品も出品され、ピカソのコーナーではこの家族に会っているような気持ちになった。息子クロードが映像で、父ピカソはいつも自分たちを自由に遊ばせながら描いていたと話している。それにしても、出来上がったピカソの作品は、モデルの姿とどのくらい似ているのだろう。
●エンダディアン:横向きの姿  イラン人の画家ダヴード・エンダディアン(1944~2005)の作品も印象深い。≪ヤシャール=アザールの肖像≫(1986年、個人蔵)は、室内で民族衣装を身に着け、ペルシャ絨毯の上に窓に向かって横向きに立つ黒髪の5歳の息子を描く。また、《ネガールの肖像》(1994年、個人蔵)は、大きな絵画の前でやはり横向きに座る黒髪の娘が描かれる。光の入り方が絶妙だ。モデルになったネガールによると、光が最良になったとき、父から呼ばれアトリエに入ったという。主役は現代の子どもだが、イタリアのルネサンス絵画や17世紀オランダの室内画にも通じる。美術史への畏敬の念と透徹した世界観を感じられる作品である。

●フジタ:絵の子どもが自分の子ども
  展覧会の最後を飾るのは、日本展であらたに加えられたレオナール・フジタ(1886~1968)の作品群だ。裸婦、自画像、猫、静物などとともに子どもというのは、彼の重要な画題だった。≪機械化の時代≫(1958~59年、パリ市近代美術館)や≪フランスの48の富≫(1960~61年、パリ市近代美術館)には目の大きな人形のような表情の子どもたちの群像が描かれる。彼は実際の子どもには恵まれなかったが、「私の絵の子どもが私の息子なり娘なりで一番愛したい子どもだ」と語っている。子どもへの深い愛情と、彼らに託す願いと希望がみえるようだ。
■子どもの肖像画はどう描かれてきたのか
   画家が自分の子どもを描いたのはいつ頃からなのだろう。バロックの巨匠ピーテル・パウル・ルーベンス(1577~1640)やレンブラント・ファン・レイン(1606~69)は自分の子どもの肖像画を多く描いたが、実は例外的なことだった。当時西欧では子どもは一人の人間としてとらえられることはなく、また実の両親と過ごす時間は少なかった。18世紀半ば、スイス人の哲学者であるジャン=ジャック・ルソー(1712~78)が著作『エミール』により、子どもを固有の人格をもつ自立した存在ととらえる革新的な考え方を提唱し、教育法として両親とのふれあいを大切にすることを説いた。1789年のフランス革命による市民階級の台頭とともに子どもの地位が確立していき、18世紀後半から19世紀に入り、近代的な意味での子どもの肖像画が描かれ始めるようになる。市民的絵画でもある印象派にも、またアンチミストとしてのナビ派にとっても子どもは身近な存在だ。よって印象派やナビ派の時代は、自分の子どもを描いた肖像画の頂点だった。20世紀に入って起こったダダイスム、シュルレアリスムなどの芸術運動は子どもを画題とせず、子どもの肖像画という分野を追いやってしまう。しかしその流れとは異なる画家たちがいた。エコール・ド・パリの画家をはじめ20世紀のレアリスト(写実主義)の画家たちが子どもの肖像を描き続けていた。21世紀はどのような流れになるのだろうか。

■重層する楽しみ

   「子どもでなかった大人は居ない。」そのことにも気づかされる展覧会だ。ブレオン氏の個人的体験から始まってフランス展が開催され、その際ブレオン氏が全く予想しなかった日本展が実現した。何層も重なる楽しみを是非体験していただきたい。
【参考文献】
千足伸行 監修、日本テレビ放送網 編集『こども展―名画にみる子どもと画家の絆―(Les enfants modèles)』、日本テレビ放送網 発行、2014年。

執筆:HOSOKAWA Fonte Idumi 
(2014年5月)


東京展会場風景。
ウジェーヌ・カリエール≪病気の子ども≫。(©I.HOSOKAWA)
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東京展会場風景。
左から、アンリ・ルソー≪人形を抱く子ども≫。
エルネスト・ルーアール≪人形を抱く娘≫。
(©I.HOSOKAWA)
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東京展会場風景。
左から、ピエール=オーギュスト・ルノワール
≪ジュリー・マネの肖像、あるいは猫を抱く子ども≫。
ベルト・モリゾ≪犬を抱く娘≫、≪庭のウジェーヌ・マネとその娘≫。(©I.HOSOKAWA)
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東京展会場風景。
左から、モーリス・ドニ≪ボクシング≫、
≪トランペットを吹くアコ≫。(©I.HOSOKAWA)

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【会期・会場】
[東京展] 2014年4月19日~6月29日 森アーツセンターギャラリー
電話:03-5777-8600(ハローダイヤル)
詳細http://www.ntv.co.jp/kodomo/
[大阪展] 
2014年7月19日~10月13日 大阪市立美術館
電話:06-6771-4874
詳細http://www.osaka-art-museum.jp/sp_evt/children-on-canvas/
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※本文・図版とも無断引用を禁じます。

2014年5月20日