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第43回木村伊兵衛写真賞に小松浩子、藤岡亜弥

2018年6月16日

●6月20日までニコンプラザ大阪で受賞作品展開催中

 第43回木村伊兵衛写真賞(主催:朝日新聞社、朝日新聞出版)が小松浩子と藤岡亜弥に決まり、4月24日に東京・一ツ橋の如水会館で行われた授賞式で、朝日新聞出版の青木康晋社長から賞状と賞牌、賞金各50万円が贈られた。
 同賞は、写真家の故木村伊兵衛の業績を記念して1975年に創設された。対象は授賞前年の1年間に、国内外を問わず、写真集、雑誌、展覧会などで優れた作品を発表した新人写真家。選考経過を発表したアサヒカメラの佐々木広人編集長によると、今回は233人の推薦者にノミネートを依頼し、その結果推挙された64人の候補者の中から、写真家の石内都、鈴木理策、ホンマタカシと今年度初めて加わった作家の平野啓一郎の4人の選考委員による1次審査で、片山真理、小松浩子、笹岡啓子、春木麻衣子、藤岡亜弥、細倉真弓の6人がノミネートされ、最終審査で2人に決まったという。最終選考に残った6人すべてが女性だった。「推挙された64人のうち女性は18人しかいなかったので、かなり低い確率だといえるが、女性の社会進出が顕著なので、いずれこのような日が来ることは確率的にも十分あり得ること。そこに驚きを感じて欲しくない」と述べ、審査員の石内都は「6人全員が女性であることは選んだあとで気が付いたほど男女の性差は気にならない結果とはいえ、女性作家の圧倒的な質の高さと多様な作風を感じた」と述べた。

 小松浩子は1969年神奈川県生まれ。2009年に幅約1㍍の印画紙で壁面全体を覆った作品で初個展開催以降、国内外で個展、グループ展を多数開催。10~11年自主ギャラリー・ブロイラースペースを主催し、毎月個展を開催。15年ドイツのThe 6th Fotofestivalで発表した作品がイタリアのMAST財団に収蔵された。授賞対象作は工場の資材置場で撮った写真を壁や床に貼り巡らせたり、天井から吊り下げたりしたインスタレーション「人格的自律処理」(東京・東神田 ギャラリーαMでの個展)、「The Wall,from生体衛生保全,2015」(「THE  POWER OF IMGES」MAST:イタリア、ボローニャ)。
 歴代の木村伊兵衛写真賞で、インスタレーションに対しての授賞は初めて。「だから自分が対象になるとは思わなかったので驚いた。初個展の時に幅が1㍍、長さが20㍍のロール印画紙を半分に切って6カットずつ写真を焼いたものを2段がけにしたところから始めて、毎回展示のたびに必ず何か新しいことを加えていこうと思って続けて来て、αMでの展示のような形まで到達した。これからも少しずつ何かを付け足したり、少し変えてみたりしながら積み重ねていく」と語った。
 選考委員の鈴木理策は「αMの展示では写真に対する価値観を挑発された。受賞したら次にどのような仕事をしてくれるのだろうという期待をこめて票を投じた。写真表現の可能性がひろがってゆくうえで良かった」と評し、ホンマタカシは「衝撃的」「木村伊兵衛写真賞は写真集賞ではない。展示をもっと評価した方がいい」とし、「プリントを踏むのは抵抗があるなどの意見も出たが、その違和感こそアートとしてアリだと思うし、大きな美術館に敷き詰めたインスタレーションを見てみたい」と大きな可能性への期待を述べた。

 藤岡亜弥は1972年広島県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業。2008年文化庁新進芸術家海外研修員としてニューヨークに滞在。12年に帰国し、現在、東広島市在住。10年日本写真協会賞新人賞、16年伊奈信男賞、18年林忠彦賞を受賞。授賞対象作は写真集『川はゆく』(赤々舎)と個展「アヤ子、形而上学的研究」(東京・銀座 ガーディアン・ガーデン)。
 『川はゆく』は、ニューヨークから帰国後、広島市内で暮らしながら、町を歩いて日常を撮ったスナップによる写真集。広島出身の藤岡は「広島を撮ってやるぞというような意気込みをもって始めたものではなく、いつも自分の中で広島に対するてれなどがあり、なかなか素直に向き合えなかった。でも、あまり気負わずに日常を撮ろうとどんなにつまらないことや当たり前のものにもシャッターを押した。そのことで、現実生活で見えなかったことに気付いたり、自分を見つめ直すようなことになったり、自分と写真との関係が変わって行ったりした。そうした作品で受賞できて嬉しい」と喜びを語った。
 選考委員の平野啓一郎は、「広島出身の作者が、まさに撮るべきものを撮ったという私的な必然が、今日の社会的な必然と固く手を握り合った」と高く評価し、鈴木理策は「現代のわれわれの感覚を反映するかのように一定の距離感を保ちながら広島を見つめているが、時おり、虚実ないまぜにするような光景が鮮やかに示され、広島に対する問題意識を曖昧にしている私たちを目覚めさせる。広島に対する記憶のありようを写真の魅力によって揺さぶる」と述べた。

 なお、受賞作品展が6月20日までニコンプラザ大阪THE GALLERYで開催されている。ニコンプラザ新宿THE GALLERY1での展示は終了(4月24日~5月7日)。
執筆・写真①~④⑥⑧⑨:西澤美子(文中・敬称略)

第43回木村伊兵衛写真賞受賞作品展
6月14日(木)~20日(水)※日曜休廊
ニコンプラザ大阪THE GALLERY
(大阪市北区梅田2-2-2ヒルトンプラザウエスト・オフィスタワー13階)
電話06-6348-9698
10時30分~18時30分(最終日は15時まで)
詳細:http://www.nikon-image.com/activity/exhibition/thegallery/events/201706/20180424.html
写真キャプション
①賞状を受ける小松浩子
②賞状を受けた藤岡亜弥
③小松(左)と藤岡
④受賞後のスピーチをする小松浩子
⑤小松浩子「人格的自律処理」ギャラリーαMでの展示
⑥受賞の喜びを語る藤岡亜弥 
⑦藤岡亜弥 写真集『川はゆく』から
⑧ニコンプラザ新宿THE GALLERY1での展示 藤岡亜弥
⑨ニコンプラザ新宿THE GALLERY1での展示 小松浩子